熊本県立小川工業高等学校におけるインターネット活用事例(授業外)
1 はじめに
インターネットの利用に関して,生徒の興味・関心を喚起するために様々な取り組みを
通して実践したので,その中のいくつかを紹介する。
2 IWE (インターネット世界博覧会)'96九州・熊本に参加して
(1) ねらい
インターネット1996ワールドエクスポジション(The Internet 1996
World Exposition : IWE'96)が,昨年1月1日から12月31日まで世界同時に
開催された。
IWE'96は,インターネット上で行われる新しい形態の博覧会で,次世代の高
速なネットワーク上の仮想空間に多くのパビリオンが出展され,最新技術を駆使
した様々なイベントや実験が展開された。熊本では,県内産・学・官の協力のも
とに IWE 九州・熊本実行委員会を設立し,IWE 九州パビリオンの一員として昨
年7月7日から参加し,IWE 九州・熊本パビリオンを中心とした様々な実験,講
演会・講習会の開催やパブリックアクセスポイントの設置による普及啓発活動な
どが行なわれた。
今回,その中に学校パビリオンのコーナーを設けていただいたので,県内でイ
ンターネットの利用可能な小・中・高校に声をかけ,共同で学校パビリオンのホ
ームページ制作などの活動を通して,生徒にインターネットの興味・関心を促す
とともに教師間の協調作業およびネットワークに関する技術力向上を目指した。
(2) ネットワーク環境
熊本県内の小・中・高校の先生と児童・生徒たちが,学校の紹介,自分たちが
調べた課題の紹介,作品の紹介など,教育への様々な利用方法を試みた。
(4) メーリングリスト(ML)の活用
教師間連携 : 代表者連絡用ML(各2名),メンバー連絡用ML(計12名)
「IWE 九州・熊本」の動きに従って,上記2つのメーリングリストを運用し,相
互連絡をとりあい,効果的に運用ができた。
(5) ホームページ制作
校種毎に分担し,各学校毎に制作
サーバーをもたない学校についてはエリアの提供(FTP などの技術支援)
一部,リンクを併用
本校の体育大会(応援競技)の様子をビデオで収録し,StreamWorks データに変
換し,ブラウザで視聴できるようにした。データが大きいため高速なネットワー
クに接続されているIWE 九州・熊本のサーバー上にデータを置き,ホームページ
にリンクして情報発信を行った。動画の取り扱いについて,新しい手法を学ぶこ
とができた。
- 1)機器構成
- Server:Indy (インターネット上への配送用)
Transmitter : MPEGボード付属のAT互換機 (MPEGデータへのエンコード用)
- 2)配送速度,帯域幅
- 14.4k,28.8k,56k,128k(bps) 10Mbps
(7) 臨時PAP (パブリック・アクセス・ポイント)の活用
IWE の各パビリオンへの来場,IWE で行なわれる実験やインターネットを体験
するた めに常駐の,また,県内各地で開催されたイベントと協力して,臨時のP
AP が設置され た。
1)平成8年度第5回熊本県高等学校 産業教育フェア
- 期日
- 平成8年12月18日(水)熊本市民会館大ホール
- 内容
- 研究発表・作品発表
実験や実習で作成した作品の紹介や研究成果及び優れた技術等の発表。
職業学科の卒業生の講演
専門学科の生徒によるアトラクション
・コスチュームショー ・マーチングドリル演奏
- ハードウェア
- PowerMacintosh 6100/60AV(1台) サーバー
DynaBook他 (5台) クライアント
ビデオカメラ
- ソフトウェア
- CU-SeeMe
2)内容
インターネットの利用できる県内の中学校に呼びかけ,CU-SeeMeを介して会場
ホール内から画像・音声を送り,中学生に対する専門高校のPRを試みた。
会場ロビーには別途にデモ用のマシンを準備し,中学校の先生や生徒から反応
を聞くことができ,概ね好評であった。また,本校の生徒が休憩時間には他校の
先生方や生徒たちに対してインターネットの概要を説明したり,自由にインター
ネット体験をしてもらった。
(8) 成果など
全員揃っての会合を一度も行わずに,すべてメールのみで連絡を取り合って実施
した共同作業であったが,何とか学校パビリオンが実現できた。しかし,メール
のみでの作業に伴う意志の疎通の不十分さに伴う難しさも感じられた。
応援競技の演舞は他人に見せたいという生徒の希望で,一過性のCU-SeeMeによ
る中継でなく,再現が可能であるStreamWorks の利用を行い,生徒からは好評を
得た。
産・学・官の方々との連携ができ多くのことを学ばせていただき,今後のイン
ターネット活用への見通しが明るくなった。
3 1997年男子世界ハンドボール選手権大会時の指導計画
(
http://ths.ogawa.kumamoto.jp/handball/hand000.html)
(1) ねらい
来る5月17日から6月1日まで世界大会が熊本県で開催されることになって
おり,一昨年夏からボランティアとして協力してきている。マイナーな競技であ
るハンドボールに対する生徒の興味・関心を惹くことはもちろんの事,インター
ネットを通して大会への参加意識を高めることを目指している。
(2) 1997年男子世界ハンドボール選手権大会とは
男子世界ハンドボール選手権は,2年に一度開催されるハンドボールの世界的
大会で,国際ハンドボール界で最も権威ある大会である。世界24ヵ国を代表す
る選手が一堂に会し,世界最高の技とスピード,そしてパワーを競うもので第1
5回目になる
