「世界に羽ばたけ!?歌志内」歌志内中学校2年A組の歌志内紹介


この活動のねらいとインターネット利用の意図

 「情報の向こう側には必ず人がいる。」−この言葉を忘れて情報教育に関わっ てはいけない。

 友達や家族,先生,上級生や下級生,地域の人々など,最も身近にいる人たち と「豊かな関わり」を持つことができなければ,向こう側の端末の前に座ってい る人とまともな関わりを持てるはずがない。つまり,情報活用能力としての「情 報の判断,選択,整理,処理能力及び新たな情報の創造,伝達能力」は,特別活 動領域を中心とする「人との関わり方」をその土台とするはずである。この活動 は,「小集団(班)の協力」をすべての場面での前提として,「自分たちの歌志内 」を取材し,自らの手で編集し,クラスページ上に公開(発信),さらに取り組み について発表会で交流することを通して,情報活用能力を「実力」として身につ けることをねらいとしている。


1 学級活動「2年A組のクラスページをつくろう」(中学校2年 学級活動)

(1) ねらい

 生徒は生徒集団の中で様々な影響を受けながら,豊かな人間関係を築くための 力を身につけていける。そのような望ましい相互作用を生み出す「学級」は,具 体的な取り組みや活動を進める中で,実践と理論が統合され,生徒が協力や連帯 の価値に目覚め,仲間を組織する手だてを身につけ,自分たちが自ら高めていっ た学級に誇りや自信を少しずつ獲得しながら創り上げられる。

 自分たちの学級に生徒の目を向けさせ,一人ひとりの意欲を引き出す取り組み を展開するためには,以下の3点を強調しなければならない。

  1. 取り組む過程や取り組んだ結果へ成就感・達成感を持たせること。
  2. 取り組みの目標・見通し,期限とステップを明らかにすること。
  3. 取り組みの組織・システムが日常化していること。
 この3点の中でも 1 が重要であり,これまでも様々な実践が積み重ねられてき ている。すなわち,学級合唱や学級新聞などの,いわゆる「文化活動」と呼ばれ るものである。力を合わせて合唱をつくりあげる営みや,班ごとに新聞を作りな がら集団の矛盾に切り込んでいく活動を通して学級集団を高めていくというもの である。

 そこで「インターネット・クラスページづくり」を,その「文化活動」として 学級活動に位置づける。すなわち,班ごとに情報を収集・加工・発信することを 通して「班づくり」を進めることをねらう。完成したページは目に見える結果と なり,また,発信した情報に反応があれば,意欲的な取り組みがさらに期待でき る。社会的な注目度も極めて高く,加えて「今度はこうしよう,ああしよう」と いった工夫には限りがない。

(2) 指導目標

  1. 見通しを持って取り組みの計画を立て,日程や状況を把握しながら積極的 に活動できる。
  2. 自分の役割をよく理解し,アイディアを持って話し合いに参加しながら仲 間と協力してクラスページを完成させることができる。
  3. 班活動を進める中で生じる集団・班の課題の解決を図り,集団として高ま ろうとする姿勢を持つことができる。
  4. 取り組み(企画・取材活動)や製作活動を通して,情報活用能力を身につけ る。

(3) コンピュータ,インターネットの活用について

1)これまでの活用について

ア コンピュータリテラシー
 1年生と2年生の技術(前期)で,コンピュータの基本的な使い方につい ては履修しており,ほとんどの生徒がワープロソフトや描画ソフトを使う ことができる。
 教室(2年A組)には,PC-9800UXとネットワークに接続してある (Windows95動作)端末の計2台を設置してある。
イ インターネット利用の環境
 Windows95 の終了方法のみを説明し,「壊れないから,勝手にしてい いよ」と開放した。パソコン部の生徒をガイドにしながら,芸能・テレ ビ・ゲーム関係のホームページにアクセスすることが多い。もちろん, クラスぺージにアクセスし,自分や友達の写真を見て「変えてほしい」 と要求する生徒もいる。
自宅にインターネットにアクセスできる機器がある生徒はいない。

2)インターネット,クラスページ製作の「文化活動」としての有効性

クラスページ製作への意欲は,コンピュータリテラシーに依存してしまう。ペー ジづくりに終始する活動にしてしまっては,コンピュータをあまり得意としない 生徒の意欲を継続させることは難しい。そこで,班活動の鍵として「取材活動」 を取り入れる。企画によっては取材交渉を行い,デジタルカメラを持って,仲間 と一緒に取材活動を行うことは,もともと興味を持っているものに取り組むだけ に,どの生徒にとっても楽しい。  また,最終的には「ページ」という作品としてまとめられることもあり,
ア 一人一人のアイディアをいかしやすい。
イ アイディアやイメージがすぐに目に見えるものになるので工夫しやすい。
ウ 製作活動や取材活動の中で,一人一人の個性や持ち味を生かした役割分 担をすることができる。
 というように,「文化活動」としてのポイントを押さえることができる。

2 指導計画(これまでの活動)

