第U章 プロジェクトの活動状況


 本プロジェクトの活動は、対象校、地域ネットワーク(NOC)、プロジェクト事務局のほか、対象校が実施した「利用企画」の実践を通じて参加・協力を得た国内外の学校・ボランティアなど広範な人々の組織化によって進められた。

本章では、その活動の推移と成果について、対象校における活動状況、NOCの活動、プロジェクト事務局の活動を中心に報告する。

2.1  対象校における活動状況

 ここでは、平成6年の8月からスタートした対象校における年度ごとの活動状況調査、さらに5 年間を総括する活動状況調査に基づいて考察する。
 10数倍の難関を突破して選出された対象校111校は、コンピュータの教育利用に関心の高い教師が在任していた。そのため、当初計画では、デジタル回線地域の対象校Aグループのみにサーバを設置するということであったが、アナログ回線地域の対象校Bグループにもサーバを設置することとなった。また、本プロジェクトの円滑な運営を推進するために、対象校に正・副2名の担当者を選任した。

平成7年4月から順次回線整備

 対象校には、平成7年4月から順次機材の導入と回線接続が進められ、夏休み前までには、システムとネットワーク環境が提供された。さらに、秋には慶應義塾大学藤沢キャンパス内に情報基盤センターが開所され、同時期に100校プロジェクトのホームページも開設された。こうして対象校における本格的活動が、ようやくスタートする運びになった。
 スタートして間もない平成7年11月に、活動初期の問題点を把握するために、対象校に対する「インターネット活用状況調査アンケート」を実施した。ここでは、その特徴的な結果を報告する。

(1) 対象校のインターネット環境については、アクセスできるクライアントの70%は、コンピュータ室に設置されている。ただし、60%の対象校は、クライアントが5台以下という小規模設置であった。
(2) システム管理者の78%は、教師本業との兼務であり、専門の管理者は7%しかいない。
(3) 導入時の苦労は、インターネットで用いられる専門用語(例:FTP)が難しいという声が最も多く、107校のうち70校がそう指摘している。さらに「得られた情報が英語なので理解するのに苦労」、「欲しい情報がどこにあるかわからない、探せない」という声も約半数の学校が挙げている。
(4) 「教師の熱意・理解が乏しく、活用の輪が広がらない」、「交流を図ろうにもなかなか相手校が見つけられない」、「インターネット活用のアイディアが浮かばない」など、実践が緒についたばかりで順調に進まない悩みが列挙されている。
(5) 「電子メールをいつでも利用できるか」という問に対して、94%の教師が可能であると答えたのに対して、児童・生徒は44%にとどまっている。
(6) ホームページを立ち上げている学校は87校、そのうち81校では一部の教師が「HTMLを使える」としている。ページの内容として最も多いのは、対象校の歴史・所在地などの紹介で80.5%、以下教育目標の表示60%、他のページへのリンク59%、地域紹介56%と続いている。児童生徒に関するものでは、各クラス・生徒の自己紹介を掲載している学校がほぼ半数あった。まず、ホームページの基本的掲載要件を満たす努力がされていた。
(7) 通常の教科での利用は、さほど多くなく、クラブ活動や特別に設定された時間に行われている。これは、インターネットに慣れるための時間設定が多いことと、既存の教科枠の中に位置づけることが困難なためであると考えられる。

 以上の回答からもわかるように、コンピュータの利用技術の高い担当の先生とはいえ、スタート当初は、UNIXシステムの把握、運用体制の構築、企画実践の進め方など、第一歩から始めなければならいことが多く、心身ともに大きな負担になったようすがうかがえる。ちなみにアンケート回答者は、対象校における本プロジェクトの担当窓口の正・副担当者である。

平成8年度、インターネット実践の目が育つ

 平成8年度には,インターネット授業実践も本格的になり、新しい活用のアイディアが、これまでの試行錯誤の中から生まれた。その活動状況を把握するための「ネットワーク利用実態調査」を行った。
 その集計結果は、概略、次のようであった。

(1) 共同企画141、自主企画276に参加している。1対象校当たり平均して四つの企画に参加していることになる。実践した企画を類型別に集計すると、情報交換/発信/収集が106で最も多く、次いで共同学習70、意見交換50、その他29となっている。
(2) 授業における利用状況では、社会/理科/英語が各10%弱、技術家庭が約5%であった。教科以外の「その他」が54%と最も多かったのは、教科横断型の調べ学習に代表される教科の枠を越えた新しい教育システムを模索した結果である。
(3) ネットワークの管理者としては、「学内の人が仕事の傍ら担当している」が79%で最も多く、次いで「専門の担当を決めている」、「管理者・責任者は、特に決めていない」が各5%であった。ネットワーク利用のための校内組織については、「正式な委員会等がある」が64.5%で3分の2近くを占めており、次いで「自主グループがある」15.5%、「組織していない」13.6%であった。こういった状況を見ると担当者の負担軽減が、大きな課題である。
(4) メール・アドレスの発行数は49以下の学校が46%で最も多く、50〜99の学校が23%、100〜499の学校が21%と次いでいる。メールアドレスの発行は、個人情報の保護と意識の高揚のうえで大切なことであるが、経費・施設整備のあり方等について協議が必要であろう。


