総合学習を活性化する企画
小学校・総合的な学習
宮城教育大学附属小学校 情報教育委員会
キーワード 小学校,全学年,総合学習,インターネット,電子メール,学校間交流(フェニックス)
1 インターネット活用の意図
本校では,「一人一人の子どもが自分で追求してきたことを相手に伝えたいという思いをもち,自分なりに豊かに表現できる力,そして,よりよく生きようとする力を育てていきたい」という願いのもとで総合学習に取り組んでいる。
3年生以上の子どもたちは,日常生活の基盤である「仙台」を最大限に生かしながら,身近なところから自分の興味・関心に応じた課題を見つけ,追求し,表現していく活動で構成された「仙台とわたしたち」という単元に取り組んでいる。
そして,自分たちの「仙台」について追求したいことを学年の発達段階に応じて,様々な場面でインターネットを活用し,WWWから情報を検索したり,本校のホームページから情報を発信したり,フェニックス会議なども積極的に活用したりしていく。
そのような活動を通して,総合学習を一層活性化し,自分たちの町「仙台」の特色やよさに気付かせたり,他の小学校や地域の人との交流にもつなげていきたいと考えた。
2 各学年の実践事例
(1) 第3学年 総合学習「仙台七夕とわたしたち」「けやき探検隊・昔の仙台へ出発!」
(a) ねらい
東北三大祭りの一つである「仙台七夕」について調べ,自分たちの七夕飾りを作って飾ることができるようにするとともに,仙台に伝わる行事や祭りなどを調査・追求し,「わが町」仙台に対する理解と愛着を深めることができるようにする。
(b) 指導計画について(インターネット活用場面)
(c) 実践事例
○「仙台七夕とわたしたち」での実践
図1 |
○「けやき探検隊・昔の仙台へ出発」での実践
この単元では,グループごとに分かれて仙台に伝わる行事や祭りなどを調べ,一枚新聞にまとめていく活動である。子どもたちから出されたテーマは (a) 光のページェント,(b)どんと祭(小正月),(c) 仙台青葉まつり,(d) 仙台七夕まつり,(e) 昔話や民話 などであった。その中で(e) を除く4つのグループが調べる手段の一つとしてインターネット上のWWWを活用した。
予め,URLを「ブラウザ」の「お気に入り」に登録しておき,自分の調べたいことに応じて調査を進めることができた。また,家庭でコンピュータを操作し,参考になるホームページをプリントアウトして学校に持ってくる子どもも見られた。3年生の子どもにとって,インターネットがそれぞれの追求テーマの調査活動の一手段として加わったものと考えられる。
【http://fu-syou.miyakyo-u.ac.jp/gakushuu/sougou/h11sogo/sogo3nen.htm】
(d) 実践を終えて
97年度から始まった「インターネット七夕短冊」の企画については今年で3年目を迎えた。宮城教育大学の安江研究室の全面的な協力を得て完成したものである。今年も多くの参加をいただき,542通を数えた。世界中からのメッセージに子どもたちはもとより,皆様の熱いメッセージに私たちの夢も膨らんでくる思いである。本企画は,今後も継続したい企画であり,本校の伝統としていきたいと考えている。
(2) 第4学年 総合学習「川とわたしたち」
(a) ねらい
一人一人の発想や願いを生かしながら,七北田川で遊ぶ,調べるなど直接体験活動をしたり,体験したことや考えたことをまとめたりできるようにするとともに,川に親しみ,身近な自然を大切にしようとする心情を育てることをねらいとした。
(b) 指導計画(主にコンピュータ活用場面)
(c) 実践事例
○発表資料づくり
図2
七北田川探検は「草花」「環境」「生物」「川のつくり」の4つのグループに分かれて調査活動を行った。中流,上流,下流の順に探検を終えた後,全体発表会を設定した。グループごとの調査研究を互いに見合うことで学び合うことができると考えたからである。
4つのグループの中で「川のつくり」グループが,(株)パスコとの共同開発をしているGISソフト「七北田川コンテンツ」を使い,コンピュータで発表資料作りを行った。
子どもたちは,入力方法にもすぐに慣れて資料作りを積極的に進めていった。休み時間や放課後などにもグループごとに集まって入力を行うこともあり,コンピュータ活用による効果が感じられた。また,写真など画像データの取り込みも容易に行うことができ,これまでの発表資料よりも実際の探検の場面を想起できる生きた資料を作ることができた。
○全体研究発表会
大画面のモニターを使った発表によって,写真や文章も見やすく,視覚に訴える発表することができた。発表する子どもたちはコンピュータの操作にも慣れて,分かりやすく,しかも円滑に発表をすることができた。
(d) 実践を終えて
子どもたちは発表会を終えて,満足感をもつことができたようである。これはコンピュータ活用によって充実した資料作りと発表を行うことができたからである。今後は,(株)パスコと共同開発しているGISソフト「七北田川コンテンツ」をインターネット上で活用できるようにするなどの一層の改良を進めて,「川とわたしたち」の総合学習がより充実した活動になるように実践研究を重ねていきたい。
(3) 第5学年 総合学習「杜の都仙台とわたしたち」(環境)
(a) ねらい <山梨大学附属小との交流>
環境問題等の総合学習の取り組みの情報交換を通して,それぞれの総合学習の今後の追求に生かすことができるようにする。また,テレビ会議(フェニックス)のリアルタイムでの通信を通して,山梨大学附属小と本校で継続的に交流し,その可能性を探る。
(b) 活動内容(実際の活動について)
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(c) 実践を終えて
山梨と宮城で総合学習の内容(環境)で共通点があったため,リアルタイムで情報交換をすることは非常に価値のあることであった。また,その地域での取り組みなどを知り合えることで総合学習の活動に深まりが見られた。しかし,上記のように回線やハード面での多少改善は必要であった。なお,TV会議の授業のVTRは,動画でアップしています。
