インターネットを活用した環境学習
小学校第5学年・環境学習
品川区立大井第一小学校 糸川 順子
キーワード 小学・5年,理科・環境学習,インターネット,電子メール,学校間交流
インターネット利用の意図
「総合的な学習」を視野に入れた環境学習(本事例は,「ケナフ」の学習)を行う際に,学習課程の中での情報収集の1つとして,ホームページ閲覧をする。
ケナフの学習では,同様な学習をしている学校とホームページや電子メールを通じて実践交流する。また,学習して得た情報,特にケナフの持つ空気浄化能力をもっと他校にも広めたいとの児童の希望(意欲)により,ホームページを作成したり,電子メールで情報発信をする。
この学習全体を通して,児童の情報活用能力の向上を図る。
1 ケナフの栽培を通して環境を考える
(1) ねらい
本校では,児童が日常的に触れることができる自然への理解を基本として,人間と自然との調和をどう図るのかを学ばせることを重視し,環境教育を行っている。そして,児童が活動に主体的に取り組む過程で,感性を磨き,豊かな心を培い,人やものや環境に対して責任ある行動がとれるようになって欲しいと願い,「自然との共存」というキーワードのもと,自然に関わる体験的な活動を多く取り入れた学習を展開している。
本学習は,実際に動物や植物を育てることを通じ,その成長の様子を調べることにより,生命の連続性を理解し,生命を尊重し,動物や植物にとって住みよい環境について考え,実践しようとすることをねらったものである。また,コンピュータを使った情報収集・調査活動や表現活動を計画的に取り入れることにより,活動の過程でわき出た「もっと詳しく調べたい」「分かったことをみんなに知らせたい」といった意欲に応えたいと考えた。
(2) 指導目標
自分が育てているケナフの生育環境について,コンピュータを使って意欲的に調べたり,分かったことを知らせたりする活動を通じて,動物や植物にとって,住みよい環境について考え,実践しようとする意欲を培う。
<情報活用能力>
環境学習では,児童が出会う事象について疑問や課題を持つ段階として「気づく心」と,課題を解決するために自らが意欲的に調べたりする「取り組む力」が必要である。そして,この2つの能力を伸ばすためには,情報のもつ意味は非常に大きいので,それぞれの段階で児童が情報を活用することの認識と態度・技能を高める。
(3) 利用場面
本学習では,次のような場面でコンピュータを活用する。
(a) 調べる活動
・インターネット(関連のホームページ)で,ケナフという植物について調べる。
ケナフについての文献は少ないが,ホームページは,研究校をはじめとして充実している。電子メールや電話・FAX等で問い合わせると親切な返事をいただく。
・ケナフを栽培している学校から情報を集め,自分たちの取り組みに生かす。
(b) 情報交換
・ケナフを栽培している学校や関連団体のホームページにアクセスし交流しながら,課題解決の情報を得る。そのために,校内3教室のコンピュータ(インターネット接続)のどこからでも,いつでも情報があつめられ,プリントアウトできるシステムにしておく。また,学級の電子メールアドレスを準備(設定)しておく。
(c) 調べたり取り組んだりしたことをホームページにまとめる活動
・ケナフのよさを知らせるためにいろいろな表現活動をするが,学校遠隔の地に対すする情報発信の方法としてホームページを作成する。
・電子メールでの情報発信の相手として,あらかじめ区内・都外の学校を選んでおく。
(4) 利用環境
(a) 使用機種 WINDOWS98 8台,WINDOWS95 1台
(b) 周辺機器 デジタルカメラ 3台,デジタルビデオカメラ 1台,カラープリンタ(A3対応1台,A4対応3台)
(c) 稼働環境 コンピュータ室WINDOWS3.1 22台(インターネット未対応)
WINDOWS98 2台(インターネット接続,以下同じ)
WINDOWS98 2台
調べ学習室 WINDOWS98 5台(必要に応じて児童に開放)
管理室 デジタルビデオ編集コンピュータ 1台(同上)
(d) 利用ソフト スーパーYUKI,一太郎,ワードパット,IE(4.01,5.0)
(e) インターネット 品川区ケーブルテレビ125K接続
(f) ホームページアドレス http://www1.cts.ne.jp/~oichi/5nen.html
(g)電子メールアドレス e12-cl51@oi-1e.cts.ne.jp
