ホームページ制作で表現意欲を高める


本実践におけるインターネット利用の意図

 選択教科としての「国語」のねらいは「生徒の特性等に応じ多様な学習活動が 展開できるよう」にすることであり,学習指導要領には課題学習,総合的な学習, 表現の能力を高める学習などが例示されている。それらをふまえ,選択の授業に おいて,各自がテーマごとに調べたことをレポートの形にまとめる自由研究や演 劇などの授業を行っていたが,自由研究では中途半端なままで,最後まで完成で きない生徒もおり,意欲的に自主的に取り組む態度がいまひとつであった。

 そこで,インターネットという世界への発信を通して発表の場を拡大すること で,外部の方からの反応があることは生徒の表現意欲を喚起するのではないと考 えた。インターネットを手軽な出版の手段と考えた実践である。


1 長島の歌ホームページによる発表(中学3年選択国語)

(1) ねらい

 昨年,本校のホームページに生徒の短歌作品を掲載した。その時,学校以外の 方から感想をもらったことで,生徒は自分の作品に自信を持つとともに,短歌を 作る楽しみを感じたようであった。そこで,各自が自分のページを作ることで自 分の作品に愛着が生まれ責任をもって活動に取り組むことをねらいとした。

(2) 指導目標

 ホームページを制作し,情報発信を行う際に次のことを指導目標とした。
  1. 郷土史という身近な資料を認識することや,郷土に残る文学作品を調べ ることにより郷土の美しい自然や文化を再確認することが郷土を見直す ことにつなげる。
  2. 日常の感動を短歌という形で表現する意識づけをする。
  3. 各自が自分のページを公開することで,学校を越えたコラボレーション につなげる。
  4. 長島が「万葉集」に歌われていることで古典を身近なものと考えられる ようにする。
  5. 万葉集の歌,自作の短歌,写真をホームページにすることで構成を考え て表現する工夫をするようにする。

(3) 利用場面

 タグを使ってHTML文書にまとめる。

(4) 利用環境

ハード・・・Apple Macintosh
ソフト・・・Simple Text・Netscape Navigator・Adobe Photoshop
デジタルカメラ・・Apple QuikTake100

2 指導計画(全35時間)(本時の学習内容を含む)

学習課題 学習過程 学習活動 時間 生かす感性
学習計画
1時間
つかむ 年間を見通して学習計画を立てる。 1 イメージ
長島の歌ホームページ制作
11時間
つかむ 1「長島の歌」作成の学習計画をたてる。 1 体感 ・感受
感受
調べる 2 東町郷土史を使って長島に残された葉集の歌について調べる。 3 感受・感情
共感
3 気に入った風景をデジタルカメラで影し短歌を詠む。 2 イメージ
感受・感情
まとめる 4 HTML文書の作り方を学習する。 1 意欲
5 「万葉集の歌」「自作の短歌」をホムページとしてまとめ公開する。 3 イメージ
6 公開後,寄せられた感想に対して返事を書く。 1 共感・意欲
方言を使った詩の制作
10時間
つかむ 1 方言を使った詩の制作について学習計画を立てる。 1 体感・イメージ
調べる 2 詩についての基礎知識を学び,詩集を読む。また,音読を工夫する。 2 感情
3 生活感のある詩を書く。 3 感受・感情
イメージ
4 相互に読み合い,推敲する。 2 共感
5 完成した詩について音読を工夫する。 1 感情
まとめ 6 ホームページを作成し学習のまとめをする。 1 イメージ
意欲
マルチメディアを使ってストーリテリング
12時間
つかむ 1 民話のホームページ制作について学習計画を立てる。 1 体感・イメージ
調べる 2 東町郷土史の中からストーリーテリングの話材を選ぶ。 1 感受
3 あらすじをまとめ、シナリオを書く。 3 感情・イメージ
4 ストーリーテリングの練習をする。 3 感情・共感
まとめる 5 機器を使って画像を準備し発表する。 3 イメージ
6 ホームページを制作しまとめをする。 1 意欲
評価
1時間
まとめる 年間のまとめと評価をする。 1 意欲