 スタートして3年目を迎えると、インターネット教育利用の独自性を謳ったテーマ「異学年交流」、「異校種交流」など、活動に広がりが見られるようになった。こうして平成8年度末までに、111の全対象校でホームページが作成され公開された。

平成9年度、新100校プロジェクトと再スタート

 平成9年度には、「新100校プロジェクト」として108の対象校で再スタートした。Bグループのうち34校が回線接続を変更し、75校がAグループ(64kbpsデジタル回線接続)となり、残りの33校がBグループ(3.4kHzアナログ回線接続)となった。また、対象校がインターネットプロバイダに接続するという変更も始まった。
 利用企画では、継続的な面もあったが、「重点企画」などを設け、質的にも深まりのある活動へと充実していった。さらに対象校以外の参加校が増大した点も注目される。

平成10年度、5年間の実績を総括

 平成10年度には、回線の自主財源化が進められて対象校の接続先変更が相次いだ。秋に5年間のプロジェクトの対象校における活動状況を総括的に把握するためのアンケート調査を実施した。アンケートでは、多くのことがらについて実情を把握すべく質問項目を設けたが、数量的データのみでは把握できない活動のようすを、正・副担当者から自由記述形式(直接回答欄)で率直な意見や体験を収集した。その結果は、本章第1節にまとめた。
 また、対象校や地域における詳細な活動状況を把握する目的で、取材班による面接(インタビュー)を26件について実施し、利用企画がどのように実践されたのか、学校や担当者の事情、実践の経過、今後への展望を含め多角的に取材した。この報告は「実践事例」として本章第5節にまとめた。
 さらに、総括評価の一環として、教育現場でプロジェクトの実践活動に当たった教師や教育委員会に異動し、地域のネットワークに取り組んできた指導主事から直接に意見を収集する目的で「プロジェクトの成果と課題」というテーマで、話し合っていただいた。その内容は、「座談会」として本章第6節にまとめた。


2.1.1 学校の活動(平成10年度アンケートから)

 以下は、100校プロジェクト・新100校プロジェクトの5年間を通した対象校の活動について、アンケートによってまとめたものである。

(1)インターネットの活用場面

 学校現場にインターネット環境が導入された直後の平成8年度調査では、教科・領域での活用が40%で、その他は部活動や学級活動等に利用されていた。2年が経過した時点でも、授業での実践事例は少なく、各校とも授業でどのように活用するかを研究していた時期であった。
 平成10年の調査では、授業でのインターネット活用が全体の60%を超え、授業での活用が定着しはじめている。また、課外活動、特別活動にも活用されており、校務にも徐々に活用されはじめた。
 「その他」の活用は、校内でのインターネット研修会やメールによる学校間の情報交換に利用しているとの回答が上位を占め、休み時間に児童・生徒が利用しているとの回答も多くあった。また市民講座や地域との活動など、校外活動にも活用されるなど、一歩一歩確実に活用の輪が広がっている。

  1番目 割合(%)
授業で 62 61.4
課外活動で 21 20.8
特別活動で 9 8.9
校務で 3 3.0
その他 6 5.9

 

(2)授業(教科・領域)での活用
教科 小学校 中学校 高等学校 特殊教育諸学校
国語 13 9 5 0
社会 17 20 15 2
算数 1 - - -
数学 - 5 10 0
理科 14 18 11 3
英語 - 13 23 0
音楽 0 0 1 0
体育 1 - - -
保健/体育 - 2 1 0
図工 2 - - -
美術 - 3 3 0
家庭 2 - - -
道徳 1 1 - -
技術/家庭 - 20 6 0
商業 - - 9 -
工業 - - 8 -
農業 - - 1 -
特別活動 5 7 - -
選択教科 - 2 - -
その他 9 7 45 9
無回答 14 23 4 8


 表は、授業での活用について校種別・教科(領域)別に集計したものである。教科によって大きな差があることがわかる。その順位に注目すると、小学校では社会科での活用が最も多く、次いで理科、国語、特別活動の順に活用されている。中学校では、技術/家庭科、社会科での利用が一番多く、次いで理科、英語、国語の順に活用されている。高等学校では、英語、社会科、理科、数学の順に活用されており、当然のことながら商業・工業といった専門教科では、積極的に活用されている。さらに特殊教育諸学校では、理科、社会科でのネットワーク活用が見られる。各校種とも共通して社会科・理科での活用が多く、中学校以上では英語での活用が上位を占める。
 インターネットの機能的な特質から、社会科、理科、合科的なテーマによる情報交流に関心が集まるのは納得できる。さらに他の教科でも遠隔協同学習の視点からの活用も大いに望めることから、校内におけるインターネット活用環境の整備・拡大と合わせて実践を促進していけば、いろいろな教科領域で活用されるだろう。英語については、国際理解教育の側面からもインターネットは強力なメディアであり、これも大いに促進すべきだが、言語理解の壁を越える翻訳ソフト等の環境整備が待たれる。

(3)ネットワークを活用している学年

 校種別・学年別に見ると、小学校・中学校・高等学校とも最上位学年が最も利用している。小学校、低学年ではまったく利用されていない結果となっている。中学・高校の一貫教育の現場でも高校生の方が中学生より利用している。
 特殊教育諸学校では高校生のほうが利用しており、小・中学生ではあまり利用されていない。
 どの校種でも高学年の利用率が高いという傾向は見えるが、これは、共通する根拠があるわけではない。特に中学校の場合、ほとんどの活用が技術家庭の高学年に集中しているのは、3年生で履修するようにカリキュラムが決められているからである。そして、今日の学校では,技術家庭科でパソコンが熱心に活用されればされるほど、他の教科ではほとんど利用できないという整備状況にある。

