小・中学校を中心とした地域ネットワークの推進

保護者・地域との連携
八王子市立松木中学校 藤本伸一郎
キーワード 小学校,中学校,保護者,地域,ホームページ


企画の目的・意図
 本校の学区域の大部分が多摩ニュータウンで,ここ数年間で建築された団地が中心となり,今後も開発が続き,入居者の増加が見込まれる地域である。開発途上の地域であるゆえに,保護者,地域の人間関係もまだ希薄であり,地域としての教育力を確立するに至っていない。また一部既存地域があり,相互の融和を図ることも課題である。
 地域づくりに対する地域住民の意識は高く,学校が垣根を低くし,謙虚な姿勢で交流すれば,新興団地,既存の地域を問わず,学校教育に積極的に支援していただける素地は十分にある地域である。家庭,地域の学校への期待感は強く,学校が地域づくりの中核となることが必要と考える。
 そこで,学校が中心となり地域のホームページを作成し,そこを起点として,保護者,地域と学校間の連携を深められたらと考えた。


1 実践内容
(1) はじめに
 本校および,本企画の協力校である八王子市立松木小学校,八王子市立長池小学校,せいがの森保育園では,平成11年3月より,(株)多摩テレビのCATVインターネットの実験校として,インターネットに接続された。
 各校のインターネット接続が可能なパソコンの設置場所は以下の通りである。
 ・八王子市立松木中学校:職員室(1台),パソコン室(1台)
 ・八王子市立松木小学校:職員室(1台)
 ・八王子市立長池小学校:職員室(1台),パソコン室(当初1台・現在21台)
 ・せいがの森保育園:コミュニティールーム(1台),会議室(1台)
 このようにインターネットに接続可能なパソコンの台数が少ないため,児童・生徒の利用は少々難しいが,近い将来児童・生徒が利用できるような環境が整えられることを考えても,教職員が研修を進めていくことや,ホームページを作成し地域等に情報を発信していくには十分である。
 まずは,各校でそれぞれEメールの送受信および,ホームページの閲覧・検索等の研修を行った。とくに,Eメールの送受信では,お互いの学校を相手に行うことによって,Eメールの便利さを体験することができた。
 その後,各校の担当者および,(株)多摩テレビ,市教委と意見交換会を行った。そこでは,各校のインターネットの利用状況や今後の可能性について,様々な意見が出されたが,まず,各学校のホームページを作成し,情報を発信することにより,保護者,地域の方々との意見交換の場にしていく,そして,それらをまとめた形で地域のホームページを作成するということで話はまとまった。
 また,(株)多摩テレビのサーバー内に「教育関連会議室」が設置され,その後の意見交換,連絡・調整等等はEメールと会議室を中心に行うこととした。
(2) インターネットボランティアの募集
 まず教職員がインターネットを活用することに習熟し,その後,各教科の授業,特別活動,「総合的な学習の時間」(平成14年度から実施),そして,生徒の利用,PTA等の利用という形で,多様なインターネットの活用をして行くには,現在の教職員の人数と専門性では,十分な状況とは言えない。そこで,インターネットに関する専門的なスキルを,保護者,地域の方々から,支援していただければと考え,インターネットボランティアを募集した。
 その結果16名の保護者,地域の方々が,インターネットボランティアとして登録してくださり,いろいろな面からインターネットに関する支援をしていただくこととなった。
(3) 各校のホームページの作成と公開
 学校を中心地して地域との交流を図っていくためには,まず,学校から情報を発信していくことが不可欠である。学校からの情報発信は,学校だよりや学年・学級だより等を利用して行われているが,これは,生徒・児童の保護者対象のものであり,どちらかといえば,学校から保護者への一方的なものである。
 そこで,学校からの情報発信の1つの手段として,各校でそれぞれホームページを作成していくことにした。せいがの森保育園についてはすでにホームページがあり,そこから地域情報・子育て情報等を発信している。ホームページを作成し,インターネットを利用することにより,情報の一方通行ではなく,Eメール等を利用して,気軽に学校と保護者との意見交換が可能である。また,ホームページは,保護者のみではなく,広く地域に情報発信できるので,保護者以外の地域の方々にも,学校の様子を知ってもらい,お互いに意見交換ができる。そして,学校と地域が一体となり教育を進めていくことも可能であると考えた。
 ホームページの作成は教員にとってはたやすいことではない。日頃コンピュータを利用し,インターネットを利用している教員は少なくないが,ホームページの作成については知識も技術もない。また,時間的にも厳しいものがある。しかし,最近のワープロソフトには,文書のhtml変換等の機能も付いており,また,ホームページ作成専用のソフトも多く市販されている。また,夏休みという比較的時間に余裕のある時期もあるので,9月公開をめざして作り始めてみることにした。
 ホームページの内容については他校のホームページ等を参考にし,また,各校でEメールや電子会議室を利用し,連絡を取り合いながら作成を進めていった。
 そして何とか各校とも9月にホームページを公開することができた。

