学級・学年・学校の枠を越えた環境学習での協調学習
―校内ネットワーク・インターネットの活用を通して−
小学校第5・6学年・環境学習
つくば市立並木小学校 毛利 靖
キーワード 校内LAN,グループウェア,インターネット掲示板,協調学習
インターネット利用の意図
本校では,以前から全校で環境学習に取り組んでいるが,児童の主体的な学習の場を保証しようとすればするほど次のような問題点が出てきた。
(a) 学習課題に教師が対応しきれない
「総合的な学習」では,児童が主体的に学習課題を見つけ,そして継続的に行うことが重要である。そうすると児童は,教師が予想していた以上の課題を考え出すことがあり児童の学習意欲を考えると「違う課題にしなさい」とも言えず,悩むことになる。
(b) 学区を越えた広範囲な調査ができない
児童の調査範囲は,安全上学区内に限定され広い範囲を児童の手で調査することができない。そのため,学習が深まらないことがあった。
(c) 同じ課題を追求する仲間がいない
児童の興味・関心をもとに学習課題を設定するため,自分と同じ学習課題を持つ友だちが身近にいるとは限らず,話し合い活動などができない児童がでてくる問題点があった。
そのため,ビデオメールやインターネットの掲示板機能,ホームページを用いることで上記の問題点を解決しようと考えた。これらは,相手の時間的な都合を気にすることなく学習者が主体的に利用できるものであると考えたからである。
1 共に生きるために 〜ヒトとして地球人として〜
(1) ねらい
環境学習において,児童の主体的な学習を保証するために学級・学年・学校の枠を越えて校内ネットワークやインターネットを用いて協調的な学習を行い,児童の学習の深まりや広がりを明らかにする。
(2) 指導目標
現在の身近な環境の実態をふまえ,それらを自分自身の問題としてとらえ,よりよい環境保全のために身近な活動を実践することができる。
環境学習での実践をまとめ,発表し,意見を交換し合うことで,環境についての自分の考えを深め,これからの自分の生き方や他者との共存について考えることができる。
(3) 利用場面
(a) 主体的な課題作りのために,電子掲示板を利用する
児童一人一人が調べてみたい課題を電子掲示板に書き込み,お互いにそれを見てアドバイスしたり,共同研究の仲間作りをするのに役立てる。
(b) 実地体験をもとにグループウェアを活用してデータベースに登録する
環境実地調査を行った後,デジタルカメラなどで得た情報や考察などをグループウェアでまとめ,できたものをデータベースに登録し,学校の中で「いつでもどこでもだれとでも」見られるようにし,体験の共有化を図る。
(c) インターネットを使って日常的に他校と協調的な学習を実践する
川の調査など自校だけでは調査しきれないものなどに関しては,他校と共同で調査研究を行う。その際,インターネットの電子掲示板機能を使って,画像を送ったり,ビデオメールを使うなどして調査を深めたり広げたりするのに役立てる。
(d) 電子メールを使って学校外の方への質問などを行う
学校内に自分が調査している学習課題に詳しい人(教師・児童)がいるとは限らない。そこで,人材バンクや専門機関などと連携して児童が解決できない問題などのアドバイスを電子メールを使って行い,学習に役立てる。
(e) ホームページを使って情報発信を行う
上記の実践を通してできあがった研究内容をホームページに登録して,地域や他の学校などに情報発信して,さらに新たな情報交換の場としてしていく。
(4) 利用環境
(a) 使用機種 コンピュータ室 DOS/V機 42台
メディアルーム 東芝リブレット 9台
DOS/V機 9台
各教室 DOS/V機 各1台
職員室 DOS/V機 4台
(b) 周辺機器 デジタルカメラ ソニーMAVIKA 6台
シャープインターネットビューカム 1台
スキャナ エプソンGT-7000 2台
プリンタ エプソンPM670他15台
(c) 稼働環境 全コンピュータLAN接続,メディアルームの東芝リブレットは無線LAN
インターネットには,光ケーブルを使って専用線接続
(d) 利用ソフト シャープスタディノート,インターネットエクスプローラ4.01
がくげいランドセル,デジタル平凡社マイペディア
2 指導計画
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並木・梅園再発見 |
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4月 |
活動の確認(2) |
・昨年の活動を確認し合う。 |
データベース |
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環境 私の提案 |
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9月 |
調査のまとめ(1) |
・夏休みまでの活動をホームページにする。 |
コンピュータ |
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かかわり合い |
