リモートインストール

中国・四国インターネット協議会(CSI)

実験が証明するリモートインストール、 リモートメンテナンスの有効性
 学校にサーバを設置した場合、そのサーバのメンテナンスを誰がするかは、学校の情報化を進める上で大きな問題ですが、中国・四国インターネット協議会(CSI)が中心になって進めている「ネットdeがんす」プロジェクトは、次のような実験を行いました。
 プロジェクト参加校の一つ、広島市立井口明神小学校で1999年1月、「ネットdeがんす」のミーティングが開かれたときのことです。ミーティングには約10人のスタッフが集まり、午前中から夕方まで会議は続きました。
 その同じ時間、井口明神小に持ち込まれた同小学校のサーバと同じ機種、同じ設定のパソコンに、ネットワークを経由して遠く離れた広島大学の研究室から、システムをリモートインストールするための実験が行われたのです。ミーティングの参加者は実験のことを知っていましたが、誰の手をわずらわせることもなく、ミーティングが終わるころには実験も終了しました。
 井口明神小のサーバはFreeBSDというPC-UNIXを使い、「ネットdeがんす」プロジェクトによって128Kbpsの専用線でインターネットプロバイダに接続しています。ちなみに、広島大学は1.5Mbpsの専用線で、同じインターネットプロバイダに接続しています。
 実験は、井口明神小に持ち込んだサーバに広島大学の研究室からログインし、ハードディスクの中身を研究室にあるパソコンにバックアップし、次にバックアップしたものをもう一度、井口明神小のサーバに戻す、というものです。このときは途中にファイル圧縮の操作を含めましたが、基本的にUNIXのdumpとrestoreという二つのコマンドを使った実験です。
 dumpコマンドは、ハードディスクなどのバックアップに使われます。ハードディスクの中にあるファイルだけをコピーするのではなく、ファイルシステムの情報などを含めて、そっくりまるごと複製を作ります。一方、restoreコマンドは、dumpコマンドでバックアップした複製を、元に戻すものです。
 まずdumpの実行に1時間40分、次にrestoreの実行に2時間かかりました。これが実験の結果でした。
 もし正常に動いているサーバのバックアップをあらかじめ研究室で用意しておけば、遠く離れた学校のサーバにログインし、それをrestoreコマンドで移し換え、正常に動いているサーバと同じ働きをさせることができるわけです。しかも、操作する人間は広島大学の研究室にいるだけで、井口明神小のサーバの前には誰も立ち会っている必要はありません。  
「サーバ管理の中でバージョンアップは重要な仕事ですが、個別の学校に足を運んでバージョンアップを行うのは大変です。ところが、この方法を使うと、管理者は大学にいたまま、学校の先生の知らないうちに、サーバのフルバージョンアップができる。フルインストールもできます。楽に管理できるわけです。」
と、学生たちを指導して実験を行ったCSI運営委員で広島大学総合情報センター助教授の相原玲二さんはいいます。
 「ネットワークは道路、パソコンは車です。道路がないとスーパーカーでも走れないように、この二つは分けて考える必要がある。逆に、パソコンは多少古くて珍奇でも、しっかりしたOSをインストールしておけば、あとは何とかなるんですよ。」
 PC-UNIXには初心者にわかりやすい管理者向けマニュアルがなく、またOSのバージョンによっても出てくるメッセージが違うため、敷居が高く、敬遠されがちですが、半面、安定して動作し、このように管理もリモートで楽にできることは、一般にはあまり認知されていません。
 ネットワークを経由したサーバ管理は今後、必要になってくることが予測され、それを可能にするのは、相原さんの言葉を借りると「ちゃんと動くサーバと、安定したネットワーク環境」であることを、この実験は示しているのです。
 「ネットdeがんす」プロジェクトは、これまで小中高校8校にネットワーク接続環境を提供してきました。各校とも井口明神小と同じようにFreeBSDのサーバを設置していますが、そのインストールは、学校の先生にCD-ROMを手渡し、自分たちで挑戦してもらったそうです。
 画面の写真を入れて、そのとおりにインストールが進行するマニュアルを用意したのですが、へたをすると3〜4回もやり直し、やっとのことで、どうにか動く程度にインストールできました。先生たちの感想も「つらかった」のひとこと。何がつらいというのではなく、すべてがつらかったというのもうなずけます。
 でも、そうやってFreeBSDのインストールに思い切り苦労させられた先生たちは、この実験を知ったとき、ため息混じりに、こう口をそろえたそうです。
 「なんで、はじめからこれがなかったんですか!」
 それを聞いて、相原さんは、ニヤッと笑います。
 「それでこそ、ほかのOSと冷静に比較できる」


「ネットdeがんす」プロジェクト
 ところで、CSIによるサポートのもとで、100校プロジェクト参加校を支援するために始まったschool@csi(中国・四国インターネット教育利用研究会)が、衣替えしてスタートを切ったのが「ねっとdeがんす」プロジェクトです。
 「school@csiの活動で、離れているより、みんなが会うことが大事だとわかりました。一つの県で1人2人がバラバラにがんばっているようでは、相乗効果はありません。県全体あるいは都市部に10〜20ぐらいの規模があって、はじめてうまく動くんです。だから、広島地区で10校ぐらいを集中的に接続し、教育利用の実践的研究と、外部組織からの支援のあり方などを検討していくプロジェクトとして動き出しました。」
と、相原さんはねらいを話します。
 学校を接続するといっても、単に接続するだけではないのが、異色あるところです。その精神をひとことでいえば、
 「つまらないネットワークを作ってはいけない。」
 この言葉に凝縮されています。

 
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