インターネットで広がる総合的な学習の時間

                     小学校第6学年・総合的な学習の時間
                  目黒区立下目黒小学校 鈴木 衆 西山 充
キーワード 小学校,6年,総合的な学習の時間,インターネット,環境,福祉,国際交流


インターネット利用の意図
 「総合的な学習の時間」では,子供自身が自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断して問題をよりよく解決していくことが大切である。こうした時,インターネットや放送番組などの映像資料によって子供の限られた経験を広げ,色々な世界との関わりを深めることは,子供が自ら課題を見付け,意欲的・継続的に学習を進める上で大きな力となる。
 また,学習課題を追究する時にも,問題を解決したり自分の考えを形作るために様々な資料が必要となる。さらに,自分たちの学習成果を自分たちだけのものにせず,社会へ発信していくことは,学習を学習だけで終わらせず,自分たちの生活の仕方や生き方を考える大切な学習となる。
 インターネットはこうした学習のあらゆる場面で,情報の収集,発信のツールとして活用できる。インターネットによる情報の収集・発信により,子供たちのかかわることのできる世界は格段に広がっていく。総合的な学習の時間では情報そのものを扱う分野もあり,インターネットを軸にした様々なメディアによる,情報の収集・選択・発信が子供たちのメディアリテラシーを伸ばし,問題を解決していく力,生きていく力を培っていくものと考える。


1 身近な問題に目を向け,自分の力で深く追究しよう。
  −地域の抱える問題・環境,国際理解,福祉の問題を視野に入れて−
(1) 活動目標
 ・これまで取り組んできた国際理解・環境問題(水・ゴミ・リサイクル)の学習を土台に自分の興味・関心をさらに広げ,見通しをもって新たな課題を解決していく。
 ・具体的な調査活動やインターネット・文書資料・写真資料・映像資料を活用して自分の課題を追究する。
 ・追究した課題について,自分の考えをもつ。
 ・ホームページの作成,ビデオ番組の制作,掲示資料作成等の多様な方法で,学習をまとめ,発信する。
 ・学習を通して,自分たちが生活の中で抱えている問題に一層関心をもち,生活の中で,自分ができることに積極的に取り組んでいこうという意欲を高める。
(2) 利用場面
(a) 課題に関連するホームページから情報を収集する。
自分たちの課題に応じて,実際に調査活動を行いながら,調べた自分たちのデータを比較したり,さらに詳しい資料を求めてインターネットによる情報収集を行った。以下は児童が主に参照したホームページである。
 
目黒区内の空気のよごれ/ よごれた空気と人間
 (目黒区環境保全データ) http://www.city.meguro.tokyo.jp/kankyo/kankyodata.htm
 (大気汚染データ) http://www.city.meguro.tokyo.jp/kankyo/kankyodata.htm#taiki
 (調べてみよう酸性雨と空気) http://www.city.meguro.tokyo.jp/kankyo/sannseiu.htm
 
目黒川のよごれとゴミの調査/ 目黒川の水のよごれ/ 目黒川に流れ込む雨水と地下水
 (目黒川悠々散歩) http://home3.highway.ne.jp/ofcourse/
 (くりの目黒川日記) http://www.asakonet.co.jp/magazine/meguro/
 
目黒川の生き物
 (生き物たちの目黒川) http://www.city.meguro.tokyo.jp/kankyo/megurogawa.htm
 
絶めつ動物について
 (野生動物の減少) http://www.chi-net.or.jp/camp/99camp/Sd/yasei.html
  (世界の絶滅危惧・希少動物) http://www.wnn.or.jp/wnn-z/data/japan/toki2.html
 
酸性雨の調査
 (調べてみよう酸性雨と空気) http://www.city.meguro.tokyo.jp/kankyo/sannseiu.htm
 
プルタブのリサイクル/ 日本と外国のリサイクルとゴミの処理のちがい
  (リサイクルプラザ) http://www.city.meguro.tokyo.jp/recycle/plaza.html
 
わき水マップを作ろう!
 (多摩の自然と歴史) http://www.ne.jp/asahi/mit/home/tama/
  (湧き水探訪) http://www.ne.jp/asahi/mit/home/tama/wakimizu/index.html
 
アジアの国,インドネシアについて
 (国際交流/海外日本人学校のご紹介) http://www.wnn.or.jp/wnn-s/english/kouryu/school/t_nihon.html
 (バンドン日本人学校ホームページ)http://www.bjs.co.id/
(b) 電子メールを使って,ホームページの内容に関する質問をしたり,自分たちが必要な資料を要請する。また,課題にそった質問をしたり,回答を受けたりする。
 
