花室川プロジェクト

小学校6年・理科
茨城県つくば市立桜南小学校
理科 今泉 英樹・根本 智
mado@ounan-e.ibk-tt-net.ed.jp
http://www.ounan-e.ibk-tt-net.ed.jp/
キーワード 小学校,6年,理科,インターネット,学校間交流,環境教育,総合学習


企画の目的・意図
 総合的な学習の時間における,情報教育を根本にすえた環境教育の推進。
 学区内を流れる花室川について,環境調査を行う。その際,調査結果や,児童の意見・考察などをふくめた学習に関するまとめは学習用統合アプリケーションソフト「スタディノート」を用いて,コンピュータ上にノート形式でまとめ保存していく。
 作成されたデータをもとに,花室川流域の近隣の学校と相互に情報交換し,互いに参考としながら学習を進める。
 調査後の学習成果を「学習データベース」としてインターネット上で公開する。


1 単元名「人の生活と自然かんきょう」
1.1 ねらい
 インターネットを活用しながら,近隣の学校を中心に,同じ題材を扱いながら学校間交流を進める。
 他教科・領域と関連させながら行った横断的・総合的な学習を行う。
1.2 指導目標
 単元を総合的な学習と取り扱い,他教科と関連させて,周囲の環境が水質とどう関わり合っているのかを考えることで,水の浄化作用にも目を向けられるようにし,環境を進んで守ろう・改善していこうという意識を持たせる。
1.3 利用場面
 他校との情報交換に当たっては,インターネットを中心とした交流を行い,特に「スタディノート」を活用した「メールを用いた個人的な意見交換」,「電子掲示板機能を用いた広範囲な情報収集」を積極的に活動中に取り入れ,学習の深まりをはかる。また,適宜,インターネットを利用したテレビ会議を取り入れ,児童間の交流・親睦も図る。
 また,調査場面においてはデジタルカメラを用いた映像記録などを十分に取り入れ,データとしての質の向上もめざす。
1.4 利用環境
 アプリケーションソフトとして,「スタディノート」(シャープシステムプロダクツ(株))を利用。
 スタディノートは,インターネットと校内ネットワークを連携して学習できるソフトであり,コンピュータ上にまとめることができる「ノート」(文字や図,写真等で構成できる)であり,電子メール,電子掲示板,データベースの機能を使うことで学習活動中で幅広く活用できる。(図1・2)

1.スタディノートのメニュー画面

2 スタディノートのデータベース画面

1.5 稼働環境
 
インターネットに光ファイバー線による専用線で接続(先進的教育用ネットワークモデル地域事業による)
下記の教室においてネットワークを利用可能
 CAI室  
  42台(図3)     ネットワーク室  21台(図4)
 各教室    1 台(図5)     職員室      
  3 台
 保健室    1 台

3 CA

4 ネットワーク室

5 教室

 

2 指導計画
1 回全体調査                      6月8日
 各自の研究テーマの作成とデータのまとめ(校内)    〜6月26日
第2回調査(夏期休業中)
 各自の自由調査活動およびデータのまとめ
 他校との交流開始(9月〜)
第3回全体調査                      10月19日
 データのまとめと情報交換(校内およびネットワーク活用)  〜11月
第4回全体調査                       2月中旬
 データのまとめと情報交換(校内およびネットワーク活用)
成果発表会(校内およびネットワーク上)           3月上旬

3 学習の展開
3.1 総合テーマ「花室川の自然を守ろう」

 「花室川」は,つくば市から土浦市,阿見町と流れ,霞ヶ浦に流れ込む川である。
 この川は,生活農業排水との結びつきが強く,通常の川とは異なり,下流に行くほど汚れるのではなく,排水の多いところで汚れがひどく,その程度は場所によって異なっている。
 これまでの花室川を題材にした学習では,中流のほんの狭い範囲の限られた調査結果をもとにして進めていたため,生活に結びつけて考えたり,自然の浄化力に気づいたりすることができず,深まりのある考察をもたらす学習は進めにくかった。
 そこで,コンピュータネットワークを活用して,情報交換をしたりテレビ会議による直接意見交換を行ったりすることで,広がり・深まりのある,地域で取り組む環境学習を行おうと考えた。
3.2 実践のポイント
(1) 個人の課題づくり
 子どもたちが川の様子を見て,何を感じるかはさまざまである。普段から川と関わっているかどうかで,川に対するイメージも違う。
 学習導入段階で,学年全体で花室川に行き(図6・7・8),川の汚れだけでなく,動植物の様子や川の周囲の様子,人の生活との関わりなどを調査し,その中から個人で調べたいテーマを決める。