学年 小学校 中学校 高等学校
1年 0 0 5
2年 0 5 6
3年 0 19 24
4年 5    
5年 3    
6年 8    

 

(4)学校から発信するWeb(ホームページ)

・ホームページの作成・変更・掲載許可にかかわる組織・人材
 Web(ホームページ)の作成・変更および情報の掲載等について、組織・機関を設けているかについて、作成・内容変更・掲載許可の側面から調査した。

  作成
回答内容 回答数(校) 割合(%)
作成・変更・許可組織 23 23.5
校長 0 0.0
教頭 0 0.0
正/副担当者 65 66.3
正/副担当者以外の担当者 5 5.1
各人 4 4.1
無回答 1 1.0
変更
回答数(校) 割合(%)
20 20.2
0 0.0
0 0.0
70 70.7
5 5.1
3 3.0
1 1.0
変更
回答数(校) 割合(%)
31 31.6
24 24.5
2 2.0
36 36.7
2 2.0
2 2.0
1 1.0

 ホームページは、大半の学校においてネットワークの運用を担当している正・副担当者によって作成・変更・許可されている。ネットワーク運用と情報管理が不可分であるとの姿勢が通例であろうか。
 また、児童・生徒が作成していると回答した学校も数校あり、児童・生徒を含めて学校全体で作成している学校もある。
 一方、30%程度の学校では、校内に正式なホームページの作成管理グループ(委員会、部会、WWW作成グループ等、組織名はさまざま)を組織してホームページを作成・変更・管理している。
 ホームページの内容についての掲載許可は、作成管理グループを組織している学校は、そのグループの責任で処理している例が多い。これに対して運用に当たる正・副担当者が作成・更新を行っている場合は、正・副担当者に任せるだけではなく、約半数の学校では校長・教頭など管理職の判断を仰いで掲載している。情報の公正・信頼・適切性など視点から協議の仕組みは必要だが、運用面で管理が行き過ぎると意欲をそぐことになりかねない。柔軟な対応が望まれる。

・学校のホームページを更新する頻度
 学校で掲載するWebページの更新は、定期化しているだろうか。更新日を決めている学校が全体の12%ある。しかし、ほとんどの学校が情報発生のたびに作成・更新していると回答しており、更新組織の有無とは隔たりがある。
 発信情報の新鮮さを重視しているか、更新の要の少ない情報を中心にしているのかは不明である。いずれにしても必要に応じてそのつど更新する学校が多い。

回答内容 回答数(校)
そのつど 84
定期的 12
無回答 5

・学校における個人情報、著作権等の取り扱い
 インターネットにおける児童・生徒の個人情報保護の問題については、本プロジェクトにおいても平成8年12月から9年3月にかけてメーリングリストを用いて活発な意見交換が行われた。マスコミでも一時期活発な議論がなされた課題である。
 この問題について、その後、学校独自の取り扱い規則などを作って、ホームページにおける児童・生徒の個人情報や著作権等の情報を管理・運用しているかを調査した。児童・生徒の顔写真と名前は同時に掲載しない、あるいは個人の写真は、まったく掲載しないなど規則を整備している学校は、まだ半数に達していない。
 しかし、自由記述では、運用規則を持たない学校でも、「そのつど、委員会等で検討しながら判断している」、「明文化はしていないが学校内で共通理解を図っている」、「学校独自の規則は持っていないが、市の条例・方針に従っている」、また「規則を作成中マニュアルを研究中・弁護士に相談中」など各校とも真摯、慎重に対応していることがうかがえる。今後とも、論議の輪を広げる必要があろう。

回答内容 回答数(校)
規制を作成 37
規制なし 43
その他 19
無回答 2

・児童、生徒が作成したページの公開
 半数以上の学校(60%)が児童・生徒が作成したページを公開していると回答している。しかし、前述の個人情報流出の問題もあり、原則的にはページは非公開としたり、校内のみの公開としたり、特定の人にだけにURLを教えるという慎重な取り扱いをしている学校もある。

回答内容 回答数(校)
公開 60
非公開 35
無回答 6

・各校が掲載しているWebの総ページ数
 回答数68の間でもホームページの掲載ページ数には大きなばらつきがある。

総ページ数 回答数(校)
1,000〜3,000 4
500〜999 6
200〜499 8
100〜199 16
50〜99 10
〜49 24

・外国語によるホームページの有無
 また、49校が外国語によるホームページを掲載していると答えており、言語についてはほとんど英語であり、1校のみ中国語で記述したホームページを掲載している。
 しかし、国際化に向けて、欧米諸国ばかりではなくアジアに目を向ける意味から、中国語、韓国語、タイ語なども促進する必要があろう。

回答内容 回答数(校)
外国語ページあり 49
外国語ページなし 37
無回答 15

 

