Eメール海外交流による国際理解教育の推進
小学校特別活動(クラブ活動)・英語教育
福島県会津若松市立松長小学校
教諭 二瓶麻里子 高橋宣朗
matsu@city.aizuwakamatsu.fukushima.jp
キーワード 小学校,クラブ活動,英語教育,電子メール,産学連携
インターネット利用の意図
会津若松市では,平成9 年度から小学校における英語教育を試験的に進めている。具体的には,会津大学の村川久子教授が開発した英会話教材「アイと裕太の英会話パスポート」を導入,あわせて(株)会津リエゾンオフィスの協力を得て会津大学の学生などのインストラクターを確保し,クラブ活動での英語教育を実施している。平成10年度では6 校,平成11年度の後半からは10校,平成12年度には全15校と段階的な実施を進めている。
国際理解教育は,他国の人々との交流を通して,お互いの相違点と共通点を認識させ,最終的に「共生」の考えを理解させることである。相手に自分たちのことを知らせると同時に,その原点として自分の住む地域や学校を見つめなおすことが重要である。
この事業においては,インターネット(電子メール)を活用することにより,児童に国際的な交流を行わせ,クラブ活動で習得した英語を実際に活用させようとするものである。反面,小学生4〜6年の児童に英語で電子メールを行わせることには限界があるため,翻訳支援のインストラクターを確保し,充分な支援体制を整えた。
また,相手方との学期の違いを考慮し,交流期間を10〜2 月に限定した。
1 クラブ活動におけるEメール交流
(1)
インターネット接続以前
平成9 年度に文部省の学習用ソフトウェア研究開発事業の委託を受け,小学生を対象とした教材「アイと裕太の英会話パスポート」が産学連携で開発された。これは,会津若松市立鶴城小学校における徹底した現地調査をもとに,小学生の行動パターン,使用文章を60ストーリにまとめたもので,会津大学村川久子教授と会津地域のベンチャー企業が共同開発したものである。
この産学連携による教材開発を契機として,「英会話とインターネットの活用で学校教育の向上を」というコンセプトが会津若松市で確立された。
(2) 平成10年度
市内6 校で英語クラブを設置,あわせてインターネット環境を整備し,11月からアメリカ・マサチューセッツ州クインシー市ビーチウッドノール小学校との電子メール交流を開始した。
(3) 平成11年度(Eスクエア事業該当)
平成10年度までの実績をもとに,継続6 校を対象として,引き続き10月から電子メール交流を行う(新規4
校はEスクエア事業非該当)。交流2 年目に入ることから,より深いレベルでの交流を進め,児童の自主性・能動性を高めながら,多様な情報交換や英語表現手法の習得が大きな目標である
(4) 指導目標
これまでの交流実績をもとに,さらに一歩踏込んだ情報交換と英語表現を通じて,国際理解能力を育むことを目標とする。
1) 英語表現
インストラクターの支援を得て,アメリカで日常的に使用される簡易な英語表現を習得する。引き続き「アイと裕太の英会話パスポート」を利用する。
2) 情報交換
インストラクターの支援を得て,電子メール交流でのより深い情報交換を進め,相手方の生活や文化を理解する。
(5) 利用場面
この学習では,次のような学習場面でコンピュータを利用する。
1) 英語表現
コンピュータを利用して「アイと裕太の英会話パスポート」を使用する。
また,電子メールでの情報交換を通じた英語表現の習得に際し,インターネット接続のコンピュータを利用する。
2) 情報交換
相互に情報を交換するため,コンピュータを活用してインターネットを通じた電子メール交流を行う。
(6) 交流の実態
1) 会津若松市側
会津若松市立松長小学校,日新小学校,行仁小学校,鶴城小学校,一箕小学校,門田小学校,計6校
2) アメリカ側
マサチューセッツ州クインシー市ビーチウッドノール小学校
Beechwood Knoll Elemenntary School
(7) 利用環境(松長小学校の例)
1) 使用機種
FMV−6300DX 4台
FM−TOWNS 11台
2) 周辺機器
スキャナ EPSON GT−5500WINS 1台
インクジェットプリンタ Canon BJC−455J 1台
ページプリンタ Fujitsu FMLBP226 1台
デジタルカメラ Casio QV770 1台
3) 稼動環境
FMV−6300DX 4台をMN128−SOHOでインターネット接続。
4) 利用ソフト
Internet Express4.0
