異文化理解へ向けた学校教育国際化事業
中学校クラブ活動・異文化理解教育(河東町教育委員会として申請)

福島県河沼郡河東町立河東中学校教諭 武藤成也
muto@aizukawa-j.ed.jp
キーワード 中学校,クラブ活動,国際教育,インターネット,電子メール


インターネット利用の意図
 河東町では,3小学校1中学校が一体となって,平成10年度から学校教育国際化事業へ取り組んでいる。具体的には,会津大学の村川久子教授と(株)会津リエゾンオフィスの協力のもとに,それぞれの学校におけるクラブ活動や授業において,会津大学の学生などのインストラクターの派遣を得て,「PCリテラシー」「英会話」「郷土理解」を柱とした「総合的な学習の時間」に対応できる河東町独自の教育システムを構築しつつある。その中で,河東中学校においては全校生徒を対象として「PCリテラシー」の習得を進める一方,I.C.C部(Internationalization through Culture and Computers)において「PCリテラシー」「英会話」「郷土理解」を連携させた異文化理解を進める。I.C.C.部では,「PCリテラシー」としてインターネットの利用を習熟し,同時に(株)会津リエゾンオフィスの提供する教材ツールを活用して「英会話」を習得し,この二つをあわせることによってアメリカの中学校との電子メール交流を進める。


1 I.C.C.部
(1) ねらい
 異文化理解においては,外国の人と交流し,相手方が発信する情報を理解することと,自分達が情報を発信することによって,生徒がアイデンティティを確認しながら,情報の大きな世界へ乗り出して行く積極性を育むことが重要である。
 このため,電子メールによる国際交流を行うため,第一にインターネットの利用を習熟し,第二に情報を英語で受発信する能力を習得し,第三に電子メール交流を行うこととした。また,平成13年度においては,交流相手のミズーリ州へ生徒がホームステイすることを最終目標とし,生徒の意欲を喚起した。

(2) 指導目標
 「ホームステイ」を実現するための「電子メール交流」,そのための「PCリテラシー」と「英会話」というように,目標と課題を段階的に設定し,生徒の意欲を常に喚起しながら,徐々に異文化理解能力を育てることを目標とする。
1) PCリテラシー
 インストラクターの支援を得て,「キーボード」「アプリケーション」「インターネット」「電子メール」と段階的にスキルアップを進める。
2) 英会話
 インストラクターの支援を得て,「アイと裕太の英会話パスポート」や「英語会津なんでも事典」を利用して,英語による情報理解・情報発信能力を育む。
3) 郷土理解(Eスクエア対応分)
 「英語会津なんでも事典」や河東町郷土理解教材を利用して,郷土理解を進めるとともに,電子メール交流で郷土情報の発信を行い,国際交流を通じた郷土理解能力を育む。
4) 異文化理解(Eスクエア対応分)
 「アイと裕太の英会話パスポート」の利用や電子メール交流により,国際交流を通じた異文化理解能力を育む。

(3) 利用場面
 この学習では,次のような学習場面でコンピュータを活用する。
1) PCリテラシー
 あらゆる学習環境がコンピュータに依存するため,全ての場面でコンピュータを活用する。
2) 英会話
コンピュータを利用して「アイと裕太の英会話パスポート」などの教材を使用する。
3) 郷土理解(Eスクエア対応分)
 相互に郷土の情報を交換するため,コンピュータを活用してインターネットを通じた電子メール交流を行う。
4) 異文化理解(Eスクエア対応分)
 アメリカとの情報交換をするため,コンピュータを活用してインターネットを通じた電子メール交流を行うほか,もっと調べてみたいことについて,関連のホームページを検索して調査するときにコンピュータを活用する。

(4) 利用環境
1) 使用機種
 生徒用 FMV−6400CX2 40台
 教師用 FMV−6400DX2  1台
 WWWサーバ GRANPOWER5000モデル180 1台
 ファイルサーバ GRANPOWER5000モデル180 1台
 RASサーバ FMV−6400TX2 1台
 Proxyサーバ FMV−6400TX2 1台
2) 周辺機器
 カラーデジタルプリンタ LP−8000C 1台
 モノクロレーザープリンタ LPB−850 1台
 ネットワーク対応スキャナシステム ES−8000 1台
 カラーインクジェットプリンタ PM−3000C 8台
3) 稼動環境
 全ての機器をネットワーク化し,OCNエコノミーでインターネット接続
4) 利用ソフト
 Netscape Communicator4.5 ,Microsoft Word98 ,Microsoft Excel 98,
 Microsoft PowerPoint 98 ,Microsoft FrontPage 98
 アイと裕太の英会話パスポート

2 指導計画

指 導 計 画

留 意 点

1. 自分の伝えたいことを日本語で文章化する。


 インターネットの利用

  教材へのアクセス

・英語化するために,できるだけ短く端的な文章となるよう助言する。
・それぞれの文章をまとめる際,何人かのグループで話し合わせるとより効果的である。
・郷土の情報は,本や教材で調べるよう助言する。
インターネットでの教材へのアクセス方法について指導する。

2  日本語の文章を英語化する。

 インターネットの利用

  ホームページへのアクセス

・英語化に際しては,インストラクターと相談するよう助言する。
・インストラクターに依存しないよう, できるだけ自分や仲間の力で英語化するよう助言する。
・英語化の参考となる情報は,教材やインターネットで調べるよう助言する。
インターネットでの調査方法について助言する。

