共同利用企画「Me and Media」の実施


m&m クラスの目的

 Me and Media クラスは1992年に初めて同志社国際中高等学校で開講さ れた。このクラスでは、意味というのは人間によって作り上げられたものであ り、生徒自身も人間なので意味を作り上げる事ができるという新しく、広い範 囲でメディアを見ることを手伝うためにデザインされたものである。言い換え れば、誰が定義をし、なぜ(何の目的で)定義されたかを考えずに受け取るこ とのないようにするためである。

権力を与える

言い換えれば、このクラスは知的と技術的、個人的と社会的両方の権力を与え るクラスであった。このクラスは意味の創造者ということに気付かせようとす るものであった。では、”メディア”はどう当てはまるのであろう?まず、意 味について話し合うことによって、意味というのは個人的、社会的に定義され ることに気が付くのである。しばしば意味というものはメディアによって情報 を伝えることとそれを作り出すといった宏いセンスで作り出されている。

Cooperative Design Center(共同デザインセンター)の開館

 1991年9月に新しい Cooperative Design Center(CD Center)が完成し た。CD Center は Me and Media (m&m) のクラスで行なわれる様な探究のため に特別作られた。個人的やグループでの勉強のために16台のノートパソコン が教室の後ろの棚に収納されていた。グラフィックの編集をするために5台の パソコンも利用できるようになっていた。この教室には”前”がなく、先生や 生徒、誰もが発表できるように設計されていた。コンピューターは(とても遅 い!)ネットワークに接続されており、どのコンピューターからもアウトプッ トが論理上スクリーンに映し出され、教室内の誰もがその情報を読めるように なっていた。生徒達は事前に研究し、それをクラスメートに発表することが望 まれていた。

初期のクラスワーク

 初めの何年間は生徒が自分や商品について広告を作ったり、学校生活のビデ オを作ったり、Rastede, Germany のある学校と電子メールを交換したりして いた。

 テレコミュニケーション (電気通信)初期の段階ではモデムに接続されて いるコンピューターが1つしかなかったため、生徒は他のコンピューターで手 紙を打ち、先生に送り、先生はその手紙をまとめ、ドイツに電子メールの”小 包”として送った。同様に、ドイツからの返事が来たとき、手紙をフォーマッ トしなおし、印刷し、生徒に配った。クラスアドレスは1つしかなく、これは 私のアドレスであった。従って、私が来る手紙と送られる手紙両方の出入り口 であった。

生徒への影響

 当然、これは生徒に何らかの影響を与えた。それは手紙を書き、親に渡し、 書き直されて送ってもらっているようであった。この形式ではプライバシーが なく、所有権があまり感じられなかった。それでも生徒達は興味がある主題ー 音楽、映画、テレビ、メディアの力と影響ーについて同年代の人とコミュニケー トができるということに興奮していた。私たちは学校のビデオを作り、 Rastede のクラスと交換した。 Cooperatuve Design Center

新しい企画の事前研究

 本校が100校プロジェクトに選ばれたとき、初めの活動の1つとして、誰 にでも電子メールを開くということをした。初年度では300人の生徒と先生 がアドレスを持っていたが、積極的にそれを使っていた人の数はそれほどでも なかった。2年目ではこの数がほとんど倍になり、今では全校の約半分になっ た。電子メールを個人的、またはクラスプロジェクトで積極的に使用している 人の数は増えている。

個人の電子メールアドレス

 新しい企画について計画を立てていたとき、1つの興奮した要因は生徒一人 一人が自分のメールアドレスを持つことができるということだった。私たちは これは学習環境と実際の学習に大きな影響を与えることになりそうだと思った。