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・伝え・考え・深め合ったことをコンピュータにまとめる。 |
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思いは,未来へ |
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1月 |
環境集会の準備 |
・環境集会で提案すること,発表することをコンピュータにまとめる。 |
コンピュータ |
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図1 電子掲示板での課題一覧 |
図2 コンピュータを使った意見交換 |
3 利用場面
(1) 目標
・他の学校の共同研究グループに自分の情報を発信することができる。
・インターネットで送られてきた情報をもとに自分の研究を見直すことができる。
(2) 展開
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1.本時の活動内容を知る。 |
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資料 |
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・コンピュータ・インターネット・デジカメ |
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2.グループに分かれ,それぞれの方法で情報発信を行う。 |
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★調査の測定値(COD)の意味を分か ★説明にはビデオメールを使うと相手に |
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★自分たちのことを伝えるだけでいい ★外国の友だちは,日本の料理も知り |
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★どうしてきれいになるかがわかるとい ★他にはどんな魚がいたのかな。写真 |
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★どうすればわかりやすく説明できるか ★インターネットやメールでわかるか |
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図3 水草調査での交流画面 |
図4 川でアユを見つけまとめた画面 |
4 実践を終えて
(1) 教師がわからない難しい課題について
花室川の研究の中には微生物に関する研究があった。桜南小にも同様な研究を行う児童がおり,桜南小の児童が「微生物のことを調べたので見てね」と掲示板に書き込むと,並木小の児童が「他にもミカヅキモが見えたよ」などと掲示板で交流しながら種類を増やしていった。これをホームページに公開したところ大学の微生物専門の先生から名前の同定などについて指導を受けるようになった。また,本校の保護者からは,電子メールで「こんな環境学習もいいですね」とアドバイスを受けるなど,これまでにない専門的な学習ができるようになった。
(2) 学区を越えた広範囲な調査活動について
学校付近の花室川中流の水質を調査したところ,CODが50ppmと汚れていることがわかった。しかし,その原因もわからなければ,上・下流の状態もわからなかった。そのため,普通なら「この川は汚れているから,これからはきれいにしていかなければいけない」といった程度の結論で終わるしかなかった。しかし,共同調査をおこなった結果,上流が一番汚く,中流に行くにしたがって次第に浄化され,下流になるとまた汚れるという結果が出た。その結果から児童たちは「花室川の源流は都市排水であり,その汚れを川自身が浄化していること。さらに下流に行くとまた家庭排水で汚れてしまうこと」と結論づけるなど学習の深まりや広がりができた。さらに,自分たちの調査方法を他の学校の友だちに教えるという行為を通して,自分たちの調査活動に対する自信や発表する能力を身につけたと考えられる。
(3) ネットワークを通した仲間作りについて
ある時,掲示板に「カワセミを募集します」という内容が入った。それは,桜南小で鳥を調べているのだがカワセミという鳥を見たことがないというものであった。すると並木小の児童が「友だちが花室川で撮ったカワセミの写真を持っている」という返事を書き,しばらく交流が続いた。また,同様の交流がpH調査や汚れ調査でも見られた。これらは教師が設定した内容ではなく,児童たちが必要に迫られ自然発生的に行った協調的な学習と言えるのではないかと考える。
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協力校
つくば市立桜南小学校,つくば市立竹園東小学校,県立竹園高等学校,早稲田大学,クアラルンプール日本人学校