3  英語化した文章を担当教諭へメールで送信する。
 インターネットの利用
  電子メールの送信

インターネットによる電子メールの送信方法を助言する。

4  クラブ員全員の文章を取りまとめ,アメリカへ送信する。
 インターネットの利用
  電子メールの送信

担当教諭の作業
相手方
 ミズーリ州ファイエット市ウィリアム・エヌ・クラーク中学校

5  アメリカからの電子メールを受信する。
 インターネットの利用
  電子メールの受信

担当教諭の作業
送信から受信まで1週間,次のクラブ活動で受信する間隔である。

6  クラブ員一人一人へ受信した電子メールを送信する。
 インターネットの利用
  電子メールの送信

担当教諭の作業

7  英語の返信内容を日本語化する。
 インターネットの利用
  ホームページへのアクセス

・日本語化に際しては,インストラクターと相談するよう助言する。
・インストラクターに依存しないよう,できるだけ自分や仲間の力で英語化するよう助言する。
・日本語化の参考となる情報は,教材やインターネットで調べるよう助言する
インターネットでの調査方法について助言する。

8  日本語化した返信内容を理解し, それに対する返信内容を日本語で文章化する。(以降,繰り返す)
 インターネットの利用
  教材へのアクセス

・英語化するために,できるだけ短く端的な文章となるよう助言する。
・それぞれの文章をまとめる際,何人かのグループで話し合わせるとより効果的である。
・郷土の情報は,本や教材で調べるよう助言する。
インターネットでの教材へのアクセス方法について指導する。


3 利用場面
(1) 目標
 まだ会ったこともない海外の中学生と実際に電子メールで情報を交換することにより,異文化との遭遇を意欲的に行うことができる。

(2) 展開

学習活動

活動への働きかけ

備 考

1 学習の進め方を知る。

・生徒一人一人に電子メール交流の見通しを伝え,参加意欲を喚起え参加意欲を喚起する。

 

・コンピュータ

 

2 インターネットで教材や関連するホームページを調べる。

・利用できるURLを検索する工夫を教える。
・いくつかのURLは参考として教える。
http://www.city-aizu  
wakamatsu.fukushima.jp  
など

3 電子メールで担当教諭へ送信し,担当教諭から返信内容を受信する。

・特に無い

 

4 実践を終えて
 学校におけるコンピュータの環境を見ると,必ずしもコンピュータがインターネット利用を前提としていないことに驚きを感じている。コンピュータが単なるスタンドアローンであるなら,情報教育や国際教育は極めて困難となる。何故なら,学校の外との交流を通じて,はじめて生徒は情報教育や国際教育の本質に触れることができると考えるからである。
 河東町では,行政の国際化へ対する方針と学校の「総合的な学習の時間」への取り組みが一致したため,すべての学校でネットワーク化されたコンピュータ環境が整備され,OCNでフルタイムのインターネット接続が確保されている。
 このような恵まれた環境にあって,異文化理解事業へ取り組んだが,会津大学村川久子教授の全面的な協力を得ることによって,交流相手の紹介から最終目標である生徒のホームステイまでの段取りをお願いできたことは,大変助かった。
 また,実際の授業において,(株)会津リエゾンオフィスの協力により,担当教諭を支援するインストラクターをお願いできたことは,効率的なクラブ運営のみならず,新しい出会いの場を生徒も教諭も見出せ,様々な刺激を受けることができた。
 とりわけ,アメリカから実際に電子メールが届き,聞きたかったことや,知りたかったことがわかったときの生徒の感動は,本やテレビなどでの理解をはるかに超えたものであったと思う。
 さらに,今回の実践を通じて,インターネットに関連したコンピュータリテラシー,さらには実際の生活で使う英語表現は,飛躍的に向上した。また,世界中の人々と簡単に情報の交換ができるインターネットの可能性は,生徒にしっかりと認識され,これからの学習活動へ限りない財産を与えたものと確信する。
今後は,平成12年度一杯,アメリカとの電子メール交流を続け,平成13年度におけるホームステイが実現できるよう,互いの情報交換を行い,それを通じて河東町のアイデンティティを認識できるよう努めていきたい。
 とりわけ,平成12年度においては,4 つの小中学校が協力して,河東町独自の和英郷土理解教材を作成する予定であり,この作業を通じて郷土理解・異文化理解がさらに進むことを期待している。

ワンポイントアドバイス
 学校における情報教育や国際教育を進めるためには,外部資源を活用することが重要な鍵となる。
 今回の実践が成功した背景には,会津大学や(株)会津リエゾンオフィスが河東町と提携したことが大きな要因となっている。
 いわゆる産学官連携は,「総合的な学習の時間」へ向けた学校現場で有効ではないかと考えている
 このためには,何よりも教育行政と企画行政の協力が欠かせず,その意味でも学校現場も外への働きかけが重要視される時代に入りつつあることを実感した。


参考文献
 インターネットが教室になった(高陵社書店)こねっとプラン実践研究会
 インターネット教育イエローページ(旬報社)越桐國雄

利用したURLなど
 Yahoo!きっず         http://kids.yahoo.co.jp/
 こねっとワールドにようこそ  http://www.wnn.or.jp/wnn-s/
 まなびねっと         http://www.naec.go.jp/manabi/
 大坂教育大学         http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/educ/
 会津若松市        http://www.city.aizu-wakamatsu.fukushima.jp/
 窓の社            http://www.forest.impress.co.jp/
 文部省            http://www.monbu.go.jp/
 国立教育会館         http://www.naec.go.jp/
 サイバーネチケットコミック   http://www.disney.co.jp/cybernetiquette/