学校間交流授業
主体的な学習活動を促す学習形態の工夫
-インターネットを活用した課題解決学習の実践-

中学校2年・社会科
栃木県足利市立西中学校
社会科 須藤 秀幸 情報教育担当 小川 裕之
nishijh@city.ashikaga.tochigi.jp
http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/kyouiku/nishijh/
キーワード 中学校,2年,社会科,TV会議,学校間交流


企画の意図

社会科の意図
 自発的な学習環境の提供方法により他地域を理解しながら、自分たちの地域を再発見する。(社会科的視点)
情報教育の意図
 積極的にインターネットを授業に導入し、コミュニケーションツールとしてのインタネットの効果的な活用方法を模索する。メディア選択の能力の育成。(情報教育的視点)
学び方を学ぶ
 
新・学習指導要領では,現実に学び方を学ぶ学習の充実がうたわれている。
 そのため,自分たちで調べるだけでなく,交流学習を通し他の地域に住む同じ中学生たちが自分たちの地域に対してどのようなイメージを抱いているのかやどんなことを知りたと思っているのかを知り,その質問や疑問に応じられる情報を伝達(発信)するという学習形態が,主体的に学習に取り組む要因のひとつになるのではないかと考えた。また,お互いの地域を比較することでより一層特色をとらえられるのではないかと思える。
 そこで,自分が欲しい情報を得るにはどうしたらよいか,また相手に情報を伝達(発信)するにはどのような方法が適しているかなどについて,生徒たち自身に考えさせた。
交流学習でのインターネット活用について
 本企画でのインターネットの活用に関しては,学習を成立させるための1つの道具としてとらえるべきであると考えている。

Web Page

統計等の情報がその場ですぐに入手できる。

電子メール

意見交換をする際,互いの授業時間が合致しなくとも発信や受信が可能である。

テレビ会議システム

意見交換をする際,互いの授業時間が合致した場合にリアルタイムでの発信や受信が可能である。また,視覚に訴える資料の時に有効である。


 指導(支援)計画(20時間)
第 1 〜  2時 : 交流学習のプレ学習
第 3 〜  5時 : 現行の学習指導要領に則り,近畿地方の概略を学習
第 6 〜  8時 : 現行の学習指導要領に則り,関東地方の概略を学習
第 9 〜 18時 : 交流学習(課題の追究)
第19 〜 20時 : 学習方法のまとめ
2 交流学習(課題の追究)
 
滋賀県および長浜市のWeb Page を閲覧させることで,興味・関心を持たせることにした。そして興味を抱いた内容の中から,各自が詳しく調べたい課題を設定した。各自の調べたい課題が大きく6つに分けることができたので,交流先の中学校と相談し,6グループに分けて課題の追究を行うことにした。その6グループは以下の通りである。
 1班 : 歴史
 2班 : 文化
 3班 : 産業
 4班 : 暮らし
 5班 : 自然
 6班 : 観光
 自己紹介終了後,課題の追究を行った。課題の追究に関しては,それぞれのグループに送られてきた質問事項を調べ,交流相手にその内容を伝えることとし,調べる方法と伝達(発信)方法を生徒たちに考えさせた。生徒たちから出された方法は,以下の通りである。
・ Web Pageの閲覧および作成
・ 電子メールの発受信
・ テレビ会議システム
・ 聞き取り調査
・ 資料(学校図書室および公立図書館)閲覧
それぞれの班が自分たちの課題を追究していくには,どのような方法が適しているのか,また相手にわかりやすく伝達するためにはどのような方法で情報を発信すればよいのかなどを考えさせながら,学習させていった。

テレビ会議システムを利用した情報交換の例 〜3班(産業)の実践例〜

足利市(発信)情報例

長浜市(受信)情報例

藍染め

浜ちりめん

しもつかれ(郷土料理)

鮒寿司

ゆば

子鮎の佃煮

もなか(本市の名物菓子)

堅ボーロ

芋ようかん(本市の名物菓子)

 


3 成果と課題
(1) 成果
 本研究では,学習指導要領改訂の趣旨を生かした内容の厳選への対応を主に,諸地域学習の見直しをはかると共に,交流学習を取り入れ,生徒たちに学び方を学ばせようと試みた
※交流学習まとめ用紙から(一部例)
自分たちの住んでいる地域のことをどのように調べたか。

 

良かった点

不足していた点

図書室の閲覧

・まとめやすい本が多い

・栃木県,本市の資料がない

Web Page の閲覧

・いつでも利用できる
写真が見られ,わかりやすい
・調べたいことが,すぐに調べられる
・一度に大量の情報が得られる
・情報を印刷できる

・言葉が難しい
・操作に戸惑うときがある
・あまり詳しくない

聞き取り調査(現地調査)

・実際に見たり聞いたりできる
・必要な情報だけを得られる
・資料の内容がまとまっている
・現在のことがわかる
・写真がとれる

・時間がかかる
・欲しい情報が少ない

 

◎自分たちの住んでいる地域の情報をどのように伝達したか。

 

良かった点

不足していた点

電子メールの発信

・情報をすぐに伝えられる

・時間内に打ち切れないときがある
・言葉だけでは伝えきらないことがあることに気づいた

Web Page の作成

・写真を載せることができる
・アレンジすることで,要領よく伝達できる
・多くの情報を載せられる
・表やグラフが作成できる

・作成に時間がかかる

テレビ会議システム

・すぐに感想が聞ける
・相手の表情がわかる

・回線が停止してしまうことがあった

現物を送る

・言葉や写真だけではわかってもらえないものもある

 

