2.4 利用企画事例について

2.4.1  共同利用企画

 共同利用企画は、100校プロジェクト対象校が応募時に提案した企画を分析して原案を作成し、その後、調査等によって決定した内容分類である。このネットワーク教育利用の企画は、研究者を中心に具体的な活動内容を事務局が計画提案して、ネットワークを通じて対象校以外の学校にも広く参加を呼びかけて実施した。

 平成7年度には、以下の五つの類型に分けて共同利用企画を実施した。その概要は次のとおりであった。

(1)情報交換型利用企画
@地域情報交換
 月ごとにテーマを決め、異なった地域の特色、ローカルなニュース、生徒の考え方の違い等の情報交換を行った。
A教育素材・教材の交換
 各種マルチメディアデータを集約し、先生が教材作成等に利用しやすいしくみを作成し、日本全国の正月のようすのデータをテーマにした。
(2)共同学習型利用企画
B全国市場調査
 各地で品物の種類や価格調査を行い、物価や季節・地域による商品の違いをまとめた。
C共同データベース
 特定テーマを決めデータベース(DB)を共同制作する企画で、そのテーマは全国各地のごみの収集や処理の仕方にある違いについてデータベースを作成した。
D酸性雨調査
 全国40か所の降雨のPH測定を行った。得られたデータをWWWにより共有し、参加校以外の方も表計算のデータを取得することができるようにした。降雨のサンプルは、専門機関で、より詳しい分析を行った。
E一本の樹
 各地の生物の生態の違いを調べる企画である。学校にある1本の樹を参加校が継続的に観察し観察記録をWWWにまとめた。その後、サクラの樹をテーマにして、共同観察を行い桜前線のようすなどを研究した。
(3)電子会議型利用企画
F身の回りの問題
 自分たちの身近な事柄について、学校ごとにテーマを決め、メーリングリストで意見交換をした。
G有識者との意見交換
 ごみ問題をテーマに専門家との意見交換を行った。メーリングリストによる意見交換に加え、CU-SeeMeによるリアルタイム会議も行った。ゴミリスというゲームソフトを使い、各地のごみ収集方法を比較し、ゲームの得点を競うなど多角的な意見交換をした。
H講演会
 「今後の高等学校(総合学科を中心に)」というテーマの講演をもとに意見交換をネットワーク上で行った。
(4)特殊教育共同利用企画
「障害による格差解消」を目的に、「特殊教育分野」においてインターネットの有効利用を図る内容のテーマを実施した。特定の障害分野に限定することなく全体的な視点に立って行った。
(5)作品展示型利用企画
Iコンテスト
 デジタル化が可能な児童・生徒の創作を対象に、ネットワーク上に構築する仮想展示空間を作って、二つの部門を想定してコンテストを行った。特定ツールを指定する部門として「幾何公園」(平成6年度情報処理振興事業協会が「教育ソフト開発・利用促進プロジェクト」の一環として開発した3次元図形のモデリングソフト)部門、およびコンピュータグラフィックによる「わたしたちの町の未来」部門を実施した。

平成8年度には引き続き共同利用企画を実施したが、その内容の概要は次のとおりであった。

@高等学校における生徒の自律的意見交換
 自由な意見交換の場を設け、生徒の自主性・自律性を促すため、各学校でのインターネット活用を基盤としながら、学校の枠を取り外した環境での交流を進め、生徒や教師そして学校間における新しい関係を構築した。さらに、このような広域ネットワークにおけるコミュニケーションの、学習支援環境としての可能性を実践的に研究した。
Aインターネットと障害児教育特殊教育関連ホームページの作成

 平成7年度の共同利用企画の課題を継承・発展させる意味から、各障害に応じたホームページなどを利用するためのアクセシビリティなどについて、広く参加校を募り研究を深めた。

Bアジア-高校生インターネット交流プロジェクト
 アジア各国はそれぞれの国の利益を第一に歴史教育を進めつつある。このような現実がある中、インターネットを活用し、日常的な教育レベルの交流を実現することにより、以下をめざした。
・アジアの明日をみつめた歴史観を育てる。
・国際言語・英語の役割をアジア圏の高校生の間に定着させる。
・日本の高校生が、受験と教養のためではない、心と心を結ぶ英語を学ぶ。
・途上国が、その将来像を描くとき日本の失敗、成功に学ぶ。
・交流によってそれぞれの国のアイデンティティを確認する。

