大阪市立聾学校

100校プロジェクト 平成8年度実施状況


ネットワーク利用状況

  1. 校内での教職員の組織作り
    平成7年度の活動を更に前進させるために校内での教職員の組織作りに取り組みました。より多くの教職員がインターネットについての理解を深めることが、生徒の活動にいかされてくるという考えのもとに、次のような計画で研修・組織作りに取り組みました。
  2. 生徒に対する取り組み
    生徒一人ひとりが自発的にインターネットを活用できるよう、養護・訓練や授業の中で、カリキュラムに基づいた指導を進めてきました。
  3. ホームページ
    1997年2月をめどにホームページの更新作業を行っています。聾学校として特色のあるホームページをスローガンに、指文字や聴覚障害児の福祉制度の紹介などを新たに取り入れ、生徒の学習の様子や作品がいきいきと感じられるようなページを目標に取り組んでいます。主に次のように更新を計画しています。


  4. 共同利用企画への参加
    • 酸性雨調査
      平成7年度に引き続いて理科では酸性雨調査に取り組んでいます。現在の状況を報告します。

      降雨ごとの酸性雨調査を平成7年度10月から酸性雨調査のホームページにデータを送り、掲載しています。今後とも調査とデータの公表は続けていきたいと思います。また、理科教育の一貫として、生徒が参加して酸性雨の調査と公表ができればと思っています。

平成8年度の成果と課題

平成8年度は校内組織を確立し、インターネットを活用した教育活動について、より多くの教職員が関わってきました。個人情報保護などについても、多くの目で検討できました。
  1. 電子メール実習
    • 養護・訓練、授業の中での取り組み
      昨年度の反省に基づき、本年度は高等部の生徒全員にメールアカウントを発行し、メール実習を行いました。最初は校内だけでメール交換をし、メールの概念について理解を深めました。普通の郵便と比べて電子メールは何が便利なのか?ポケットベルやファックスと比べてどうなのか?具体的に考えさせてきました。またネチケットについても体験的に学ばせました。
      今年度6月より奈良県立高取高校のボランティア部の生徒と、メーリングリストを通した交流を始めました。'97年1月末で141通のメールをやりとりしてきました。生徒にとって電子メールが「第三の耳」になって欲しいと願っています。そして聾教育の大きな課題である「正しい書き言葉の習得」「豊かな言葉の獲得」ができるよう取り組んでいます。同年代の健聴の高校生と交流することによって、視野を広げることができたと思います。夏休みを利用して奈良から本校へ招き、よりいっそう交流を深めました。
    • 問題点について
      電子メールを使える場所が学校内に限られていることがあります。ポケベルやファックスなどが生徒の生活に密着して利用されているのに対し、電子メールは自宅から接続できないこともあり、利用は主に授業の中だけに留まっています。
  2. ホームページ実習
    • 養護・訓練、授業の中での取り組み
      インターネット上に溢れるさまざまな情報の中から、自分に必要な情報を得るために、サーチエンジンによる情報検索法を学習しました。はじめは自分が興味のあるキーワードをたよりに検索をさせ、徐々に学習に必要な情報の検索法へと進めています。 また、生徒自らの手で必要な情報がキャッチできるよう、サーチエンジンの使い方についても学習しました。自分達のことについても情報発信ができるよう、ホームページの作り方についても学習し、現在は今年度2月の作品展に向けてホームページを作成中です。
      またインターネット上の各種イベントを授業に取り込むことも試みてみました。JASが公募していた飛行機の機体デザインでは応募総数10,364名、42ヶ国にわたって応募があった中で、本校として1名、JAS賞をいただきました。
    • 問題点について
      情報公開の流れのもと、個人情報の保護も広く認知されてきました。教育の中で生徒の活動をインターネット上で公開することが、個人情報保護の精神に照らしてどうなのか、慎重かつ大胆な取り組みが求められています。さらなる検討が必要です。
      また今後、生徒がホームページ作成に本格的に取り組んだときに、著作権(知的所有権)・肖像権などの保護についての指導が必要になります。
  3. CU-SeeMe実習
    • 今までの取り組みの様子
      雑誌などで紹介されているサイトに接続し、テレビ電話を経験する授業に取り組みました。回線速度が細いため、まだカリキュラムに位置づけた指導までには至っていません。しかし聴覚障害を受けた生徒にとって、顔の表情がインターネット上で見え、手話によるコミュニケーションの可能性を感じたことは大きな成果となりました。
    • 問題点について
      他校と共同企画で授業を取り組む場合、日程調整や事前指導が難しく、反対に日常的に取り組もうとすると無目的な授業になりやすい部分があります。
    • 技術的課題
      端末の台数の不足から、授業で取り組みにくい、授業準備の時間がとれないなどの問題が起こっています。
      また回線速度の制限が授業の内容にまで影響を及ぼし、ホームページを授業で活用したくても、待ち時間が生徒の興味をそぎ、予定の内容まで進めないこともあります。



  4. その他の問題点について
    • インターネットを通じて、又は雑誌などの付録のCD-ROMなどから手に入れる場合もありますが、シェアウェアと総称されるプログラムに対するサポートをどうするかという課題もあります。学校予算ではなかなか支払いを認めてもらえず、個人のポケットマネーで解決しているケースが多いと思います。シェアウェアの中にはこのあたりの事情を考慮してか教育機関での利用に限り、料金は無料というありがたいものもありますが、いずれにせよ優れたソフトウェアの資産をより充実させるためにも予算での確保が求められています。またこのような料金の支払いもしていくことがネットワークの倫理教育にもつながっていくので、生徒にもこの精神を指導していく必要があります。

    プロジェクトに参加して

平成7年度、8年度の2年間にわたって100校プロジェクトに参加しました。2年間の取り組みの中で一定の成果を得ることができたと考えています。