こんなにできる課外実践!

 インターネットが授業の中でどのように使えるのか?これは,ある意味では教 師主導で進む実践であろう。もちろんこれは大切なことである。しかし,もっと 気軽に,そして授業時間を超越した実践「課外実践」をいくつか紹介したいと思 う。

6年生の日常活動の中から

★6年「卒業までの119日」

 6年生の活動を全校や保護者の方伝えたり,6年生の思い出として記を残す役 目として「6年報道実行委会」が設置されている。この実行委会の10月からの 活動として新たにわったのが「卒業までの119日」いうデジタル日記である。

 本町小学校ホームページに,毎日6年生の出来事を載せていけば,校だけでな く,インターネットを通じ地域の方や保護者の方にも見てもらことができる。

 実際に,保護者の家庭から「祖父が自分のパソコンを買って,毎日楽しみに見 ているのですよ。がんばって,毎日続けてくださいね。」という激励のメッセー ジもいただいている。

2nin no kodomo

 まず,報道実行委員の子どもたちは,その日一日の中で一番特徴的な出来事を デジタルカメラで撮影する。次に,簡易電子アルバムソフトで画像を取り込み, それにコメントをつける。そして,完成した日記をhtmlコンバート機能によ って,ホームページに載せていく。ホームページへの掲載は担当が行うが,それ 以外のことは子どもたちが分担を決めて毎日行っている。保護者の方からも「祖 父が自宅からインターネットで楽しみに見ているので,がんばって続けて下さい 。」という励ましのコメントもいただいた。3月21日の卒業式には,119ペ ージのデジタル卒業日記ができあがる。  そして,卒業アルバムにも報道実行委員会のページとして掲載される予定であ る。

sagyou no nagare

sotsugyo no page 10/1 no page

特設インターネットクラブ

 授業時間外にもインターネットに興味をもつ子どもたちの活動の場を保障する ため,そして,インターネット活用に関してのリーダーシップをとる子どもを育 てるために,特設インターネットクラブが設けられている。部員は4〜6年生の 約25名で,活動は不定期に週1回程度となっている。

★子どもたちのページ作り・1

 学校の顔となるホームページは,小学生の作品でつくりたい。しかし,平成7 年の現状では小学生がページをHTMLでつくることは困難であり,そのことを 強要すれば,インターネット普及には逆効果になると考えられた。そこで,イン ターネットクラブの子どもたちが学校の絵や横浜の特徴的な物の絵を描いたり, ワープロで文章をつくったりしたものを教師がHTML化してページを作ること となった。

kodomo no kaita e

★子どもたちのページ作り・2

 平成8年になると,簡易ページ作成ツールがいろいろと出始め,中には小学生 でも使いこなせるものもあった。まだ,試行の段階ではあるが,子どもたちの手 だけでページが作り上げられるものも出てきた。

 しかし,子どもたちの手で作られたページの中には,個人情報にあたるものが 記載されることが多く,現在のところインターネット上には公開していない。そ れでは,子どもたちの折角の意欲をそいでしまうことにもなりかねないため,イ ントラネット・バージョンとして,校内及び関係者のみの公開ページとしている 。

★インターネット・イベントへの参加

 本校は横浜市中心部に位置し,東京にも近いという利便性がある。そこで,各 種インターネット関係のイベントで,小学生を対象としているものについて,イ ンターネットクラブの希望者が参加してきた。最新鋭の技術に触れることにより, インターネットへの関心を高めることができた。
・TBSラジオ「こども電話相談室」
インターネットで質問/ラジオで回答
Mail from/to TBS Page hardcopy
日本IBM「小錦プロジェクト」
小錦関と会って,ハワイとテレビ電話
ネットワーカーズ「横浜市ブース」 横浜市役所の展示に参加・協力
Page hardcopy Page hardcopy
NTT「ねっとでい’96横浜会場」
横浜そごうと本町小学校でテレビ電話
CEC「ホワイトボード交流」 全国4校でリアルタイム交流
Page hardcopy TV kaigi no yousu

インターネットクラブから全校活動へ

★よみがえれ!青い目の人形「ブロッソン」

 戦前,日米友好のために「青い目の人形」がアメリカから日本各地に1万2千 体以上贈られた。しかし,戦争が始まると,青い目の人形たちは,敵国の人形で あるとして次々と破壊されてしまった。戦後,心ある人々によって守られた人形 が発見され,現在全国で約280体が確認されている。その中の1体「ブロッソ ン」が本町小学校にもあった。しかし,平成7年にブロッソンのことを知る子ど もはもちろん教師もなく,校長室前に飾られた写真だけがその存在を示していた。

 平成7年夏,インターネットクラブの子どもたちが各地の小学校の様子を 見ていたとき,大津市立平野小学校のホームページが目にとまった。そこに は青い目の人形が学校に里帰りしている情報が載せられていた。280体の 中の2体がインターネットで結びついたのである。しかし,本町小学校のブ ロッソンは「横浜人形の家」ができた16年前に預けられ,以来一度も本町 小学校にはもどってきていないこと分かった。 本物のブロッソンを見てみたいというインターネットクラブの子どもたちの願い をかなえるために,「横浜人形の家」が16年ぶりブロッソンの里帰りをしてく ださることになった。本町小学校では,インターネットクラブから提出された議 題を受けて,児童代表委員会で話し合いが持たれ,3月3日の雛祭りに合わせて, 全校での歓迎会が催された。