C酸性雨調査プロジェクト
  平成7年度より継続した本プロジェクトは、平成8年度には調査方法を統一すること、および、それぞれの学校で観測したデータを参加校が共有することをコンセプトに、それぞれの学校の研究成果の公開や、研究に対する質問、専門家による指導などをホームページやメーリングリストを利用して行った。

D理科実験・観察教材データベース作成
 理科の授業などで行う、実験・観察の実施例をネットワーク上に公開しデータベース化することで、相互に活用することをめざした。

E全国おたずねメール
 全国おたずねメールはインターネットを利用する小中学生が自分の疑問を電子メールで質問できるページである。自分が知りたいことや疑問に思ったことをメールで送り、全国のメールボランティアの方に答えてもらった。

F数学における多解問題
  インターネットを通じて小中高生の誰でもが扱える内容をみんなで考え、WWWを立ち上げて、そのことをまた議論した。全国の、あるいは全世界の小中高生と意見を交換し、問題を解いてみた。

G一本の樹
 昔の人が「木」の性質をよく理解し、生活の中で巧みに利用し、木の持つ良さを十二分に発揮させている知恵等と合わせて「昔の文化」を探る学習を行っている。また、今、自分たちの生活の中で、植物が必要とされている意味や背景など、人と植物の関係を見直していくための活動にも取り組んだ。

HMe and Media
 ドイツ、オランダ、スウェーデン、エストニアの4か国の生徒と日本の生徒がメディアについてともに考える目的で作られた。各国の生徒どうしがメディアの多様な形態について意見交換をした。ここでいうメディアには次の全部を含んでいる。
・夢、良心、親、友だち、のような個人的なメディア
・学校、文化のようなマスメディア
・テレビ、音楽、ビデオ、インターネットなどのマスメディア
・エレクトロニクスメディア

I海を越え、言葉と心のキャッチボール
 日本の21世紀を担う高校生が活躍する舞台となるAPEC諸国の高校生と電子メディアを通じた交流を深めることにより、APECの将来に対する義務と責任を共有する姿勢を育てる目的で作られた。このため、APEC諸国の学校・教員が常にコンタクト、つまり「言葉と心のキャッチボール」ができるシステムを構築した。

2.4.2 重点企画

 重点企画は平成9年度と平成10年度にわたって高度なネットワーク利用として事務局が企画・立案し、参加校を募集して実施した。

(1)国際化企画

 日本発案型企画では、インターネットクラスルームと平成8年度共同利用企画であったアジア高校生インターネット交流プロジェクトがある。これらの企画をとおして、教育利用の分野において世界的に発展してきたインターネットを国際交流・国際化にどのように活用するかの研究を実施した。ほかに、Me and Mediaプロジェクト、KIDLINKへの参加等、海外の教育関連機関と連携して、学校間の情報交換やネットワークを利用した国際交流あるいは、海外の同様の企画を共同で実施することを通して、国際理解教育や語学教育を深めた。その過程で技術課題やその対応策、教育効果や問題点を明らかにした。国際交流を行う際に必要となる言葉・技術・ノウハウ等の課題を解決するため、日本から海外への、海外から日本への国際交流活動の窓口機関となることをめざして活動した。

1)インターネットを利用した国際交流の実践
 本プロジェクトは、海外教育関連機関、学校などと連携し、できる限り教科に即しつつ国際交流学習を実践することにより異文化の理解、コミュニケーション能力の向上をめざし、新しいメディアの教育への活用方法、可能性を探ることを目的とした。海外との交流に際しては、新学期のスタート時期や長期休暇等のスケジュールを事前に十分調整の上、交流実践を行った。

@インターネットクラスルーム
 平成9年度は、アメリカ、オセアニア等を中心とした海外の教育関連機関と連携してネットワーク上での国際交流を進め、以下を行い、技術課題やその対応策、教育効果や問題点を明らかにした。

