豊かな学校生活のために

中学校3年・学級活動
葛尾村立葛尾中学校 前田 勇治
キーワード 豊かな学校生活,修学旅行,ホームページ,役割分担,データベース


インターネット利用の意図
 本校では平成7年度以降,インターネットと接続する機器の提供を受け積極的に授業に導入し,学校教育全体でネットワーク環境がもたらす学習効果の可能性についての追求と検証に努めてきた。また,平成10年から,村事業によりテレビ会議システムが導入され,授業の中で,その有効的な活用の研究が進められてきた。
 このことから,昨年度までの研究を生かし,道徳や学級活動を含めた各教科の指導において,自ら学び,自ら表現する力を身につけさせたいと考え,学習環境の一部としてインターネットを含めたマルチメディアを活用する研究を進めることにした。


1 豊かな学校生活
(1) ねらい
 中学校最大のイベントである修学旅行の中で,班別自主研修の計画を立てる際にWeb検索を利用して,目的地についての予備知識をつけさせ,より理解を深めさせたいと考えた。また,携帯したデジタルカメラで自分たちの活動の様子を記録させ,それらを活用して修学旅行の思い出をホームページにまとめることで,これからの学校生活における諸活動にも関心を持ち,積極的に活動することで,さらによい思い出をつくる心構えを持たせたいと考えた。
 修学旅行で学習したことをホームページにまとめることで,自分たちが体験したことを他にわかりやすく伝えるための表現力が養われるとともに,共同作業を通して役割分担や協力することの大切さを再認識させられると考えた。これらの情報は,次年度以降の後輩たちに役に立つデータベースとしても利用できるものである。
(2) 指導目標
事前に旅行先についてWeb検索させ,自分たちで計画を立てさせることで,予備知識を持って見学させ,より理解を深めさせるとともに,主体的に活動させる。
・旅行中の活動の様子をデジタルカメラで記録させ,それらを活用して修学旅行の思い出をホームページにまとめさせることにより,表現力の育成を図るとともに,これからの学校生活における諸活動にも関心を持たせ,積極的に活動させることで,さらによりよい思い出をつくる心構えを持たせる。また共同作業を通して,協力することの大切さを再認識させる。
(3) 利用場面
(a) 修学旅行事前の下調べと班別自主研修コースの計画
 地図やガイドブックばかりでなく,インターネットを利用して見学できる時間や料金,交通手段など,生きた情報を関連するWebページから検索したり,見学先に直接電子メールで問い合わせたりしながら,班別自主研修の計画を立てる。
(b) 旅行先での活動の記録
 各班で携帯したデジタルカメラで,見学場所や活動の様子など,学習の成果として記録する。
(c) ホームページ作成の授業
 各班で記録してきたデジタルカメラの画像を加工したり,見学してわかったことをまとめたホームページを班員で協力して作成する。
(4) 利用環境
(a) 使用機種(10Base-TによるLAN接続)
 Apple Performa 5430 33台 (図1),Panasonic AL-N2 1台 (教師用)
(b) 周辺機器
 デジタルカメラ:QuickTake 200 (図2),プロジェクタ,スクリーン (図3)

 図1 Apple Performa 5430

  図2 デジタルカメラ

 図3 周辺機器の接続状況

(c) 稼働環境
 教師側で記録した旅行中の活動の様子の映像を提示するため,教師用のノートパソコン(AL-N2)の画面をプロジェクタでスクリーンに投影する。また,生徒が記録した画像や学習の成果をまとめた文章(テキストデータ)は,校内LANのファイルサーバを利用して共有化する。
(d) その他の利用ソフト
 Netscape Navigator (ブラウザ),Jedit (テキストエディタ),クラリスワークス,Graphic Converter (画像処理),Camera Access (QuickTake 200 画像読込ソフト)

2 指導計画

指導計画(3/3)

留意点

(a) 修学旅行事前の下調べと班別自主研修コースの計画を立てる。
★ Web検索,電子メールの利用
☆ Netscape Navigator
☆ Eudora Pro

★見学できる時間や料金,交通手段など,見学場所の数や移動時間に無理のないよう,調べることを明確にさせる。
・Web検索は,班員と分担し効率よく作業を進める。
・立てた計画を実際に旅行会社の方に直接見ていただいて改善する。

(b)  旅行先で,活動の様子をデジタルカメラで記録する。

・ポイントをおさえ,思い出に残るような場面を選択して記録する。

(c) 修学旅行についての思い出をホームページにまとめる。
★インターネットの利用
  Netscape Navigator
  Jedit
  クラリスワークス
  Graphic Converter
  CameraAccess

・班の中で個人の能力に応じて役割分担し効率的に作業が進められるようにする。

★記録した画像やテキストデータを校内LANのファイルサーバを利用して,データの共有化を図る。
・作業の補助として機器操作に長けている生徒をスモールティーチャーを活躍させる。


3 利用場面
(1) 目標
 修学旅行で学んだことをホームページにすることで,学校生活でよりよい思い出をつくることへの意識を持たせるとともに,共同作業を通して,役割分担と協力することの大切さを再認識させる。
(2) 展開