ヨーロッパの学校のカンファレンス

 1996年の3月に私はヨーロッパでミーティングに参加した。それは Leuven, Belgiumで開かれた European Schools Project (ESP) カンファレン スだった。このときに私はヨーロッパから参加している先生方100人に M&M プロジェクトを紹介した。私はもうすでにRastede、Germany の学校の先生で ある Jean Saefken からあと一年この企画を続けたいと興味を持っていただい ていた。私の発表の後、この企画に参加したいと言ってきた先生が後3人いた。 エストにアからは Kalev Lashberg, オランダからは Marjo Bollen,とスウェー デンからは Elisabeth Lundkvist であった。Kalev 以外、全員高校の英語教 師であった。Kalev は教頭先生とコンピューターの先生であったが、英語が話 せ、この企画のために彼の学校の英語教師にコンタクトをとることを計画して いた。

企画を技術的にアップグレードする

 企画をアップグレードしようという意図はもうすでに Jean と話しをしてい たが、彼女の学校はサポートが足りないという問題が生じた。Jean はデジタ ルカメラやより多くの電子メールアクセスといった機材を増やそうとしていた が、これについては確信が持てなかった。どうあろうと3年間もの関係があっ たため、私たちの企画への参加を断わることはできなかった。

1996ー1997年の M&M プロジェクト

 Leuven でのミーティングで、Kalev, Marjo, Elisabeth と私は1996ー 1997年の新しい企画のアイディアについて話し合うミーティングを開いた。 最も熱中していたのは去年1年間マルチメディアを使って仕事をし、これを続 けたいと思っていたElisabeth (スウェーデンの)であった。

“メディア”を焦点に

 私たち3人は“メディア”の意味、 “メディア”の重要さ、と “メディア” の創造をこの企画の焦点にすることに同意した。Kalev はお互い連絡を取るた めに教師のメーリングリストをつくるとボランティアしてくれた。私たちは自 国へ戻り、計画を確立させようとお互いに手紙を書き始めた。

どのように始めるか

 初めに処理しなければいけない問題として、新学期の問題があった。日本で はこれから新しい1年が始まろうとしていたが、ヨーロッパでは3学期を終え ようとしていた。Elisabeth は来年も同じ生徒を教えることになっていたため、 私とすぐにこのプロジェクトを始めることを決心した。Marjo, Kalev, と Jean は9月から参加することを決めた。

始めるにあたって

 ヨーロッパから帰国した後、Kalev から教師のためのメーリングリストを設 立しているところだというメールをもらった。それから4月14日に Elisabeth から以下のような内容の手紙を受け取った。
. . . 1. 技術的にうまくいくか知るために電子メールをください。
2. 次のステップは生徒が自分自身を紹介することです。(私の生徒はみんな に読んでもらうためのホームページを作っています。デジタルカメラも使 いました。)
始めましょう!日本のニュースを待っています。 . . .
 これは少し早すぎると思い、15日に次のような返事を送った。

 明日(火曜日)初めてクラスの生徒に会います。生徒は30人います。ホー ムページ発表というアイディアは良いが、そこに至るまで少々時間がかかりそ うです。なぜなら、どのような生徒がいるかも知らないし、メディアやテクノ ロジーについてもまだ話しをしていないからです!!!

 その上、ホームページは(もしかすると?)電子メールに比べて非個人的で あり、技術面でも教えるのが難しいため、とりあえず電子メールの交換でよろ しいですか?あまりにも原始的ですか?

 私たちもデジタルカメラがありますのでホームページという面はとても良い と思います。生徒一人一人が個人でページをつくるのですか。それとも二人、 または小グループで作るのですか。こちらの状況では5ー6人のグループで作 ると思うのですが、一人一人メールアドレスをもっています。

 すぐに生徒をペアにしますか?意見を聞かせてください。

パートナーの先生が姿を消す

 Elisabeth からはその後6週間何も連絡がなかった。私はどのようにして企 画を進めるかについて困っていた。6月3日にやっと”電子メールでトラブル が発生したが、もう治ったようです”というメッセージをいただいた。お互い の生徒をペアにしーお互い生徒が30人いたー電子メール交換を始めた。彼女 は私同様、生徒一人一人にID を渡すことができ、生徒は交換を始めた。

 これが私たちの m&m プロジェクトの始まりだ!

