世界のみんなと話し合える場所ができた!
言葉の壁に橋をかけて

神奈川県大和市立林間小学校

国際交流で日本語を学ぼう
 平成9年度から始まった、新100校プロジェクトの国際化重点企画「KIDLINKへの参加」により、15歳以下の小中学生が年齢に応じたコミュニケーションの方法で、KIDLINKの国際交流プロジェクトに参加しました。国内でも海外でもいろいろな仕組みを用意して、活性化しようと準備してきました。しかし、国内の参加校がなかなか決まらず、実際にこのプロジェクトの旗揚げの会合を開いたのは、1997年10月末でした。しかも、初めて体験することの多い参加校にとって、KIDLINKについての理解をするのに時間が思いのほかとられ、順調な活動がなかなか始まりませんでした。
 初めての国際交流、
 (1)相手を見つけることの難しさ
 (2)交流を続けることの難しさ
 (3)交流を発展させることの難しさ
 (4)交流をまとめることの難しさ
等、いろいろな難しさがありましたが、国内の学校どうしが協力して取り組むことになりました。
 このプロジェクトの窓口として、林間小学校の国際教室も参加しました。林間小学校は、1989年以来コンピュータの教育利用に取り組んできました。同校の国際教室は、1996年に開設され、主に南米から来ている子どもたちに日本語を教えています。普段は親学級に属し、日本の子どもたちといっしょに学習を進めています。しかし、文化や生活習慣の違いから、子どもどうしがお互いに理解できないことも多く、苦慮していました。
 国際教室の子どもたちは、親学級が国語の授業のとき、国際教室にきて日本語の勉強をします。また、子どもたちの母国との接触という意味で、インターネットを通して交流できないかと模索を続けてきました。1997年になって、アメリカのパッティー先生と相談して、KIDLINKの世界の仲間に呼びかけ、国際交流の輪を広げることにしました。そこに、ペルーやブラジルの学校も参加してきましたので、林間小学校の国際教室の子どもたちも、日本語の勉強の様子をスペイン語で母国の子どもたちに知らせたり、絵で日本の生活を紹介したりする活動が始まりました。

国内で国際交流の輪を広げる場が必要
 さまざまな国から子どもたちが参加しているKIDLINKでは、いろいろな交流相手をさがすことができました。また、英語での翻訳支援はもとより、スペイン語での翻訳支援も受けることができて、支援体制は整い、一定の成果を得ることができました。
 その一つは、国内での場作りでした。
 先にあげたように、海外の学校との交流を始めるにあたっては、いろいろと難しい問題が山積みされていると思いがちです。ですから、この企画では、「海外の学校と交流している日本の学校どうしが、国内でも交流して、お互いの国際交流を紹介し合いながら、いっしょに学んでいこう」というテーマを作りました。そして、「どうしたら、継続して海外の学校と交流ができ、共同学習ができるか」、「授業で使える題材をみんなしてさがそう」等の課題を持ちながら活動を計画しました。国内での場作りでは、ネットワークでの交流だけでなく、CEC事務局の支援により、年に数回、事務局での会議という形で直接会って話をする機会も作ってもらいました。おかげで、そこでは、メールだけでは理解できなかったことを質問したり、自分たちの取り組みを写真を交えて紹介し、交流発展のアイデアについて話し合うことができ、安心して交流を続けることができました。

KIDLINKの掲示板
 KIDLINKはもともと、多言語サポート、多文化サポートを掲げている草の根の国際ボランティア活動です。実際には、英語を中心にスペイン語、ポルトガル語の活動が盛んでした。日本からは、言葉の関係で参加するのが難しいようでした。そこで、1998年7月、まず英語版が試用を始め、同年11月からは、日本語の掲示板が活動を始めました。たとえば、日本の子どもたちにあて、英語の掲示板に掲載されたメッセージは、日本語の翻訳文付きで、日本語の掲示板にも掲載されます。それに対して、日本語の掲示板に日本語で掲載された返事は、英語の翻訳文を付けて英語の掲示板にも掲載されるというふうに、お互いの掲示板どうしがリンクされています。そのため、子どもたちは、言葉の壁を意識することなく、日本語で直接、自由に参加することができるようになりました。
 そんな中の大ヒットが、「カブトガニを守る」というトピックでした。
 カブトガニは、生きた化石と言われ、世界でもたった4か所にしか生息していない珍しい動物です。北アメリカの東海岸(アメリカのデルマー小学校)、日本の瀬戸内海の一部(山口県秋穂中学校)、そして東南アジアの日本人学校の先生方からカブトガニの貴重な情報がよせられました。その他、デルマー小学区に、住む海洋生物の本を出版した作者、カブトガニの専門家のデラウェア大学のホール博士ともメール交換が始まったのです。その博士からは、カブトガニについてのパンフレットと模型のカブトガニを作る資料が送られてきました。日本でも、さっそくその模型のカブトガニを作り、写真に撮って紹介したところ、とても喜んでくれました。
 林間小学校の国際教室では、これらの交流の様子を逐次、印刷し、廊下の掲示板で紹介していきました。国際教室が音楽室の近くにある関係で、全校の生徒が1週間に一度は、その前を通るのです。立ち止まって興味深く見ていた子どもたち、声を出してメッセージを読んでいる子どもたち、国際教室の中からも、その様子がよくわかりました。国際教室の子どもたちももちろん、自分たちの絵をほめてもらえて、喜んでいました。
 林間小学校の校内研究のテーマは、ここ数年、「人や自然とのかかわりを大切にできる子をめざして」というものです。国際教室の子どもたちのインターネット交流における人と人とのかかわりを、国際教室の掲示板で全校の子どもたちに知らせ、全校のものにしていきたいと願ってきました。また、せっかくの機会でしたから、校内研究で、この国際教室の「カブトガニを守る」という題材の授業研究もして、全職員にも見てもらいました。
 インターネット上の掲示板、校内の掲示板、いろいろなところで、国際交流を共有していかれることは、素晴らしいことだと思っています。

お手紙交換に終わらない交流を
 海外と交流することによって、自分の生活を改めて見直し、新しい発見をするチャンスが得られると思います。それを自分のところだけで終わらせないで、国際交流をしている学校どうしが、国内でお互いの交流からさらに学び合える場を作れば、お互いの国際交流も進み、単なるお手紙交換以上の共同学習に取り組むことができるようになっていくと思います。
 点と点の交流から始まって、線と線の交流に発展させ、そしてそれが、全世界を共同学習の場にする原動力となればいいなと願って、今後も国際交流を続けていきたいと思います。

(取材対応者:島崎 勇先生) 


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