共同利用企画「アジアー日本高校生インターネット交流プロジェクト」の実施


キーワード

 いやし 高校生への揺さぶり 真の豊かさ 偏狭なイメージの打開 アジア 圏での英語 アジア高校間ネットワーク 国際会議 
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図1 アジア交流ホームページ

1 はじめに

・日本の生徒にとっての意味

 日本の高校生は疲れている。豊かさの中で疲れている。日本は確かに経済的 な成功を治めた。しかし教育の世界には経済ほどの「激しさ」も「数量化」も 無いことから生徒たちの表情の曇りをとらえられないまま「学校」がつづいて いる。

 「若き老人」たちにアジアは大きな揺さぶりをかけてくれるものと期待した。

・アジアと日本

 日本はアジアと深い関わりを持ちつつその歴史を編んできた。しかしながら、 相互理解の手だてとして、直接的なものが無いまま、切り取られた情報によっ てお互いを理解しようと模索を続けてきた。そのような方法では当然意図的で はないにしろ、間違ったイメージを持ってしまう結果となってしまっている。 今、国際言語・英語とインターネットがこれらの状況を打ち破らんと高校生達 に新しい力を与えつつある。これらによってなによりも日常的な生きた交流が 可能になる。

2 目的

3 企画実施状況

3.1 今年度の計画

・インターネット交流、日本での国際会議開催
ネパールに重点を置き、交流の後日本に招聘し、高校生主導の国際会議を 開催する。
・各国の状況調査
自力でネットワークのもてる国、援助を必要とする国、さらに各国高校生 の英語力の調査をする。さらにプロジェクト推進のための協力者の開拓を 行う。
・国内の国際交流のためのネットワーク作り
大阪――名古屋――北海道――東京――名古屋――三重――大阪を結ぶ ネットワークを活用し、メーリングリストで連絡をとりあい、進行状況を ホームページに掲載する。( http://202.2489.160.2/nepal/)

3.2 各国の状況

・ネパール
 1996年春現地を訪れコンピュータを設置するとともに、インターネッ ト接続を行った。電子メールによる交流を基礎に、8月再び現地を訪れ、 9月日本でのオフラインミーティングの実施した。

接続校 ホーリーガーデン高校

UUCPによる接続。コンピュータ2台寄贈、通信料も日本側負担。現在電子 メールを使った交流を行っている。

・中国
 名古屋中日経済文化交流促進会を通じて中国国内の接続先、さらには日本 での会議招聘の高校を探している。8月下旬に中国側担当者が名古屋を訪 れた。そのときに今後活動内容の検討に入った。
・タイ
 現地インターネットプロバイダー、タイサポート団体(アメリカ)と連携 を取り現地で、接続可能な学校を探している。スクールネット・ジャパン の会員が現地を訪れ、64Kの専用回線を持っている学校 Suankularb Wittayalai Schoolとの接続を試みている。
・韓国
 平成8年10月、現地におもむき、韓国中央日報IIE(INTERNET IN EDUCATION)のスタッフと日韓交流について話し合った。韓国においても教 育改革の一環としてネットワーク整備に力を入れており、教育用ネットワー クが昨年整備されている。また中央日報( Joong ang Iibo)社が中心となっ て韓国版100校プロジェクトを推進しており、インターネットの国際交 流の基盤整備は着実に進みつつある。 ( http://202.249.160.2/nepal/korea.htm) (

http://202.249.160.2/article.gif

Kankoku Nite
図 2 韓国中央日報にて
・フィリピン
 日本に対するフィリピンのイメージは第二次世界大戦を扱った教科書のせ いもあってあまりいいものではない。しかしセブ市マクタン島は観光資源 を持っていることから多くの日本人が訪れ、交流の進めやすい地域でもあ る。

 現地を2回訪れ、テレクラスジャパンからのルマフォンなど寄贈した。 ファックスも同時に寄贈し、交流の準備は進んでいる。

Kiki wo Kizou
図 3 アルフョンサス高校に機器を寄贈
・インドネシア
 最近やっとスラバヤにもインターネットプロバイダーができた。現地の 高校からプロジェクト参加要請が届いている。

3.3 各国高校生の英語能力

 当然ながらインターネットの日常的な交流には共通言語が必要となる。今後 インターネットの利用により、各国の高校生のコンピュータリタラシーが高ま るだけでなく、英語を活用する場面が飛躍的に増大し、それらの国の英語教育 におおきな刺激を与えるものとなるだろう。

 英語会話能力の高い学校では、理科、数学なども英語で行うシステムをとっ ている。カナダで教科によってフランス語、英語を使い分けているように、ク ラスでの英語使用が日本でもそろそろ出現するのではなかろうか。

4 ネパール大作戦

 1996年9月、初めて高校生の手による国際会議を開始した。ネパールか ら高校生生徒2名、教員2名を日本に招聘し国内各地(大阪、東京、北海道旭 川、三重)で交流会を開いた。全くの草の根ボランティアの活動によるもので あるが、交流は生徒のみならず、参加した大人たちの魂をも揺り動かすもので あった。