(5)校内で発行しているメール・アドレスの発行数

 校内で生徒・児童、教職員、その他(保護者)等に発行しているメール・アドレスの発行数は49以下の学校が42%もあるが、2年前と比べて4%の減である。100〜499の学校が、32%と2年前と比べて11%の増であることから、学校の持つメールアドレス数は、増加の傾向にある。
 発行されているメール・アドレスの総数は18,290アドレスにのぼり、その82%(15、059アドレス)が児童・生徒に発行されており、単純平均では1校当たり150人の児童・生徒にアドレスを発行している。
 また、17%(3,082アドレス)が教師に対して発行されており、同じく1校当たり30人に発行されている換算である。校内でのインターネットの利用者が多くなれば、当然、個人が独自のアドレスを持つことが必要になってくる。しかし、その管理には、多くの問題点がある。いろいろな実践校とも情報交換して、アイデアを出し合う努力を重ねる必要があろう。

メールアドレス数 学校数 割合(%)
1,000以上 4 4.0
500〜999 8 8.0
100〜499 32 32.0
50〜99 11 11.0
49以下 42 42.0
無回答 3 3.0

(6)校内・外における研究会等の活動について

 近年学校や地域が主催するインターネットの教育利用に関する研究会発表会・研修会が各地で積極的に開催されるようになった。参加者も教員に限らず行政や教育委員会等からの参加も目立つようになってきている。
 対象校においても約半数の学校が、独自にネットワークを活用した実践の発表会を積極的に開催している。参加者も、数十人から数百人と規模的にもいろいろである。半数の対象校は、ネットワーク教育利用の先進校として、地域においても中心的な活動を行っている。

回答内容 回答数(校) 割合(%)
発表会を開催した 48 47.0
開催していない 52 51.0
無回答 2 2.0


 同時に、90%以上の学校が、外部が主催するネットワーク関係の発表会・研究会には積極的に参加し、80%以上の学校が、外部で開催している発表会等で発表していると回答した。その他、80%以上の学校がネットワーク関係の論文発表、新聞掲載記事の執筆、雑誌投稿等の依頼に対する対応を行っている。

回答内容 回答数(校) 割合(%)
外部の研修会に参加したことがある 95 94.0
外部の研修会に参加したことはない 4 4.0
無回答 2 2.0

 

(7)他の学校等から授業の見学や相談の対応について

 対象校はネットワーク教育利用の先進校として、他校や報道関係者からの学校訪問や授業の見学ならびにネットワークに関する相談等が非常に多く、担当者はこれらの対応に相当数の時間をさいて対応しているのが現状である。ちなみに93%の対象校が、授業見学や相談を目的とした学校訪問を受けたと回答している。

 上記の(6)、(7)の結果からもわかるように、本プロジェクトの対象校が経験・蓄積した多様なノウハウが、全国的にも地域的にも大きな成果をもたらした。本プロジェクトが、わが国のインターネット教育利用の普及促進に寄与したといえよう。


2.1.2 設備/管理体制など

 構内LAN整備、パソコンの設置状況、ネットワーク管理者、校内組織など校内の設備ならびにネットワークの管理体制については、アンケート調査によりまとめる。

(1)校内LAN構築時に受けた支援

回答内容 回答数(校) 割合(%)
校内(ボランティアを含む)で独自に整備した 58 56.9
教育委員会などの支援を受けて外部に委託 18 17.6
整備はしていない 9 8.8
その他 12 11.8
無回答 5 4.9

 対象校は、各校ともインターネット環境(サーバ1台、クライアント1台)を提供した時点からクライアント機の台数を増やす方向で校内ネットワーク環境(校内LAN)の整備拡張を積極的に進めてきた。学校が独力で、あるいはボランティアの支援を受けて整備を行った学校と教育委員会等の支援を受け外部に委託して整備を行った学校の比率は、約3対1であり、プロジェクト対象校では自主的な整備拡充を行ったことがわかる。しかし、およそ9%の学校については、その後の整備に手がついていない。
 学校へのSE派遣事業など進められているが、なかなか学校現場の期待に応えられるところまでは整備されていない。ITコーディネータ、情報教育専門官などの組織化が急務となってきている。

(2)校内のクライアントの設置状況

 クライアント機は、児童・生徒が自由に操作できる場所に置かれていただろうか。設置状況について調査した。平成10年11月の集計では、接続台数は4,860台であり、単純学校平均では1校当たり48台のクライアント機がある。その設置場所は、コンピュータ室が圧倒的に多い。また職員室にも1校当たり平均4台のクライアント機が設置されている。クライアント機利用の場面は、教師の管理下、あるいは視野の中でという状況である。
 現在、“1教室分のコンピュータ設備”を目標に整備されつつあるが、すでに次のステップに移りつつある。図書室の情報化、各特別教室の情報化などに向けて、本プロジェクトのノウハウが生かされることが期待される。

設置場所 職員室 事務室 教室 廊下 放送室 視聴覚室 進路
相談室
コンピュ
ータ室
図書室 保健室 その他
接続台数 390 74 175 24 5 234 48 2,883 52 23 952 4,860
割合(%) 8.0 1.5 3.6 0.5 0.1 4.8

1.0

59.3 1.1 0.5 19.6 100.0


 また、クライアント機の拡張状況では学校によるバラツキも大きく、20台から60台を接続している学校が約半数を占めている。

設置台数 201台
以上
101台
以上
91台
以上
81台
以上
71台
以上
61台
以上
51台
以上
41台
以上
31台
以上
21台
以上
11台
以上
10台
以上
未回答
学校数 3 9 0 4 5 4 11 13 5 14 9 20 3
割合(%) 3.0 9.0 0.0 4.0 5.0 4.0 11.0 13.0 5.0 14.0 9.0 20.0 3.0