・日常的な話題の題材交換を通じて、その背景にある互いの文化を理解する。
・英語力(日本側)、日本語力(相手側)の向上を図る。
・今後の国際交流の拡大をめざし、教員どうしの交流を図る。

 平成10年度は、アメリカ、カナダ、オセアニア等環太平洋を中心とした海外の教育関連機関および学校と連携し、ネットワーク上にインターネットクラスルームを設定し、それぞれの学校が抱えている問題や日常的な話題、共通の話題について意見交換し、生徒どうしができる限り教科に即しつつ英語(場合によっては日本語)による交流を進めた。太平洋を取り巻くこれらの国々に共通テーマを見出し、これをきっかけとして活発な交流の実践をした。

Aアジア高校生インターネット交流プロジェクト
 平成8年度共同利用企画であった企画を重点企画として採り上げ、平成9年度は技術的支援、平成10年度は経費支援とスクールネット研究会等の協力を得て、アジアを中心とした海外の教育関連機関と連携してネットワーク上での国際交流を進め、技術課題やその対応策、教育効果や問題点を明らかにした。
 また、平成10年度はアジアを中心とした高等学校どうしがネットワーク上で共通のテーマに従って、できる限り教科に即しつつ情報交換・意見交換を行い、アジアの経済・社会・文化の理解を深めた。また、英語のみが共通語であるこの地域において、それぞれの国の高校生がどの程度コミュニケーションを深めることが可能かを探った。

BMe and Mediaプロジェクトの展開
 平成9年度は、国内外の参加校との意見交換を積極的に行うことにより展開した。メディア(広義での情報交換のための媒体)のさまざまな意味、重要性および創造性を追求し、メディアが生徒の自己形成に及ぼす影響等のテーマについて議論を進めた。また、ヨーロッパとの組織的な交流を図るため、ESP(European Schools Project)と連携し交流を図り、相互理解を深めた。
 平成10年度は本プロジェクトを国内外へ、さらに幅広く展開した。国内では参加校を既プロジェクトの枠より広げた。

CKIDLINKへの参加
 平成9年度は、低年齢層の子どもたちが各年齢層の語学力で参加可能なKIDLINKの海外交流プロジェクトもしくはフォーラムに組織的に参加して、海外交流を進め、お互いの文化、生活に対しての率直な意見交換から自分なりの国際理解を深めた。
 平成10年度は、小学生および中学生の子どもたちが、それぞれの年齢層に応じたコミュニケーションが可能な方法(日本語、英語または美術作品-Art-写真など)でKIDLINKの海外交流プロジェクトに参加し、日常生活、学校生活、学習内容または文化等に関する意見交換を行うことにより、国際感覚を磨き国際理解を深めた。

2)国際交流支援のしくみ作り
 インターネットを利用して国際交流を始めようとしている学校向けに、編集委員会を組織して初歩的なガイドブックを作成した。

D翻訳支援体制の確立
 国際交流に際して、言葉の壁がその障害となることが多々あり、この壁を少しでも低くして、海外の学校との交流を支援する目的で、翻訳支援体制の確立をめざした。

