学習空間を広げるためのネットワーク活用法

小学校全学年・情報教育
品川区立上神明小学校 辻松 康晴
キーワード 小学校,情報教育,校内LAN,電子メール,インターネット,学校ホームページ


インターネット利用の意図
 本校ではこれまで,児童の学習空間を広げるため情報教育を取り入れ,校内LANの整備・拡充,校内ホームページの開設など,ネットワークの活用法についての研究実践に取り組んできた。児童がもっている「見たいときに見たい」,「だれのでも見たい」,「どこでも見たい」という要求に応えるために,校内ホームページを学習の様子や成果を発表する場とし,お互いの作品を見合い,伝言板などを利用して意見や感想を交換するなど様々な情報の交換や交流を通して,学級の壁,学年の壁,時間の壁を越えてきた。また,電子メール講習会を実施し,全職員,全クラスにメールアドレスを発行し活用をはじめてきた。
 そこで今回,これまで蓄積してきた内容の一部を「学校ホームページ」としてインターネット上に公開することで,学校や地域,国などの壁をも越え,より学習空間の広がりを持たせようと考えた。職員間の共通理解を深め,著作権やネットワーク活用の有用性を確かめるために全職員を対象に研修会を企画し実施した。


1 学校ホームページ研修会
(1) 学校ホームページの役割
 学校ホームページを作成し発行する目的は,学校を紹介したり,地域や保護者の方へ情報を提供したりすることで,学校をより理解していただき,児童の学習活動をはじめ教育活動全般に生かしていくことと考える。
 また,自分たちのもっている情報を様々な表現で発信することによって,ネットを通じ,地域の人をはじめ,国内や外国の人などより多くの人との出会いが実現される場とすることができる。
 そこで今回の研修では,学校ホームページがもつ機能や内容を確認し,本校のホームページ開設に当たって,コンテンツの内容や意義についての共通理解を図っていきたいと考えた。

(2) 学校ホームページの機能や具体的な内容について
 学校ホームページがもつ機能として「広報としての機能」,「学校間交流,地域・保護者との連携を推進する機能」,「学習活動を活性化させる機能」などがあげられる。それぞれの機能を生かすため考えられる具体的な内容についてならべてみた。

(a) 「広報としての機能」をもたせるために必要な内容
 教育目標(学校が目指している児童像)
 校歌(歌詞やメロディーから伝わる学校の雰囲気)
 学校の沿革(学校の成り立ちや歴史)
 所在地・連絡先(交流や情報交換)
 施設設備(学校開放)
 行事予定(学校の公開,教育活動のあらまし)
 校内研究(教育活動の向上)

(b) 「学校間交流,地域・保護者との連携を推進する機能」をもたせるために必要な内容
 学校行事(学校の公開,教育活動のあらまし)
 学習活動の紹介(学習内容や学習の様子)
 学年・学級の紹介(独自の取り組みや,発達段階)
 特色ある教育活動(学校としてのアイデンティティー)
 学習成果の発表(情報の発信)
 PTA活動(保護者と教師の協力)

(c) 「学習活動を活性化させる機能」をもたせるために必要な内容
 リンク集(学習の効率化)
 作品発表の場(交流学習,学び合い)
 資料集(学習の効率化)
 学習教材の提供(家庭学習,ドリル学習)

(3) 見てもらうための技術的な問題について
 こちらの情報を発信するときに注意したい点は,「見てもらう」という視点で見る側の立場に立って表現しなくてはいけないという点ある。ホームページの作成に当たって常に心がけたい技術的な問題として次の2点をあげておく。

(a) 絵や写真を使って視覚的にわかりやすいページを作る。
伝えたい内容が効果的に表現されている絵や写真を使うことで,雰囲気や臨場感を伝えそれを補う程度に文字情報をいれる。

(b) 画像や音声などや必要以上に多くしない。
画面に表示されるまでに非常に時間がかかることがあるため,かえって伝えたい情報が伝わりにくくなる恐れがあるので,「画像ならば,あまり大きくしない。」「音声ならば,あまり長くしない。」「音楽は,midi形式を使う。」ことを心がけたい。

(4) 個人情報の取り扱いについて
 学校の情報を発信する上で次に問題になるのが個人情報の取り扱いについてである。これまでも,学校や行政などでこの問題について種々取り上げられ,様々な議論がなされてきている。学校内であれば問題にならないことでも,学校ホームページを通して広く情報を発信するときには,プライバシーや肖像権の侵害したり,よからぬ事に利用されたりしてしまう場合がある。公開する情報の内容について何かしらの問題が考えられる場合には校内で十分に吟味検討した上で,最終的には学校長の責任において判断を委ねるようにするというような体制を作っておくことが必要である。