 なお、70%の学校で、授業以外の始業時間前、休み時間、昼休み、放課後、その他の時間帯にも生徒・児童が利用可能である。授業時間以外では、放課後と昼休みに最も利用されている。こういった傾向は、子どもの自主性・主体的な活動を継続的に支援する意味で注目される。

(3)ネットワークの管理

 ネットワーク管理者については、約90%の学校で正・副担当者、またはネットワークに詳しい校内の教職員が担当している。
 また、インターネット活用のための校内組織として、68%が委員会等を設けているが、未組織が17%あり、2年前とほとんど変化がない。しかし、インターネットの運用管理および活用を目的とした研修会は、80%以上の対象校で教職員を対象に実施されており、インターネットを使える教職員の増加に努力している。
 本アンケート実施の時点では、インターネットが使える教職員数について、全員が使えるとの回答が17%である。平均的に見ると当初ほんの数人程度あったが、対象校の全体教職員数の50%程度という進展である。

(4)地域活動

 学校のネットワーク環境を地域のために公開している対象校は約半数で、公開していない学校は32%であった。その活動内容は多様であるので、自由記述からいくつかを引用する。

・地域インターネットサークル/インターネットを楽しむ会(月2回)
・土曜日の第3校時(10:30〜)を地域の方に開放し、メディアセンターの22台の端末を自由に使っていただいている
・近隣の学校の先生を対象にした講習会の開催
・県内中学校教職員を対象とした公開講座実施
・中学生向け1日体験学習/中学生対象ホームページ作成教室
・小学校3〜6年生対象のホームページ制作講座
・PTAの会員向けに講習会を実施/保護者を対象とした体験講座
・親子パソコン教室
・市民パソコン講座を年1回行っている/生涯学習の一環として実施
・インターネット講座(高齢者)/コミュニティカレッジ(夏期1か月程度)
・電子メールの講習会/ホームページ、メーリングリストの提供
・ホームページ上にPTA・同窓会
・インターネットボランティア ネットワークサポート(随時)

 以上の記述からも今回の対象校が、地域の中核となり、地域を巻き込んだ情報教育推進の多様な活動を展開した様子がよくわかる。こういった活動を通じた、この分野での教育の情報化の提案モデルは、将来への布石となろう。

2.1.3  5年間を振り返って

 100校プロジェクト・新100校プロジェクトに参加した5年間を振り返って、
(1) 技術的サポートの効果、教師への負担
(2) 実践を通じて校内に起きた変化
(3) インターネット教育利用上の問題点

 などについて調査した。

(1)技術的サポートの効果、教師への負担

 100校プロジェクト・新100校プロジェクトの実践を通して、技術的サポートの有用性について「役に立った」との回答が80%を超えたが、「利用しなかった」が10%弱で、「役に立たなかった」が1%あった。
 これは、UNIXサーバ設置によるネットワーク運用技術が、それまでのパソコンの利用技術では、ほとんど役に立たず、基礎から学ばなければならなかったことが多かったことによる。正・副担当者として重荷になったと80%が回答しているが、この点が大きかったようである。また、「利用しなかった」などは、情報技術の専門高校から回答である。
 こうした回答からも、ネットワーク管理の専門家がほとんどいないという学校の現状は、インターネットの教育利用の普及に大きな障壁になることが推察できる。技術的サポートをはじめ多面的なサポートづくりが急務となろう。
 一方、校内の(インターネットを使っていない)教師の協力面については、68%の担当者が「協力的だった」と答えているが、23%が「協力的ではなかった」と答えている。また、インターネットを活用した授業を行う場合、従来の授業と比べ、「教師にかかる負担が増えた」という回答が約70%で、「減った」はわずか1%である。
 この点の対応策について、「校内の全面支援」は、たいへん難しい問題である。また、「一部の教師に負担がかかる」ことについては、新しい研究開発ではやむを得ない部分である。ただ、いつまでもこういった状況が続くとなれば、問題点を抽出して改善する必要がある。地道に周囲への理解を求めるとともに,情報教育推進のための教員研修を強化することが期待される。

(2)実践を通じて校内に起きた変化

 100校プロジェクト・新100校プロジェクトの実践を通じて、児童・生徒、教職員、学校、教育委員会について、対象校の校長は、どのような変化があったと感じているかを調査した。
 ほぼ100%の対象校で、「児童・生徒の興味・関心や情報発信能力、さらに情報活用能力と表現能力も高まった」と評価している。「教職員も協力的になったし、情報の共有化が進んだ」としている。また、児童・生徒への接し方や指導計画書に情報交換しやすい工夫がされるなどの幅広い変化が見られたとのことである。
 学校にインターネットが導入されて授業の進め方も教育観も、さらに校務も少しずつ変わり大きな成果があったことを認めるが、地域・保護者との連携という面ではいま一歩であるとし、学校の壁を低くする努力をしたいとしている。
 さらに、インターネットの教育利用について、なかなか行政サイド(教育委員会)の理解が得にくかったが、少しずつ対応が積極的になってきたとか、管内の他の学校へのインターネット導入に貢献したなど、高い評価をしている記述が多い。

