2.2 NOC(Network Operation Center)の活動

2.2.1  100校プロジェクト計画当時のわが国のネットワーク環境

 わが国におけるインターネットの利用は1992年に始まった。それに先立つネットワーク研究のTCP/IPテストベッドとしてのWIDEインターネットは1988年頃から動いていたが、広い分野での情報通信ツールとしてのインターネットが大学等の研究用として使われ始めたのは1992年であった。いまさら言うまでもないが、インターネットで使われる通信プロトコルはTCP/IPプロトコル群であるが、このプロトコル群には下位層のプロトコルが規定されていない。すなわち、OSIプロトコル参照モデルで規定されている物理層とデータリンク層に相当するプロトコルが含まれていない。これらのプロトコルは、いわゆるLANで運用されるプロトコルであり、インターネットは、多くのLANを相互接続し、その間でのパケット転送や、異なるLANに接続するコンピュータどうしの間での情報通信を保証するためにTCP/IPプロトコル群が運用される仕組みを持つ。イーサネットは、当初から、相互に接続されインターネットを形成する最も典型的なLANの方式と考えられていた。現在では、多くの異なる方式のLANもインターネットに接続するようになっているが、イーサネットは、高速化改良版も加わって、今でも最も多くインターネットにつながれているLAN方式である。わが国の一部の大学や研究機関の中で、1980年代の前半から、このプロトコル群の運用をめざしたイーサネットLANの運用が始まっていた。当時、電子メールの転送・送配信を行うJUNETの運用が開始されていて、各LANのメール転送サーバ(正式にはMTAと呼ばれる)どうしの間のメール転送をUUCP(もともとはUNIXのファイル転送コマンド)機能によって全国的なネットワーク通信が行われるようになっていた。
 1980年代の半ばからは、米国のCSNETと相互接続し、米国インターネットとの電子メール交換も果たすようになった。その後、わが国のインターネットの運用が開始されたことにより、LAN間のメール転送もTCP/IPプロトコル群に基づく運用へと移行していった。上記のような時期に、このようなネットワーク技術の運用を研究的な視点から主導したのはWIDEの研究者たちであったが、各大学等でのLANの構築、JUNETとの接続、インターネットとの接続が進むにつれ、ネットワークに興味を持った多くの若い研究者や学生がネットワーク構築に進んで参加するようになった。
 100校プロジェクトが計画される直前の1992年4月には、学術情報センターが運営する学術系広域ネットワークSINETが運用を開始した。1992年から1993年にかけて、大学等のLANをWIDEインターネットやSINETに接続する動きが顕著になり、この中で、TRAIN(東京地域アカデミックネットワーク)をはじめとして、地方を活動領域とする地域ネットワークが誕生した。これらの学術系地域ネットワークは、それぞれの活動地域内にある大学等の研究機関のLANを相互に接続するとともに、SINET等の広域ネットワークとも接続して、全世界的なインターネットとのトランジットを提供する役割を果たすものであった。1994年から1995年にかけては、上記のような活動から知識や技術的経験を得た研究者、技術者や学生たちが、ボランティア活動として、LANを構築して地域ネットワークに接続し、地域ネットワークの構築と運用を担う経験を通して得た技術で、地域内の大学以外の組織のLAN構築支援を行い、これらを相互接続する非学術系の地域ネットワークを構築する動きが出現した。一方、1992年には、わが国でも商用ISP(インターネットサービス提供事業の会社)が誕生した。その後、その数は徐々に増加したが、多くの地域において、1995年以降から商用ISPの活動が活発になり、この時期からインターネットの利用者が増えていくことになった。


2.2.2 地域ネットワークのNOC

 100校プロジェクト計画が開始された1994年のわが国のインターネットは前述のような状況であったため、すべての都道府県に存在するように分布する約100校の対象校をインターネットに接続するのに、上述の学術系および非学術・非営利系の地域ネットワークが接続先に選ばれた。
 当時としては、数や技術力からみても、地域の商用ISPに接続することは難しかったものと考えられる。このようなことから、通商産業省から、全国各地で活動する地域ネットワークに対して100校プロジェクト対象校の接続の依頼があり、以下の表にある各地域ネットワークは、アクセスポイント、すなわちNOC(Network Operation Center)に100校プロジェクト対象校を接続することになった。
 比較的規模の大きく、活動地域の広い地域ネットワークの場合、複数の分散した位置にNOCが設置されていたので、同地域ネットワーク内では、各対象校はそれぞれが地理的に近い分散NOCに接続することが可能であった。(資料編・資料5参照)

