注)以下は、平成8年度100校プロジェクト成果発表会の資料より、 テキストデータを抽出してHTML化したものです。図表類や文字の大きさなど、 文書のイメージは、実物とは異なっていますので御了承下さい。

共同学習: ネットワークによる通信ディベートの経験

〜東北地区の高校5校による1年間の共同作業を通して〜

東北学院中学高等学校
井口 巌

1、はじめに

 この実践研究は、第22回全日本教育工学研究協議会全国大会、第10回コ ンピュータ教育研究協議会全国大会、第2回全日本情報教育研究協議会全国大 会の高等学校部会の公開授業として、東北地区の5つの学校、秋田和洋女子高 等学校、盛岡白百合学園高等学校、西多賀養護学校高等部、仙台高等学校、東 北学院高等学校の生徒有志により電子メール(メーリングリスト)CU-SeeMe、 IRCを用いてディベートの準備を行い、当日はIRCとテレビ電話も用い会場の仙 台市科学館のディベートをサポートした実践である。

 私達は、今回、通信のサポートを活用したディベートを通常のディベートに 対して通信ディベートと呼ぶことにした。論題に関する資料収集を図書館等の 他に、パソコン通信のデータベース検索等も使い、さらに立論の準備として、 意見交換・調整に電子メール・チャットを使用して各学校から会場のディベー トに参加した。

2、参加校について

 参加校は教師も生徒もすべてディベートの経験が無く、コンピュータの設置 状況、生徒のコンピュータ活用の技能も学校により全く異なった状況にあった。

 今回参加した5校について紹介する。

3、1年間にわたる学習と経過について

 前述の条件により、教師・各学校はディベートについての学習から始まった。

平成7年12月1日
CU-SeeMeを使用して「第1回教師打ち合わせ」
平成8年1月14・15日
担当教師合宿「ディベートについての勉強会」
平成8年3月30・31日
生徒合宿 「生徒のディベート体験・勉強会」
平成8年4月
教師用メーリングリスト debateML 生徒用メーリングリスト net-debateML 作成
平成8年5月28日
ディベート講習会 秋田和洋女子高校
平成8年6月17日
論題「夫婦別性を認めるべきである」東北学院校内ディベート

 この頃から西多賀養護と東北学院で、パソコン通信の新聞データベース検索 による情報収集が自主的に開始

平成8年7月11日
論題「高校は制服にすべきである」 仙台高校校内ディベート
平成8年7月22日
肯定・否定メーリングリスト koutei ML hitei ML 作成
平成8年7月27日
「制服は廃止すべきである」 東北学院高校校内ディベート

 学院高校のディベートの肯定・否定を電子メールにより各学校からサポートした。

平成8年8月10・11日
生徒通信ディベート合宿 会場:東北学院高校と仙台高校

 CU-SeeMeとチャットを取り入れた通信ディベートを実施した。

平成8年10月
CU-SeeMeからテレビ電話に変更しチャット(IRC)による交流が盛んに行われた。

 IRCサーバーを東北学院高校に設置した。

平成8年10月10日
大会の論題発表、肯定否定関係無く情報収集を開始した。
平成8年10月17日
肯定・否定派を決定した。

4 本大会 論題「高校の校則はなくすべきである」

 平成8年10月24日 仙台市科学館エントランスホールをディベート会場 として5つの学校をTV電話会議システムで結び、各学校の支援メンバーから IRC(インターネットリレーチャット)による支援を受けながら開催された。 ディベーターは東北学院高校4名、仙台高校4名の混成チームを肯定派・否定 派に編成し、司会・時計係も2校の代表2名で受け持ち実施した。

5 活用の成果

 男子校・女子校・共学校・病弱養護学校と、生徒のおかれている環境が異な る同世代の生徒達が同じテーマについて、遠隔地から電子メール、チャットに より意見交換できたことは素晴しい体験であった。また、混成チームを構成し たことが、互いの意見交換の必要性を高め、いろいろな立場の意見を真剣に汲 み取る場となった。特に、ふつうでは対等に話すことのできない西多賀養護の 高等部の生徒と、互いに教えたり教えられたりする経験を持つことができたこ とは、非常に大きな成果であった。

6 おわりに

 共同企画の場合、各学校の取組み形式が異なるため、教師も生徒も無理しな いで長続きする企画をたてることが必要であり、教師間の連絡を密にすること が大切である。今後、生徒が自由に使用できる機器・環境を準備することが必 要になる。また、学校を超えた活動の場合、学校長や職員・同僚の理解が大切 である。

 まず、今回のディベート授業を提供していただいた各学校長と担当教員と生 徒の皆さんに感謝します。

 また、NTT東北支社の協力で、会場から各学校にTV電話会議システムの中継 を実施できたことについて感謝します。ネットワーク接続については、東北大 学、秋田大学、東北インターネット協議会、宮城日本電気、東北学院大学の協 力に感謝します。会場・ネットワークを提供していただいた仙台市科学館に感 謝します。最後にディベート全体の指導に全面的に協力いただいた、東北学院 大学鈴木克明助教授、岩本正敏助教授とその研究室の皆様に感謝いたします。

 この様に、今回のネットワークを用いた実践は、多くの方々の協力で可能に なったが、逆に、ネットワークによって、この様に多くの方々の協力が得られ たのだと実感している。

 今後、形をかえて共同学習をすすめて行きたいと考えている。

参考文献

「教室から世界へインターネット実践例集」教育家庭新聞社 pp.146-149

第22回 全日本教育工学研究協議会全国大会 資料集 pp.211-221