地域で学んだことを発信しよう

小学校6年・社会科
文京区立千駄木小学校 橋谷田有俊
キーワード 小学校,6年,総合的・横断的な学習,インターネット


インターネット利用の意図
 社会科の歴史学習では,知識注入型の受け身的な学習するのではなく進んで課題を持ち調べていく,問題解決的な学習の展開を大切に考えてきた。そのために,追求活動の中では,より多くの資料を収集しやすくすために参考書以外にインターネットを進んで活用させてきている。また,子どもたちの興味や関心をもたせるため,学年全体で実際に区内にある文化遺跡や史跡を訪ねる学習も行った。遺跡・史跡をデジタルカメラやビデオカメラで撮影してきたものを使って新聞やパンフレットの形でまとめている また,学校外の人々に発信するために学校のホームページにまとめたものを載せている。これは,ここ数年に渡って蓄積をしながら,良いものを作ろうと繰り返し活動している。まとめを発信することによって子どもたちの意欲や関心はさらに向上している。


1 わが町歴史発見
(1) ねらい
 学校がある文京区は,古代の遺跡と江戸時代以降の歴史的な建造物が多いことで知られている。しかし,そのことを知らない子どもたちも多い。そこで,地域や文京区内の歴史を探ることによって,改めて地域の良さを振り返ることができると考え本学習活動を設定した。
 実際に地域にある自分の興味がある史跡や遺跡を調べに行く(歴史探検をする)ことで,子どもの歴史に対する関心を高めたいと考えた。調べる時やまとめる時にコンピュータを活用することで,より意欲的に学習ができるように考えた。
(2) 指導目標
・身近な地域にある遺跡や史跡を見学する中で,今まで近くにいながら気がつかなかった地域や文京区内の歴史的な価値に驚き,良さを再確認すること。
・自分の課題に沿って計画を立て,実際に見てきたことをもとに,コンピュータを使ってまとめインターネットで情報を発信すること。このような学習を通して,住んでいる地域の良さに気づき,主体的に活動できる子どもを育てたい。
(3) コンピュータの利用場面
1) 自分の調べ活動
 自分の課題について調べていく中で,さらに調べてみたいことや分からなかったことなどについて,インターネットにある関連のホームページを利用できる。パソコンル−ムにあるコンピュータは,朝から下校時まで電源をつけてあるのでいつでも利用できるようになっている。またインターネットは,電話回線ではなく,有線放送のケーブルを利用したものなので,利用料金を気にすることなく子どもが好きなだけ利用できる。
2) 調べてきたことをホームページに載せ発信する
 参考書やインターネット,そして実際に見学してきたことをコンピュータでまとめ,ホームページに載せる。ページについては,子どもがレイアウトし,内容に関しては教師と一緒に相談しながら作ってきた。
3)メールの利用
 ホームページを見た人から送られてくるメールは,子どもの大変な喜びになっている。そのメールに子どもが返事を書くようにすることで,知らない人との交流も生まれている。また,子どもがさらに工夫しようとする意欲にも結びついている。
(4) 利用環境
1) 使用機器 子機NEC Xa13 20台 親機NECXa16 1台
2) 周辺機器 デジタルカメラ カシオQVー11 6台  京セラSAMURAI1300DG 4台
3) 稼働環境 コンピュータルーム NEC Xa13 20台 NEC Xa16 1台 LANで接続
       有線放送のケーブルでインターネット接続
4) 利用ソフト 一太郎9,ホームページビルダー,YahooKids

2 学習活動計画(18時間)

予 想 さ れ る 学 習 活 動  

    支   援   ・  指   導  

1) 動坂遺跡を調べてみよう。
 
 


ふるさと歴史館を見学する。

・区域にも遺跡があることを知らせる。
・古い時代にもこの地域に人々が生活していたことに気付くように,動坂遺跡の見学を実施する。
・デジタルカメラやビデオカメラで撮影し,後で活用できるようにする。
・文京区内の歴史にさらに関心が増すようにするために,区内には,たくさんの史跡があることに気付かせる。  

2) 江戸東京博物館を見学しよう。
・見学してきたことを,「一太郎9」を使ってパンフレットや新聞にまとめる。
・よく分からなかったことや詳しく知りたいことなどをインターネットを使って調べる。  

・江戸時代の歴史の理解を深めるために,個々に課題をきちんともたせて見学をさせる。
・自分なりの言葉を使って,相手に分かりやすいように表現できるように意識をさせる。
 
 

