学校自慢・街自慢


渋谷区立中幡小学校
対象;第6学年2組男子13名,女子12名計25名
指導者;槙田 稔
キーワード デジタルカメラ,発信,ホームページ,学校間交流関連した教科;主に国語,社会,学級活動


研究の目的・意図
情報化社会のニーズから
 国際化・情報化社会が進む現代社会は,以前に比べて世界同時に文化を共有しやすい環境が広がっている。メールやインターネットを通して離れている人と簡単に意志を伝え合える。
 今後,ネットワークコミュニケーションは我々の身近な媒体として生活の中により重要性が増していくと思われる。
 こうした社会状況を考えたとき,これからの未来を生きる子ども達に,コンピュータを使えるようになる技能や知識の習得をさせることは必要不可欠であると思われる。

 コンピュータを使った方がより効果的であるとか,わかりやすいということがある。コンピュータの利点を生かした学習の可能性を広げていきたいと考えた。
児童の実態から
 子どもたちは,日頃からテレビゲームや携帯型ゲームなどに接することが多く,ソフトという言葉やフロッピーという言葉にも違和感なく接している。家庭で保護者とともにインターネットに触れている児童も何人かいる。しかし,自分でコンピュータを駆使して知りたい情報を収集するということまでには至っていない。自分の言葉を自分の表現として伝えるのに,コンピュータやワープロを使うという機会もほとんどなかった。
 作文や社会の新聞作りの指導をしていて,子どもの持っている知識や感性という才能がうまく表現できずにいるということがある。せっかく児童がいい感性や知識を持っていてもそれが生かしきれないということがある。
 児童にしてみると「字が汚くなってしまう」「書き直すのが面倒」「図や絵がうまく描けない」という理由から,表現することや考え直すことを嫌う傾向がある。みずみずしい感性や新しく身につけた知識を上手に生かし,その才能が発揮されるような支援をコンピュータによって行いたい。
 コンピュータを取り入れることで,文章の構成力,表現力が身につき,表現しようとする意欲の減退もなくなるではないかと考えた。コンピュータを使った学習指導の工夫のあり方を探り,児童の表現することへの意欲を高め,自分たちの学校自慢というタイトルでホームページを作成したり,インターネットを使った学校間交流をしたりすることで,主体的な情報発信者に育てたいと考えている。
 まず自分の言葉を活字にしてみることが大切であると考えた。ワープロ機能をマスターし,パソコンの操作になれることを導入段階でもっとも重要であると考えた。
 次の段階として,サンプル画像を教師が提供してコピーとペーストの技能を身につけさせて,いろいろな表現方法があることを感じ取らせたいようと考えた。写真を取り込むことで新しい表現方法を学ぶ楽しさを感じ取らせたいと思った。
 コンピュータを表現する道具のひとつとして使い,コンピュータに親しむことで,児童が発展的に調べ学習の情報収集を行い,さらに情報発信しようというレベルまでに発展させていきたい。
 コンピュータを使う学習を通して,情報化社会への対応と自ら学ぶ生きる力に通じる学習の可能性を探ることを目的とし,表現力・構成力を高め,情報収集力・発信力を身につけるコンピュータ学習という意図を持ってテーマを設定し,単元を構成した。
  表現する
 情報収集する まとめる 発信する・交流する


1 単元名
 「発信!学校自慢」
(1) ねらい
(a) コンピュータを表現する道具として使う。
(b) 表現力・情報収集能力を養い,情報発信への意欲を高める。
(2) 指導目標
(a) ローマ字入力ができ,フォントを使いこなし視覚的に豊かな表現ができるようにする。
(b) レイアウトを考えて,サンプル画像や自分で作ったイラストのコピーとペーストができる。
(c) デジタルカメラの使い方を知る。
(d) デジタルカメラを使って写真を取り込み,そこに文章をつけ,イメージに合った作品を表現しようとする。
(e) 情報を集めまとめ,他者に伝えられるホームページを作る。
(3) 利用場面
 