平成10年度は「KIDLINKへの参加」のプロジェクトを対象にし、将来的には他のプロジェクトへの拡大もめざした活動をした。

E国際交流のための手順書作り
 インターネットを利用して国際交流を始めようとしている学校向けに、編集委員会を組織して初歩的なガイドブックを作成した。

(2)地域展開企画

 地域展開企画は、これまでの100校プロジェクトを通じて対象校が培ってきたノウハウをもとに、地域での教育ネットワーク運営形態のいくつかの類型を取り上げ、地域特性を加味して、ネットワークの教育利用実践事例を提供し、今後の地域での教育ネットワーク利用の普及促進を目的として実施した。
 具体的にはインターネットを普及させるために、どのような活動を地域で展開したり、教育現場に定着させるためにはどのような利用企画が有効かを、地域の活動を通して実証・検証し、その事例を報告した。また、全国の教育委員会の教育ネットワークに対する取り組みを調査し、報告した。平成9年度は都道府県レベルの教育委員会に対して平成10年度は都道府県に加えて、市町村の教育委員会も調査対象とした。
 教育ネットワークの地域における展開・普及を図るために重要な基盤として、情報通信インフラの整備とその運用と利用を支援する組織の二つがある。
 「情報通信インフラの整備」については平成10年度以降、文部省および各地方自治体における種々の施策により、順次整備充実され始めてきている。本企画ではアンケート調査を行い、その整備状況を把握するとともに、重点を「運用と利用を支援する組織」に関する調査に移すこととした。
 運用と利用を支援する組織としては教育センター等の専門担当を配備できる組織がある場合と学校独自で体制を整える場合、教育研究会やボランティア等の協力を得て運用支援が行われる場合の三つの形態が考えられる。それぞれ、教育センター型、学校交流型およびグループ交流型と呼び、以下のように定義した。

・教育センター型:教育センターが主体となり、教育ネットワークの運用管理を行う。
・学校交流型:学校(教職員)が主体となり、教育ネットワークの運用管理を行う。
・グループ交流型:教育研究グループ(ボランティアを含む)等が主体となり、教育ネットワークの運用管理を。
 平成9年度は教育センター型として、トップダウン型とボトムアップ型の二つの展開形態を報告した。さらに学校交流型およびグループ交流型をそれぞれ1形態ずつ報告した。

1)教育センター型地域展開(平成9年度)
 学校教育での情報インフラの整備・運用・活用に重要な役割を果たす組織として自治体、特に教育センター等の教育委員会関連の組織が考えられる。教育センターを核とした教育ネットワークの構築・運用、活用に関する調査を行うことにより、その活動の効果、課題を明らかにした。この型の実践地域として以下の2地域の活動を取り上げた。

@ボトムアップ型教育ネットワークが整備されている山梨県総合教育センターと山梨県スクールネットワーク研究会の活動
  山梨県教育情報ネットワークシステム「Hi-Use Net」

Aトップダウン型教育ネットワークの事例として、佐賀県教育センターが行っているネットワーク利用の試み
  佐賀県教育情報システム「EDU-QUAKEさが」

2)学校交流型地域展開
 比較的小規模な教育ネットワークの整備は学校の教職員によって構築することが可能なため、その構築・運用の実験を行った。100校プロジェクト対象校を中心として、その隣接する数校程度の学校間ネットワークの構築・運用実験を取り上げ、教育利用の実践事例を紹介した。
 平成9年度は福島県葛尾中学校を中心に東北インターネット協議会の技術的支援を受け、あぶくま地域の4校のネットワーク環境を構築・運用し、そのネットワークの利用実践を行った。平成10年度は岐阜県輪之内町教育委員会を核に管内の大薮小学校ほか3校と共同して町としての教育イントラネットを構築・運用し、その利用実践を紹介した。

3)グループ交流型地域展開
 地域の活性化をめざす地域ボランティア(研究会等)あるいはPTA等による学校との交流をとおした活動による教育ネットワークへの支援や運営をする形態が存在する。地域のボランティアと学校が協力し、教育ネットワークの構築・運用を行う事例を調査した。
 平成9年度は大分県の日田インターネットの会と日田林工高等学校、大分県の教職員のメーリングリストedu-oitaの活動を通して、教育ネットワークへの支援活動を調査し、報告した。平成10年度は中国・四国インターネット協議会(CSI)の広島市、呉市における教育ネットワーク構築活動を通して、学校(教職員)とボランティアとの教育ネットワークにおける役割分担を明らかにする活動を行った。
 また、平成9年度はネットワークをいかに地域に展開するかを中心に調査を行ったが、平成10年度は教師が教育ネットワークをいかに運用管理し、利用するか、どこまでを担当し切れるのか、また、それを支援する組織としては教育センター以外の組織で可能なのかについて調査した。

(3)高度化技術企画

 平成9年度は情報技術の高度化、回線の高速化など今後のネットワーク関連技術の動向を先取りするような技術面におけるネットワーク利用企画を実施して、今後のインターネット教育利用の在り方を調査研究する実証実験等を行った。
 平成10年度は平成9年度の成果を受け、さらにどのような先進的なインターネットの教育利用が可能か検証を中心に実施した。

