100校プロジェクト 平成8年度実施状況


○ネットワーク利用状況

・生徒が自由に使えるインターネットへ

 本校ではインターネットのサーバとクライアントは教員の控室に設置してい る。はじめは教員がインターネットを利用して使い方を覚え、授業での活用法 を考える必要があると思ったからだ。また、授業は生徒をグループ分けし2〜 6人程度で行われているため、必要に応じて設置してある部屋に生徒を入れて 授業すれば、インターネットを利用することは可能と考えた。しかし、実際に 生徒を移動させインターネットを使わせることはかなり困難であった。

 今年度は生徒が休み時間などに自由にインターネットを利用できる環境を用 意した方がよいと考えた。10BASE−Tケーブルを用意し、「コンピュー タ教室」と廊下へケーブルを延し、必要に応じてクライアントを移動できるよ うにした。

 廊下にクライアントを設置したところ、休み時間に興味のある生徒が集まる ようになった。生徒の多くが興味をもっていたものは「芸能人の情報」や「テ レビ番組の情報」であるが、特に人気のあるテレビのバラエティー番組のホー ムページが更新される日は、そのホームページを見る生徒でクライアントの前 に人だかりができるほどだった。

 また、中にはアメリカにある「聴覚障害者のための大学」のホームページや 海外のろう学校のホームページを興味深そうに見ている生徒もいた。情報が英 語で書かれているため英語の教員を呼んで翻訳してもらうこともあった。

 興味を持って見ているホームページを「ブックマーク」に登録して簡単に見 られるようにする工夫も生徒が自然にするようになってくるなど、生徒のイン ターネットの関心は高まってきている。

・「コンピュータ実習」の授業での取り組み

 本校に入学してきた本科1年生全員に対して「コンピュータ実習」という授 業をしている。平成7年度は「BASIC言語の学習」、「図形ソフトの学習」、 「ワープロソフトの学習」を別々に行っていたが、平成8年度は「インターネッ ト」を中心に「ワープロソフトの学習」や「図形ソフトの学習」をしていこう と考えた。

 「コンピュータ実習」では、wwwを利用してホームページを見ることから 授業を始めた。「100校プロジェクト」参加校の「大阪市立聾学校」や「神 戸聾学校」をはじめ、いろいろな学校のホームページを見て、「これから自分 たちのホームページを作っていこう」と提案した。まず、ワープロソフトでの 「自己紹介づくり」をして、文字だけのホームページを作り、それにデジタル カメラでとった画像を「図形ソフト」を利用して取り込み一人一人のホームペー ジを完成させることができた。しかし、完成させたホームページを公開するこ とに関しては「恥ずかしい」という反対の声も強く、公開はしなかった。

 「電子mail」の利用も考えた。しかし、生徒は「知らない人に対してど のようなことを書いたらいいのかわからない」というので、適切な交流相手探 しの必要性を強く感じていた。また、聴覚障害児の場合は文章の読み書きが不 得意な生徒も多く、「電子mail」に対する抵抗はより一層強かった。

 しかし、生徒の中には「携帯用文字端末」を使いこなし、友達との間で文書 のやりとりを行っている生徒も多い。友達の間ならmailのやりとりができ るのではないかと考え、まず「コンピュータ教室内」のLANを使ってmai l交換ができるソフト(富士通BSC社製「キャンパスリンク」)を導入した。

 コンピュータ教室内のmailのやりとりは、生徒に好評であった。友達に 見られないように本などで隠しながら一生懸命mailを書いているようすは、 「ワープロの練習」では見られない姿だった。この取り組みを徐々に広げるこ とで、インターネットの「電子mail」につなげていきたい。

・「コンピュータクラブ」での取り組み

 「コンピュータクラブ」でも、インターネットを自由に操作できるようにし てみた。できれば学校のホームページの作成はクラブの生徒に行わせたいと考 えていた。

 クラブではインターネットに興味がある生徒に自由にクライアントを操作さ せた。2〜3回操作してみると面白くなったようで、インターネット関係の雑 誌を見るなどして、自分で見たい情報を探してくるようになった。HTMLで 自分の興味のあるホームページの目次を作る生徒も現れた。

 「ホームページの作り方」を少しずつ教えると、自分のホームページを作る 生徒もいて、文化祭では「学校のホームページ」とともに公開することができ た。文化最後もホームページ作りを続けている。

○平成8年度の成果と課題

 今年度の成果でもっとも大きかったことは、生徒にとってインターネットが 身近なものとなったことであろう。使用法はホームページの閲覧が中心でまだ未 熟であるが、インターネットを利用することの抵抗はほとんどない。これだけ でも十分な成果があったと思う。

 今後の課題は「インターネットの活用」である。特に「電子mail」の利 用は、適切な交流相手を見つけることで可能になるので、ぜひ行っていきたい。 また、各教科で教材として使えそうなホームページをリストアップすることで、 インターネットに詳しくない教員でも授業でインターネットが簡単に活用でき るようになる。このようなインターネットを活用するための準備も今後の大き な課題である。

○100校プロジェクトに参加して

 都立ろう学校全校で組織している「都ろう教育研究会 情報教育研究会」を 中心に、インターネットを利用す研究会を開催してきた。現在、本校のサーバ を利用して他のろう学校もインターネットを利用できないか検討している。具 体的には「情報教育研究会のホームページを作成し、その中に他の学校のホー ムページを掲載すること」や「パソコン通信も利用して、生徒間の電子mai lのやりとりをすること」などを考えている。

 インターネットの利用は2年前とは比べものにならないほど増えてきた。一 般の個人でもホームページを作成するようになった。実際、生徒の兄弟でホー ムページを作成している人もいる。今後もインターネットは急速に発展するだ ろう。そのような中で、学校でもインターネットにアクセスできるような環境 を持つことが、不可欠になるのは明らかである。その準備のためにも、インター ネットの活用の研究をつづけることは重要だと思う。