 

◎調べたり,交流する中で見つけた栃木県・本市の良さや,滋賀県・長浜市と比較して共通する点や異なる点についてわかったこと。

良い点

・歴史的な建造物が多い
・特産物など,気候や地形を上手に使っている
・他に自慢できるものがたくさんある
・自然が多い(特に森林)

共通点

・歴史的な人物や建造物が多い
・伝統的な行事や産業がある
・それぞれの地域に適した産業が発展している
・大きな公害問題があった(ある)
・自然に恵まれている
・観光スポットが多い

異なる点

・名産物(食品)に関し,滋賀県では湖や海からとれる魚を加工したものが多いが,栃木県は芋や小豆を利用したものが多い
・ゴミの仕分けの仕方が違う
・気候が違う

 

◎滋賀県や長浜市の印象は,交流前と交流後ではどう変わったか。
・身近になった気がする
・滋賀県,長浜市と聞いても場所すらわからなかったが,今ではわかる
・琵琶湖しか知らなかったけれど,名産物やお祭りなどの伝統行事のこともわかった
・産業や特産品,伝統工芸品などについても答えられる
・栃木県と似ているところがたくさんある
・滋賀県や長浜市のことが気になるようになってきた
・観光名所が多い

◎交流学習を行っての感想
・楽しくわかりやすい
・交流学習のような授業が増えたほうがいい
・滋賀県や長浜市のことがよくわかったし,本市のことがよく伝えられたのでよかった
・栃木県や本市の印象も変わってきた
・栃木県のことすらあまり知らなかったが,調べることでいろいろなことがわかってきた
・もっといろいろな地域のことが知りたくなった
・滋賀県に行ってみたくなった
・離れた地域の人と勉強するのもおもしろい

今後の課題(交流学習の4つのC)
(a) Choice
 
本研究では,「諸地域学習から都道府県規模の学習へ」というテーマを設定し交流という授業形態を取り入れたが,交流学習を行う際,いくつかの問題点があるように思える。交流学習を行う際,(本研究では,滋賀県を選択したが)47都道府県の中からどこを選択するかという問題が第1にあげられる。本県および本市を調べることはある程度容易だと思える。しかし,交流先の都道府県および市町村と比較することで,本県および本市の特色をとらえさせるには,交流先の選択は慎重にならざるをえない。調べた情報を発信することで,本県および本市の特色をとらえられるであろうと予測できる都道府県および市町村を選択する必要性がある。
(b) Collaboration
 授業にインターネットを活用させていくためには当面、TTの形態をとる場面が多くなることが予想される。教科担任は教科としてのスタンスでどのような授業にしたいのかを明確にし、情報教育担当者は、その授業をどのように支援していくかを明確にしておくかが重要である。相互に信頼関係を築いておかなければせっかくのコラボレーションも成功することができない。
 また、交流学習の場合は、交流校という相手の存在がある。交流授業は交流校とのコラボレーションでもある。対外的なコラボレーションの展開も今後は、大いに予想がされる。情報教育担当者はこうした点でも窓口となり、連絡、調整に東奔西走しなくてはならない。
 交流学習においては、対内的(校内)、対外的(校外)2つのコラボレーションがありそれらをうまくコーディネートしていく必要がある。相互の意志疎通(コミュニケーション)が交流学習の方向性を大きく左右する。
(c) Communication
 交流学習は言いかえれば、コミュニケーション学習でもある。その手段、方法などを理解していかなければならない。その場に応じたコミュニケーション手段(メディア)を選択することができる能力を身につけていくことも、情報リテラシーの1つである。
 授業にコミュニケーションの場面を取り込むことにより、魅力ある授業の可能性は広がっていくはずである。
(d) Computer
 情報機器の整備と技術の習得の問題があげられる。情報機器の整備に関しては言うまでもないが,情報の発信、受信に必要なコンピュータ操作の技術の習得時間は各教科の授業の中では充分に行うことは難しい。そのため今後、他教科及び総合的な学習の時間などに本格的な導入を進めるには、技術科「情報」領域と情報教育年間計画など系統的な指導体系の整備が急務といえる。

ワンポイントアドバイス
 ダイアルアップルータのNAT機能(プライベートアドレスとグローバルアドレスの変換機能)は使用できない。(NAT機能はIPマルチキャストに対応をしていないため)
 そこで,ダイアルアップルータのS/T極点を利用する。これをHUBのように接続をさせる。ダイアルアップルータからターミナルアダプターのS/T極点を接続する。
 このとき注意しなくてはならないのは,ダイアルアップルータの終端抵抗を必ずOFFにすることである。また,ターミナルアダプターにDSU機能が内蔵されている場合はこちらも切り離しの設定が必要である。これで,ダイアルアップにより,相互接続が実現する。
 この際,Windows95/98の「winipcfg.exe」により,グローバルIPアドレスを確認(PPP Adapterを確認)し,交流校にメール等であらかじめ連絡をする。


利用したURLなど
※交流学習記録
 http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/kyouiku/nishijh/kouryu99/index.html
※交流学習資料
 http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/kyouiku/nishijh/kouryu99/info.html
※交流学習事前打ち合わせ記録
 http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/kyouiku/nishijh/jyouhou/esquare/meeting.htm
※交流校 滋賀県長浜市立北中学校
 http://www.biwa.ne.jp/~kita-jhs/