美術科授業研究
−インターネットを使った共同制作−

高等学校第1学年・美術
北海道札幌新川高等学校 美術科 吉岡 隆
キーワード 高等学校,1年,美術,インターネット,共同制作


インターネット利用の意図
 新学習指導要領,高等学校・美術において表現の分野として映像メディア表現があらたに加わり,来年度から実施される。この授業では「さっぽろ雪まつりの雪像アイデア」を写真,コンピュータなどの映像メディアを生徒が主体的に使って表現し,インターネットを利用して他校児童・生徒と交流することを通して雪像アイデアのイメージを共有し,共同制作を行う。


1 SNOW SQUARE PROJECT
(1) ねらい
 コンピュータやデジタルカメラなどの映像メディア表現と絵画・デザイン・彫刻などの表現を組み合わせながら「さっぽろ雪まつり」の雪像のイメージを製作し,絵の電子メール「ボトルメール」でアイデア交換することによって,生徒の感性と美的体験を豊かにし,美術を愛好し心豊かな生活を創造していこうとする心情を育てる。
 また,異なる地域の他校児童生徒との交流・共同制作の活動を,日本やアジアの文化や伝統を理解する機会として表現にいかす。

(2) 指導目標
 さっぽろ雪まつりの雪像は雪積みされた大きなブロックを削り出して制作する。そこで,第1段階として立方体を迷路のようにペイントソフトを使って等角投影図法で表現したスケッチを描き,次にそのスケッチをもとに粘土で具象的なイメージを加えて制作し,デジタルカメラで撮影した作品をそれぞれボトルメールで送りあうことで生徒どうしのイメージの共有化を図ることにした。
 送信されたボトルメールはすべてWWWに掲示されるようにシステムを構築し,他校の児童生徒とも電子会議室を使って雪像の共同制作プランの話し合いを行わせることにした。

(3) 利用場面
 
この授業では、次のような学習場面でインターネットを利用する。
 1 ボトルメールを使ったアイデア交換
 2 送信されたすべてのボトルメールをWWW閲覧
 3 FirstClass電子会議室での話し合い
(4) 利用環境
(a) 使用機種
 ・コンピュータ     IBM 300GL        40台
 ・コンピュータ     PowerBook 2400c      1台
(b) 周辺機器
 ・デジタルカメラ    SONY MAVICA        1台
(c) ソフトウエア
  ・Paint Shop Pro (ペイントソフト)
  ・ボトルメール (電子メールソフト)
(d)稼動環境
  ・OSNエコノミー128K専用線
  ・先進的教育用ネットワークモデル地域事業 光ファイバー 1.5MG 専用線
  ・校内LANにより、コンピュータ教室42台、美術教室、進路指導室にて常時インターネットを利用できる。
  ・WWW,MAIL,TPサーバ 1台
  ・First Class Intranet Server 1台
  ・全職員、全生徒のメールアカウントが用意されている。
 
2 指導計画

時間配当

指導計画(全16時間)

 

 

(a) PaintShopProを使って等角投影図法で立体をデザインする。

(等角投影図用の方眼紙を用意,配布)

 

 

 

★インターネットの利用

 

(b) ボトルメールにスケッチをペーストして送信する。

 

 

★インターネットの利用

3.      

4.     WWWの掲示板に送信されたすべてのボトルメールがアップロードされるので,他の生徒の作品を鑑賞した上で,グループごとに具象的なイメージを加えて粘土模型を制作する。

 

 

★インターネットの利用

 

 

·  デジタルカメラを使って模型を撮影し,ボトルメールを使ってWebの掲示板へアップロードする。

 

 

★インターネットの利用

 

 

他校児童・生徒とFirstClass会議室を使って意見交換する。

 


3 利用場面
(1) 授業準備
 今回の授業でボトルメールを使うにあたり,「いつ誰に届くかわからない」ボトルメールの特徴を残した上で,雪まつりのアイデア交流を行なう学校どうしでやりとりを可能にするグルーピング化されたボトルメール,シェアウェアの登録用ファイル,送信されたすべてのボトルメールをホームページ上で閲覧できるシステム(図1)を開発元のリクルートメディアデザインセンターに提供していただいた。
 また,今回使用したボトルメールVer2.0は,Macintosh版が先にリリースされた為,学校企画予算でPowerBookをコンピュータ教室に設置して,Windows版がリリースされるまで使用することにした。

