理科実験・観察データベース
インターネットの実験的活用から実践的段階へ

岡山県立岡山芳泉高等学校

さまざまな行政支援のもと インターネットの実践的活用試験段階へ
 岡山芳泉高等学校は、平成8年度より「理科実験・観察データベース」などの企画をはじめとして100校プロジェクトに参加してきました。また、岡山県の情報ハイウェイ構想に基づき、平成10年度には、全県立学校が128Kbpsの専用線でつながり、さらに平成10年5月には、同校には県の教育委員会の予算で、22台の生徒用ノートパソコンが導入されるなど、コンピュータおよびインターネットを実践的に活用できる下地ができあがってきました。
 このような背景があって、同校で行われたこれまでの活動のテーマは
・理科実験・観察データベースの新たな展開
・コンピュータを活用した授業の導入
・インターネットを活用した地域との交流
でした。


理科実験・観察データベースに 取り組んだ
 これまで、理科教育できわめて大切とされる実験・観察の実践例は、各先生が市販の書籍などを通じて入手するのが一般的で、たまに各地域等での研究会組織のような中で情報交換し合う程度だったそうです。こうした状況の中、インターネットの普及が進み、各地の先生方が、独自に実験・観察例をホームページで公開するという動きも出てきました。ところが、これらのホームページは、既存の検索ソフトなどでは検索しにくく、なかなか目的の情報にたどり着くことができないというのが現状です。
 そこで、インターネット上に点在する実験・観察例とリンクするデータベースを作成し、目的のものを簡単に探し出せるようにすることで、よりよい理科教育のための交流を図り、安全で効果的な実験・観察を行うために活用できるようにという目的で「理科実験・観察データベース」が企画されたそうです。

 平成9年度には、検索機能の強化などもはかられましたが、平成10年度は、このデータベースについてのメンテナンスはあまり行えなかったそうです。これは、主に次のような理由があったためです。
・担当している谷本先生の通常業務が忙しかった
・現在のデータベースの作成方法は非常に手間がかかる
・データベースのメンテナンスがしにくくなってしまった
 このため、リンク切れ(目的のホームページにたどり着けない)もかなり発生してしまっています。現在は、谷本先生を中心とした有志が、検索エンジンなどを用いてホームページを検索し、作者の方に了解を得てから登録するというような手段を取っていますが、目的のものが探しにくいばかりか、作者の意図が把握しにくいなど、非常に手間がかかるそうです。「検索ロボット(コンピュータを使って、インターネット上の情報を自動的に検索するシステム)を使用したり、組織的に大人数で検索するなどの手段が必要だと感じました。個人が暇を見つけては検索するという現状の方法では、実質的には実現が難しいという状況が明らかになってきたのです。」(谷本先生)。
 また、「昨年度に、CECから派遣していただいたSEの方によって、perl(ホームページの制御によく使われるプログラミング言語)を使った検索機能を追加していただきました。これによって、当初の目的であった検索機能を実現することができましたが、その反面、メンテナンスがしにくくなってしまったのです。」(谷本先生)。それまでは、谷本先生がご自身でホームページを作成していたために、ホームページの構造等を把握していました。ところが、外注の方に作成してもらったために、構造が把握できなくなり、リンクが切れてしまったものを直そうとしても、どのファイルのどこを修正すればいいのか、わかりにくくなってしまったのです。「当初、どういうメンテナンスが必要になるのか、こちらも把握できていないので、依頼もできませんでした。最初から依頼できていれば、メンテナンスもわかりやすくしてもらえたのではと思っています。」(谷本先生)。しかし、さまざまなシステムは、実際に運用していく中で、新たなアイデアや問題点が浮かんできます。このため、最初から完全なシステムを組むというのは非常に難しいのが実情です。
 そこで平成10年度は、インターネット上にある情報を検索してデータベースに登録するというのではなく、岡山県近辺の谷本先生の仲間たちで有志を募って、自主的にデータを作成するという方向で進んでいるといいます。「生徒に実験中に注意する点などを説明する際、実際の実験器具で説明しても教室の後ろのほうまでは見えません。そこで、適切な写真を撮影してデータベース化するという試みを始めました。写真画像をOHPシートに印刷することで、ほとんどの学校にあるOHPで投映できるようにと考えています。これは地域との交流という意味合いも含めて、岡山理科大学の大西教授に協力していただいて、現在作成しています。」(谷本先生)。


100校プロジェクトに参加して
 100校プロジェクトに参加してみた率直な感想を、谷本先生からいただきました。 「いろんな意味で生徒と教員の双方が新しい経験をできたということは、非常に有意義なものであったと思っています。また、コンピュータ教室に導入したパソコンのOSには、WindowsNTが導入されています。これは、100校プロジェクトに参加した中で、生徒に自由にパソコンを触らせた場合、Windows95ですと少し知識のある生徒が、勝手に設定を変更してしまったりして不都合が生じるということなどがわかったためです。これから県の情報ハイウェイの活用を進めていく上で、こういった問題点やノウハウを蓄積できたというのは、非常に幸運だったと感じています。」
 この反面、今後本格的に学校でコンピュータを利用する際には、たとえばサーバの運営・管理を誰が行うのかというような問題があることも指摘されています。学校では予算も限られていることもあり、外注するのは難しく、また外注した場合、自分たちがメンテナンスしにくくなるという状況も発生します。その一方で、負担が大きいので、先生たちへのボランティアに頼るということも難しいでしょう。このような課題をクリアしていかなければならないと谷本先生は感じているようでした。

(取材対応者:谷本康正先生)


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