1 開設した各校のホームページ

 

(4) アンケートの実施
 ホームページの公開から1ヶ月が過ぎた10月,各校の生徒,児童の全家庭の保護者を対象に,今後,学校と保護者・地域を結ぶひとつの手段として,インターネットをどの程度利用できるか,また,学校のホームページが,保護者・地域の方々にどのような情報を提供できるかを調べる目的で,インターネットに関するアンケートを実施した。
 アンケートの内容および結果は以下の通りである。

(a) ご家庭にインターネットに接続しているパソコンがありますか。
  はい 205  いいえ 290
  「いいえ」と答えた方にお聞きします。
  今後インターネットに接続する予定がありますか。
  ある 77  ない 48  わからない 167
 
ここからは(a)で「はい」と答えた方に質問します。
(b) ご家庭でインターネットをどのように利用していますか。
 ホームページを見る・メールのやりとりをする・情報収集・ショッピング・仕事・電子会議・学習・ホームページ制作
(c) せいがの森保育園・長池小・松木小・松木中のホームページを見たことありますか。
  せいがの森保育園 50  長池小学校 28
  松木小学校  89  松木中学校 52
d)  ホームページをごらんになってのご意見・ご感想等をお願いします。
  ***略***
 以上である。

 アンケートに答えていただいた家庭(回収率約70%)のうち約40%の家庭がインターネットを接続できる環境にあり,アンケートに答えていただけなかった家庭がインターネットに接続できない環境であると仮定しても,児童・生徒の家庭のうち約30%がインターネットに接続できる環境にあることがわかった。これは決して高い数値とは言えないが,今後のインターネットの普及等を考えると,学校と保護者・地域との情報交換の1つの手段として,インターネットの利用は有効な手段であると考えられる。また,多くの方々より,意見・感想等をいただき,学校のホームページに対する期待感を感じることができた。同時に「モニタ」にも多くの方に登録していただき,今後「ボランティア」の方と合わせ,意見を伺いながら,ホームページの内容の充実および,交流を深めていくこととした。
(5) 「松木/長池地域のページ」の公開と掲示板の設置
 各校のホームページは無事開設することはできたが,このままでは各校がそれぞれ保護者・地域と交流することはできても,各校がまとまって中心となり地域づくりをして行くには情報が分散してしまい不十分である。そこで,地域のページを開設することにした。このホームページは,学校からの情報発信のためのものではなく,地域のための地域情報発信のページとして,開設したいと考えた。そのためホームページの作成についても,地域のボランティアの方にお願いすることにしたところ快く引き受けてくれた。内容的には,まず,地域情報の1つとして,各校へのリンク張る形でスタートし,その後,地域からの情報を集め内容の充実を図ることとした。
 また,インターネットを利用しての地域とのコミュニケーションをいっそう深めていくためには,自由に意見交換・情報発信をしていける場を提供する必要がある。そのための手段としては,メーリングリストの設置および,掲示板(電子会議室)の設置等が考えられる。メーリングリストは,登録しているメンバー以外閲覧することはできないので,その範囲内では自由に意見交換をすることができ大変便利なものであるが,保護者を初め,地域の方々,教育関係者等と幅広く意見交換ができればと思い,今回はメーリングリストは開設せずに,掲示板を設置することにした。