(3)インターネット教育利用上の問題点

・インターネット上の有害情報による悪影響については、「なかった」とする学校が64%、「悪影響があった」とする学校が15%あった。
 有害情報、個人情報の保護などは、教育上重要な問題を提起している。「悪影響のある・なし」も大きな問題で、フィルタリング技術の開発も待たれるが、一方的にシャットアウトすることは、情報免疫の欠如などの観点から意見の分かれるところである。その内容の適切性を公の場で検討し、今後の方向性を決めていく必要があろう。

・インターネットによる授業とそうでない授業とでは、教育効果に「差があった」とする学校が60数%に達しているが、「わからない」とする学校も29%ある。
 この数字は、素直に効果があったと見るべきであろうが、「差がなかった」とした多くの学校は、長期的な観察、実験・実証を要する問題で、即断はできないとの認識である。もっと質的な面を調査する必要を感じた。

・インターネットを利用できるクラスとそうでないクラスとで教師間に「不公平感があった」とする学校はわずか5%で、約50%の学校は、「なかった」としている。しかし、「わからない」とする学校も約40%に及んでいる。

・インターネットを利用できるクラスとそうでないクラスとで児童・生徒間に「不公平感があった」とする学校は、18%で、50%近くの学校では「なかった」としている。しかし、「わからない」とする学校が30%強であった。

 上の二つは、不公平感について、校内の教師意識、生徒意識を尋ねたものだが、なぜ、不公平感がないのであろうか。インターネットの教育効果を認めながらも不公平感を認めないのは、教育全体におけるインターネットの教育価値への評価が定着していないためか、理解不足なのか,現状で判断を下すのは早計であろう。さらに深い調査が必要と思われる。

 

2.1.4  事務局活動について(担当者の自由記述から)

 100校プロジェクト・新100校プロジェクトの終了に際して、事務局が実施した諸活動が、対象校の活動にどのような役割を果たしたのか、それは役立ったのか、その意義をどのように捉え、どのような課題を感じたかという点について参加した教師の意識調査をした(アンケート・自由記述による)。
 その結果は、次の2点に集約できる。
(1)  事務局が作成・配布した資料・報告書のうち、学校の活動に対して参考になったのは、授業実践事例集や成果報告書であった。成果報告書は活用事例紹介を含むものであり、他校の実践事例や取り組みから学び、刺激を受けたという記述が多かった。
 「他校の成果を参考に授業を展開した」、「他校の状況を、本校のインターネット活用へ大きく役立てた」、「自校の研究推進の方向付けに、他校の取り組みが大いに参考となった」、「情報教育の指導に生かすことができた」、「取り組み方法の改善に役立った」など、具体的な実践への影響力も大きかった。
(2)

 同様に、事務局が実施した成果発表会・活用研究会についても、他校の情報・成果を知る場になった点を評価する記述が目立った。
 インターネットによる教育を実践する教師向けの情報が乏しく、数少ない情報源の一つとして役割を果たした。同時に「そこで知り合う先生方との交流がとても役立った」、「同じ苦労をわかる人との交流ができた」、「同じ悩みがあることを知って励みになった」などの声もあり、精神面での支援をする場になったと思われる。

 先の調査で、他校の研修会・見学会にほとんどの学校が互いに参加している実情が明らかになったが、試行錯誤の過程で役に立つ情報、支えてくれる人材への要求が強いことを示唆している。

2.1.5  プロジェクトの成果と課題(担当者の自由記述から)

 本ブロジェクト推進における担当者の成果と課題についての感想を、自由記述の中から特徴的な意見を分類して報告する。

「良かった点、および成果」について
 担当者の感想を「教師の意識改革」、「学校の活性化」、「指導技術のスキルアップ」、「学校を開く」の四つの視点から整理した。

(1)教師の意識改革

・教育観・授業観を変えるほどの刺激を受け、指導者として新しい視野を得た。
・学習に対する考え方が変わった。授業スタイルが変化した。
・教材を考え工夫していくことができた。
・学校という枠を越えて、今後の教育を考えねばならないことを実感できた。
・関心を持つ教員が飛躍的に増えた。
・教科教育について大きな示唆が与えられた。
 など。

(2) 学校の活性化
・わかる授業の構成に役立てることができた。
・最新技術を生徒とともに体験することができた。
・機器の整備が充実し、児童の情報活用能力が促進された。
・校内LANの敷設が進められた。
 など。

(3)指導技術のスキルアップ
・自分自身が学ぶ喜びを感じた。
・ネットワーク運用の知識・技術を習得するきっかけになった。
・新しい情報が容易に入手できるようになり、研究に役だった。
・ネットワーク管理について、ある程度マスターできた。
 など。

(4)学校を開く
・全国の多くの実践者と会えた。
・地域とつながり、他の職業の方との交流ができた。
・さまざまな人と知り合い意見を聞くことができた。
 など。

 高度情報通信社会が急速に進展する中で、学校教育の新しい方向を示す学習指導要領が告示され、情報教育が教育改革の重点課題として掲げられているが、教師の意識改革をどのように推進していくか大きな課題となっている。その意味では、上記のような幅広い具体的な実践提案は、大いに参考になる。

「苦労した(困った)点、および課題」について
 担当者の感想を「管理職の理解と職場環境」、「管理面での負担と仕事量」、「環境整備と運営体制」、「環境整備のための技能習得」、「支援体制」の五つの観点から整理した。