Outlook Express
アイと裕太の英会話パスポート
2 指導計画
指 導 計 画 |
留 意 点 |
1 自分の伝えたいことを文章化する。 |
・できるだけ短い文章となるよう助言する。 ・何人かのグループで話し合わせて文章を作ると効果的である。 |
2 文章を英語にする。 ★インターネットの利用 英会話教材の利用 ☆アイと裕太の英会話パスポート (富士通ミドルウェア(株)) |
・インストラクターと相談して,英語を考えるよう助言する。 ・児童の英語力では英語にすることが難しので,むしろインストラクターに英語を教わる感覚で進める。 |
3 文章(英語と日本語)を担当教諭が取りまとめる。 |
特に無い |
4 クラブ員全員の文章を取りまとめ,英語の分をアメリカへ送信する。 ★インターネットの利用 電子メールの送信 |
マサチューセッツ州クインシー市 ビーチウッドノール小学校 |
5 アメリカからの電子メールを受信する。 ★インターネットの利用 電子メールの受信 |
・送信から受信までは数日から10日ほどかかる。1ヶ月に1回程度の交流になる。 |
6 受信した電子メールをインストラクターを交えて日本語化する。 ★インターネットの利用 英会話教材の利用 ☆アイと裕太の英会話パスポート (富士通ミドルウェア(株)) |
・児童の英語力では日本語にすることが難かしいので,むしろインストラクターに英語を教わる感覚で進める。 ・いくつかのグループへ分けて作業を進めると効果的である。 ・インストラクターにはその場で日本語化するだけでなく,事前に翻訳作業を進めていただき,それをもとに指導を進めると効率的である。 |
7 日本語にした返信内容を理解し,それに対する返信内容を文章化する。(以降は2
からの順番で進める) |
・できるだけ短い文章となるよう助言する。 ・何人かのグループで話し合わせて文章を 作ると効果的である。 |
3 利用場面
(1) 目標
児童に電子メールやインターネットの可能性を伝えたい。
(2) 展開
学習活動 |
活動への働きかけ |
備 考 |
1 児童が作成した文章を相手方に送信しその返事を受信する。 |
・作業を通じ,電子メールが実際に海外とやり取りされるのを目で見せ,実感させる。 |
・コンピュータ |
4 実践を終えて
電子メールによる交流があることにより,交流以前の一学期や普段のクラブ活動での英会話練習に弾みがついている。その意味では,児童の英語学習への意欲は明らかに高まった。
また,電子メール交流を通じた自己紹介や趣味・関心などの小学生らしい「文通」ではあるが,相手の文化や習慣の違いを知ることができた。
さらに,相手に自分を知らせるために,自分自身のことや郷土の歴史や文化を調べたり,まとめあげたりすることを積極的に行うようになっている。
英語やコンピュータは,訳のわからない「ブラックボックス」ではなく,ある種の「道具」であることを意識するようになり,積極的に活用する傾向が生じている。
一方,アメリカとの送受信では,誤解や双方のインフラ環境の問題から,度々トラブルが発生し,顔の見えない交流の問題点を感じることもあった。
また,小学校でのスケジュールと実際の交流をすりあわせる作業は,なかなか困難である。現在のクラブの回数では,電子メール交流の間合いがのびすぎて,円滑な交流を進めるには物足りない側面もある。これについては,平成12年度以降,新学習指導要領の移行期間を迎えるため,カリキュラムでの位置付けも含めて,再検討を行いたい。
ワンポイントアドバイス 反面,研究者の先生と現場の教師の間には,問題意識の食い違いや進展速度のズレが生じやすく,その意味では学校現場と研究者の先生の間に入り,調整を行う存在が必要である。 本プロジェクトの場合は,会津若松市が設立した(株)会津リエゾンオフィスという調整機関が最初から介在していたため,さほどのトラブルには至らずに進められたが,このような機関をぬいて,学校の外との共同作業を進めるのは実務的に困難が多いと思われる。 |
参考文献
英語会津なんでも事典(会津リエゾンオフィス)村川久子
絵でわかる英語事典(Gakken)
わくわくKIDS(小学はつらつ副教材)日本標準教育研究所
小学校中学校のためのEメール用英文Q&A(会津大学)村川久子
利用したURLなど
NickとJunnkoの住んでいるConcord市の紹介
http://www.members.aol.com/junkohashi/concord,htm/
クインシー市のWEBページ http://ci.quincy.ma.us