100校プロジェクト 平成8年度実施状況


○ネットワーク利用状況

1 利用の概要

(1)設備の状況

 本校では、職員室にサーバ1台、コンピュータ室にクライアント1台という CEC貸与の状態での活用を続けた。ただ、昨年8月になって、ビデオプロジェ クターをコンピュータ室に設置できたので、授業で全員一斉にWWWを見ると いう活動は非常に楽に行えるようになった。

(2)一斉授業での利用形態

 授業での利用については、コンピュータ室で教師がクライアントを操作し、 生徒に説明しながら見せるという活動が日常的に行われている。この場合は視 聴覚教材の一部としての利用の形態になるだろう。

 WWWは、生徒一人ひとりが操作するというわけには行かないが、電子メー ルの利用については、コンピュータ室に設置してある20台のdosマシンを 利用して、各自が自分のメールを作成し、教師のアカウントを通じて発送する という形式で生徒の個別活動が可能である。具体例にある大阪府知事とのメー ル交換や、海外の学校との文通活動も、このように、DOSテキストファイル を使って行った。

(3)課外活動・休み時間など

 課外活動では、情報処理部員を中心に個人のWWWページの作成や、メール 交換などを行っている。情報処理部では、基本的に代々の部長1人にアカウン トを与え、全員がそのアカウントでのメールの送受信を行っている。不自由な ようだが、現実に操作できるマシンが一台なので、数人がマシンの前に集まっ てあれこれ話しながら操作するというのが通常の活動形態であり、特に、全員 にアカウントを増やす必要は感じていないようである。

(4)職員の利用

 職員室においては、昨年の11月にHUBを増設したので、LANケーブル を通じて、接続ができるようになった。現在4名の教員が、自分のコンピュー タをLAN接続してクライアントとして活用している。もちろんWWWサーバ を見ることや、メールの利用なども積極的に行っているが、それよりも、職務 の内容上、ファイルやプリンタ共有など組織内LANとしての活用が主であ り、その面で、さらに増設を希望する教員が多い。ただ、LANボードの購入 などが自費でという条件から、人事移動確定後にというひとがほとんどで、来 年度当初には10名程度がLAN接続できる見通しである。

(5)その他の利用

 接続学校が少ないという現状から、本校以外の教員研修への利用も幾度かあっ た。坂出市教育研究所主催の研修会や、坂出市幼稚園教育研修会、香川県主催 の10年経験者研修、20年経験者研修の会場となり、その都度、インターネッ トのデモを行った。ただ昨年後半以降は接続学校が急増したこともあり、この 種の利用は減少傾向にある。

2 利用の具体例

(1)社会科での利用 日本の諸地域

 地方自治体のサーバを中心として地域学習の導入に用いている。また関西地 方の学習にあたっては、学習のまとめとして大阪府への感想をメールで作成し 大阪府知事とメール交換をするなどの活動も行った。

(2)選択社会科 国際理解教育(英語科とのTT)

 様々な試行錯誤があったが、2学期以降アメリカオハイオ州のセントジュリー 校のコンピュータ選択学級との間でメール交換が恒常的に行えるようになり、 国際理解教育を進めた。この取り組みは英語科とのTTを試験的に実施した。

(3)選択理科での利用 酸性雨プロジェクトへの参加

 酸性雨プロジェクトへの参加を、選択理科で行った。ただ、日常活動を行わ なければならない関係上、理科選択者のなかからさらに希望者を募って、活動 を継続した。

(4)英語科での利用 英語メールの作成による文型練習

 1年生での基本文型の学習の応用として、簡単な英文を作成し、ネイティブ の国民に読んでもらうという学習を行った。学習が進むとともに、自分の表現 の幅が広がっていくことが実感でき、有益な活動であったが、学習の進度とメー ルの交換とが必ずしも一致するとは限らないので、限界も感じさせられた。

(5)美術科での利用 他校作品の鑑賞授業と感想文の作成

 他校のWWWの中から、生徒作品を公開しているものを選んで、鑑賞授業の 教材として生かした。生徒の中からは、作品の鑑賞を通しての他校との交流を 希望する声があがっているが、まだ実現はしていない。

○平成8年度の成果と課題

 平成7年度は回線の維持とサーバの構築が精一杯であったのが実状で、イン ターネットに繋がっているということだけですばらしいことのように思ったも のである。本年度は接続も安定したことでもあり、実際の教育活動の場で、ど のような利用方法があるのかを具体的に研究するのが目標であった。特に、授 業での活用に重点をおいたので、各教科での導入方法について、思いつきも含 めて様々な試行錯誤がなされた。中には失敗に終わったり、継続できなかった りして挫折した企画もあったが、研究の課程で、すべての教員がインターネッ トに関して一定の知識を得ることができたことが成果であると考える。インター ネットをいたずらに万能のメディアとしてとらえるのではなく、失敗を通じて、 できること、できないことについて判断する能力を身につけることができた。

 今後、クライアントの増設、学内のLAN整備など、課題は多いけれども、 インターネット利用について養われた教員の素養は貴重な財産であると考える。

○100校プロジェクトに参加して

 100校プロジェクトは、インターネットという今までにないメディアを研 究対象としただけでなく、その研究方法も従来にないものであった。従来の研 究指定では、学校内だけで研究グループを組み、自分たちの内輪で研究を深め るのが常だが、メーリングリストを通じて全国の学校や、その他の機関と連携 を図りつつ、まさに、100校での研究が深まった。ひょっとすると、研究対 象としてのインターネットよりも研究手段としてのインターネットの方が今後 の学校教育をリードするファクターとなるかも知れないというのが、100校 Pに担当者として参加した実感である。