活動計画 活動の内容・留意点
9月中旬 クラスページ立ち上げ (製作−学級担任) ・学級紹介,班紹介,担任紹介の作文

・これまでの学級活動の記録

9月中旬 学校祭・壁新聞 ・「インターネットをつかって歌志内を世界に」
9月13日 クライアント機の設置 ・機器使用上の注意事項−Windows95 の終了方法
9月下旬 自己紹介の製作 ・個人情報の保護,情報公開上の倫理についての学習「のせてはいけない こと」

・班活動の導入 自己紹介の項目についての話し合い

・デジタルカメラの使い方

10月上旬 メール交換 ・福島県葛尾村立葛尾中学校2年生(公開授業)へのメール発信 男女の協 力を生み出す学校祭の取り組みについて
10月上旬 「歌志内の紹介」のページづくり ・班活動「班員全員で活動する」

・企画,取材準備→取材→ページ製作

本時 発表交流会 ・ページの完成,発表の準備,発表,交流
その後 メール交換 ・イギリスの中学生とのメール交換(希望者)

3 本時の学習内容

(1) 本時の目標(評価の観点)

  1. 班員全員で協力しながら,ページ製作の作業を進めることができる。
  2. 班員一人ひとりの能力と制約に応じた責任のシェアにおいて,発表交流会 へ向けての体制を整え,準備を進めることができる。
  3. 人の話をよく聞き,全体流れを意識しながら発表交流会に参加することが できる。
  4. 取り組み(企画・取材活動)や製作活動を通して,情報活用能力を身につけ る。

(2) 本時の展開

活動内容 留意点


50
1 活動の予定,内容を確認する。
  • ページの完成(班活動)
  • 発表交流会の準備(班討議・班活動)




・プリントの配布
・班活動のポイント
2 班活動
  • ページの完成(班活動)
  • 発表交流会の準備(班討議・班活動)
・技術的支援
・班活動の指導


60
教室の移動


・機器の点検
3 発表交流会の直前準備
  • 直前準備(班活動)
・機器調整
 パソコン
 液晶プロジェクター
4 発表交流会
  • 班ごとの発表(全体活動)
  • 感想発表(班活動・全体活動)
    各班で各班への感想を考え,発表する。
・プリントの配布
5 活動のまとめ

(3) クラスページ http://www.utashinai-jhs.utashinai.hokkaido.jp/myclass/19962a/

(4) 発表交流会への取り組み(プリントを使いながら)

1)班発表の準備

 一人一人のアイディアや感想→班でまとめて→発表者が班を代表して発表する。

2)感想発表の準備

 各班の発表→一人一人の感想→班でまとめて→発表

4 評価とまとめ

(1) 活動の背景として

 平成7年3月,歌志内市の基幹産業であった炭砿が閉山となった。その閉山は 小学校の卒業式当日であり,この2年生は地域の大きな不安とともに小学校を卒 業した。

 「全国一人口の少ない市」である歌志内市は炭砿の閉山でさらに人口が減少し, 先行きが見通せない不安や閉塞感は,少なからず生徒に影響を及ぼしている。そ のなかで「神威岳(かもいだけ)」を中心としたスキー場や温泉,公園などの観光 産業が地域振興の命綱となっており,中学生を含めた全市民が,様々な立場で「 歌志内再生」への道を模索している。

(2) 学校祭 2年A組 壁新聞から

「これからの歌志内 歌中生に期待されるもの」
 1994年3月18日,歌志内の産業を支えてきた,空知炭礦が閉山しました。 そのため,多くの人々が職を失いました。そして多くの人々が,歌志内を離れて いきました。私たち2年生も,これまでに10人もの人たちが転校していきまい た。

 歌志内の街に活気を取り戻そうと,様々な取り組みやイベントが行われていま す。スイスランド計画や第4次歌志内基本構想も,これからの歌志内をどうして いくか,真剣に考えた結果だと思います。しかし,それらは大人が大人の力をつ かっての取り組みです。「私達中学生が,中学生の力と知恵で,何ができるか」 その問いから私達は始めました。(途中省略)

インターネットをつかって歌志内を世界に!

 では,私達中学生ができる街づくりへの貢献とはどんなものでしょう。

 歌志内中学校には,北海道でも最先端のコンピュータの施設があります。その 上,100校プロジェクトという全国的な企画に,北海道の中学校で唯一参加し ています。それは,インターネットで世界と歌中のパソコン室がつながるという ものです。

 私達の力と知恵でできること,それは,このインターネットを使い私達の街・歌 志内を,私達の手で紹介するというアイディアです。(途中省略)

 私達2年A組は,歌中のホームページの中に,学級紹介をのせました。それを 充実させる中で,歌志内の紹介をどんどん進めていこうと考えています。

(3) 成果

 「取材がすごく楽しかった」「みんなでできてよかった」「またやってみたい 」という感想がほとんどで,主体的で積極的な取り組みとなったとまとめること ができる。また,製作活動では活動参加への姿勢の違いが現れた。その矛盾につ いても「班づくり」の課題として生徒はおさえている。

(実践者 北海道歌志内市立歌志内中学校 加藤祐志)