わき水マップを作ろう!
  ・本巣町役場に湯の古公園のわき水について資料の要請をする。
 
アジアの国,インドネシアについて
  ・バンドン日本人学校とメールの交換をし,互いに自分たちの学校の様子を紹介し合ったり,インドネシアのくらしなどについて情報をも
  らった。
(c) 調べたことをホームページにまとめる
本校ホームページ(http://www3.tky.3web.ne.jp/~mesmmges/index.html)に調べたことなどを発表する。ホームページの作成は一太郎ス
マイルで行い,HTML形式で保存し,ホームページビルダー2000でファイルを呼び出しアップデートする。
(3) 利用環境
(a) 使用機種 NEC PC9821 Xc16 
×32(コンピュータ室)
       NEC PC9821 Xc16 
×(5・6年教室に2台ずつ分散配置)
       NEC PC9821 Ra266 (職員室)
       NEC PC9821 V166 VALUESTAR (職員室)
       NEC PC9821 Xa20 (コンピュータ室教師用)
       TOSHIBA DynaBook Satellite 4030X (職員室)
(b) 周辺機器 デジタルカメラ カシオ QVシリーズ
×10
               オリンパス C-420
×
       タブレット  Wacom WordPad Fan
×30
       プリンター  Canon BJC-420j
×20
(c) 稼働環境 全コンピュータ ISDNでインターネット接続可能(10BASE−T)
       コンピュータ室はNEC PC−SEMIでLAN接続が構築されている。
(d) 使用ソフト Microsoft Internet Explorer 5.0(インターネット接続)
        Microsoft Outlook Express (インターネットメールの送受信)
        一太郎スマイル(ホームページ作成)
        ホームページビルダー2000 (ホームページのアップデート)

2 指導計画

5年時の学習や日常の生活,ニュース等の情報を思い起こし,自分で追究したい課題を設定する。

☆学校放送番組の視聴

 

<子供の課題>
 空気
 
目黒区内の空気のよごれ(5名)
  
山手通り,林試の森,不動前駅近辺で「二酸化チッソ」の測定を定期的に行い,場所による違いや,季節,天候などの条件による違いを
     比較している。
 
よごれた空気と人間(2名)
  
よごれた空気と人間の生活との関わりを,インターネットと図鑑を資料に調べている。
 水
 
目黒川のよごれとゴミの調査(4名)
  
実際に多摩川(二子玉川近辺)に行き,目黒川のよごれやゴミの様子と比べている。
 
目黒川の水のよごれ(3名)
  
目黒川の上流・中流・下流の水のよごれを実際に行って調べる。
 
目黒川に流れ込む雨水と地下水(3名)
  
目黒川に流れ込む雨水や地下水について詳しく調べる。
 
目黒川の生き物(3人)
  
目黒川の生き物の様子を調べ,もっと魚を増やすにはどうしたらいいか調べる。
 
わき水マップを作ろう!(2名)
  
区内のわき水を調査し,わき水と人々との生活の関わりなどを調べる。
 国際理解
 
アジアの国,インドネシアについて(3名)
  
バンドン日本人学校とインターネットで交流し,食べ物や遊び,生活の違いを調べる。
 絶滅動物
 
絶めつ動物について(6名)
  
絶滅してしまった動物の種類や理由,絶滅寸前の動物の種類や理由,さらにどうすれば助かるかを環境や人間との関わりから調べ,ビデ
      オ番組を作る。
 ゴミのリサイクル
 
プルタブのリサイクル(6名)
  
プルタブを70kg集めるために,ホームページやポスターを作る。
 
日本と外国のリサイクルとゴミの処理のちがい(2名)
  
日本と外国のリサイクルとごみの処理の違いを比べ,自分たちでできることを考える。
 
木のリサイクルのしかた(1人)
  
木のリサイクルについて,インターネットや図鑑で詳しく調べホームページにのせる。
 福祉
 
本当の親切とは何か(2名)
  
養護学校の運動会に実際に行ったり,車椅子に乗ったりして,身体の不自由な人のことを深く理解できるようにする。
 酸性雨
 
酸性雨の調査(3名)
  