(1)管理職の理解と職場環境
・限られたクラスでしか活用できない。教員の理解があまりなく孤軍奮闘だった。
・インターネットや情報教育に対する無理解が多い。
・理解されず、遊んでいるような誤解を受けた。
 など。

(2)管理面での負担と仕事量
・従来の業務との両立が困難、時間が不足している。
・管理のための作業が増え、多くの時間をさかねばならない。
・システムのメンテナンスで、しばしば夜遅くまでかかった。
 など。

(3)環境整備と運営体制
・情報公開について基準がないため、個別判断に時間を要した。
・予算が打ち切られ、教育委員会との交渉が大変だった。
・財政的な問題から台数の増設も設備の充実もできなかった。
 など。

(4)環境整備のための技能習得
・OCNに乗り換えるときのサーバ等の設定。
・施設・設備の管理に充分な知識がなく、適切な保守管理ができなかった。
・UNIXの知識・経験がない。
 など。

(5)支援体制

・アドバイザのような人がいれば良いと思った。
・サーバダウンの時の対応に苦しんだ。
・クラッカーにホームページを破壊され、復旧に苦しんだ。
 など。

 前述の「良かった」の一方で、ここでは、パイオニアとしての多岐にわたる苦労の様子がよくわかる。
 教育委員会、校長等の管理職、校内の関連委員会など一貫した理解をどう進めるか、技術習得上の問題点などが幅広く指摘されている。このような多種多様な貴重な意見・提案は、次へのステップに是非とも活かしたいものである。
 なお、以上の他に、担当者の成果と課題についての生の声を、学校訪問による取材や座談会として、本章第5節、第6節に、また教育的成果と課題については第V章第1節、同第2節に総括した。

2.1.6  今後の実践活動上の提案・要望

 インターネット教育利用の実践活動について、教師の役割、新しい企画構想など、さらに必要な支援とプロジェクトへの提言などの要望を、自由記述してもらった。特徴的なものを分類して報告する。

インターネット教育利用による教師の役割変化
 ここでは「教育観・教育目標の変化」、「変わる教師の役割」、「教授法の研究開発の必要性」、「メディアとしてのインターネット」の四つの観点から整理した。

(1)教育観・教育目標の変化
・情報社会で「生きていく力」を身に付けさせることが重要。エチケット、モラル、人権を尊重し、情報の内容を判断、活用できる生徒の育成。
・知識を教えるのではなく学び方を教えるようにしなければいけない。
・情報の扱いについて生徒に明確にアドバイスしなくてはならない。
・多量の情報に見失わない自己確立への支援。
 など。

(2)変わる教師の役割
・授業・研究の推進者としての役割、専門的技術をもった施設・設備の管理運営者としての役割が必要。
・生徒が直接社会と接する際の「フィルター」として、有害情報、ネチケットについての指導観を持つべき。
・教室のコーディネータ、他の学校との共同学習のプロデューサ役になる。
・生徒への支援者としての教師、教師を支援する教師という2つの存在が必要。
・広い視野のもと的確なアドバイスができるアドバイザ的な役割が必要。
・生徒が自由に活用できる場と時間を確保する。支援中心の指導。
・教師自身が生徒の情報活用能力のモデルとなること。
・学習する生徒の手助けをする役割のほうが強くなると思われる。
・大量の情報の中から教育現場に役立つものを取捨選択していくガイド的役割。
・生徒の情報活用能力を伸ばすために支援すべき存在。
 など。

(3)教授法の研究開発の必要性
・授業のデザインの必要がある。
・教科の本質に迫るための教材の作成・運用が重要。
・子どもの将来に向けて、先進的な内容の授業をすることが大切
・生徒の「学習知」を高める。今までの上からの「学校知」の罪をしっかり把握する。
・個人情報やネットワーク上のエチケット、著作権の指導と管理などを含め、全教師対象の研修の場を設け、理解を深める。生徒の利用状況を常に観察し、ホームページの作成にも配慮(著作権・人権・プライバシーなどに)しなければならない
 など。

(4)メディアとしてのインターネット
・インターネットは単なる道具・教材の一つであり、特別の役割をもたない。
・教師があたり前の道具として使えるようになればよい。
・インターネットを道具として利用できる技術、能力が必要。
・辞書や百科事典の使い方を教えるのと同じ。
 など。

 このように教育観・教育目標の変化は、教師の抜本的な意識変化を求めている。この改革は、たいへん重要なことであるが、同時に難しい課題でもある。周辺の教師などが理解を示さない根拠について、今回の意見の中でも再三指摘されていることだが、観念的に「食わず嫌い」なところはないだろうか。教員研修を体験的・実践的なより本人ベースのカリキュラムにしていくことと、研修のための教材開発が望まれる。

今後への新構想・企画について
 ここでは「地域内・校内の情報環境の整備・拡充構想」、「インターネット活用の授業企画」、「外部との連携・協力・情報交換」の三つ観点から整理した。

(1)地域内・校内の情報環境の整備・拡充構想
・情報教育の指導計画の作成、実施、改善を進めたい。
・衛星を使った国内・外国とのTV会議を是非とも実施したい。
・各教室からインターネット接続が可能な環境を整備したい。
・校内組織の再検討したい。
・インターネットが1台でしか使えない。あと5台は使えるようにしてほしい。
・機器が古くて新しいことに対応できない。
・コンピュータの設置と運営費の見通しが立たなくては答えられない

