今年度は生徒が休み時間などに自由にインターネットを利用できる環境を用 意した方がよいと考えた。10BASE−Tケーブルを用意し、「コンピュー タ教室」と廊下へケーブルを延し、必要に応じてクライアントを移動できるよ うにした。
廊下にクライアントを設置したところ、休み時間に興味のある生徒が集まる ようになった。生徒の多くが興味をもっていたものは「芸能人の情報」や「テ レビ番組の情報」であるが、特に人気のあるテレビのバラエティー番組のホー ムページが更新される日は、そのホームページを見る生徒でクライアントの前 に人だかりができるほどだった。
また、中にはアメリカにある「聴覚障害者のための大学」のホームページや 海外のろう学校のホームページを興味深そうに見ている生徒もいた。情報が英 語で書かれているため英語の教員を呼んで翻訳してもらうこともあった。
興味を持って見ているホームページを「ブックマーク」に登録して簡単に見 られるようにする工夫も生徒が自然にするようになってくるなど、生徒のイン ターネットの関心は高まってきている。
「コンピュータ実習」では、wwwを利用してホームページを見ることから 授業を始めた。「100校プロジェクト」参加校の「大阪市立聾学校」や「神 戸聾学校」をはじめ、いろいろな学校のホームページを見て、「これから自分 たちのホームページを作っていこう」と提案した。まず、ワープロソフトでの 「自己紹介づくり」をして、文字だけのホームページを作り、それにデジタル カメラでとった画像を「図形ソフト」を利用して取り込み一人一人のホームペー ジを完成させることができた。しかし、完成させたホームページを公開するこ とに関しては「恥ずかしい」という反対の声も強く、公開はしなかった。
「電子mail」の利用も考えた。しかし、生徒は「知らない人に対してど のようなことを書いたらいいのかわからない」というので、適切な交流相手探 しの必要性を強く感じていた。また、聴覚障害児の場合は文章の読み書きが不 得意な生徒も多く、「電子mail」に対する抵抗はより一層強かった。
しかし、生徒の中には「携帯用文字端末」を使いこなし、友達との間で文書 のやりとりを行っている生徒も多い。友達の間ならmailのやりとりができ るのではないかと考え、まず「コンピュータ教室内」のLANを使ってmai l交換ができるソフト(富士通BSC社製「キャンパスリンク」)を導入した。
コンピュータ教室内のmailのやりとりは、生徒に好評であった。友達に 見られないように本などで隠しながら一生懸命mailを書いているようすは、 「ワープロの練習」では見られない姿だった。この取り組みを徐々に広げるこ とで、インターネットの「電子mail」につなげていきたい。
クラブではインターネットに興味がある生徒に自由にクライアントを操作さ せた。2〜3回操作してみると面白くなったようで、インターネット関係の雑 誌を見るなどして、自分で見たい情報を探してくるようになった。HTMLで 自分の興味のあるホームページの目次を作る生徒も現れた。
「ホームページの作り方」を少しずつ教えると、自分のホームページを作る 生徒もいて、文化祭では「学校のホームページ」とともに公開することができ た。文化最後もホームページ作りを続けている。
今後の課題は「インターネットの活用」である。特に「電子mail」の利 用は、適切な交流相手を見つけることで可能になるので、ぜひ行っていきたい。 また、各教科で教材として使えそうなホームページをリストアップすることで、 インターネットに詳しくない教員でも授業でインターネットが簡単に活用でき るようになる。このようなインターネットを活用するための準備も今後の大き な課題である。
インターネットの利用は2年前とは比べものにならないほど増えてきた。一 般の個人でもホームページを作成するようになった。実際、生徒の兄弟でホー ムページを作成している人もいる。今後もインターネットは急速に発展するだ ろう。そのような中で、学校でもインターネットにアクセスできるような環境 を持つことが、不可欠になるのは明らかである。その準備のためにも、インター ネットの活用の研究をつづけることは重要だと思う。