PTAとの連携による情報教育

研究実践
野田市立七光台小学校 伊藤 晶男
キーワード 小学校,情報教育,インタ−ネット,PTA,LAN配線


研究実践の目的
 野田市の小学校におけるコンピュ−タ−教育は,日立B16を利用したMS−DOSパソコンによるもので,情報教育を行う環境としては十分なものとはいえなかった。
 教職員においてもインタ−ネットを利用したことのある職員は数人しかおらず,自宅にウインドウズパソコンを所有する職員も数人であった。そこで,PTAの協力を得てウインドウズパソコンの導入とインタ−ネットに対応する通信環境の整備を進めることを計画した。
 実践の手順としては,以下のように計画した。
1.ウインドウズパソコンの学校への導入。
2.インタ−ネットへの接続。
3.教職員のパソコン研修。
4.コンピュ−タ−ル−ムへのウインドウズパソコンの導入。
5.ISDN回線の手配と,校内のLAN配線の整備。
6.コンピュ−タ−ル−ムのパソコンのインタ−ネットへの接続。
7.教職員とPTAのパソコン研修。
8.教職員とPTAによる児童へのパソコン勉強会の開催。
9.授業でのインタ−ネットの利用。
 最終的な目的は,授業での情報収集,メ−ルによる他校との交流やホ−ムペ−ジ開設による情報発信である。そのための環境をPTAと連携していかに整備していくか,本校の経験を広く公開することにより他校の参考に少しでもなれば幸いである。


1 実践内容
1.1 これまでの環境整備
(1) 整備のきっかけ
 平成10年2月に,6年生の社会科の授業で我が国と関係の深い国々の学習をしていた時のことである。大使館に資料を送ってほしいと電話すると,ホ−ム−ペ−ジを見てほしいといわれることがあった。2年前の6年生で同じ授業をやった時には,すべて郵送で資料をいただけたのに,学校にはインタ−ネットはおろかウインドウズパソコンすら1台もない。担任をしていた私は,小学校の情報教育環境の立ち遅れを痛感し,環境の整備の必要にせまられることになった。
(2) ウインドウズパソコンが寄付されてきた
 平成10年度になり,以前から申請していたウインドウズパソコンが,上原教育振興財団より寄付していただけることになり,4月26日に送られてきた。七光台小学校でもいよいよウインドウズパソコンが使えるようになった。職員室に設置する。
(3) インタ−ネットに接続する
 千葉県情報教育センタ−で,インタ−ネットの教育利用に関する参加校の募集があり,さっそく応募し,8月5日にIDとパスワ−ドをいただいてきた。
 ところがモデムが認識されないトラブルに見舞われ,ポ−トの設定を変更したり,オ−ディオボ−ドと入れ替えてみたりといろいろしたが,とうとうだめでモデムは,メ−カ−送りになってしまった。結局,不良品ということで新品のモデムボ−ドが8月の末に送られてきた。インタ−ネットに接続できたのは,2学期に入った9月のことである。
(4) さっそく授業に使う
 10月5日に5年生が校外学習で日産自動車の栃木工場と,益子町の焼き物を見学することになり,日産自動車と益子町の青年会議所のホ−ム−ペ−ジから5年生でもわかる内容のものをプリントアウトして授業に活用する。5年の担任が,夏にパソコンを買ってインタ−ネットを始めた先生だったので,積極的に取り組んでもらえた。
 11月になると,担任していた4年生でもインタ−ネットを使った授業に取り組むことにし,低地の輪中のくらしについて長島町のホ−ム−ペ−ジからプリントアウトして授業に活用した。
 3学期は,沖縄県のホ−ム−ペ−ジからプリントアウトして授業に活用した。
(5) 台数を増やす
 さすがに職員室にある1台のパソコンでは,児童が自ら情報を集めるには無理があり,どうしても10台はほしいということになった。
 秋のPTAバザ−の収益の一部で中古のパソコンを8台買っていただけることになり,3月の末,春休み中に送られてきた。
 平成11年度の4月にコンピュ−タ−ル−ムに設置した。
 機種は,NECのペンティアム133Mhzモデルでウインドウズ95とインタ−ネットエクスプロ−ラ−3が入ったモデルである。
(6) 一太郎8を使う
 コンピュ−タ−ル−ムに設置したウインドウズパソコンは,とりあえずパソコンクラブでペイントとゲ−ムに利用していたが,ワ−プロソフトの研修にPTAの広報部会で使ってもらえることになり,6月に一太郎8の研修を行った。
(7) 職員のインタ−ネット研修
 職員室のパソコンをさらに有効利用するために,教職員にインタ−ネットの使い方研修を行った。資料の収集に活用する職員が増えた。