地域ネットワークごとの接続状況
ブロック 地域ネットワーク協議会等 NOC 対象校
※1 Aグループ校 Bグループ校 LAN接続
北海道・東北 北海道地域ネットワーク協議会
(NORTH)
1 1 2  
東北インターネット協議会
(TiA)
1 3 7  
関東 つくば相互接続ネットワーク
(RIC-Tukuba)
1 1 2  

東京地域アカデミックネットワーク
(TRAIN)

6 10 17 2
WIDEプロジェクト(WIDE) 3 1 6  
国立小児病院 0 0 0 1
北陸・東海 北陸地域ネットワーク協議会
(FITnet)
5 1 5  
福井地域学術情報ネットワーク協議会
(FAIRnet)
1 1 0 1
浜松テクノポリス推進機構
(HINT)
1 1 2  
東海インターネット協議会
(TCP)
1 2 4  
近畿 第5地区ネットワークコミュニティ
(NCA5)
1 3 1  
大阪地域大学間ネットワーク等連絡協議会
(ORIONS)
5 5 7  
中国・四国 中国・四国インターネット協議会
(CSI)
2 3 8  
九州 KARRN協会(KARRN) 11 5 9  

 


2.2.3 システム立ち上げ時期

 1994年8月に100校プロジェクトの参加校の募集が行われ、9月の応募締め切りまでに1,500校を上回る応募があり、12月下旬までに111校のプロジェクトの参加校が決定された。このプロジェクトでは、参加校は「プロジェクト対象校」と呼ばれた。
 各対象校に導入されるコンピュータシステム、ソフトウェア、モデムやルータ等の機器、対象校が接続する地域ネットワークのNOCに設備するモデム、DSUやルータ等の機器、借り上げる通信回線等の調達はIPAにおいて一括契約され、1994年度末から1995年度初めにかけて各所への機器搬入とセットアップが行われた。
 100校プロジェクトの対象校と地域ネットワークとの接続回線としては、2種類の専用回線が使用された。全体111校の中で41校は64kbpsのデジタル専用線であり、内4校は大学の校内LANに接続された。残りの70校は3.4kHz帯のアナログ専用線であり、アナログ専用線の場合には、最高伝送速度が28.8kbpsのモデムが提供された。
 各対象校のネットワークに対しては、クラスCのIPアドレスが1組ずつ割り当てられた。
 100校プロジェクトの機器搬入に先立つ1995年2月に、通商産業省機械情報産業局情報処理振興課長名で、各地域ネットワークの管理責任者宛てに、ネットワーク利用環境提供事業(100校プロジェクトの正式名)の協力依頼が出された。その後、100校プロジェクトの事業主体である情報処理振興事業協会(IPA)から地域ネットワークへ通知された要請の具体的内容は、対象校のインターネットへの接続ポイントの提供、機器等の設置協力、ネットワーク接続に伴う環境設定、試験等への協力、納入機器に関する受領検収回線の接続と上位網へのトランジット、ならびに対象校のシステム立ち上げ、の諸事項であった。また、地域ネットワークの活動家たちが多数参加していたJAIN Consortiumの合宿研究会に、通商産業省情報処理振興課やIPAの担当者も参加して、依頼内容に関して熱心な意見交換を行った。地域ネットワーク側でも、これに対応する準備を行った。RIC-Tsukubaのような一部の地域ネットワークでは、導入前の準備活動として、当該地域ネットワークに接続する対象校の先生方を集めて、インターネットのシステムセットアップをはじめとする運用技術の講習会を開催した。また、他の地域ネットワークでは、あらかじめ接続する対象校を訪問して、校長先生に挨拶をしたり、設置に関する打ち合わせを行ったりした。
 地域ネットワーク側の担当者とIPAやCECとの連絡は、メーリングリストによって行われた。当初は、お互いの状況が理解できていないために、多少ぎくしゃくしたやりとりがメールで交わされたこともあったが、全体としては、この連絡方法は迅速で、十分効果を発揮した。通商産業省情報処理振興課の担当官もこのメーリングリストに参加して、地域ネットワーク側の発言に速やかに応答するケースも見られた。当時、地域ネットワーク側の担当者はIPAやCEC側にうまく意図が伝わらないため、多少いらいらしていた時期であり、このようなメールはこうした人々の気持ちを落ち着かせる効果があった。
