生きてはたらく共同学習

小学校第6学年 環境学習を中心とした総合的な学習
東京都江東区立南砂東小学校  伊藤 秀一
キーワード 小学校,6年,総合的な学習,環境教育,インターネット,テレビ会議,交流学習,地域との連携


共同学習の意図
 環境の学習は,ある意味では情報活用の学習でもあるといえる。算数のような模範解答がないため,多くの資料にあたる中から,よりよい方策を探っていくことになる。情報量が少ないと,単純に「よくないことはやめよう」という一方通行的な見方や考え方に陥り結論づけてしまうことも多い。このようなときにインターネットやテレビ会議システムの活用は,環境や立場の異なる地域の人々との学習を可能にし,子どもたちの視野を広げるのに効果的である。さらには,学習で得たものを自分だけのもので終わらせることなく,身近な人々に働きかけ実践に移していくことが重要であると考える。
 このような人と人との交流を通して,多くの人たちの考え方に触れ,物事を様々な方向から見る力が育つと考える。そして,それらを踏まえて,自分はどうあるべきか,よりよいあり方を見つけ行動しようとする子どもを育てていきたい。


1 われら南砂公園課
(1) ねらい
 6年生の子どもたちは昨年度,石川県の徳田小学校,鳥取県の賀露小学校とお米作りを通して,消費者と生産者という異なる立場から共同学習を進めた。その中から,環境や立場による考え方の違いに気づき,物事は一方向だけではなく,様々な方向から考え総合的に判断するものであるという見方や考え方が育ってきた。また,自分の思いや願いを相手に伝えることの難しさに気づき,人と人とのコミュニケーションの大切さにも目が向くようになってきている。これらの力は,共同学習を柱とした双方向の学習から生まれた大きな成果であるといえる。
 今年度は,自分たちが学び育ててきた考えをまわりに広げ伝えていく実践的な活動を進めることにした。徳田小の子どもたちとは「ともに行動する仲間」としてテレビ会議などを通じて作戦を練っていくことにした。学校内の縦のつながりを密にする交流活動,学校と学校を結ぶインターネットを活用した交流,地域のボランティアや行政の方と連携した環境意識の高揚などを子どもたちと共に押し進めていきたいと考える。最終的には学校の授業という枠を飛び越え,地域や行政をも感化するような社会活動にまで発展できればと考える。ネットワークはその過程で最大限に活用していきたい。単元名にある「われら南砂公園課」というのは,学校をキーステーションとして,外からの情報を受けると共に,そこから子どもたちが地域に飛び出し活動していくという意味でもある。

2−1 活動の構造図

2−2 学習指導計画(20時間扱い)       *支援または留意点  □評価の観点

3 学習の展開
(1) ねらい
 これから先のなすべき方向を話し合うことを通して,まわりに働きかけていこうとする積極的な姿勢を育む
(2) 展開

4 学習を通した子どもたちの変容
<気づいたコミュニケーションの大切さ>
 人を招いたりテレビ会議で話し合いをしたりすると,子どもたちは自分の思いや願いがなかなか相手に伝わらないもどかしさを感じた。このことが相手を納得させる表現力を身につける必要性に気づかせるきっかけとなった。そこで,相手に伝える表現力を身につけるために,毎朝スピーチの時間を確保した。


    図13

 始めは恥ずかしがってメモを読み上げるだけだった子どもたちが,次第にみんなの前に立って話をすることへの抵抗が少なくなっていった。また,提示装置の扱いもうまくなり,具体的な資料を示しながら相手に伝えることを意識した説明に変わっていった。
<広がった人とのかかわりの輪>


    図14

 ビオトープ作りを通して,区役所の河川公園課の方や地域のエコスペースボランティアの方とのかかわりが密になった。ボランティアの方も毎月学校に来ていただくとともに,自主的に地域の自然観察会にも参加する子も増え,次第に地に足のついた活動に発展しつつあることを感じるようになっていった。また,区役所の公園課のホームページ作りは子どもたちの指導の下,作ることになっている。
<インターネットが心をつないだ> 地域を越えた仲間 


    図15

 2年間続けた交流学習の中から,互いに認め合い,信頼し合える仲間が地域を越えて誕生した。真剣に環境について考え追究し合ったことが深い絆を作り,お互いを高め合うことにつながった。学習を離れたときも移動教室のおみやげを交換したり,学芸会のビデオを送り合ったりするなど距離を感じさせないかかわりを続けた。最後には,卒業式にテレビ会議をつないで,お祝いし合おうという約束になった。ネットワークを通して心と心のつながりができたことを感じた。

ワンポイントアドバイス
交流学習は様々な相手とのTTである。どんな子どもたちを育てたいか,しっかりとしたビジョンをもって指導計画を立てる必要がある。何よりも大切なのは指導者同士の情報交換であり,意志の疎通である。

利用したURLなど
 インターネットスクール・たったひとつの地球 http://www.nhk.or.jp/sch/inter-tatta/
 南砂東小学校ホームページ http://www.koto.ed.jp/higasi-sho/
 徳田小学校ホームページ http://pcen101.ed.kanazawa-u.ac.jp/tokuda/tokuda.html