1.2 本年度の環境整備
(1) CECに応募する
 職員室にあるパソコン1台では,授業で使うには限界がありコンピュ−タ−ル−ムのパソコンのインタ−ネットへの接続が必要であったが,予算の都合がつかずできないままになっていた。CECのことを知りさっそく応募して補助を受けることになった。
(2) ISDNを配線する
 学校にはアナログ回線が2回線入っていたが,ファックスに使われている回線をISDNにしてもらえることになった。CECの補助をいただけることになったので,教育委員会に特別に工事をしてもらえた。
 しかし,学校の電話の配線は複雑で,どこをどう配線したらよいか何度も工事業者と打ち合わせしたり,NTTに何度も相談したりとても大変な作業だった。これから配線する学校があれば専用にもう1回線増やしてもらったほうが絶対に良い。
(3) LANを配線する
 必要な機材をそろえ,LAN の配線にとりかかる。しかし,困ったことに学校には工具がほとんどない。去年担任したクラスの親に詳しい方がいらしたので,相談して手伝っていただくことになる。
 1階の職員室から3階のコンピュ−タ−ル−ムまでの配線には,今では使われていない煙突を利用した。現在使っているスト−ブは,煙突を使わないタイプなので1階の職員室から3階のコンピュ−タ−ル−ムの隣の会議室までの配線は,すぐにできた。会議室からは,天井裏を通してコンピュ−タ−ル−ムまで配線した。ここでも電動ドライバ−など学校にない工具をPTAの方が持って来てくださり,おおいに助かった。
 スイッチングハブを使った配線も,PTAの方がほとんどやってくださり,おおいに助かった。
(4) プロキシメ−ルを入れる
 職員室のサ−バにプロキシメ−ルを入れ設定をする段になって,これもよくわからないので困ってしまった。これもPTAの方がいろいろと調べて,設定を手伝ってくださった。
(5) コンピュ−タ−ル−ムのパソコンでインタ−ネット
 苦労のかいあって,コンピュ−タ−ル−ムのパソコンがインタ−ネットにつながった時は実にうれしかった。手作りのシステムではあってもコンピュ−タ−ル−ムのパソコンでインタ−ネットができるようになった意味は大きい。

1.3 研修への活用
(1) 教職員のインタ−ネット研修
 教職員のインタ−ネット研修を同和教育研修をかねて行った。1学期に行ったインタ−ネット研修の復習もかねて同和問題に関するホ−ム−ペ−ジの検索を行った。
(2) PTAのインタ−ネット研修
 PTAの広報部会でインタ−ネットの研修を行った。1学期に一太郎研修を行っているので,パソコンに対する関心は高かった。
(3) 児童のインタ−ネット研修
 PTAの方からパソコンにくわしい方をゲストティ−チャ−として招いてパソコン教室を開く予定にしている。

2 成果と課題
2.1 成果
(1) 手作りのシステムであってもコンピュ−タ−ル−ムのパソコンでインタ−ネットができるようになった意味は大きい。
(2) 教職員の間でパソコンに対する関心が高まり,自宅に新たにパソコンを購入した職員がこの2年で5人になった。
(3) 児童の間でパソコンに対する関心が高まり,休み時間コンピュ−タ−ル−ムのパソコンで絵をかいたりゲ−ムを楽しんだりしている。ただし,インタ−ネットは自由にやらせてはいない。
(4) 必要な情報がインタ−ネットで手に入るようになって,便利になった。

2.2 課題
(1) 児童対象のパソコン教室を,希望者をつのって開く予定である。その時,PTAの方からパソコンにくわしい方をゲストティ−チャ−として招くことができればよい。
(2) 授業のどの場面でパソコンを使うか,もっと具体的に検討が必要である。教員がインタ−ネットを使いこなせるようにする必要がある。
(3) 児童が勝手にインタ−ネットで有害なホ−ム−ペ−ジにアクセスしないようにしなくてはならない。フィルタ−ソフトは,疑問がある。
(4) これ以上パソコンを増やすと,メンテナンスなどで維持しきれなくなる。自作のシステムでは,10台が限界か。休み時間に自由に使わせていると,設定を変えられていることが多い。
(5) 予算の面で厳しい状況にある。
(6) ホ−ム−ペ−ジ開設には,職員の理解を得るのに時間がかかり,すぐにはできそうもない。

3 おわりに
 コンピュ−タ−の環境整備を志してから,一応の環境が整うまで2年もの年月がかかってしまった。まだまだ十分とは言えないが,手作りのシステムが一応動き出した。もらい物のパソコンと中古のパソコンを組み合わせても,小学生には十分なシステムが構築できることがわかった。行政改革で予算的に苦しい中でも,情報教育を進めてみようと思っている先生方の参考になれば幸いである。次のペ−ジに配線工事の写真を掲載するので,参考にされたい。

ワンポイントアドバイス
ISDN配線は,専用にもう1回線増やしてもらったほうが絶対に良い。既存の配線を変更するのはとても大変であった。
 パソコンは,ペンティアム120Mhzから133Mhzのものを中古で購入したが,小学生が使うには十分である。ただし予算が許せばもう少し高速のマシンを購入すると一太郎スマイルが使いやすい。
 手作りのシステムでは,市からの予算的援助が期待できないので維持管理も含めてPTAの協力が欠かせない。

参考文献等
 今回はなし。

配線工事の様子


       図1 職員室のル−タ−


       図2 職員室の煙突へ


       図3 会議室の煙突から


       図4 コンピュ−タ−ル−ムへ


       図5 天井裏の配線


       図6 パソコンの配線