国語…俳句作り,図工…着てみたい衣服のデザイン,社会…新聞作り,学級活動…自己紹介・学校紹介
(4) 利用環境
(a) 使用機種・・・マッキントッシュ20台(LAN),ウィンドウズ95ノートパソコン6台,ウィンドウズ98ノートパソコン1台
(b) 周辺機器・・・デジタルカメラ
(c) 稼働環境・・・コンピュータ室 Mac20台,教室 HITACHIフローラ7台 
(d) 利用ソフト・・キッドピクス,クラリスワークス4.0,ワード98,IBMホームページビルダー2001 ,フラッシュパス,インターネットエクスプローラ4.01

2 指導計画

学習内容

学習目標

1.5月の俳句を作ろう 

・ローマ字入力ができる。
・フォントを使いこなし視覚的に豊かな表現ができるようになる。

2.6月の俳句を作ろう

3.自己紹介のカードを作ろう 

・フォントを使いこなし視覚的に豊かな表現ができるようになる。
・サンプル画像や自分の考えたイラストのコピーとペーストができる。

4.運動会のニュース

・レイアウトを考えた新聞作りができる。

5.デザイン(図工)

・自分の着てみたい服のデザインをする。

6.デジタルカメラを使い作品を仕上げよう

・デジタルカメラの使い方を身につける。
デジタルカメラの画像を取り入れる。

7.学校を紹介するホームページを作ってみよ

 

・今までの技術を生かして,自分たちの学校で自慢できる情報を発信しようとする
*インターネットに載せるとしたら,どんなページを載せるのか考える。
計画に沿って,調査して取材をする。

8.作ったホームページをお友達の学校とインターネットを使って交流してみよう

*編集して,ホームページを作成し,学校間交流を図る

 

3 学習の展開
(a) ステップ1
 ローマ字入力に慣れることから入った。
 マウスの操作になれている児童でも,ローマ字入力をするのにも苦労していた。そこで,短文を作ることからはじめた。
国語の学習とリンクさせて俳句から取り組んだ。6月の俳句作りでは,俳句のイメージに合う場面を考え,簡単なイラストをつけた。

A児の作品

(b) ステップ2
 サンプル画像のコピーとペーストの作業も2時間で多くの児童ができた。学習形態を2人ペアによる学習にした。このことは,理解を深めるのによかった。意外にもこの技術を覚えるのが早かった。葉書サイズに印刷して暑中お見舞いの葉書を作成する児童もいた。
(c) ステップ3
 社会の歴史調べ学習では,CD−ROMの学習百科事典ソフトを使って,まとめをしている児童も多くいた。「織田信長・豊臣秀吉・徳川家康」という3人の武将について教科書や資料集からだけでは得られない生育暦も調べることができて,楽しそうに調べ学習に取り組んだ。
(d) ステップ4
 2学期に入ってからはデジタルカメラを使うようにした。デジタルカメラは,台数も限られており,うまく活用しきれない面もあったのでグループ活動を取り入れて行った。自分の顔を撮影してIDカードを作る児童もいた。
(e) ステップ5
 自分が着てみたい服をデザインするという学習では,色がうまく使えなかったり,全体の形のバランスがうまくはかれなくて,絵が苦手だという子どももきれいに仕上げられた。プリントアウトした作品に満足していた。
(f) ステップ6
 新聞作りへと移っていく中で,児童が「こんなことを記事にしてもしょうがない」と言う程,少しずつ情報の質を問うような視点も育っている。見栄えを美しくすることだけで満足していたのが,中味を問うようになった。
(g) ステップ7
 デジタルカメラを使って,学校の施設や自慢できるところを取材し,コメントを付けた。体育館の下(地下)には社会教育でも使っている屋内プールがある。子供たちはこの学校の自慢できる施設として,この新しいプールと体育館を学校自慢の1番にあげた。さらに本校には都会の中でも珍しい広い学校園(畑)がある。これも自慢できることだと子供たちの意見が一致した。近くには,商店街もあるので地域を紹介するなら商店街も取材してこようということになった。情報の発信者としての意欲も高まり,積極的に活動している。
(h) ステップ8
 ホームページを作成し,大田区立松仙小学校のサーバに本校のホームページをおいて3小学校間交流ができるようにする。(大田区立徳持小学校)