【http://realsv.ipc.miyakyo-u.ac.jp/isao/fuzoku/】
(a) ねらい
自分で取り組んでみたいテーマを設定し,実際に触れる,見る,聞く,作るなどの体験活動を通して,仙台の歴史や文化に触れたり表現したりする追求活動を行うことができるようにする。さらに,歴史や文化を受け継ぐ人々に心を通わせることができるようにするとともに,ふるさと仙台への愛着を深め,未来に向けて自分の考えを提案できるようにすることをねらいとした。
(b) 指導計画について(インターネット活用場面)
(c) 実践事例
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追求活動Iでは,「仙台に生きるわたしたち」というテーマから,子どもたちの興味関心を生かして6つの課題(a:ふるさと仙台の味を求めてb:新交通システムc:人に優しい街作りd:伝統芸能e:スペイン語で楽しもうf:仙台歴史探訪)を設定した。さらに,追求IIでは,これらを発展させて個人テーマを設定した。
子どもたちは,様々な追求方法で課題解決に向かっていった。実際に担当している方を訪ねたり行政の窓口や現場,工場を訪ねたりするなど,実体験をしながら追求する姿が見られた。その中で,インターネット上の情報をフル活用して追求した子どもも多く見られた。ア)のテーマは,LRTについての参考文献が見つからず,ホームページしか頼れる情報源はなかった。また福祉関係や仙台の方言,アメリカの文化などのWWWを活用できた。
参考URL 【http://member.nifty.ne.jp/N_Urayama/】(杜の都からの路面電車報告会)
【http://www.urban.ne.jp/home/yaman/】(路面電車を考える館)
(d) 実践を終えて
子どもたちは,追求したまとめをワープロで打ち込んだ。さらに,6年生全員分の提案をホームページにテーマ別に掲載予定である。この1年間の活動の中では,インターネットの活用などを含めて3年生からの情報リテラシーの積み上げが感じられ,最上級生ならではの追求する姿が見られた実践であった。
2 実践を終えて
本校の総合学習を活性化する上で,インターネットが果たした役割は大きい。図書室の文字情報だけでは,見つけることのできないものがネット上に豊富にあるからである。それは,各学年に掲載されているURLを見ていただければ分かっていただけるだろう。
インターネットを活用するためには,3年生を迎える前にコンピュータ・リテラシーを育む必要がある。下表は,これまで平成7年度「100校プロジェクト」からの実践を通して,まとめ上げた本校の情報教育指導計画の一部である。実線部分は,その学年で必ず指導すべき項目,点線部分は,子どもたちの実態に合わせて適宜指導していく項目である。1,2年生からワープロソフトに触れさせて,マウスの操作だけでなく,キーボードの操作にも抵抗なくできるようにと考えている。また,この指導計画は,家庭でのコンピュータの普及状況や子どものリテラシー向上に合わせて弾力的に運用していくことになる。
今回の実践を通して,インターネットを活用して情報を収集することは,子どもたちにとって大変身近なものになった。と同時に,他校との交流の中で自分のものの見方や考え方を広げるきっかけにもなっていったようである。
また,私たち教師間でも様々な情報がこれまで以上に行き交い,だれもが抵抗なく使える情報ツールになりつつある。これは,他のメディアと大きく違い,常に最新の情報が見付けられるということが大きい。
しかし,子どもたちが,ホームページで自分たちから情報を発信していくという点では今後の大きな課題である。指導計画にはまとまったものの,キーボード・リテラシーが大きなネックになっている。また,子どもたちによっては,週に1度のCAI教室での活動になるので,なかなかコンピュータと触れ合えないということも考えられる。校内でのコンピュータ配置の仕方も見直す必要があると感じている。
今後は,他のメディアと融合した使い方になっていくだろうが,そのとき,子どもたちにインターネットから得た情報を絶対視するような感覚をうえつけることのないように,直接体験の大切さやインターネットの向こうには「人」がいることも忘れることなく推進しいきたい。
ワンポイントアドバイス (a) 子どもたちにホームページで情報検索させる際には,教師側である程度関連サイトを調べ,ブックマークやリンク集などを作成しておくのがよい。 (b) 海外日本人学校や国内の学校との交流をする場合には,メーリングリストなどを活用して,広く呼び掛ける方法がある。 (c) 学校内だけの人材に留まらず,ネットワークに詳しい方を保護者やインターネットなどを通して,支援してもらえる体制を整えておくとよい。 |
参考文献
だれもが身につけたいコンピュータの授業活用(ぎょうせい刊)全国教育研究所連盟編
特色ある教育活動の展開のための実践事例集
「総合的な学習の時間」の学習活動の展開(文部省)教育出版シリーズ
新しい授業を創る4 メディアを活かす授業づくり(ぎょうせい刊)
利用したURLなど
YAHOO!きっず (http://kids.yahoo.co.jp/)
日本人学校プロジェクト(http://www.ak.cradle.titech.ac.jp/ngp/)
ふるさとの方言(http://www.itl.atr.co.jp/dialect/)
仙台市ホームページ(http://www.city.sendai.jp/index.html)
仙台市科学館 (http://web.smus.city.sendai.jp/)
宮城県ホームページ (http://www.pref.miyagi.jp/)
学研サイエンスキッズ(http://kids.gakken.co.jp/kagaku/index.html)