 実際に機器の導入・設置、システムセットアップ、ネットワーク接続の作業の段階に入ると、対象校およびNOCへの機器納入業者や回線提供業者の作業および責任範囲との分担が明確でなかったり、地域によっては、納入業者のシステムセットアップが順調に行かないままの状態で停滞したりした。導入する機器の調達は、全国を四つないしは五つの地区に分けて入札を行ったため、地区ごとに異なる製品が納入されることになった。特に、対象校に導入するサーバ用のコンピュータはUNIXを搭載するシステムであったが、多くの運用実績を積んだUNIXを搭載したワークステーションが導入された地区もあれば、運用実績が少ないPC UNIXをPCに搭載したシステムが導入された地区もあった。
 問題が生じた場合、対象校はセットアップを担当した業者やCEC、IPA等と連絡を取って対処したが、地域によっては、その連絡ですぐには対応してもらえない場合が生じたりすると、地域ネットワーク側へ支援の要請があった。また、事前に対象校を訪れていたTiA(東北インターネット協議会)の場合には、問題が生じた早い段階でTiA側に対する支援の要請が行われた。TiA側では、これに応じて対象校の現場に行き、問題解決の作業に当たった。TiAが支援を行った東北地区の場合、学校側への機器納入業者が実際には複数の会社からなる共同体であったためか、仕事を分担したそれぞれの会社・部署間での連絡の不徹底がさまざまなトラブルの原因になったとTiA側は指摘している。
 システム導入時の障害は、PC UNIXが導入された対象校の場合に頻発した。そこで導入されたサーバシステムは、地域ネットワーク関係者の中には管理した経験者がいないSystem V系UNIXで動作するシステムであったため、トラブルの発生原因の切り分け作業が難航した。TiA側の指摘によれば、障害の原因となった具体的な機能は8項目に及んでいる。この種のトラブルは東北地区だけでなく、同種のUNIXが導入された他の地区でも同様にあった。このようなサーバシステムの大きな欠陥は、100校プロジェクトの電子メールの連絡網を通じてフィードバックされ、急遽、PC UNIXの新版を含めたソフトウェアシステムの入れ替え等によって対処された。当時は、選定されたPCサーバの機種にとって、他に適当なUNIXが手に入らなかったためかもしれないが、当時の状況は、BSD系のPC UNIXがフリーソフトウェアとして広く、かつ安心して使われている今日では、想像し難い昔話になってしまった感がある。こうして導入時の障害を克服しながら、100校プロジェクトの対象校のシステム運用が可能になったのは、全般的にみて1995年7月頃であった。しかし、新潟県・中郷村の中・小学校の場合には、導入直後に見舞われた暴風雨によってシステムが冠水し、その復旧にはさらに時間がかかった例もある。
 100校プロジェクトとして各対象校に導入されたシステム構成は、UNIXで運用されるサーバシステム1台とマックOSを搭載したクライアント用PCシステム1台であった。いわば、最小構成の校内LANがインターネットに接続したことになる。この当時、対象校にすでに設置されていたPCは、スタンドアロンのものも、簡単な教室内ネットワークのものも、インターネットに接続可能なものはほとんどなく、その後、それぞれの学校の努力で、インターネットに接続可能なPCが増設され、それらのPCが、上記のLANに接続され、インターネットに接続する校内LANの規模が広がっていった。
 NOCに導入されたルータ、DSUやモデム等の通信機器の現地調整作業は、納入業者によって行われ、ほとんどトラブルらしいものは発生しなかったが、数台のモデムを重ねて棚上に配置した学校で、モデムから発生する熱によってモデムの筐体が変形してしまった例があった。すぐに変形したモデムの取り替えが行われ、モデムを重ねて積み上げるような配置を避けるよう連絡がメーリングリストを通じて配信され、一部では導入されたモデムの入れ替えがあったものの、それ以後は同種のトラブルは報告されていない。

 