 雨を集めて分析し,地域の酸性雨の実態について調べている。

学習の見通しを立てる

   ↓○ どんな方法で追究するか
    見学・調査・聞き取り・映像資料・テレビ番組・書籍・写真・インターネット・電話・FAX・手紙
   
どんな方法で伝えるか
    ホームページ・ポスター/ビデオ番組・組写真・スライド・OHP・カード・模造紙

同じ課題を設定した友達とグループを作り,共同して学習を進める

★インターネットの利用
 検索エンジンを使って,必要なサイトを探し,必要な情報を収集する。言語の支援ソフトとしてドクターマウスを活用する。

   

共同して追究した課題について,各自,自分の考えをまとめる。

☆一太郎スマイル/ビデオ/模造紙
 学習の結果を中心に,分かりやすくまとめられるようにする。

   

協力して発信(発表)の準備をする。

☆☆一太郎スマイル
 学習の成果をホームページで発信するグル                      ープは,一太郎スマイルで自分たちのペー                      ジを作成し,HTML形式で保存する。

   

それぞれの方法で学習の成果を発信(発表)する。

★インターネットの利用
 ホームページ,ビデオ,模造紙などの方法で学習の成果を発信する。

 

3 学習の様子とメディアの活用
 情報をとらえる段階で,インターネットの活用の仕方をを以下のように指導した。

     ┌─ アドレスがわかる→開く→インターネットアドレスを入れる→リターン
  課題─┤
     └─ アドレスがわからない →検索 →下目黒子どもランド→しらべてみよう
                    ├─→子どものための検索サイト
                    └─→検索エンジン(goo他)

 そして,必要な情報が見つかったら,プリントアウトするかメモをとるようにさせた。
さらに,可能ならばメールを送り,詳しい資料を要請したり交流したりする。
 情報を整理し必要なものを選び出す段階では,児童の言語能力や,生活経験が大きな意味を持った。言葉の意味を丁寧に調べ,しっかりと理解しようとするグループが多かったが,情報を有効に活用するためには,しっかりとした言葉に対する理解や,言葉の深い理解が大切であることが分かった。インターネットによって得た情報や実際に自分たちで見学・調査した情報の意味について指導する場面が多かった。
 情報を発信する段階では,ホームページ作りやビデオ番組作り,ポスター作り,など多用な方法で学習をまとめ発信しようとする姿が見られた。ホームページ作りは,一太郎スマイルを使うことで,比較的ストレスなく行うことができた。一太郎スマイルは,文章の作成及び画像の貼り付けが容易にでき,児童の習熟が速かった。

4 成果と課題
 インターネットは,子供たちの学習フィールドを格段に広げることができた。また,課題意識と意欲があれば,様々な情報を簡単に取り出したり,発信したりすることができるツールであり,総合的な学習をすすめる上でたいへん有効な情報収集・発信の手段であることが分かった。
 実際,子供たちは多くの情報をインターネットによって収集することで学習を広げたり,簡便に外国とコミュニケーションをとったりすることができた。ただ,溢れる情報の中から必要な情報を見つけるためには,資料の漢字がしっかりと読めなくてはならないし,言葉の意味も正確に理解できなくてはならないなど,基礎的・基本的な学習の力がこれまで以上に必要であると感じた。また,学習をしっかり成立させるには,具体的で見通しのある学習課題をどの子にも持たせることが大切である。そして,子供が,体験的な学習を軸に,様々なメディアを活用して自分の課題を解決していくためのカリキュラム作りを教師はしっかり支援していかなくてはならないと考えた。「総合的な学習の時間」を広げるメディアの活用については多くの課題が残されているが,逆に,メディアの活用なしには学習は深まっていかないと考えた。

ワンポイントアドバイス
 本校では,4年生からインターネットを活用している。はじめに,6年生にインターネットの使い方や使用上の注意などを教えてもらい,インターネットになれるようにしている。具体的には,4年生では,直接検索して調べるには時間がかかり,その内容を理解するのも難しい。そこで,授業で活用する場合は,事前に教師が子供の調べたい学習課題を把握し,その課題に沿った内容のホームページのURLをフロッピーディスクに保存している。5・6年生では,インターネットにアクセスする時間を短縮するために,それまでに学習に役だったホームページのURLを本校のホームページのお気に入りに登録して活用している。
 インターネットを効率よく活用していくためには,児童の幅広い学習課題に対応できる内容を吟味し,自分の学校のホームページにリンクのライブラリーを作っておくと便利である。

 

利用したURLなど
 −前述−