今大会はヨーロッパ以外の国で初の開催,しかも,熊本にとっては初の世界的
スポーツイベントということで大変意義深い大会である。
(3) ホームページ制作
昨年行われたプレカップ大会などの結果速報,ひゅうた倶楽部[公式サポータ]
のサポートを行ってきている。
(4) メーリングリスト利用を通して
大会事務局も含めたメーリングリストを運用し,全国の中学生から大人までの
多くのハンドボールファンの方々と情報交換を行っている。
(5) 成果
世界大会への参加意識の醸成や異なる世代の人々とのメールを通した交流など
からのインターネット利用への有用性の理解の深まりが見られた。
4 教職員研修などへの取り組み
(1) ねらい
地域の人たちや学校の先生方にインターネット体験の場を与え,ホームページ
などのサンプルデータはFDとして持ち帰り,職場での利用に役立つよう工夫した。
更に,インターネットに関するノウハウをできるだけ多くのメンバーが共有でき
るよう研修会の担当を科内で分担して,誰でも講師になれることを目指した。
(2) 実践発表および研修計画
7/5 | 「ニュー・タッチ計画」指導者養成研修(小中学校) 県教委主催
| (22名) | at 教育センター
|
7/26 | 「ニュー・タッチ計画」指導者養成研修(県立学校) 県教委主催
| (75名) | 〃
|
8/ 1 | 情報教育指導者講座(中学校数学) 文部省主催
| (45名) | 〃
|
8/ 5 | 宇城地区情報教育研修会
| (45名) | at 本 校
|
8/20 | 宇城地区図書館部会研修会
| (15名) | 〃
|
8/23 | 長陽村情報教育研修会
| (20名) | 〃
|
〃 | 南関第一小学校研修会
| ( 2名) | 〃
|
8/27 | 地域の企業・学校の方のためのインターネット研修会
- 講師
- IWE 九州・熊本実行委員会(共催)のメンバーなど5名
- 内容
- インターネットとマルチメディアの活用,インターネ
ットの様々な利用,"Java"についての説明と実演,
IWE 九州・熊本の概要
| (26名) | 〃
|
11/29 | 熊本県高等学校教育研究会工業部会第一分科会セミナー
| (22名) | 〃
|
12/ 3 | 田浦中学校 インターネット研修会
| (12名) | 〃
|
12/4,5 | 平成8年度熊本県職業教育担当教員 先端技術研修会
| (30名) | 〃
|
12/25 | 熊本県高等学校教育研究会家庭部会宇土地区研修会
| (15名) | 〃
|
(3) 研修環境
- ハードウェア
- FMV-575 (Windows95) (42台)
- 講師
- 情報電子科職員 (3〜5名/回)
- 研修費用
- 実 費 (FD代金など)
(4) 研修内容
1)電子メールの利用法 (メーリングリスト利用も含む)
研修会用に専用メールアドレス設定
- 方法
- 自分対自分 (送信,受信,返信の基礎)
- 自分対他人 ( 〃 )
- メーリングリスト活用法 (校外の特定の方にも協力依頼)
2)ホームページ制作法
- ソフトウェア
- ワープロ,グラフィックエディタ,ブラウザ
- 事前準備
- FD (ホームページサンプル,画像サンプル)
- 方法
- ホームページ例の準備・説明。
個々に応じた修正によるオリジナルホームページの制作
(5) 評価とまとめ
多くの学校などから研修依頼があったことや,研修後にも問い合わせがあった
りしたことなどから,インターネットに対する期待の高さが感じられた。
本校での研修が,地域におけるインターネット普及に少なからず貢献できたも
のと思 われる。今後は,講師としての生徒の参加も考えてみたい。
(1) ねらい
生徒の保護者にもインターネットへの興味・関心をもっていただくため,PTA
の会合 などでPRを行い,その結果PTA の広報委員会で取りあげられ,メンバー
の手により実現 の運びとなった。子どもたちに直面する教育問題に対して充分
に,そして機敏に機能す るPTA を目指して日々研鑽の目的で,ホームページを
開設した。
(2) 制作過程
平成8年 | 9月中旬 | インターネットの説明 (職員による)
|
| 10月初旬 | ホームページ構成企画 (広報委員)
|
| 10月〜11月 | 文書データ作成,画像データ作成 (広報委員)
|
| 11月22日 | ホームページ完成・公開 (広報委員・職員)
|
(3) 制作ツール
一太郎,Internet Explorer,ワードパッド,ペイントなど
(Windows95マシン標準添付ソフト)
(4) PTA の組織と役割・活動概要
役員会,広報委員会,地区委員会,学年委員会,会員
・広報委員会
これまでは,小川工業高校PTA 新聞「秋桜のみち」の発行(一学期ごとに一回),
その他の広報活動を行ってきている。
(5) 今後への期待
保護者の手によるホームページができたことは素晴らしいことで,今後は他校の
PTA との交流が始まることが望まれる。
6 おわりに
本校におけるインターネット活用事例の中から,主に授業外での実践事例紹介
を行った。インターネットに関わる多様な取り組みを通して,生徒の興味・関心
を喚起することができたし,他校との連携,新しい技術への手がかりをつかむこ
とができたものと考えられる。
課題としては,常に変化を伴うハードウェアやソフトウェアのグレードアップ
や様々な新しい技術に対する対応が,学校にとっては人的にも予算的にも困難で
あり,今後の教育への積極的活用を考えた場合,多面的に考慮していく必要があ
ると考えられる。
(実践者 熊本県立小川工業高等学校 情報電子科 岩永 久幸)