2.2.4 TRAINのNOC運用

 100校プロジェクトのNOC運用の例として、TRAINのNOC運用を紹介する。
 TRAIN(東京地域アカデミックネットワーク)は、1992年4月に運用を開始し、東京大学大型計算機センターにNOCをもち、東京都を中心とし、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、神奈川、山梨の各県にある大学等の研究機関を接続し、上位網として、SINETとWIDEに接続してインターネットとのトランジット機能を果たす学術系の地域ネットワークであった。100校プロジェクトの対象校の接続依頼を受けたころは、すでに約70組織程度の大学等研究機関のLANとの接続を果たしていた。TRAINのNOCは、上述の東京大学大型計算機センターに設置されているほか、山梨大学や千葉大学等にも、近隣の大学等を接続するためにNOCを設置していた。TRAINの場合、100校プロジェクトの対象校の接続を、「資料編・資料5」の図のように行った。東京大学大型計算機センターのNOCに16校、宇都宮大学のNOCに4校、千葉大学のNOCに4校、学習院大学のNOCに1校、山梨大学のNOCに5校が接続した。東京大学以外のNOCは、ネットワーク構造上では、東京大学のNOCに専用回線を介して接続する下位のNOCである。
 東京大学大型計算機センター内では、100校プロジェクトの対象校が接続された時期には、すでに70組織を超える程度の本来のTRAINの参加大学がNOCに接続されていた。1995年には16校の100校プロジェクトの対象校が、このNOCに接続された。NOCにおける実際の接続形態としては、本来のTRAINの参加組織の接続回線がつながるセグメント(実際にはハブ)とは別のセグメント(実際にはハブ)に100校プロジェクトの対象校の接続回線が接続するように配置された。
 このように接続組織と接続する回線を二つのグループに分離した理由は、障害個所の切り分けの便宜だけでなく、性格の異なる組織からなる二つのグループとNOCの間に流れる通信トラフィックも別々に識別し、監視する必要があったからである。両セグメントは東京大学大型計算機センター内にある同一のFDDIに接続され、このFDDIを通過して東京大学の対外接続セグメントTIXに接続し、ここにおいて、SINETやWIDE等の広域網や東京大学の学内ネットワークUTNetとのトランジットが行われる。100校プロジェクトの対象校の対外的な経路のデフォルトは、WIDEの方に指定されていた。
 分散NOCの例として、山梨大学のNOCの場合を紹介する。TRAINの運用が開始された1992年の頃から、山梨大学がTRAINに接続した直後、山梨県内にある大学や県の工業技術センターの組織内LANとの間をつなぐ経路は、東京回りでなく、直接接続する県内の経路にしたいこと、また、県内の大学等の組織が、近距離にある山梨大学に接続するだけで、TRAINとのトランジットを可能にするための環境として、山梨大学内に、このためのNOCを設置した。このNOCを中心として相互に接続する大学等のネットワークはTRAINの部分集合を形成するが、このTRAINの部分集合は「TRAIN山梨」と呼ばれている。100校プロジェクトの山梨県内の学校2校、長野県内の学校2校および新潟県内の学校1校が、この山梨大学のNOCに接続した。ここでも、接続セグメントは、本来のTRAIN山梨の会員グループと100校プロジェクトの対象校のグループとで、独立なものとして設置されていた。
 東京大学大型計算機センター内のTRAINのNOCにおいても、また、山梨大学内のTRAIN山梨のNOCにおいても、長期間にわたり、それぞれのセグメントの区別をして通信トラフィックの監視が行われていた。TRAIN NOCにしても、TRAIN山梨NOCにしても、100校プロジェクト対象校のトラフィックは、大学のそれに比べると、非常に少なく、平均的な大学の通信トラフィックの数%に過ぎない。
 TRAINは1999年3月末をもって、ネットワーク運用を停止し、その後解散した。TRAINだけでなく、わが国にインターネットの普及が始まった時期にインターネットの知識の普及・啓発、技術の移転、運用技術の実験的検証等の活動を通じて、インターネットの普及に貢献した学術系の地域ネットワークは、実際のネットワーク運用の役目を終え、組織も解散する時期が到来している。これらの地域ネットワークが100校プロジェクトを支援して、各地域内の対象校の接続サービスを行った時代は過ぎ去り、今やインターネットの流れは、民間のインターネット利用が大きな流れになった。このため、今後の学校教育のための使われるインターネット利用環境は、商用ISPに頼って手に入れることになろう。

 

