100校プロジェクト 平成8年度実施状況


○ネットワーク利用状況

 ・本年度はクラブの時間を利用して、生徒が他校生徒とメール交換をするこ とを目標とし東京の桜ヶ丘女子中学高校との時間の調整をして、リアルタイム での交流を試みた。

 ・予算の都合でクライアントの増設はできなかったが、ネットスケープを利 用してのネットサーフィンはかなりの生徒ができるようになり、休み時間、放 課後を利用し、自分の受験校の選択の参考に、大学のホームページを閲覧して いる者もいた。

 ・彼岸花の開花調査、特産物調査等のメールによる調査依頼の協力をした。

 ・他のサイトからリンク依頼が複数届くようになったので、公的な立場であ ることも考慮した上で、できるだけ地域との提携をはかっていった。

○8年度の成果と課題

<活用方法と教育的効果>

 ・昨年度の課題でもあったのだが、高校生としての情報発信という点で生徒 自身の手によるホームページの作成を目指した。しかし現在ひな型ができあがっ てはいるが、まだリンクするまでは至っていない。これに関しては、ツールを 使わずHTMLで書かせていたので、ブラウザの急激な進歩にやや遅れをとっ てしまい、例えばここをフレームにしたいとかジャヴァをという意見が出てく る度に、またそこから始めるので現状での進展がたいへん遅くなってしまって いる。しかし、こうした急激な進歩の流れを実感することは、メディアリテラ シーの育成という観点では、生徒自身がデジカメやスキャナーを使って画像を 取り入れたり、HTMLを勉強するなど、徐々にではあるが教育的な効果をあ がてきているようである。

 ただ、メールを利用した高校生の意識調査を、当初の計画では実施する予定 であったが、教員がある程度は中間に入ったほうがいいという配慮が、かえっ て自由な場での意見交換という形にならず、生徒側の反応は鈍かった。また、 個人情報保護条例の点での問題も指摘されることがあり、これネックとなって いる。

 ・小学生や中学生とは違う高校生として活用を考えたとき、どういった方向 からアプローチしたらよいかを、昨年同様模索していた。音楽を利用した教育 レベルでのインターネットの波及を目指すという当初の目論見も、結果的には 本校では残念ながら、2年間トンネルを走り続けて脱出することができず、時 間だけが経過してしまった感がする。本校独自の何か新しい形態の音楽活動を、 世界に向けて発信しようと思っていたのだが、著作権や上記の個人情報保護条 例の問題もあり、成果はあまり得られなかった。

<技術的課題>

 ・本校にとってはこれが一番の問題で、インターネット環境における音楽情 報の伝達方がいまだ確立されておらず、データ作成のフォーマットの選択・使 用ハードがまだ完全に一般性を持つレベルに至っていないため、演奏データを どの程度の精度、長さ、情報量で作成するかという技術的問題を抱え、音楽活 動により他校との交流という件は断念せざるを得なかった。特にネットを利用 した合奏やグラフィック作品の共同製作については、1月23日に行われた INTERNET MIDI LIVE などにも参加し研修してきたが、実用のレベルには至っ ておらず、本校の現在のハードのレベルではやや無理があることもわかった。

 ・本年度も現実はOSの不調に悩まされた。管理者の勉強不足もあり高校生 が対象なのでまたできるだけオープンな環境を目指したこともあって、実際に は利用する時間より調整に追われることが多かった。OSの環境も当初 Windows 3.1 であったが、今の流れでは Windows 95 (97) 環境の方が利用し やすいようで、こうした変化にも柔軟かつ迅速に対応していく必要があること を痛感した。実感として、不特定多数の生徒が自由に使えるようにすればする だけ、アクシデントも増えるような気がした。

○プロジェクトに参加して

 ・インターネットを利用した、音楽の情報発信の核となることが目標であっ たが、正直なところ惨敗であった。ただ、成果はでなかったが結果は残った。 このことについて触れてみたいと思う。これは決して言い訳ではなく、これか らのインターネットのさらなる発展の中での一つのプロセスであり、順風満帆 全てがうまくいくわけではないことから考えれば、こうした事例にも意味はあ ると考えている。今後全国的全校レベルでのインターネットの普及を考えたと きに、本校で抱えているような問題はどこかで起こり得ることなのである。 (と思っているのは、私だけだろうか?)

 まず、考えなくてはいけないのは、生徒と直接関わることの多い教員の技術 レベルの問題である。研究発表会等でプロジェクト参加校の先生方の成果発表 を聞かせていただいたり、ホームページ・メール等により、大活躍されている 方々のご尽力は、想像を絶するものかと思われる。好きこそものの上手なれと いうものの、あのレベルまでいくには、個々でのそれなりの努力があったから ではと思っている。

 そうした中で、本当にあったことなのだが、「ファイルを添付しました。」 と軽く言われてはみたものの、当初、添付ファイルの意味がわからずあたふた としていて、私には添付という文字の後に?が何十も重なっていたのである。 これは自分自身の勉強不足と言われてしまえばその通りなのだが、ここで問題 にしたいのは、将来的にはコンピュータは一人1台といわれているこの環境の 下、全国の先生方の中で、添付ファイルの意味がわかる方が、いったい何人い らっしゃるのだろうか。

 川崎の総合科学高等学校の宮澤先生が研究発表で述べられていたのだが、コ ンピュータの先進国では、それぞれにコンピュータ教育に関して分業制が成り 立っており、システムの管理の専門家が、公的な機関や企業から派遣されたり していて、ドメイン管理等を一括して行っている。学校の先生は、こうした業 務とは別にコンピュータを使って教えることに専念している。日本では、学校 のなかではコンピュータに詳しいとされている一部の先生に多くを任せきって いることが多いようで...といった旨の内容だったように記憶している。

 プロジェクトに参加されている学校の先生方の多くが、やはり同じような状 況でそれなりに苦労をされて、ここまできているのではと思うのである。中に は、自分でコンピュータやケーブルをもらってきて、校内のLANを組んでし まった先生もいらっしゃるようである。この点に関しては私個人、ただ頭を下 げるだけである。ただ、ここで問題にしたいのは、すべての学校でこうした多 大なる尽力を犠牲にしなければできないのかということなのである。パイオニ ア的なものは確かに必要であるが、テレビのように中身はよく分からないけれ ども、自然に使える環境にならないと、一般的な普及は難しいものと思われ、 こうした点をもっとクリアにしていかなければと、自分の経験で痛感している。 自分のできなかったことを棚に上げて他人のせいにするつもりはないのだが、 もう少し何とかならないものだろうか、教員全員のレベルアップとサポート体 制の確立も早急に必要なものの一つでは、そんな気がしてならない。