3 ホームページ「長島の歌」制作の実際 ・・・11時間

Homepage hardcpy
選択国語のホームページ・・・制作した3名の生徒
(1)東町の郷土史を使って町内に万葉集の歌碑があり,古人がこの地域だけ歌 があることを知る。長田王,石川大夫,大伴旅人の歌計5首について各自 が分担し解釈,背景などを調べまとめる。

(2)デジタルカメラで,各自気に入った身近な光景を写真に撮る。

(3)2年時に学習している短歌の形式を踏まえ,万葉の歌人が詠んだように写 真を素にし短歌を詠む。

Homepage hardcopy
自作の短歌とデジタルカメラの映像
(4)万葉集の歌,自作の短歌をひとりひとりHTML文書にまとめホームページとし て公開する。

<CENTER><h2>このページの担当は中村真由です</h2></CENTER><BR>
<HR><h1>大伴旅人の歌</h1><br>
<h2>隼人の瀬戸の岩ほも鮎走る<br> 吉野の滝になほしかずけり</h2>
<br>
<CENTER><IMG SRC="seto.gif"></CENTER>
<h4>【意味・背景】奈良および太宰府のあたりから来た兵士は長い旅で
  つかれてい た。
  そのとき黒ノ瀬戸をとおった一行が,その潮の流れの速いのに驚いてこれか
  ら先の戦いの多難さをひしひしと感じ兵士を励ますために,「このくらいの
  潮の流れに驚くな,吉野の滝はもっと流れがはやいのだ」と歌った歌です。</h4>
<基本的なタグを使って生徒が作成したHTML文書の一部>

(5) 寄せられた感想に対して返事を書く。

4 評価とまとめ

(1) 成果

  1. 各自が受け持つページに対して,責任をもち,授業時間以外でも活動する など,意欲的に取り組む姿が見られた。
    <生徒の感想>

    ・完成したわたしたちのホームページを見たけれど,とてもいいできだっ たので,これなら世界中の人に公開しても恥ずかしくないと思った。

  2. 郷土史を調べることによって,自分たちの身の回りにある文学作品を知っ たことや,身近な光景に対する感動を短歌にすることで,郷土の良さを認 識した。
    <生徒の感想>

    ・デジタルカメラでとった夕焼けの写真がとてもきれいだった。

  3. 「万葉集」という古典を教科書の中だけでなく,身近なものとしてとらえ 古典への親しみをもつことができるようになった。
  4. ホームページを公開することで,自校以外の方から感想をいただきコミュ ニケーションの楽しさと表現する喜びを味わうことが出来た。
    <生徒の感想>

    ・初めて電子メールで返事をいただいたとき,本当にみているのだなあ,と思い うれしかったです。

kabe ni hatta page
パソコン室の掲示

(2) 課題

  1. HTML文書にする作業をホームページ作成用のソフトを使って,作成にかか る時間を短縮したい。
  2. 校内のネットワークの中に「短歌」を位置づけることにより,短歌あるい はその他の表現衝動の発露の場を設定したい。
  3. 万葉集の他作品についての鑑賞など,学習活動に広がりを持たせたい。
pc to seito
マンダリンネットを利用する生徒

5 資料<ホームページに対する感想(一部)>

東京都在住Nさん
私も東京の夕焼けを見るのが好きです。でもなかなか綺麗な夕焼けはみ れません。これも環境のせいだと思います。私が子当どもだった頃はま だ東京の夕焼けは綺麗でした。いまでも夕焼けを見ると確かに溜息がで ます。本に素直に気持ちが出せているなぁーと感じました。
鹿児島市在住Iさん
乳の瀬の橋から眺めた夕焼けきれいですね本物は何十倍もきれいなんで しょうけど)。あんな歌を歌いたくなるのもうなずけます。「乳の瀬」 の橋という名前にも何か由来がありそうですね。調べてみるといいかも しれませんね。

鷹巣中学校 http://www-cn.edu.kagoshima-u.ac.jp/Tjhs/index.html

(実践者 鹿児島県出水郡東町立鷹巣中学校 田中 伊礎子)