@教育用レイティングシステムの運用実験
 平成9年度は学校でWWWを利用する際の問題点として、インターネット上のコンテンツには児童生徒にとって有害と思われる情報があり、教育の場における閲覧は好ましくないことが指摘されていた。この問題への対策として、レイティングシステム(情報発信を制限することなく情報に対するラベル付けに基づく設定により、「見たくない(見せたくない)」情報をフィルタリングできるシステム)の利用が有効と考えられる。本企画では、運用実験を通して学校教育におけるレイティングシステムの有効性を検証した。
 平成10年度はインターネット上に教材となる多種の情報があり、これらをできるだけ自由に検索し閲覧することが望ましいが、児童・生徒が閲覧するには不都合な情報も含まれている。有害情報の問題に対処するためには、受信側で教師の判断により選択的に閲覧する(ホワイトリスト方式やブラックリスト方式が用いられている)ことが必要である。平成9年度の実績を踏まえながら、機能面や操作面での課題(プロキシでの対応、DBとしての教育用ニーズ等)の抽出を行った。

A高速回線を用いた共同学習実験(平成9年度)
 インターネット上では動画等のデータ量の大きなコンテンツが増大している。このため将来予想される回線の高速化に即したネットワークの教育利用を図っていく必要がある。このような中で、動画や音声等を活用したリアルタイムの共同作業支援ツールの実験を行い、高速回線を用いた教育利用の効果と課題を明らかにした。

Bネットワーク上の教育ソフトウェアの共同作成と利用に関する調査(平成9年度)
 Javaなどで作成したWeb上で動作する教育用ソフトウェアは、従来と比べ、授業で短時間だけ利用するようなコンパクトな教材ソフトウェアなら比較的容易にプログラムすることが可能である。また、実行時のインストール作業も必要なく、学校などの使う場所でソフトウェアの動作・内容確認することができる点から教育用ソフトウェアの共同作成や共有化に適している。本企画では、このような小さな教材ソフトウェアを共同で作成し、蓄積し、共有利用することでインターネットの教育利用の応用拡大をねらい、また、このようなソフトウェアは教育利用の場でどのように適用できるか、また適した教科・教材や作成技術はどうかについて調査・検討し、進めていくとともに、今後のインターネット上で共有可能な教育用ソフトウェアの効果的な作成についてその方法や課題などを調査した。

(4)高度化教育企画

 教育利用面において今後の情報教育を見すえた教育・学習を実践できるような、教育現場に根ざしたネットワーク利用企画を実施して、今後のインターネット教育利用の在り方を調査研究する実証実験等を行った。

@定点観測データの共有・活用実験
 各校で定点観測型の企画が実施されているが、情報教育を実践する上で応用できるように観測結果のデータ化、データの共有および共有データの利用を行った。このことにより現場の教師がこれらのデータを活用して、子どもたちに何を学習させることができるのか、という点を考慮しながら授業の中で実践した企画は次のとおりであった。

・一本の樹(平成9年度のみ)
・お天気共同観測プロジェクト
・酸性雨調査プロジェクト
・全国発芽マップ
・ライブカメラ

A障害児童・生徒のネットワークへのアクセシビリティ改善
 平成9年度は視覚障害、知的障害および運動機能障害をもつ児童・生徒を対象に、インターネットを利用した実践を行い、障害をもつ児童・生徒のインターネット利用について有効性と課題を探った。また、この分野での取り組みが遅れている重複障害児童・生徒を対象とした教育利用に関し、今後必要とされるハードウェア・ソフトウェアの要件について調査した。
 平成10年度は要件調査結果等を参考にして、ソフトウェア、ハードウェアの開発を進めるとともに、知的障害および運動機能障害を併せもった重複障害児童・生徒を対象としたインターネットの教育利用について、ニーズ・問題点等の抽出・整理を行った。

B既存データベースの活用
 新聞記事データベースが授業で(どの教科で、どのように)活用できるかを、実践を通して調査し、同時に実践の事例を収集した。
 平成10年度は中学校での活用についての可能性を試みた。