2.2.5 学校システム

 本プロジェクトで対象校に選ばれた各学校に対して、コンピュータ機器としてサーバとクライアント各1セットと接続するハブ1台が設置された。各学校と地域ネットワーク協議会(NOC)との間の通信回線としてAグループの学校で64kbpsのデジタル専用回線で、またBグループの学校では3.4kHz(28.8kbps)の専用回線で接続され、回線の両端にIPルータ各1台、TA(ターミナルアダプター)またはモデム(28.8kbps用)各1台があるという利用環境が提供された。(資料編 資料5参照)
 AグループとBグループとでは、通信接続に必要な経費、特に利用料金の上で差があるが、将来さらに多くの学校に必要な予算規模から廉価な回線使用の可能性も考慮した。Aグループは41校(うちLAN接続4校を含む)、Bグループは70校であった。その後、学校での利用の活発化およびデジタル回線サービスの廉価版の発売に伴い、平成9年10月に34校を64kbpsのデジタルに変更し、デジタル回線校75校、アナログ回線校33校となった。各学校では最大254のアドレスを割り当てることができるクラスBのインターネットアドレスを割り振り、提供したコンピュータを核にして、従来から校内に設置されている、あるいは今後増設されるコンピュータを接続し、いわゆる校内LANの形でインターネット利用環境を拡大する可能性も考慮されていた。調達が6つの地域ブロック(北海道・東北、関東、北陸・東海、近畿、中国・四国、九州)ごとに分けて行われたためサーバは、一部の地方ではEWSが、他の地方ではパソコンが配備された。またOSはネットワークに実績のあったUNIXがサーバ・コンピュータに採用された。このことにより、サーバ管理に不慣れな学校に対して、地域ネットワーク協議会や事務局がリモートでサポートすることが可能となった。平成9年度になるとOCN、ODNのような全国規模の民間プロバイダが続々とサービスを開始したことにより、プロジェクト対象校は接続先を変更する環境が整ってきた。

 

2.2.6 本プロジェクト周辺でのプロジェクトや活動

1.全国的な動向
 100校プロジェクトが始まって5年が経過した。その間、各地で教育に関する研究会やプロジェクトが立ち上がった。1997年の「こねっと・プラン」、すなわちNTTの支援による全国で1,000校規模の情報ネットワーク接続環境整備の活動がある。文部省の118校、郵政省の30地域などに代表される、物理的なネットワーク環境は急速に整備され、教育利用に供されることになってきた。また、文部省は2001年までにすべての学校にインターネットを接続する方針を決め、その施策の実施は、地方交付税により措置されることになった。本プロジェクトの対象校をはじめ、さまざまな形によってインターネット利用環境を持つことができた学校を、それぞれの地域内で相互に接続して教育ネットワーク(クラスタ)を形成し、その中に人的ネットワークを構築・活用していくことが、次の段階で望まれる。本プロジェクトでは、地域展開として各地域における特徴的なネットワーク利用の企画を実施してきたが、そこで明らかになったことは、都道府県が全域に広がる教育ネットワークをトップダウン的に構築する場合は、一局集中型のネットワークが実現するが、市町村や学校の単位で教育ネットワークが計画される場合には、複数クラスタ型のネットワークができあがることである。学校内でのインターネットの教育利用の方法とコンテンツの開発と運用と並んで、ネットワーク運用の技術的なサポートも大きな問題である。教育センターに技術スタッフを配置することは望ましい。地域内のネットワークボランティアによる支援の体制も大切である。

2.地域における活動状況
 近年、各地域において地域ネットワークの活動が活発になってきており、特に下記の地域での活動を聞き取り調査し、後述の2.5実践事例報告にまとめた。

(1)教育センターの活動

山梨県総合教育センター(山梨スクールネット研究会:平成9年度地域展開)
山梨県における教育ネットワークの整備
教材ライブラリー・Web教材集および山梨県での地域展開の実践
尼崎市総合教育センター(視聴覚センター)
尼崎市総合教育センター(視聴覚センター)の紹介
子ども用地域画像データベース「学習に役立つリンク集」
学校間ネットワークにおける教育センターの役割
校教育情報通信ネットワークシステムの概要

(2)地域ネットワーク協議会の教育分野での活動

東海スクールネット研究会
当研究会について、プロジェクトや会員の活動を紹介
 例:活気を呼び覚まし、国際理解を含める学校間交流
中国・四国ネットワーク協議会(平成10年度地域展開)
学術系地域インターネットのNPO化について
新しい組織体制と接続サービスについて
ネットdeがんすプロジェクト

(3)地域における活動

あぶくま地域展開プロジェクト(平成9年度地域展開)
東北インターネット協議会(TIA)の活動
お山の小さな学校(葛尾中学校)の活動および地域への広がり
輪之内町教育委員会(平成10年度地域展開)
町内の小・中学校との連携(町の情報化)
教育委員会を中心に地域ネットワークの構築と学校(地域)内イントラネット
−2000年までにすべての教室からインターネットへ−
県および近隣市町との連携

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