先生と生徒のための合宿

東海スクールネット研究会

合同合宿のねらいと目的
 研修といえば、教員は教員だけ、生徒は生徒だけを対象に開かれることがほとんどですが、東海スクールネット研究外が1998年夏に開催した第22回特別例会はちょっと違っていました。東海スクールネット研究会は1994年から活動を開始し、隔月の例会とメーリングリストを通じてネットワークを築いています。
 名づけて「先生と生徒のための合宿」。三重、和歌山、奈良、愛知、福井の7高校、1中学が参加し、生徒と引率教員、アジアからの留学生、それに大人の参加者を含め計80人が、京田辺市にある竜王野外活動センターに一堂に集まったのです。
 「研究会の例会と高校生の合宿の二つの計画を合わせて実施できないかなと思ったんです。高校生の中にはサーバ管理ができるような生徒もいますから、大人と区別する必然性はない。一緒に講習会を行って、高校生でも経験者は希望する大人の講習へ参加すればよいことにしました」
と、東海スクールネット研究会の代表世話人である古井雅子さん(愛知県立中村高校教諭)は、この合宿を企画したねらいを話します。
(1)学校間で協同で行う生徒のインターネット利用の研修の機会を設ける。
(2)インターネットを利用して協同の活動をする学校の生徒どうしのオフラインの会を行う。
(3)東海スクールネット研究会の大人の研修の機会とする。
 三つの目的を掲げた、よくばりな2泊3日の野外研修です。


生徒と同じ釜のめしを食う 研修内容の実際

 竜王野外活動センターにはコテージ風のバンガロー5棟と2階建てのクラフトセンターがあります。野外活動施設でありながら、京田辺市立12小中学校を結んだ学校間ネットワークのサーバ施設がクラフトセンター棟の2階に設置され、「緑に包まれたネットワークセンター」として知られています。
 生徒たちは5棟のバンガローに分かれて宿泊しました。昼間はクラフトセンター1階のクラフト室でインターネット利用の研修会や交流会を行いました。「ネットワークエチケット」、「正しい電子メールの打ち方」、「WWWページ作成基礎講座」といったメニューです。
  一方、先生たちはクラフトセンター2階のコンピュータ室で研修会を受けましたが、こちらは生徒たちと違って、「ケーブルのいろいろ」、「ネットワークトラブルに対する対処法」と一歩進んだ内容です。バンガローの空きがないため、大人の寝場所はサーバとパソコンに囲まれた同じ部屋だったとか。
 先生と生徒の研修はそれぞれ別プログラムで進行しましたが、サーバ管理やJAVAの講座などには、希望する高校生も参加しました。古井さんのいうように、大人だから生徒だからと線を引いて分ける必要はないわけです。
 参加した高校生の一人は合宿中に作ったホームページに、こんな感想を書きました。
 「2日目は、2階のコンピュータ室に一日中いて、いろいろとおもしろい話を聞かせてもらいました。ちょっと難しい話が多かったですけれど、役立つものばかりで、来たかいがあったなぁっと…」、「さて現在は3日目、セキュリティの講義を聞きながら、これを打ち込んでいます。これもなかなか難しい。友人のハッカー曰く、Windows NTなんか楽勝だぜって、その話がどんどん裏付けられているような気が……。やっぱりサーバは、UNIXを使ったほうがいいということなのでしょうね」
 大人も顔負けです。
 ただし、食事の調理は先生たちの役割でした。生徒の自炊では準備に時間がかかりすぎて、肝心の研修に時間をとれないと判断したからです。しかし、配膳やあと片づけは生徒が行い、まさに「同じ釜のめしを食った仲間」です。2日目の夜には野外の芝生広場に集まって大クイズ大会が行われ、先生たちが持参したネットワーク関連グッズ、各地のおみやげ、マウスパッドなどの豪華な景品を競い合う盛大な大会となりました。
 5棟のバンガローとコンピュータ室の間に光ファイバケーブルを渡して高速LANで結び、夜間はバンガローでもインターネットが使えるようにしました。生徒たちには1人1台のノートパソコンが用意されていたので、バンガローに戻ってからも、ホームページを作成すること、電子メールを使って講師の先生の指定された内容を合宿用メーリングリストに返事として送信すること、などの課題をこなしました。
 「睡眠時間を削って、オンラインゲームをしたり、チャットなどを楽しんだ生徒も、どうやらいたようです」と古井さんは笑います。


研修後の生徒たちの感想
 生徒たちには、とても新鮮な体験でした。
 「いろいろな先生からネチケット、ホームページの作り方、Javaなどを習いました。とても興味深いことがありました。ホームページの作り方は前から知っていたので簡単だったけれど、ネチケット、Javaは半分ぐらいしか理解できませんでした。」(中学生のH君)
 「とりあえず、自分でWebページ作るための最低知識は仕入れることができたと思うので、今後に生かしていきたいです」(高校生のN君)
 もちろん先生たちにとっても普段は味わえない体験です。
 「教師だけ、生徒だけというのは、たぶんいくらでもあると思うが、両者がそれぞれの立場で行うのは珍しいのではないか。参加した生徒を見ていると、それなりに生意気な生徒もいるので彼らを挑発しながらおもしろい議論はできないだろうか」とH先生。
 いってみれば、インターネットは先生も生徒も横一列になってのスタートですから、今後は逆転して、生徒たちが先生より進んだ内容の研修を受けることだっておおいに考えられます。
 ところで、生徒は1階、先生は2階で行われた研修。内容だけでなく、もう一つ大きな違いがありました。じつは、サーバ室は保守の関係で冷房がきいていますが、クラフト室に冷房はないのです。もちろん、そのせいで大人の研修を受講したわけではありません。
 「とにかく暑かったです。1日目は汗をだらだら流しながら、講義を受けていました」とY君。
 それが少しも気にならないほど、充実した3日間でした。

 
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