計画と現実

 注:計画と実践を分けず、比較したほうがおもしろいと思いましたのでこの 形をとることにしました。

計画されていた日程:

 ダッシュ(−)で始まる行に書かれたものが私たちの計画されていた日程である。これを、現実−実際の事の運ばれ方−と比較してみるとおもしろいと思った。実際の日程はボールドな文字で書かれたほうである。

*1996年8月

−日程の詳細が決まる予定。
−教師用のメーリングリストが完成する予定。
 教師用のメーリングリスト− SCHOOL.MEDIA@LISTS.UT.EE−は予定通り、8 月に作られた!しかしながら、このMLには数多くの難点があった。企画の途中 で使えなくなってしまった。また、企画をやっている間ずっとサーバーから問 題があるといって Elisabeth と Jean はリストにメールを一回も送りはしな かった。

*1996年9月

−生徒は自己紹介文をお互いに送り合う予定。
−以下のような様々なトピックの討論が始まる予定。
 9月に生徒のグループ10個が決められ、それぞれに惑星の名前と“太陽” がグループ名として与えられた。これらの10個のグループはメール交換を始 めたが、なかなかスムーズにいかなかった。なぜなら、何人かはもうすでに自 己紹介を送ったのに、後からグループに入って来た生徒もいたからである。そ れでも、9月末までには全員が紹介を終えていた。しかし、メディアトピック についての話し合いはスムーズに進行しなかった。(詳細な記述は次のセクショ ン参照)

*1996年10月

−生徒は学校生活のビデオを送り(普通郵便で)、そこでは友達、先生、 本、テレビ、“新しいメディア”といった自分に大切なメディアについて 話し合う予定。
 ビデオ交換の計画は計画通りに始まったが、実際の交換は10月より後にさ れるものとなった。ドイツは第1号で12月に送ってきた。何週間後かにオラ ンダのビデオが届いた。日本は1月に出し、スウェーデンもそうであった。エ ストニアはビデオをつくっていない。
−生徒はグラフィックなイメージを電子メールで送れるように試みる予定。
 先生方は12月と1月にサウンドとグラフィックファイルを送ろうとしたが、 3人だけがファイルを開くことができ、1人だけが生徒にこれらのファイルを 作らせる能力をもっていた。

*1996年11月−12月

−"Me and Media"の ホームページが各サイトに作られる予定。
−ホームページの焦点は、9月と10月中に話し合った“メディア”の様々 なアイディアを発表すること。
 ホームページを作るのに必要な時間全部にコンピューターを使うことができたのは京都のクラスだけであった。スウェーデンとエストニアで少しだけ制作がされただけで、他のクラスはホームページを作ることに対して何もしていなかった。

*1997年1月

−パートナー校のアイディアやホームページに対する意見が交わされる予定。
−異なるメディアがどう私たちにアイディアを発表するかについて考える 予定。電子メール、普通郵便、電話、ファックス、ビデオ会議、ホームページ の使用。
−入手可能な最高の技術で生徒はビデオ会議に挑戦する予定。
 スウェーデンと日本の先生が CU-SeeMe 技術を使ってビデオ会議をしようと 話し合ったが、12月に行われた試みでスウェーデンの学校の設備不足のため 失敗に終わった。1月末でスウェーデン校との連絡が切れた。

*1997年2月

−パートナー校とアイディアについて話し合ってからホームページを完成 させる予定。
−プロジェクト評価:何を学んだか。この企画を来年どう改善するか。
 京都のクラスはホームページにかなり時間をかけた。他の学校からは一切フィー ドバックがなかった。評価は京都の生徒によってされ、オランダとスウェーデ ンからも何通かは評価がきた。一人の先生が彼女の評価を送ってきた。

 このプロジェクトの本当の良さを知るためには、m&mクラスのホームページ をアクセスしてください。

http://www.doshisha-intnl.tanabe.kyoto.jp/projects/m&m97/index.html

同志社国際中高等学校 Hillel Weintraub
(翻訳:同志社国際中高等学校 石川 栄子)