6 花室川調査・・・上流

7 花室川調査・・・下流

8 花室川調査・・・中流

 

 

 

 調査したことと自分でつくった課題はコンピュータのノートにまとめ,同じ活動を行っている近隣の小学校にも紹介した。(図9)

9 児童のノート

 

(2)夏休みと2学期に調査活動
 夏休みを利用し,保護者にも協力してもらいながら,個人のテーマについて調べる活動を行った。調べた内容は学級で発表し,さらに学年でポスターセッションを行った。
 互いの発表を聞くことで,これまでとは違った課題を持ったり,もっと詳しく調べてみようと考る児童がも多く,そこで今度は生活排水,魚,微生物,植物,土といったキーワードをもとにしたテーマごとのグループをつくった。(例 「生活排水について」「魚のようす」「水中の微生物による水質調査」「植物は川の水をきれいにするか」など)
(3) 調査結果をコンピュータにまとめる

 結果をまとめる段階では,分からないことをインターネットで調べたり,メールで質問する活動を行いながら,調査結果や考察もコンピュータにまとめた(図10・11)。表や図を描いたり,デジタルカメラの映像を取り込んだりする作業を行った。
 画面の活字の大きさやレイアウトなどを工夫して,よりわかりやすいノートづくりをすることは,これまで活動してきた内容をもう一度洗い出し,精選する意味でも重要である。

10 調査報告のページ・・・スケッチ

11調査報告のページ・・・測定結果

(4)コンピュータを活用したディスカッション
 掲示物等を使ったポスターセッションでは,限られた時間の中で多くの発表をしたり聞いたりすることには限界がある。班でまとめたノートをデータベースとしてコンピュータ上に記録しておくと,選んだ班の内容を自由に見ることができ,1時間で全ての班の内容を見ることができた。(図12)

12 コンピュータを使った授業の様子

 内容への質問や意見・感想についてもノートに書いてメールで送ることができ,無駄なく短時間で,しかも多くの班が交差的にディスカッションを行うことができた。

4 成果と課題
(1) 日常的になった情報・意見交換
 コンピュータを活用することで,適切な情報を収集したり,日常的な意見交換により考えを深めたりすることができた。また,昨年度の研究データを基礎データとして生かして,より深い研究へと進めることのできた児童もいた。インターネットでは,情報を収集するだけでなくホームページ上で調べた結果を発信した。特に,研究協力校とはコンピュータで調査結果のやりとりを行い,質問や意見,感想等の交流を行った。
 まとめた結果を掲示板に載せることで,他校からも見ることができ,有効に活用することができた。校内だけでの学習よりも内容が幅広く,児童の意識の高揚に大変役に立った。
(2) 環境に対しての意識の変化

 実際に花室川を散策したり,調査したりすることで,自然に触れる機会が多くなり自然に対する意識が変化した。
 特に,今回調査活動を行った花室川に対する意識の変容は大きく,調査前は「きたない」というイメージを持つ児童が多かったが,調査後は「きれい」・「動植物が多い」等のイメージを持つ児童が多くなった。また「生活排水」や「汚染が進んでいる」といった「環境問題」の対象として捉えるようになった児童も増えた。さらには「花室川は自然を支えている」や「なくてはならないもの」といった自然への愛着や自然環境を守ろうとする意識を持つ児童が増えた。

ワンポイントアドバイス
複数の学校での共同学習を行う場合は,いくつかの注意が必要である。 
1 活動計画について,参加校間で十分に打ち合わせをしておく。とくに,電子掲示板などを利用して情報交換をする場合には,各校の実践時期によっては,情報が一方通行となってしまう。
2 児童のネチケットについては,学校内で身につけさせてから学校間の情報交換に望む場合や,情報交換をする中で身につけさせるといった場合があるが,協同学習校間で統一しないと,トラブルの原因になる可能性がある。 
3 各自の調査結果のまとめに時間をかけがちだが,他の人や他の学校,昨年度までの情報を閲覧する時間を確保してあげることがよりよい情報発信につながる。


参考文献
 
とくになし 

利用したURLなど
 
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