アイオワプロジェクト

山梨県総合教育センター

100校プロジェクト落選校と行政
 学校に初めて本格的なインターネット利用環境を提供した100校プロジェクトは全国に大きなインパクトを与えました。でも、プロジェクトに参加できなかった学校や行政もまた、インターネットに接続する方法をさぐったのです。
 その一例を山梨県のアイオワプロジェクトに見ることができます。


アイオワプロジェクトのスタート
 アイオワというのはアメリカの州の名前です。山梨県とアイオワ州は姉妹州県の関係にあり、平成8年度から10年度まで、それぞれの学校どうしをインターネットで結んだ国際交流が続けられました。新100校プロジェクトの「地域展開企画」に参加し、「教育センター型地域展開」に取り組んだ山梨県総合教育センターの活動の発端となったのも、このアイオワプロジェクトです。
 100校プロジェクト参加校による本格的な取り組みが始まったのは平成6年度でした。山梨県では立谷村工業高校、山梨大学教育学部附属中学校の2校が指定され、ほかの学校でもインターネット活用の意欲が高まっていました。
 実はそれより先、平成5年に山梨県では地域ネットワーク設立の動きが始まり、総合教育センターにインターネットを導入する予算要求を開始したのですが、インターネットという言葉自体がまだ知られておらず、時期尚早ということで見送られていたのです。
 ところが、この平成6年になると状況は一変しました。知事がアイオワ州との姉妹州県締結35周年を記念して渡米することになり、それを機に、インターネットを利用した教育レベルでの交流を行うプランが立てられました。これがアイオワプロジェクトです。同時に総合教育センターをネットワーク拠点として整備、そこにアイオワプロジェクト参加校を接続してインターネットと結ぶという青写真も焼かれました。知事が発案したプロジェクトだけに、予算化もスムーズに進んだことはいうまでもありません。
 こうして、100校プロジェクトの本格的なスタートから2年後の平成8年度には、山梨県独自のアイオワプロジェクトとして、県立巨摩高校、県立甲府第一高校、県立甲府工業高校、石和町立石和中学校、竜王町立竜王中学校の5校に、待望のインターネット利用環境が整備されました。このうち巨摩高校と甲府工業高校の2校は100校プロジェクトに落選した学校でした。


アイオワプロジェクトの広がり
 アイオワの学校との交流活動を深めながら、情報ネットワーク活用についての研究・実践を行い、県内の各学校へのインターネットの紹介と活用の拡大のためのノウハウを獲得することが、このプロジェクトのねらいです。
 アイオワプロジェクトにはアイオワ州からも5校が参加しました。最初はお互いとも手探りの状態でしたが、生徒どうしのメール交換が進むにつれ、いろいろな企画が生まれました。
「もし日本にいたらどの学校に行きたいか」をテーマにしたメールのやり取りは、アイオワ側から提案されたミニプロジェクトです。生徒たちがその判断材料を得るために、アイオワの各学校はそれぞれ10の質問を日本語で出して、山梨側の学校がそれに日本語で答えます。山梨側の学校も同様に10の質問を英語で出して、アイオワ側の学校がそれに英語で答える、というものです。もちろん日本語はローマ字表記です。
 質問と答えが活発に往復し、質問が10を超えたところも少なくありません。やり取りの結果はアイオワの学校のクラスの討論会で活用されました。その討論の中では、学校を選ぶ判断材料として大事な「先生と生徒のよい関係が築かれているか」という質問が抜け落ちていたことにみんなが気づき、追加で質問を出したという一幕もあったそうです。
 このプロジェクトで各学校に提供されたのはサーバとクライアント1台ずつでしたが、すでに導入されているパソコンや先生たちのパソコンと結んで、独自に校内LANを整備した学校もありました。それによってインターネットに関心のなかった先生たちも加わり、学校全体としての取り組みに広がっていきました。
「100校プロジェクトの取り組みを見て、こういうことができる、ああいうことができるということがわかっていましたから、イメージはありました。ケーブルを職員室まで引っ張ってきて、先生の個人用のパソコンもつないでいきました」と、ある学校の先生は振り返ります。
 生徒たちの代表がアイオワを訪問してホームステイするなど、盛んな交流が続けられました。その模様は、平成10年度末に最終報告書としてまとめられています。


地域相互接続機構「K-NIX」
 ところで、山梨総合教育センターはアイオワプロジェクト参加校5校だけでなく、県内のすべての公立学校をセンター経由でインターネットに接続する計画をもっていましたが、県内の学校のインターネット活用意欲は非常に高く、その後、独自に商用プロバイダと接続する学校がしだいに増えてきました。市町村や学校単位で教育ネットワークが計画された結果、総合教育センターに集中する接続ではなく、負荷分散に配慮したネットワークが自然発生的に生まれたわけです。
 このため、山梨県の働きかけで平成9年12月、商用プロバイダなど山梨県内のネットワーク組織のための地域相互接続機構「K-NIX」が設立されました。
 それまで商用プロバイダを通してインターネットを利用している学校は、東京の相互接続機構を経由しなければ、同じ県内にある総合教育センターに接続できなかったのですが、K-NIXの設立によって、わざわざ東京の相互接続機構へ遠回りする必要がなくなり、県内の学校を結ぶネットワーク上の距離は近くなったのです。そればかりか、東京の相互接続機構の過剰な混雑を避けられるため、県内の通信も快適になりました。
 このようなネットワークのトポロジーは、センターなどに集中して接続する「一点集中型」に対して「クラスタ型」と呼ばれ、これからの教育ネットワークのあるべき形の一つとして、研究が進められています。

 
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