2.4.3 自主企画内容

 平成9年度は、CGIを含んだWebページの作成支援とその技術相談、企画参加校の募集等を行うためのWebページ作成、ネットワーク利用に関する技術相談などの活動支援、および企画実施に必要な器材の貸与を行った。平成10年度は、自主企画を公募し、9年度の支援内容に加えて、企画の実施活動に伴う必要経費の支援を行った。

作成した支援プログラムの概要一覧表
機能名 概要 ソース
コード
容量
マニュアル
容量

CGIプログラムを利用した
データ登録・検索機能

 お気に入りのホームページのタイトルやURLを、キーワードやコメントとともに登録し、蓄積してデータベース化する。また、簡易的な形であるがデータベースからキーワードによって検索ができる。 19KB (A4換算)
3枚

C
G
I














時系列掲示板  Web上に掲示板を作成する。登録された記事は画面に時系列順(新しく登録された記事ほど下に)に表示される。 18KB 3枚
逆時系列掲示板  Web上に掲示板を作成する。登録された記事は画面に逆時系列順(新しく登録された記事ほど上に)に表示される。 18KB 3枚
フレーム対応掲示板  Web上に掲示板を作成する。登録された記事は時系列順に表示される。ブラウザのフレーム機能を利用し、記事のタイトル一覧と掲示文書が別のフレームに表示され、より使いやすい掲示板である。 18.5KB 3枚
CGIを利用したチャット機能 CGIを利用した、チャットライクな機能を持つプログラム。 11.5KB 2枚
Javaを利用したチャット機能 Javaを利用した、チャットライクな機能を持つプログラム。 17KB 2枚
CGIプログラムを利用した
アクセスカウント機能
Webページのアクセス数をカウントし、表示するプログラム。 2.7KB 2枚

 小学校関係では平成9年度に10校で16件、平成10年度に17校で19件の自主企画が事務局支援のもとに実施された。たとえば札幌市立幌南小学校では「国際環境教育プロジェクト」が両年度にわたって行われたほか「全国地域生活文化データベース」と「日本最大の小学生用リンク集作成」や「日本全国はてな会議」と「日常授業におけるインターネットの活用促進」のテーマで実践された。つくば市立桜南小学校では「地域の人々と一体になった情報発信(親子で作るデータベース)」や「“他校の児童や地域の人々と一体となって進める花室川環境8校プロジェクト”−花室川の調査を通しての環境協同学習−」が行われた。横浜市立本町小学校では「インターネット“青い目の人形”プロジェクト」や「みんなで街のお店紹介ホームページをつくろう」のテーマで実践された。大津市立平野小学校では「国際調査隊」や「びわこ共同学習」が行われた。
 これらの対象校以外でも両年度にわたって行われたのは、山梨大学教育学部附属小学校の「調べてみよう日本の冬」や「総合・教科学習におけるネットワーク活用のパラダイム化をめざす」と佐賀県唐津市立志道小学校の「地域に学ぶ学習材の開発と(地域)ネットワークの構築」であった。

校種 平成9年度 平成10年度
学校数 企画件数 学校数 企画件数
小学校 10 16 17 19
中学校 5 6 15 15
中・高等学校 3 3 6 8
高等学校 12 27 15 22
特殊教育諸学校他 1 1 3 3
合計 31 53 56 67

 平成9年度には宮城教育大学附属小学校、神奈川県相模原市立淵野辺小学校、神奈川県大和市立林間小学校、石川県河北郡内灘町立西荒屋小学校において、平成10年度には千葉県柏市立中原小学校、東京都港区立神応小学校、東京都調布市立深大寺小学校、横浜市立神大寺小学校、相模湖町立千木良小学校、大垣市立静里小学校、京都市立朱雀第二小学校、京都府宇治市立小倉小学校、広島県甲奴町立宇賀小学校、宮崎大学教育学部附属小学校においてさまざまなテーマで実践が行われた。その中には国際交流や地域社会との交流を促進する企画と総合学習や共同学習などが見られる。
 中学校関係では平成9年度に5校で6件、平成10年度に15校で15件の自主企画が事務局支援のもとに実施された。たとえば、笠間市立笠間中学校では「“生徒会の輪”プロジェクト」や慶應義塾普通部では「数学における多解問題」が両年度にわたって行われたほか、上越教育大学学校教育学部附属中学校では「ガイアプロジェクト」や「(EU Netday98に参加し)互いの国の日常生活について紹介しあおう」のテーマで実践された。