(5) 著作権の尊重について
 学校現場では,著作権のことについてさほどの注意をはらう場面が少ないように思う。しかし,著作権を尊重していくことは社会の常識となっている。たとえ,教育利用であっても,その作品の著作権を侵害することとなる。たとえば,音楽の著作権には,作曲者の著作権,作詞家の著作権,編曲者の著作権,演奏家の著作隣接権,歌手の著作隣接権,レコード会社の複製権,放送局の複製権などがある。必要に応じて,関係する権利について許諾を得る必要がある。ただ,インターネット,ホームページでの音楽利用について,日本音楽著作権協会(JASRAC)にも対応しきれていない問題がある。また,子供の作品にも,子供自身の著作権があることは言うまでもない。子供の活動の様子を写した写真を掲載する場合には,写っている子供の肖像権を尊重しようという傾向にある。具体的には,文書を配り保護者から承認をもらうようすることが望ましい。
 くわしくは,以下にあげたホームページなどを参照されたい。

 三重大学教育学部付属中学校
 http://www.fuzoku.edu.mie-u.ac.jp/naiki/shozoken.html
 教育ソフト開発・利用促進センター
 http://www.cec.or.jp/es/kyouiku/internet/internet.html
 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会
 http://www.accsjp.or.jp/
 社団法人著作権情報センター
 http://www.cric.or.jp/

(6) 本校のホームページ開設について
 本校ではこれまで4年間にわたり,校内LANの構築,整備,校内ホームページの発行,インターネットの導入,プロキシによる全パソコンへでのインターネット利用,クラスメールアドレスの発行,職員用メールアドレスの発行などに取り組んできた。
 そこで今回,先に確認した学校ホームページの役割をふまえた上で,これまでの校内ホームページ(図1)に蓄積してきたものを有効に利用しながら本校のホームページを発行しようと思う。

図1 校内ホームページのトップページ

(a) 「トップページ」
表題「上神明小学校ホームページへようこそ」(学校名をはっきり示す)
背景「写真または学校のシンボル」(解像度を低くしておく)
リンク1「日本語ページ」(日本語による標準のページへ)
リンク2「外国語のページ」(本校のあらましなどを知ってもらう)
リンク3「テキストのみのページ」(視覚障害などを持たれている方へのページ)

(b) 「日本語のページ」
たて分割のフレームを用いて左側にリンクフレーム,右側にメインフレームを設定しておく。メインフレームには校内ホームページにある「かみしんおしゃべりボード」で子どもたちが最近話題にしている内容を表示するようにして,少しでも子どもたちの普段の様子を知ってもらう。

(c) 「日本語のページのコンテンツ」
おしらせ(最新の情報を紹介する)
校内ネットワークの紹介(校内LANのシステムなどを紹介する)
PTAのページ(PTA活動の予定や様子などを紹介する)
 ・「もちつき大会」
 ・「PTA総会の様子」
 ・「年間活動予定」

よくある質問Q&A(転校の際の手続きや,学校施設の利用方法など)
学校紹介(校長室,校内研,授業での取り組みなどを紹介する)
 ・「校内研究の取り組み」
 ・「特色ある教育活動」
 ・「目指す児童像」

家庭学習のヒント(パズル,ドリル,型紙などを紹介する)
子どもたちの活動(学習活動などの発表・交流の場,リンク集など)
 ・「パンダに会いに行こう」(生活科)(図2)
 ・「植物観察記録」(理科)
 ・「移動教室フォトニュース」
 ・「パソコンクラブの作品」(特別活動)
 ・「商店街のお店を紹介しよう」(社会科)(図3)

連絡先(所在地,電話番号,メールアドレスなど)
ライブカメラ(即時性をいかし校庭の様子などを発信する)

図2 パンダに会いに行こうのページ

図3 商店街のお店を紹介しようのページ

2 成果と課題
 ・インターネットやイントラネットが教育活動を日々行っていく上で今後も様々な場面で活用できることが理解されてきた。
 ・これまであまりPCに慣れていない職員が,デジカメを使わせ児童にホームページを作らせる授業を行った。
 ・ホームページ作成ソフトの使い方などの研修会を実施して欲しいとの声があがった。
 ・職員によるメールの利用が増えた。
 ・他校のホームページを学習に利用する場面が見られた。(ケナフの育て方など)
 ・学校ホームページのコンテンツはできあがったが,実際には時間がとれずまだ発行されていない。(2000年4月開設予定)

ワンポイントアドバイス
 ホームページについての内容や意義につては,個人個人のとらえ方に違いがあると思う。学校として発行する場合には何より全職員の共通理解のもと運用されることが必要である。一部の職員だけで運用されている学校がほとんどだと思うが,このような研修会を開くことでみんなが知っているということに重点を置くといいのではないだろうか。「わたしにもできそう」「やってみようかな」という気持ちをもってもらえるよう校内の雰囲気を作っていってはどうだろうか。

利用したURLなど
 三重大学教育学部付属中学校
 http://www.fuzoku.edu.mie-u.ac.jp/naiki/shozoken.html
 教育ソフト開発・利用促進センター
 http://www.cec.or.jp/es/kyouiku/internet/internet.html
 目黒区立第六中学校
 http://home.catv.ne.jp/dd/meguro6j/index.html
 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会
 http://www.accsjp.or.jp/
 社団法人著作権情報センター
 http://www.cric.or.jp/