ステップ7の展開

学習活動

活動への働きかけ

・学習の進め方を知る。計画書を作成する。

 

・テーマに分かれてデジカメを持って取材をする。
 ・学校の屋内プール
 ・新しい体育館
 ・学校の植物と畑
 ・校庭と施設
 ・商店街
・取材してきた画像をコンピュータに取り込む。
・友達の取材してきたものを見て感想を話し合う。

学校ホームページをつくるのに紹介したい場所をグループになって話し合わせ見通しを持たせる。

計画書を教師が把握して安全に配慮する。

 

 

 

 

 

コピー → ペーストをして作品を一つにする。
より良くしたい点について明確にする。

 

4 実践を終えて
(1) 成果 
 成果としては,児童がコンピュータをより身近に使って学習できた。今までよりも,コンピュータに慣れ親しんでいるという感触を持っているようであった。特に社会の調べ学習では,CD-ROMから情報を検索することが難なくできた。また,家庭の人の協力を得て,インターネットでネットサーフィンする児童もでてきた。
字を書くことに抵抗感の強い子どもも,自分の作品がプリントアウトされると満足感を得て実に生き生きとしていた。絵の苦手な児童も同じように,自分の技量をカバーしてイメージに近づけられた作品ができたことは大きな喜びであった。
 デジタルカメラは写したものがすぐに貼り付けられるという便利さを実感していた。
 表現方法の幅を広げたり,児童の表現意欲を喚起したり,学習に関する情報を検索したりしたことからも,コンピュータは学習活動の支援の道具として大いに活用できた。
(2) 今後の課題
 課題としては,ローマ字入力にかかる時間に多くの児童がストレスを感じている。そのため,俳句やイラスト作りは楽しんでいるが,長い作文を書くことへの抵抗感を消すことができない。文章の構想を練ったり,推敲したりする上で,コピーや削除機能のある道具としての便利さを感じさせることも大切である。
 今は,情報を取り入れる,簡単な文章を表現するという面白さを知っているだけにとどまっている。調べ学習の時,情報を集めても,まとめるときにそれをそのまま書き写すということもあった。学習参考書的に使い,写すだけの学習では,児童の学びを真に支援したということにはならない。
 考えをまとめたり,表現して交流したりする道具として生かし,学ぶ力を伸ばしていきたい。
 コンピュータを道具として使えば使うほどに,情報の送り手としての姿も考えていきたい。「なんのために」「どんな情報を」集め,表現していくのかという視点を育てていかなければならない。
 近い将来,学校のホームページをアップロードするという前提で子ども達の作品づくりに励んできたが,教師側の技術的な未熟さのため,質の高い授業とならなかったことは大きな反省材料である。この反省を生かして次年度はさらに質の高い授業を作っていかねばならないと思った。

ワンポイントアドバイス 

 これからのコンピュータを使った学習は,教師も技術に長け,知識を付けてコンピュータを道具として使うことの便利さを理解するとともに,子ども達に伝達手段,情報検索,収集など,読む人情報の受け手を意識した情報発信のあり方・情報の質も吟味するような学習展開にしていく必要性を感じる。
 学校間交流ができる環境を整える上で重要になってくるのは,相手校と率直に打ち合わせがしっかりできることが必要条件になる。環境整備を行政に働きかけるとともに,教師が自ら動いて同じ志を持つ人々を探し,ネットワーク作りしていくことがまず第一歩であろう。


参加・協力校
 
大田区立松仙小学校,大田区立徳持小学校

利用したURLなど
http://village.infoweb.ne.jp/sugihara/main.htm
http://www.ota-shosen-e.ed.jp