学習活動と予想される生徒の反応

教師のかかわり

1.修学旅行を思い出す。
2.本時の課題を知る。


 ホームページ作りを通して思い出
づくりや協力することの大切さをも
う一度考えよう。

・修学旅行の写真をプロジェクタで投影し修学旅行の
ことを思い出させる。
・課題設定の理由を明確にし,課題をしっかり把握さ
せる。
・修学旅行や今までの諸活動での取り組みを賞賛し,
今後の活動に意欲を持たせる。

3.班員と協力しながらホームページ
 を作成する。
(1) 作業の手順を聞く。
 ・ ページのレイアウト,コンテン
  ツについて
 ・ 役割分担について
 ・ HTML班,画像班,テキスト班
(2) 各班で,ホームページのレイアウ
 トやコンテンツ,役割分担を話し合
 い,随時作業に移る。(図4)
 ・ うまく役割分担をしている。
 ・  進め方がわからず戸惑う。
(3) 作業を進める中で,役割分担の大
 切さに触れる。
 ・ うまく役割を分担して,作業が
  スムーズである。(図5)
 ・ 作業がうまく進まない。

・作業に支障がないよう,ある程度方向性を指示す
る。
・必要に応じて,参考のホームページを提示し,作業
に関する疑問を取り除く。
・操作に関する疑問には,随時,個別に対応する。
・必要な画像は,あらかじめファイルサーバに入れて
おく。
・作業がスムーズに進むよう,ネットワークをうまく
利用させる。
・作業の補助として,機器操作に長けている者をスモ
ールティーチャーとして活躍させる。

4.本時の授業の感想を発表する。
5.教師の話を聞く。
 ・今後の作業の進め方を説明する。

・取り組みを賞賛し,今後の生活への意欲を持たせる。


※授業の様子
 http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/REPORT/H11/kiki/05-14/
※修学旅行のホームページ(図6)
 http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/SCR/yu2/class/h09/excursion/

4 相談する生徒たち

5 タグの辞書で調べる

6 修学旅行のWebページ

4 実践を終えて
(1) 生徒の感想
ホームページ作りは,自分が入力したものができ上がって画面に出てくるところが,とてもおもしろい。
・私は,パソコンの操作があまり得意でないので,主に旅行中の説明文を考えた。
・画像サイズの変更やトリミングなど,操作の仕方がわからないところがあった。
・修学旅行の画像を見たら,また思い出した。良い思い出ができてうれしい。これからも良い思い出をホームページに残していきたい。
(2) 成果
 コンピュータの操作はもちろん,ホームページ作成にもだいぶ慣れた3年生なので,作業上でのタイムロスも少なく,スムーズに授業を進めることができた。また,「HTML班」,「テキスト班」,「画像処理班」といった,個人の能力差やそれぞれの得意分野を生かした役割分担をしたことによって,作業効率も上がっていたようだ。
 今回のように学校行事の様子をWeb化することは情報の蓄積になるだけでなく,学校の情報を広く発信・公開することになるので,開かれた学校づくりにも役立つ。また,生徒が作成することで,さらに意欲的に学校行事に取り組むことにもつながるものと考える。
(3) 課題
生徒による技術支援(スモールティーチャー)の計画を立てていたものの,本人の作業と同時進行であることから,うまく活動させることができなかった。今後,スモールティーチャーを活躍させる場面の設定や,育成する時間の確保も含めて,総合的な学習の時間を意識した工夫が必要である。
・本校では生徒にHTML(Hyper Text Markup LANguage)という,いわゆるタグを用いてテキストエディタでホームページを作成している。しかし,タグ打ちはある程度知識が必要なので,市販の簡易ホームページ作成ソフトの導入を検討する必要がある。
・静止画だけでなく動画のコンテンツも作成したかったが,環境を整えるための知識と時間が足りず,達成できなかった。

ワンポイントアドバイス
数年の研究から,3年生にもなるとコンピュータの操作にも慣れ,自分のやりたいことがうまく表現できるようになってきているので,長い目で見た情報教育への取り組みが大切であると思われる。
・「HTML班」「テキスト班」「画像処理班」などの役割分担は,生徒個人の能力に応じており,スムーズに行えると考えられる。
・ホームページの作成は,技術科の授業ばかりでなく,目的やねらいが明確になっていれば,「総合的な学習の時間」でも運用することが可能であると考える。
・他にも本校では,テレビ会議システム等で交流した様子を,動画として加工すれば,次年度以降の学習に役立つ授業も行っている。ここで,そのテレビ会議システムを用いた授業を紹介する。

 

 
  
7 村内で働く人へ質問する生徒
     (1年学級活動)


   図8 遠隔地のALTと会話をする生徒
       (2年英語)

参考文献
 葛尾村立葛尾中学校「マルチメディア活用研究集録’99」(自作)

利用したURL など
 福島県葛尾村立葛尾中学校(http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/)
  ※葛尾中学校機器活用研究部
   (http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/REPORT/H11/kiki/)
  ※葛尾中学校社会の部屋
   (http://www.katsurao-jhs.katsurao.fukushima.jp/SCR/SHAKAI/index.HTML)