 平成9年度には高根沢町立阿久津中学校、坂出市立白峰中学校において、平成10年度には福島県双葉郡葛尾村立葛尾中学校、千葉県袖ケ浦市立長浦中学校、千葉大学教育学部附属中学校、上野原町立巌中学校、長野市立篠ノ井西中学校、山口大学教育学部附属光中学校、下関市立長府中学校、土庄町立豊島中学校、土佐市立土佐南中学校、武雄市立武雄北中学校、佐賀大学文化教育学部附属中学校においてさまざまなテーマで実践が行われた。その中にはCU-SeeMeを活用した学校間交流、Web上における共同学習の展開、E-メールによるコミュニケーション、国際交流や地域社会との交流を主目的とする企画などがみられる。

 中・高等学校関係では平成9年度に3校で3件、平成10年度に6校で8件の自主企画が事務局支援の基に実施された。たとえば東北学院中学高等学校と清泉女学院中学高等学校では「オンラインディベート」、「学校を越えたNetwork Communicationの試み」が両年度にわたって行われたほか、清水国際中学高等学校では「同じサーバ上の同一ディレクトリでの国際共同作業研究」や「100校プロジェクトの成果を地域に還元する実践活動」と「インターネット上のバーチャル教室」のテーマで実践された。

 平成10年度には神奈川大学附属中・高等学校において「海外校との共同研究によるホームページ作成」と「グループ研究によるホームページの制作とプレゼンテーション」、帝塚山学院泉ヶ丘中高等学校において「オランダの中の日本・日本の中のオランダ−日蘭交流史の新たな展開を探る−」、松山東雲中学・高等学校において「国際社会との交流を促進する企画」で実践が行われた。

 高等学校関係では平成9年度に12校で27件、平成10年度に15校で22件の自主企画が事務局支援の基に実施された。たとえば、山梨県立谷村工業高等学校では「地域に根ざした教育の実践(学校開放講座の開設)石川県立小松工業高等学校では「高校生の国際技術交流」が両年度にわたって行われたほか、茨城県立岩井高等学校、東金女子高等学校、岡山県立岡山芳泉高等学校、愛媛県立新居浜工業高等学校、大分県立日田林工高等学校、熊本県立小川工業高等学校、宮崎県立延岡商業高等学校においてもさまざまなテーマで実践が行われた。その中には「自発的学習環境の構築」、「情報モラル教材データベース」、「メーリングリストによる生徒会交流」、「理科実験観察データベース作成プロジェクト」、「ネットワーク通信を活用した教科指導のあり方の研究」、「ちいさな質問箱」、「県内工業高校情報交換プラザ」、「インターネットの活用による生徒会交流」などが見られる。そのほか「初心者対象メーリングリスト“わかばネット”」、「日韓遠隔相互学習」、「小中高の連携による進路学習のインターネットの活用研究」、「バーチャルマーケットによる商取引に関する研究」、「光ファイバ網を利用した教育用テレビ会議システムの高度利用実験」、「地域におけるネットワークの有効な活用方法の研究」、「TV会議システムを利用したEU諸国の学校との交流「Netd@ys 参加企画」」なども見られる。

 特殊教育諸学校その他関係では平成9年度に1校で1件(E31Project/慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)、平成10年度に3校で3件(「ホームページ・テレビ会議を活用した学校間交流/大阪教育大学教育学部附属養護学校」、「知的発達障害児のための地域に根ざした学校間イントラネットの活用/山口大学教育学部附属養護学校」、「地域に根ざした学習教材の開発と活用/山梨スクールネット研究会・山梨県総合教育センター」)の自主企画が事務局支援のもとに実施された。  


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