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プロジェクトの成立
通商産業省は、平成5年6月の「産業構造審議会情報部会報告」を受けて、平
成6年5月に「高度情報化プログラム」を策定しました。
この「高度情報化プログラム」の中で述べられている政策プログラムを具体的
に実施するため、情報処理振興事業協会(IPA)は、平成5年度の第3次補
正予算により「特定プログラム高度利用事業」を開始しました。
この「特定プログラム高度利用事業」の1プロジェクトである「教育ソフト開
発・利用促進プロジェクト」の主要な実験テーマの1つを実施するために開始
されたものが、100校プロジェクトであり、正式名称は「ネットワーク利用
環境提供事業」と言います。
100校プロジェクトは、初等中等教育におけるネットワークの利用により、
教室での授業が持つさまざまな制約を超えた教育、学習の実現を目指して文部
省、通商産業省の指導のもとにIPAと財団法人コンピュータ教育開発センター
(CEC)との共同で実施されることになりました。
プロジェクトの概要
「高度情報化プログラム」の中で、教育の情報化とは、次のように述べられ
ています。
- 能動的な学習の実現
コンピュータソフトウェアやネットワークの先進的機能を活用するこ
とにより、学習対象を把握・分析したりその成果を表現したりするとい
う学習活動が、一層高度で能動的なものとなり、創造力、思考力や表現
力といった学習者の能力を抜本的に高めることが可能となる。
- 教室での授業が持つ制約を越えた教育、学習の実現
コンピュータとネットワークとによる情報の処理、収集、発信能力の
大幅な向上により、教室での授業が持つさまざまな制約を越えた新たな
教育、学習が可能になる。
具体的には、全国100カ所程度の小・中・高等学校、特殊教育諸学校等など
にサーバ及びクライアントコンピュータを設置してネットワークと接続し、ネッ
トワークを活用した共同学習・情報交換・ネットワークカンファレンスなどの
具体的な学習活動を可能とする環境と、生徒や児童が世界中の図書館や学校等
にアクセスしたり情報発信するためのソフトウェアを提供することにしました。
また、この環境を活用した各学校等が行う自主的な企画を支援したり、事務局
が提案する共同利用企画の推進をすることにより、教室での授業が持つ制約を
越えた教育・学習を実験し、その教育的効果を検証するため、平成6年8月そ
の対象校の一般公募を行い、事業がスタートしました。
プロジェクトの進め方
このプロジェクトを効果的かつ効率的に推進することを目的に、アドバイザリー
グループとしてCEC内に学識経験者を中心として構成される「教育ソフト開
発・利用促進センター事業推進協力者会議を設置しました。
また、より詳細な事項を検討するために、その下部組織として教育関係者を
中心に構成する「教育利用分科会」を、またネットワーク研究者を中心に構成
する「ネットワーク技術分科会」を各々設置しました。
こうして、プロジェクトは、推進協力者会議に対する諮問と両分科会の現場に対
する支援活動により推進されました。
対象校の公募
プロジェクトの対象となる全国100カ所程度の小・中・高等学校、特殊教育
諸学校等は、公募されました。
このため「ネットワーク利用環境提供事業募集要項」が作成され、平成6年8
月に文部省の指導の下に全国47都道府県教育委員会に配布されました。
募集は、次の2つのグループに分けられて行なわれました。
- Aグループ:約20〜30校
- 特に先進的で教員の技術力・実績のある学校。
ネットワーク利用・企画に積極的に立案・参加できる学校。
回線速度は、64kbpsを想定。
- Bグループ:約70〜80校
- ネットワーク利用・企画に積極的に立案・参加できる学校。
回線速度は、3.4kHz帯域品目を想定。
公募を行った当時は、インターネットという言葉がまだ耳慣れないものであっ
たり、ネットワーク環境やクライアント/サーバなどの環境も、それまでの学
校でのコンピュータ利用の中では想定されていないという、先進的な情報技術
であったにもかかわらず、1,543校からの応募(Aグループへの応募総数:
708校、Bグループへの応募総数:835校)があり、内容もレベルの高い
ものが多く提案されました。
対象校の選定
対象校の選定は、「ネットワーク利用環境提供事業募集要項」に基づき書類
審査を行い、
の3点について総合的に審査して候補校を選定しました。
また、地域や校種などの片寄りを検討・調整した上で108校及び3カ所の視
聴覚センターを含め111校を決定ました。
この結果、各都道府県に1校以上の対象校を配置し、校種は小学校、中学校、
高等学校、盲学校、聾学校、養護学校が含められました。さらにインターナショ
ナルスクール、病院内で長期療養している子供たちのいる院内学級、先進的な
取組みが期待される3カ所の視聴覚センターも対象に含められました。
選定の結果は、平成6年12月に各都道府県の教育長などを通じて各学校など
に通知されました。選定された対象校などの内訳は以下の通りです。
校種 | 学校数 | 内Aグループ数
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小学校 | 18 | 7
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小・中学校 | 1 | 0
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中学校 | 29 | 7
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中・高等学校 | 10 | 5
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高等学校 | 40 | 15
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特殊教育諸学校 | 8 | 0
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インターナショナルスクール | 2 | 1
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視聴覚センター | 3 | 3
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環境の導入
平成7年2月から対象校に対して、順次、回線、通信機器、クライアント機/
サーバ機の設置・接続を開始し、平成7年6月には、対象校へのシステムの設
置、並びにインターネットへの回線接続が完了し、サーバの稼働が確認されま
した。
システムの調達にあたっては、システムの納入が並行して速やかに行われる
よう、全国を6つのブロックに分け、各ブロック毎に、回線、通信機器、クラ
イアント機/サーバ機のそれぞれについて、一般競争入札による調達を行いま
した。
導入されたシステムについての詳細は、
技術情報を参照して下さい。
環境の発展
当初、対象校に提供されたハードウェアは、サーバ機1台、クライアント機1
台という最小限のシステム構成でしたが、その後、各学校で既存の機器をネッ
トワークに接続したり、新規に購入したりして、独自に拡張していく活動も行
なわれて来ました。
平成8年7月時点でのアンケートによる各校のクライアント台数の分布は以下
の通りで、ほぼ8割の対象校が利用環境の拡張を行っています。
51台以上 | 13校
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41台以上 | 13校
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31台以上 | 4校
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21台以上 | 10校
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11台以上 | 9校
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2台以上 | 39校
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1台未回答 | 23校
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