 更に,7月には,「横浜人形の家」新館開館10周年記念イベントに合わせて, ブロッソンのレプリカが贈呈され,全校児童がブロッソンを見ることができるよ うになった。6年生では,社会科学習の中に「青い目の人形ブロッソンが見た戦 争・・・」という主題が構成され,学習の中にもブロッソンが大きく関わってき ている。

 また,本校ホームページ上に「青い目の人形のページ」を公開して以後,全国 から青い目の人形に関する情報が寄せられるようになってきた。愛知県から「私 のところにも人形があるので資料を送ります。インターネットはまだ慣れないの で郵便で送ります。」というメッセージをいただき,送っていただいた資料は, 本町小学校ページ内に公開されている。その後も埼玉県/愛媛県/富山県と「青 い目の人形のホームページを作ったので,お互いにリンクをはりましょう。」と いう電子メールが本校に届いている。

 こうして,インターネットに接続してわずか1年あまりの間に,6つの小学校 の青い目の人形の情報がつながり,地域の施設「横浜人形の家」との関係も深い ものになってきた。日本全国の人形の情報がインターネット上で集まる日も近い ことを感じている。

ningyo to kodomo

学校「地域のネットワーク拠点をめざして」

 「公立小学校」は地域の中心にあって,何か行事があるとまちの人たちが集ま ってきて情報交換をする場所というのは,昔も今も,そして未来も変わらないこ とだろう。しかし,本校学区のようにマンションや団地も多くなり,近隣とのコ ミュニケーションも取り難い状況になってくると,情報伝達手段もそれに応じた ものが求められてくると考えられる。

 そこで,インターネットによる小学校の情報公開が,こうした時代の動きに対 応する一つの有効な手段になると考え,本町小学校のホームページは公開されて いる。その中には,子どもたちの活動の様子はもちろんだが,それ以外に保護者 や地域の方に向けたメッセージもある。

★夏休み保護者インターネット体験会

 子どもたちの作品を公開していホームページを通して,もっと多くの保護者 の方とのコミュニケーションを図りたいという願いから「夏休み保護者インター ネット体験会」が行われた。

 2日間で45家庭60人の保護者の方が来校され,自分の子どもの作品を見た り,ネットサーフィンを楽しんだりしていかれた。多くの方が,インターネット に興味を持ち,子どもたちに使わせたいと思い,そのうち自宅でもできるように したいとアンケートに回答されていた。

internet surfing

★インターネット版「本町だより」

 「本町だより」は,毎月発行される学校情報掲載プリントだが,このプリント の学区内全町内会への配布を2年前から行っている。地域のネットワーク拠点と して「ふれあい」を大切にしたいと考えてのことであった。

 これを更に発展させて,今年からインターネット・ホームページ上でも「本町 だより」が見られるようにした。インターネットに接続できる家庭であれば,紙 に印刷されたものと内容は同じでも,画像などがカラーで鮮明なものが見られる ことになる。

Honcho-dayori

★卒業生ネットワークに向けて

 ホームページを開設して以来,「母校のホームページが見られて感激しました !」というメッセージをいただくことがある。まだ20通にも満たない数だが, 今後インターネットの普及とともに飛躍的に増える可能性がある。卒業生のネッ トワーク拠点となれたら,これこそ小学校がホームページを持つ大きな意義にな るだろう。そうした願いもこめて,「OBOGページ」が開設されている。

Page hardcopy

 このOBOGページが授業の中で脚光をあびることとなった。3年生が「学校 の昔さがし」をしていたときに,卒業生に聞いてみたら分かるかもしれないとい うことに気づいたのである。早速,卒業生へ3年生からの電子メールが送られる と,その日のうちに4人の方から返事が送られてきた。

 そして,協力をいただいた方の中から,「ぜひ,ほかの方のメールを読んでみた い。」「世代の違う方とのメーリングリストを作ってくれないだろうか。」とい うご意見をいただいた。

 まだ,たった4人のメーリングリストではあるが,今後の本町小学校の方向性 を示すものになるかもしれない。いや,そうなるべきであろうと考えている。

Mail from OB/OG
卒業生からのメールが寄せられている。
「自分が卒業した学校のホームページが見られるなんて信じられません。 思わず,校歌を口ずさんじゃいました。」
 まさに,ヒューマンネットワークが形成されつつある。

 ここで紹介した「実践」「環境」「考え方」のほとんどは,現在公開されてい る本校のホームページ上で見ることができる。実践の中でも述べたようにインタ ーネット上に公開することによって,新たなヒューマンネットワークが生まれる 可能性があるからである。公立小学校がホームページをもったときに目指すもの。 それは,地域に根ざした保護者向けのサイトなのではないかと考えている。

 公立小学校は,地域のヒューマン・ネットワークの拠点なのだから。

(実践者 横浜市立本町小学校 出口和生)