1 送信されたボトルメールをホームページで閲覧するシステム

http://bmail2.kids.recruit.co.jp/vsnow/

(2) 目標
1 等角投影図から具象的なイメージを加えて粘土で制作した模型を,ボトルメールで加工して送りあう。
2 ボトルメールで送られたアイデアを見ながら,FirstClass電子会議室を使って,他校児童・生徒と意見交換する。
(3) 展開

 

学習活動

 

 

活動への働きかけと支援

 

 

1 本時の学習の進め方を知る。

 

 

・ボトルメールで送られたアイデアをホームページで閲覧。

 

 

粘土模型の写真を使って雪像のアイデアをボトルメールで送ろう

 

 

2 粘土模型にさらにイメージを付け加える。

 

·         粘土模型の写真をペイントソフトやボトルメールのペイント機能を使って加工する方法を知らせる。

 

 

 

2000年の雪まつりのテーマとの関連や,参加する学校の地域にあるものからイメージを広げる。

 

 

 

3 ボトルメールでアイデアを送りあう。

 

 

・同時にアイデアの説明を作品とともにクラスの会議室へアップ  ロードさせる。

 

 

 

FirstClass電子会議室で他校の児童・生徒と雪像のアイデアをまとめよう

 

 

FirstClass電子会議室で意見を交換してアイデアをまとめる。

 

 

沖縄の小学生から提案された首里城の「龍柱」をもとに雪像のアイデアとテーマをまとめさせる。

 (首里城の龍柱)

 

 

4 実践を終えて
 過去2回ボトルメールによる「さっぽろ雪まつり」の雪像アイデアの交流を行なってきたが,ボトルメールを使う授業場面ではいつも歓声が上がり,生徒はどんなメールが届くのか楽しみにしている。雪まつりの雪像アイデア交流では,アイデアスケッチを交換する活動が大きなウェイトを占める為,電子メールの添付ファイルやWebの画像掲示板を使ってきたが,ファイルサイズの問題や操作が子供たちに難しい点,そして何よりも学校でインターネットを利用できてもメールアカウントを持っていない児童生徒たちが多いことなどから,もっと気軽に楽しんでアイデアを交換できるツールがないかと思っている時に偶然目に留まり,使用目的を話して開発したリクルートメディアデザインセンターに相談した。
 グルーピング化は,開発当初より可能であったが,システム的にメーリングリスト化ができない為,送信するとすべてWebにアップロードされる仕組みを作ってもらい,まずボトルメールでアイデア交換をしてから,最後のまとめはFirstClass会議室で行なうことになった。
 今回は,2000年の雪まつりということもあり,初めて参加した沖縄の小学生たちから提案された首里城の「龍柱」をモチーフにした雪像をつくることになり、今まで授業の中で取り上げられなかった日本やアジアの美術について学習する機会ができた。
 また毎年この交流に参加する学校が増えてきており,今後の美術教育では映像メディアを使った表現とインターネットを利用して,他と交流していく授業の実践が重要になっていくと思われる。

ワンポイントアドバイス
 
ボトルメール(http://www.kids.recruit.co.jp/bmail/)は,ユーザーが遊び方を考えて使う電子メールであり,今までにも仙台七夕の短冊やネットデイのイベントなどに活用されている。本校でも来年度は「絵の連想ゲーム」の授業を計画している。
 また、今回の雪まつり交流では、メディアキッズ(
http://www.mediakids.or.jp/)のFirstClass電子会議室を利用した。メディアキッズは、さまざまなテーマで学校間交流や共同研究に取り組んでいる。


研究協力校
神奈川大学附属中・高等学校,滋賀県立日野高等学校,横浜市立大口台小学校,清川村立宮ヶ瀬小学校,標茶町立阿歴内小中学校,琉球大学教育学部附属小学校,美杉村立太郎生小学校,春江町立春江小学校,札幌市立丘珠中学校

利用したURLなど
ボトルメール (http://www.kids.recruit.co.jp/bmail/
神奈川大学附属中・高等学校の生徒が制作したこのイベントのホームページ
http://www.kids.recruit.co.jp/ssp/