(2)インターネット活用の授業企画
・同一河川流域内の学校間での共同調査、情報交換による学習。
・地理や気象の学習など広範囲の情報を必要とするもので共同学習。
・英語科の科目に国際・情報という科目を2単位ずつ導入する。プロジェクトチ−ムを作って企画の原案を作る。

(3)外部との連携・協力・情報交換
・「自律的広域学習環境の構築」プロジェクトなどとのタイアップ継続。
・授業交流やテレビ会議をするための相手校をふやすこと。
・地域・保護者との連携できる環境を整備する。
・CU-See Me、インターネットホン、メール交換等による国際交流。
・オンラインディベートを通じての学校間交流の拡充。

 インターネットは、他校との共同学習を日常的に実施する道を開いた。それは、地球の裏側との異文化交流に代表されるように、ともに生きるための相互理解の場を提供してくれる。新しい学校の象徴になりつつある。環境整備を充実し、より新しい授業に挑戦する目が育っているように思う。

インターネット教育利用実践上に望まれる支援
 ここでは、「予算面」、「技術面」、「人材面」、「研修・情報サービス」、「教材面」、「その他」の六つの観点から整理した。

(1)予算・予算補助(機材・回線利用)
・より多くの生徒に、より多くの時間を使って授業を行える、より多くの機材を。
・ハード・ソフトとも更新が肝要。財政上の支援を。
・40人の同時使用に耐え得る機器・回線(画像の表示に時間がかかりすぎる)。
・回線使用料については変わりなく支援を。
・インターネット設置のための資金、維持費の支援。
・電話料金・接続料金の教育機関への優遇措置。
・利用研究助成の制度があるとよい。

(2)技術支援
・技術面の積極的支援(トラブル集などの無償配布など)。
・技術的な支援(特にサーバ、ソフトのアップデートなど)。
・大規模データベースの構築。
・学校のサーバにクラッカーが入らないようにチェックする支援。

(3)人的支援
・授業中にトラブルが発生した場合、トラブル解消に時間が取られてしまうので、SE等の学校への派遣。
・共同企画実施のためのコーディネータ、ヘルプデスク。
・語学面での支援(翻訳)。
・サーバ運用のための専任SE等を学校に派遣。
・ハード面で専門知識をもった教員がいない。専門家による支援を。
・技術専門員の配置。

(4)研修・情報提供サービス
・教師のパソコン研修機会の増加と指導者の養成。
・ホームページ運用の規則、国際ネットワーク交流の仲介と紹介。
・各都道府県ごとに技術相談ができる窓口。
・いろいろなプロジェクトの仲介、交流希望校の紹介(海外も含め)。
・国内・海外との交流を行う際の始まりとしての窓口。
・ネットワーク研修会を数多く地方で開催してほしい。
・校内LAN構築のノウハウ提供。
・E-mailでの支援窓口、教育現場のQ&A集。
・ネットワーク犯罪・ウィルス等の最新情報を提供。

(5)教材
・マルチメディアコンテンツ・有用なホームページ。
・ソフトウェアの提供支援。
・マルチメディア素材の提供。
・教材データベース。
・小学生にも読める漢字、語句で書かれたホームページ。

(6)その他
・地方自治体への広報活動。
・有害情報の切り分けを地域の情報センターでやっていただき、そこへアクセスするシステム。
・有用なWebページ、リンク、メーリングリストの紹介(書籍、資料等も含めて)。
・インターネット活用事例を多くの学校に広く知らせてほしい。

 ここには、対象校の実践を通じて生まれた数々の思いが集約されている。財政面、人的な側面、技術的な支援など、国レベル、地方レベル、学校レベル、個人レベルの諸問題を整理して、一つひとつ解決していかなければならないことばかりである。

今後必要な資料・報告書
 事務局では、この5年間に資料・報告書等を多数配布してきた。今後の教育現場でインターネットを活用していく場合、どのような資料等が必要と考えているかを自由記述の中から抽出する。

(1)活用実践例・授業事例集
・先進的な実践の報告書。
・成功した実践例だけではなく、失敗例での報告も必要ではないか。
・多様な視点からの実践例,活用例。
・識者による分析などを載せた報告書。

(2)利用技術・研修用資料
・ネットワークを利用するうえでの「コツ」のようなもの。
・各教科での活用マニュアル。
・簡単な導入の手引き。
・簡単なトラブル解決方法。
・実践だけでなく管理・運用面のQ&A(質問集)。
・システム構築にかかわる技術。
・教員研修の進め方・教員対象研修のテキスト。

(3)維持・運用
・維持費等にかかわる資料。
・管理用マニュアル。
・管理・運用面のQ&A。
・ドメイン取得等手続き方法
・発信してよい情報、悪い情報の基準など。

(4)利用可能な教材
・映像を取り入れた実践のCD-ROMやビデオ。
・教材としてすぐに使えるデータをネット上で利用できるようにしてほしい。
・授業で役立つリンク集・教育用サーチエンジン。

 新しい授業運営に関する技術書、研究資料、また環境整備に関するマニュアル、児童生徒用の電子教科書等のより現場的な発想に基づく資料が求められていることがわかる。こういった情報はたいへん不足している状況であるが、一方、情報の流通の仕組みが、今ひとつ整備されていないために実践者レベルで埋もれていることが多い。新情報のデータベースの構築も求められる。


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