100校プロジェクト 平成8年度実施状況


インターネット活用報告書

 本年度本校では、教員内におけるネットワークへの関心が高まる中、100 校プロジェクトから借り受けている回線及びハードウェア・ソフトウェアを軸 に、校内ネットワークの基礎を確立することができた。さらに、構築されつつ ある校内ネットワークを利用して、
(a) 授業におけるインターネットの利用
(b) 教員内でのインターネット研修会の実施
(c) 研究プロジェクト「視覚障害を持つ生徒が一般高校で学習する場合の 一般高校での配慮のあり方及び盲学校からの支援のあり方の研究」 の中での点訳ボランティアのインターネット活用の試み
などインターネットの活用範囲を徐々に広げるとともにネットワークの在り方・ 役割・活用方法についてさらに検討を進めている。

1.校内のネットワーク環境

 100校プロジェクトから借り受けている環境を利用して、教員・生徒がよ りネットワークへアクセスし易い環境を構築するために、今年度は以下のよう な校内ネットワークの拡張を行った。
(a) 平成8年4月
サーバを設置する部屋の他に2教室を 10BASET で接続した。各教室には、 4台ずつ計8台のクライアントを設置した。1教室には合成音声及び点字によ るアクセス環境を中心としたクライアントを置き、他の教室には Windows95 を利用してアクセスする環境を整えた。
(b) 平成8年11月
みこころ会からの寄付と特別予算が付いたため、これまでの校内ネットワー クを大幅に拡張した。印刷室・情報処理室・教官室などが集中する校舎の5分 の2に当たる範囲を1階から4回まで 10BASE5 で結び、主要な教室へクライア ントを設置できる環境を整えた。残念ながらこの範囲には、図書室・事務室が 入っていないが、今後の予算で拡張できるよう構築した。この結果、今年度末 には、生徒指導用16台(合成音声・点字によるアクセスが可能な物8台、 Windows95 を利用する物8台)に加え、教材作成用7台計23台のクライアン トを接続する予定である。

2.インターネットの活用

(a) 授業における活用
現在の所、盲学校の授業におけるインターネットの活用は、情報発信に比 べて情報の取得に比重が置かれている。これまで存在することは知っていても 実際に読むことのできなかった新聞や雑誌のデータを得たり大学が開いている ホームページを通して得られる情報を大学進学の参考にしたりすることを生徒 自らの力でできるよう授業の中に取り込んでいる。養護訓練を中心とした情報 処理教育の中で、全盲の生徒には、unix 上の WWW ブラウザ lynx の利用方法、 弱視の生徒には、Window95 上のネットスケープの利用方法を中心に授業を進 めると同時に、授業で利用していない時間帯には、生徒が自由にネットワーク にアクセスできる環境も整えつつある。
(b) WWW ブラウザの教員向け校内研修会の実施
WWW ブラウザとして、unix 上の lynx 及び Windows95 上のネットスケー プの校内研修会を数回行った。インターネットへ初めて触れる教員の参加も有 り、ネットワークへアクセスする人も増えつつある。しかし、回数が少なかっ たため、教員がアクセス法を覚えるところでとどまり、生徒指導上の注意点特 に合成音声や点字を使ってアクセスする時の注意点などより深い研修にはいた らなかった。
(c) 研究プロジェクトでの活用
「視覚障害を持つ生徒が一般高校で学習する場合の一般高校での配慮のあ り方及び盲学校からの支援のあり方の研究」で今年度7月に本校の全盲の生徒 2名が1週間付属高校で一緒に授業を受けるという研究が行われた。盲学校か らの支援の一つに、「教材の点字化」があるが、これらの多くは点訳ボランティ アの協力を必要とする。点訳ボランティアがネットワークを利用することによっ て、原稿・点字化されたデータのやり取りを効率よく行い、より早くより正確 な点訳データの供給を実現する手段を検討した。今回は2名の点訳ボランティ アが原稿を受け取ってから点訳データを作成するまでに時間的な制約がある今 回の研究では、十分な効果を上げることができた。今後は、ボランティア同士 のネットワーク利用など多方面にわたる活用が期待できる。

3.来年度に向けて

 活字文化から電子文化への変化は、ネットワークの活用によって急激に促進 されつつある。そしてこの変化は、視覚障害者の世界に革命ともいうべき変化 をもたらしている。視覚障害者にとって、情報取得・情報発信においてハンディ の少ないネットワーク社会への期待は大きく、その一部が実現されようとして いるのである。

 このような状況の下で、今年度本校では、100校プロジェクトの参加校と して、インターネットに接続された校内ネットワークの基礎を築くことができ た。これは、盲学校教育の中に電子文化を取り込み活用するという点に置いて 重要な意味を持っている。しかし今年度は、ネットワーク環境の構築に重点を 置いたため、その十分な活用にはいたらなかった。

 電子文化・ネットワーク社会が未成熟である現在、どのように盲学校教育の 中にそれらを取り込み活用して行くかは大きな課題である。また、盲学校が電 子文化の恩恵を受けるだけでなく、文化を育てる一員としての役割も重要な視 点であると思われる。本校のネットワーク環境が視覚障害者に取ってまだまだ 十分なものとは言えないが、来年度はより広い視野に立って、その問題点を整 理し、その活用を考えていく計画である。