2 指導計画
指導計画(10/10) |
留意点 |
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(c) (d) ケナフのパンフレットを作る。 |
・プリントアウトした写真やグラフなどを生かせるようにする。 |
(e) (f) 調べた育て方を参考にケナフを育て,成長の様子を観察する。 |
・成長の様子をデジタルカメラで撮影し,画像をコ ンピュータに取り込む。 |
(g)(h)ケナフのパルプ作り,葉書作りをする。 |
・活動の様子をデジタルカメラで撮影し,ホームページに追加する。 |
(i)ケナフの二酸化炭素吸収の様子を調べる。 |
・ホームページに,活動の様子や調査結果を追加する。 |
(j)ケナフのよさ(観察記録,活用方調査結果等)を多くの人に知らせる |
・電子メールとホームページで安原小学校と情報のやりとりをする。 |
図1 ケナフについてのページ |
図2 安原小学校のホームページ |
3 利用場面
(1) 目標
自分たちで育てたケナフが環境に優しい植物であることを,多くの人に知らせる方法を考え,実践する。
ホームページにまとめる班は,「スーパーYUKI」や「一太郎」・「ワードパット」で文章をまとめ,「FrontPageExpress」等でホームページの形にする。
(2) 展開
学 習 活 動 |
活動への働きかけ |
備考 |
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1 本時の活動の説明を聞く。 |
・ケナフを育て,収穫したこ とやケナフについて調べた ことを確認する。 |
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ケナフのよさをみんなに知らせよう |
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2 自分たちが育てたケナフが環境に優しい植物であることを,誰に,どんな内容を,どんな方法で知らせるのかを考え,発表する。 |
・電子メールを使うと,知らせる相手が広がることに気付くようにする。 |
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図4 本校ホームページケナフの発信
4 実践を終えて
環境学習でケナフを育てている学校や地域はまだまだ少ないが,環境教育先進校ではかなりの実践を積んでいる。そのため,本校がケナフの栽培に取り組んだとき,インターネットを活用することで予想以上に多くの情報を集めることができた。
図鑑や子供向けの本も未だ情報量が少ないので,ケナフに関しては,インターネットを使用しての情報収集は,大変よい方法だと考えられる。
また,インターネットのホームページによる情報は,育て方や利用方法など,写真や図がふんだんに使われていて,児童にも分かりやすかった。ホームページの情報は,全てが児童の理解に役立つということにはならないが,使い慣れるにつれて情報の選択に進歩が見られたことも実践を終えて強く感じたことである。
電子メールでの交流では,すぐ相手校からの返事が届いたので,より関心をもって取り組めた。また,届いた返事を読むことで自分たちの取り組みに自信がもてたようである。 電子メールは,電話のような即時性ではやや劣るが,情報伝達が早いこと,安価なことはもちろん資料添付が出来る点で,学習における活用を今後とも促進していきたい。
ホームページの作成は,児童だけではまだまだ不十分で,教師の支援が欠かせなかったが,表現活動として,また,情報発信として,非常に強力な学習支援となることを確信した。従って,他校等との交流は,電子メールとホームページを一体として行っていくことが重要である。
ワンポイントアドバイス |
参考文献
学校の中での環境教育 国土社
学校と環境教育 東海大学出版会
環境教育実践マニュアル 小学館
環境教育指導資料 文部省
宇宙船地球号(シリーズVTR) TDKコア
利用したURLなど
川崎火力発電所(http://www.tepco.co.jp/kawasaki-tp/nandemo/kenaf1-j.html)
日本製紙連合会(http://www.paper-jpa.or.jp/kanren/koshiagain.htm)
東京スリム・環境教育(http://www.tokyo-slim.gr.jp/b.html)