3) お江戸文京探検ツアーをしよう。
・地図をもとに文京区の史跡を知る。
・自分の行きたい場所を決める。
・課題ごとにグループを作る。
・探検するための計画を作る。 

・探検ツアーの出かけたい場所が明確になるように,江戸時代に関する史跡を知らせる。 

・行きたい場所ごとのグループ作りをする。
・探検ツアーを実りある活動になるように話し合いをさせる。
 

4) 探検ツアーに出かける。
・自分たちの課題に沿って見学する。

・電車,バス等を使って安全面に十分気をつけるよう指導する。
・デジタルカメラやカカセットレコーダーをグループに1台ずつ渡しておく。  

5) 探検してきたことをまとめる。
・探検をしてさらに詳しく知りたいこと思ったことなどインターネットを使って調べる。
・探検してきたことや調べたことを分かりやすく,見やすく一太郎9を使ってまとめる。
・画像も取り入れながら,まとめる。  

・関連のホームページをお気に入りに登録しておく。
 

・デジタルカメラの画像は,予めサーバのほうに入れておき,子どもが必要に応じて取り出せるようにしておく。 

HTML形式で保存するよう指導する。
・できあがった作品はホームページに随時載せていく。
 

6) メールの交換をする。
・失礼のないようなメールの返事を書く。 

・ホームページを見た方の感想を子どもに紹介し,自分の考えを入れた返事を書かせる。


3 利用場面

(1) 目標
 お江戸文京ツアーで調べてきたことを,「一太郎9」でまとめ,ホームページの形にする。見やすく,分かりやすい作品を作る。作品の中には,自分で調べて思ったことや 感想などを必ず入れるようにする。
(2) 展開

    学 習 活 動  

  支 援 ・ 指 導  

 備  考  

1.本時のめあての確認をする。 

・個々に自分の活動の見通しをもた せる。  


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

・ネットワーク,大型ディスプレイ  

    調べたことや分かったことをまとめ,発信しよう

2.探検別コースごとのグループで「一太郎9」を使って作成する。
 ○護国寺
 ○湯島天神
 ○東京大学
 ○根津神社
 ○湯島聖堂など
 

・名前の謂れや伝説などがあったらまとめの中に入れる。
・質問して分かったことなども書き入れる。

3.作成したものをホームページ形式で保存する。

4.お互いの作成した作品を見せ合いながら感想や意見を出し合い,さらに良いものを作る。  

・写真のデータをサーバーから取り込むようにさせる。
・文字の大きさや色などを工夫させる。
・まとめ全体のレイアウトなどを考えさせる。
・自分たちの驚きや感想をまとめの中に必ず入れるようにさせる。
 
 
 
 
 



・作品がさらに良くなるように意見を交換させる。
 

 





    1 蒟蒻閻魔グループのホームページ   図2 東京大学グループのホームページ

4 実践を終えて
 区内の江戸時代に関するものを調べていく中で,子どもたちは自分たちが住んでいる地域の良さについて改めて気が付くことができた。また,町探検の時に現地で説明をしていただいたことが,関心の高まりや課題の明確化につながっていった。また,一人一人の課題を大切にしながら少人数のグループに分けて行動したことにより,課題を意識しながら学習に取り組むこともできた。
 学習したことをグループごとにインターネットを使って発信していくことで,内容や言葉など具体的な話し合い活動が盛んに行われた。人に伝えるという意識が子どもの活動意欲に大変役立っていた。また,呼んだ人からメールをもらうことで,さらに読みやすく,分かりやすくしようと工夫する気持ちも出てきた。
 インターネットの利用に関しては,大変有用性のある情報が多くある反面,自分の知りたい情報になかなか行き着けない子もいた。そこで,「お気に入り」に登録するなど教師側の情報収集の必要性も大切であることを改めて感じた。
 今回の実践を通して特に感じたことは,子どもが学んだことや調べたことをインターネットを活用して発信していくことの有効性である。学んだことを自分だけの知識として終わらせるのではなく,発信することで他の学校や人々と交流できるのである。このことは,工夫次第で学習をさらにダイナミックできる可能性を感じさせる。

ワンポイントアドバイス
 本校では,保護者をはじめとしてメールボランティアを募集し,学校にメールを送ってもらっている。このことで,子どの学習意欲が増している。また,大学生のボランティアが週に1回程度来校し,コンピュータの設定や活用に関して手助けをしていただいていた。今後は学校だけでなく,学校外の人々の援助を積極的に呼びかけ活用していくことも大切ではないだろうか。


利用したURLなど
 
文京マップ(http://www.toryo.co.jp/bunkyo/bijyutu/hurusato.htm)