広げよう友だちの輪!−他校との交流を通して−
小学校6学年・総合的な学習
東京都北区立赤羽台西小学校 野間 俊彦
キーワード 小学校,6年,総合,電子メール,学校間交流,インターネット
インターネット利用の意図
インターネットによる情報活用能力を育成するためには,活用の場面を多く設定し,重ねて利用することが大切である。そこで,子供たちが興味をもち,継続的にインターネットを利用するために,大分大学教育福祉科学部付属小学校(以下付属小学校)6年生と本校の6年生が電子メールやホームページを使用して交流を図ることにした。
電子メールやホームページを通して交流する中で,他者を認めたり他者の気持ちを考えたり,豊かな人間性と情報モラルを養うことにもつながると考えた。
なお,付属小と交流ができるようになったのは,平成11年3月に相手校の先生が本校に学校視察で見えたことがきっかけである。
1 単元名 「広げよう友だちの輪!」
授業者:高橋 恒雄教諭
(国語8,社会3,理科3,裁量の時間4,計18時間扱い)
(1) ねらい
・適切な情報を送受信することにより,付属小学校6年生との交流を深め,コミュニケーション能力を高める。
・電子メールを中心とした交流を日常的に行うことで,画面の向こうの遠く離れた地にいる「人とのかかわり」を意識できると考えた。また,「もっと詳しく伝えたい」「よりわかりやすく伝えたい」という意欲が高まるように支援し,画像の取り込みやホームページ作成などの主体的
な情報発信につなげる。
2 児童の実態
子供たちはこれまでに文字入力,ホームページの検索,ホームページ作成などを経験しており,コンピュータに対する抵抗感はほとんどない。
昨年度は,他校に向けて発信するホームページ作りをした。どのように工夫すれば,相手によりわかりやすく伝わるかを意識して取り組んで
みた。画像を取り入れる操作もしてみたが,難しさを感じた子供が多く,最後まで興味が持続しなくなってしまう様子も見られた。
ホームページの検索などは必要に応じて行っている。電子メールについては,今回の単元で初めて扱う。
3 情報活用能力について
文部省より,情報教育の目標として(a) 情報活用の実践力,(b) 情報の科学的な理解,(c) 情報社会に参画する態度の3点が示されている。この中の,情報活用の実践力の育成を本単元での学習活動で目指すことにした。情報活用の実践力とは,課題や目的に応じて情報手段を適切に活用することを含めて,必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造し,受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力と提案されている。
次に,どの場面でどのような活動を通して実践力を育てていくか考えた。本単元での他校との電子メールを使っての交流は,行事がある時だけで終わってしまうのではなく,日常的に続けていくことにした。日常的な電子メールでの意見交換により,自らが発した情報に対して生きた反応が返ってくる。画面の向こうの遠く離れた地に確かに人がいることを実感できるのも,電子メールの良さである。
「昨日送ったメールの返事が今日来ているかもしれない。」「今日調べたことを,今送りたい」などという意欲に応えることができる電子メールは,子供たちの興味関心を高め,持続させていくには有効であると考える。これは電子メールを使った交流の良さである。
今回の交流は,5月末の運動会後,本校の運動会の様子を伝えることから始まった。それから,両校とも興味が共通している子供同士でグループを作り,グループごとの交流という形をとってきた。日常的な電子メールのやりとりを通して,交流が深まってきている。相手のことが少しずつわかってきたところで相手から出てきた質問に対して,進んで調べ,わかりやすく伝えようとすることで,情報を主体的に集める能力や表現する能力も高まっていく。
「もっと詳しく伝えたい」「よりわかりやすく伝えたい」子供たちは,ホームページ作成ソフトを使ってデジタルカメラで撮影した画像を取り込むなどして表現方法を広げている。新しい技能を得ることも,子供たちが能動的に情報の発信をしようとする意欲につながる。
これらの活動を通して,他校との交流がより深まっていくと考える。
図1
図2
4 指導計画
<出会う>(3時間) |
・大分県について知る |
<交流する>(4時間) |
・知りたいことなどを質問する |
<広げる>(8時間) |
・共同学習,共同調べなどが生まれるように支援をし,発展を期待する |
<生かす>(3時間) |
・電子メールを使った情報収集,情報モラルなどを今後の学習活動に生かす |
5 本時の学習(9/18)
(1) ねらい
・電子メールやホームページなどを使って,調べたことを進んで伝えようとすることができる。
・自分なりに工夫しながら,相手に分かりやすいように情報を送ることができる。
(2) 展開
◎主な発問 ○学習活動 |
☆支援 ※留意点 |
|
|
◎調べたことを相手に分かりやすいように工夫して伝えましょう。 |
※必要な情報や画像は,前もって取材しておくようにする。 |
(3) 評価
・相手にとって分かりやすい情報を工夫して送ることができたか。
(4) 使用ソフト
○ネットスケープ・ナビゲータ(ホームページ表示)
○ネットスケープ・コンポーザ(ホームページ作成)
○ポケットメーラ(電子メール)
○ペイントショップ・プロ(画像処理)
6 他校との交流について
他校との交流を行う場合,一番問題になるのは相手校を見つけることである。ホームページを公開している学校に依頼のメールを送るのもいいだろうが,特色がある地域の学校(北海道,東北,九州,沖縄,山間部,超都心など)には依頼のメールが数多く届くことから,断られることが多いと聞く。
本校では,過去に何回か他校との交流を行ったが,次のような方法で交流校を見つけていった。
・今回の実践のように,学校視察や見学をきっかけに先生同士が知り合い,交流を進める。
・教育関係のメーリングリストに参加し,交流を呼びかけたり応じたりする。
・学校のホームページで広く呼びかける。
とくにメーリングリストは,インターネットをすでに使っている上に教育への活用を推進する立場の先生が多いためか,一番反応が良かった。ただ,会ったことがない先生とメールを中心に打ち合わせを進めることになるので,意志の疎通ができていないと,こちらが思う方向にもって行きにくくなったり,言いにくかったりしてしまう。一度でも会ったことがあれば,どんな人なのかがおおよそつかめるので,方向がずれた場合でも言いやすい。
7 交流の方法
交流には,メールだけでなく,積極的にホームページも使った。次の2点の図はその時のもので,相手校にはURLをメールで連絡して見てもらった。
図3 卒業制作についての質問には,デジタルカメラで作品を撮影して説明した。
図4 学校で飼育している動物についての説明。
8 成果と課題
・通信の際に,相手のことを意識した文書を送ろうとする気持ちが芽生えてきた。
・交流は,電子メールの文字だけでなく必要に応じて画像や実物を交換することで意欲が高まった。
・交流が長期間に渡るため,意欲を持続させる助言,子供の予想や疑問を次時へ生かす支援の工夫がさらに必要になる。
・共同学習,共同調査など目的をもった交流活動の設定をし,内容的にも深める必要がある。
ワンポイントアドバイス |
参加・協力校の名称とURL
東京都北区立赤羽台西小学校のホームページ (http://www.edu.kitanet.co.jp/~es01/)
大分大学教育福祉科学部附属小学校 (http://kitchom.ed.oita-u.ac.jp/~fusyo/)