2 開設した「松木/長池地域のページ」と掲示板

2 成果と課題
 今回の企画は,学校が中心となり地域のホームページを作成し,そこを起点として,保護者,地域と学校間の連携を深めていくことを目的に行われたが,実際の所,各学校および,地域のホームページの作成に終始してしまった。
何しろ各校ともホームページの作成は初めてのことであり,専門的な技術も知識もなく手探りの状態で作り始めたので,非常に苦労も多かった。思ったようにレイアウトできない,リンクがうまくはれない,完成したがうまくアップロードできない等,常に問題とぶつかりながらであった。しかし,今回の企画は4校が協力して行っており,また,せいがの森保育園については,すでにホームページを公開していたので,技術的な面や知識的な面を,お互いに補いながら進めていくことで,何とか公開にこぎ着けることができた。
 本当に大変なのはここからであった。ホームページで情報発信するからには,まず,当たり前のことだが,ホームページを見てもらわなければならない。学校だより等の配布物は,配布されれば見ることができるが,ホームページは,相手が自主的に見るしかないのである。しかし,いつ見ても更新されていなければ,次第に見る人は減ってきてしまう。それでは,ホームページで情報発信していく意味がなくなってしまう。10月半ばからアクセスカウンターを設置し,アクセス状況を調査してみたところ,やはり,学校行事が終わった直後1週間程度の時期にアクセスが集中している。言い換えれば,その他の時期には,あまり見られていないことになる。
 保護者,地域の方々から,Eメールや掲示板等を通して,様々な意見をいただいた。
 「写真が多く,学校の様子がよくわかった」「学校が身近に感じられた」「行事での感動を再び味わうことができた」等の好意的なものが多かったが,反面,「写真が重たくて電話代がかかりすぎる」「インターネットに接続できる者とできない者に情報の不公平があってはならない」という意見もあった。確かにその通りである。見る側があってのホームページなので,見る相手に不快感を与えるようであってはならない。また,ホームページをすべての人が見られるわけではないことも,常に頭に入れておかないといけないと痛感した。そのためには,ホームページ以外の従来の各種たより等の内容の充実も大切なことであると感じた。
 また,「地域のホームページ」に関しては,最終的に各学校へのリンクが張られているだけのメニューページの状態で終わってしまった。そのため,最近では1日数件のアクセスしかない。こちらについては,地域のサークルの紹介や,生活に役立つホームページのリンク集など取り入れ,リニューアルの準備中である。
 学校は,常に授業やいろいろな行事等の準備を抱えており,ホームページの作成にかけられる時間は決して多くない。しかし,今回の企画を通して,学校と保護者・地域の連携を深めていくためのひとつの手段として,ホームページが有効であることは実感できた。
 今後も,さらに各校および地域のホームページを充実させ,開かれた学校づくり,そして地域づくりを保護者・地域の方々とともに進めていきたい。

ワンポイントアドバイス
 本校ではCATVの回線を利用してインターネットの接続されているが,これは,非常にレスポンスがよく快適である。しかし,その反面,実際にホームページにアクセスする保護者・地域の方々と画像等の表示速度に差があり,結果として,非常に重たいページを作ってしまうことになりかねない。見る側の環境に合わせてホームページを作成する必要がある。
 またホームページのこまめな更新が必要である。そのために,職員で研修を行い,一人でも多くの教員がホームページの作成ができるようにするとともに,何種類かのフォーマットを用意し,気軽に作成ができる環境を作ることも重要である。


協力校および関係URL
 
 松木/長池地域のページ http://www1.ttv.co.jp/mn-net/
 八王子市立松木中学校  http://www1.ttv.co.jp/matsugi-j/
 八王子市立松木小学校  http://www1.ttv.co.jp/matsugi-e/
 八王子市立長池小学校  http://www1.ttv.co.jp/nagaike/
 せいがの森保育園    http://www2.tnt-net.co.jp/seiga/
 八王子市教育委員会
 (株)多摩テレビ