4.1 国際シンポジウム

 生徒たちが中心となって企画した国際シンポジュウムは9月22日その日を 迎えた。

・場所、参加数

 NTT-Planet地下1階  総勢約80名参加

・内容

 西稜商業高校ダンス部による歓迎、祝辞、簡潔な自己紹介、ネパール側の民 族舞踊とビデオでのネパール紹介、ネパールの詳細紹介、日本の高校生紹介ビ デオ視聴、日本の教育制度・カリキュラム説明、旭川凌雲高校とのCUSeeMe、 日本の年間行事・学校行事説明、両国のエネルギー・環境問題説明

 シンポジウムは、発表、質疑応答、意見交換形式で進められた。通訳は南山 国際高校の生徒達が担当した。

Nagoya deno kaigi
図 4 名古屋での国際会議

・日本側生徒の感想

感想1
 ネパール企画を運営して、ネパールの事だけでなく、日本の事も客観的 に見ることができ、よかったと思います。学校とか国という狭い範囲にとらわ れず、広い範囲でものを見ることができるようになりました。今回一番、大切 だなあと思ったのはやっぱり言葉。日本に帰ってきて、はじめて自分の英語が 役に立った事に関しては、すごくうれしかったです。
感想2
 通訳は初めてで少し緊張したけど、とても楽しかった。いままでネパー ルという国が自分にとって身近な国になった気がする。日本の英語の授業を受 けても、あそこまでは、上手に日常会話ができることはない。
Nepal no odori
図 5 踊りを披露するジャスミンさん

5 教育効果

5.1 生徒の変容

・英語が国際標準言語として認識できたこと

 わざわざネパールから同年代の生徒がやってきた。話したいことはいっぱい ある。聞きたいことも。しかしながらそれを阻むものとし英語力の違いがある。 受験と教養のためだけの英語が、実際にコミュニケーションの道具として機能 しないことを体験した。さらにこの思いが今盛んにいわれている会話力修得へ の大きな動機付けとなったようだ。

 困る−学習−試し といった本来の学習形態をこの企画は生徒に与えたよう に思う。

・貧しさ豊かさについての認識

 日本は豊かである。数字から見ればそうである。交流によって人間にとって の幸せはそのような物質的なものだけでなく、内的な満足度、精神性、多くの 視点を日本側生徒は気づくことが出来た。

 「豊かさの中のまずしさ」このようなコメントが高校生の中から出てきた。 生活を見なすいい機会となった。

・自らの枠を破って(他校との交流)

 日本の学校教育の問題点として他校生徒との交流が全くない状況にある。さ らに同質の生徒を集め効率よく教育をしていくことをベースとしていることか ら、異質の集団に学ぶ機会がこれまで全くなかった。今回はこの壁を打ち破り 様々な学校の特色、個性を知るいい機会となった。

・国際人としての自覚

 なによりも自分たちが企画し、実行したこと、さらに使用言語英語として取 り組んだところに、これからの人生設計に国際的な視点を設定するいい機会と 成り得た。

5.2 教員が獲得したもの

・学校の枠を越える教師の連携

 今回12校の先生たちがともに力をあわせた。私学、進学校、職業高校、女 子校、男子校その校種は様々であった。さらにインターネット環境が違うもの の、生徒指導、さらにインターネットにたいするリタラシーも教師自らが動く ことによって身につけることが出来た。

 ネットワークを使って様々な学校に教師がお互いに情報交換する事を通して、 励まし合うことができた。このネットワークの機能がこの企画成功の大きな要 因となった。

・クラスの子――アジアの子――世界の子

 我々の活動は生徒の利益をまず第一として考えている。これまで校内の自分 の担当のクラスの生徒だけに目がいっていたが、ここにきて、その生徒の生涯 学習、いきる力を考えるとき、アジアの視点、グローバルな視点が必要なこと をこの企画から学んだ。

 ネットワークの活用によって新しい教育分野への気づきを得ることができた。

・スクールネット ジャパンの存在意義

 我々は大学、高校、中学等の教師が中心となっているスクールネットに属し ている。( http://tokaiic.or.jp/Schoolnet/)このような地域ネットワークと の連携によっ手、技術的支援さらには精神的支援を受けている。大学のネット ワークは高校のものに比べ遥かに進んでいる。そのような状況下で大学の先生 方のサポートは決定的な要因であった。事実ネパールとの回線接続については プロバイダーの有無、回線状況、これらの情報をすべて大学の先生方から受け た。

6 今後に向けて

Kankoku to kouryu
図 6 韓国とも交流協議
 我々の活動はボランティア活動である。日本の教育界においてボランティア とは“認知されない”組織を意味する。行政からの資金的援助がないばかりか、 勤務時間内の活動は禁止されている。

 このような状況の中で活動を継続していくため、夜、さらには日曜日に活動 することとなる。

 仕合わせ感を追求する組織が、忙しさのため自分たちの生活を犠牲にしてい る感がある。これらは早急に改善されるべきであろう。

名古屋市立西陵商業高等学校 影戸誠