人と人をつなぐメディアの使い手をめざして
みてみてわたしの作品を

小学校第6学年国語・図画工作・総合的な学習
横浜市立野庭小学校  紀谷 香子
キーワード 国語,図画工作,電子メール,アメリカの小学校との交流


インターネット利用の意図
 本校は,学級数11学級(内訳普通学級9学級,特殊学級2学級)で小規模校である。
 第6学年も2学級であり,1学級の人数も20名と21名という学級編制のため,友だちとの関わりが入学時より少ない。平成10年1月にインターネットが接続され,学習での利用場面を考えて重点研究として取り組んできた。5年生の時は,社会科で伝統工業について自分の課題追求の過程でインターネットを活用して検索したり,国語で環境問題について調べたりと,利用の大半は,自分の課題について検索して,資料をだし,必要な部分を印刷し,抜き書きしてレポートをまとめるというものだった。
 6年生になってから,インターネットで国際交流することはできないものか考え,その交流の中で図工の作品を見せあい,視野を広げる機会にしたいと考えた。それは,海外の豊かな発想の個性的な作品にふれることによって,自由に表現したものの美しさや楽しさを感じとったり,自分の表現の幅が広がったりすることにつながると考え,図工を中心とした交流を試みることにした。


1 文化は国境を越えて
(1) ねらい
 児童が問題点や疑問をもち,意欲的に課題を追求していくためには常に適切な支援・指導が必要である。今,世界には二百以上の国があり,約三千の言葉があるそうである。たくさんの国と言葉があるからこそ自分たちの国や言葉を自覚し特徴を知ろうと調べたりする。現代は,メディアの発展によりキャラクターやゲームや音楽,スポーツには国境がないと言ってもいい。子どもたちにとっては特にそう受け取れるのではないだろうか。ともに楽しみ理解し合える共通の文化をもてるということである。
 今までは,インターネットの利用に関しては,自分の課題を検索することで使うといういわゆる調べ学習の図書と同じような利用方法であった。ここでは,電子メールという方法を知ることにより,コンピュータでも手紙を書けることを知り,電話やファックスや郵便や宅配便の他にも電子メールという方法があることを知り,これからの有効な通信方法として,活用できることを知らせておきたい。
 そこで,アメリカで生活していたYさんに授業の協力者として参加していただき,アメリカの公立小学校との今後の交流のお手伝いを依頼することで,これからのやりとりに興味関心を抱かせるとともに意欲を持続させ,コンピュータを,人と人とを結ぶ道具として有効に活用することで,メディアの上手な使い手になることを認識させたいと考えた。
 情報化が進み,情報技術革命が予測を越えた早さで変化をしている今,国際人として行動することになる子どもたちは自分の思いを相手に伝えることができる力を培うとともに,そのよりよい方法を選択できる力を養うことが大切だと考えている。 
(2) 指導目標
 国語の単元の「みんなで考えようー国境を越える文化ー」を導入とし,現代社会の抱える課題である国際化,国際理解のあり方を一人一人が考え,自らの問題としてとらえ,積極的に交流しようとする態度を培うことができるようにする。そして,その表現する段階で,電子メールという表現方法のあることを知り,それを用いて図工の作品を鑑賞しあう。
(3) 利用場面
 この学習では,コンピュータは次の場面で活用する。
(a) 電子メールをアメリカの学校に送るとき,電子メールの書き方について,手紙の書き方と比較しながら説明することで,似ている点,注意することの要点を聞き取る。
(b) 相手校のホームページを読むとき,ホームページにはどんなことが書いてあるか,各グループで作った自分たちの学校紹介と比較してどうかを検討しながら見ることができるようにする。
(c) デジタルカメラで撮影した写真を,そのまま取り込み電子メールに添付する方法がとれることを知る。
(3) 利用環境
(a) 学習場所 インターネット室 
(b) 使用機種 NEC PC9821V16/S5D2 14台 
(c) 周辺機器 サーバ Sun Ultra 1  サーバ NEC Express5800/120DPro デジタルカメラ SANYO DSC-110 3台 プリンタ EPSON PM-670C 4台  カラースキャナNEC MultiReader400 プリンタ EPSON PM-670C 4台
MO OLYMPUS TURBO MO640S
(d) 稼働環境 インターネット室 NEC PC9821 V16/S5D2 14台(PENTIUM166Mhz 32MB) レーザープリンタ FUJI ZEROX1台 プリンタ EPSON PM-670C 4台
(e) 利用ソフト 一太郎スマイル  インターネットエクスプローラ5.0
        アウトルックエクスプレス5


2 指導計画

指 導 計 画

留  意  点

(a) 国語
みんなで考えよう
国境を越える文化(説明文)

○説明文の単元である。ねらいや目的に応じて,内容や事柄などを要約したり敷衍したりして表現し,自分の考えを深めることができる。

(b) 総合的な学習
 「アメリカの学校に電子メールを送ろう」 
 電子メールについて知り,学校紹介の文や写真を送ってみよう。
インターネット利用

○協力者Yさんには,児童のインターネットに関する知識や,今までの利用の仕方について(コンピュータリテラシー)あらかじめ知らせておく。
○児童が作成した学校紹介の写真や文章もファックスで届けておく。
○授業開始1時間前には来校していただき,インターネット室や学校の状況を把握してもらえるように依頼しておく。
☆アメリカの学校のホームページを開き,翻訳しながら説明してもらう。

(c) 図画工作
「土と炎のレストラン」
 身近にあるものから考えを広げ材料のよさを生かして焼き物を作る。

○作品が完成した児童からデジタルカメラに作品と制作カードを撮影していく。

(d) 図画工作
「わたしのなかのもう一人のわたし」
木版のよさを生かし,自分の心の中の世界を表す。

○作品の美しさのみならず,その作品にこめた自分の夢や思いが表れるような題材を設定し,心の交流を図れるようにしたい。
○ホームページに作品を展示するために,作品のみの写真をとっておく。
○作品を刷り終わった児童から制作カードに,自分の制作意図を伝える言葉を添える。


3 利用場面
(1) 目標
 電子メールの利便性を知り,学校紹介の写真と文を送り,メディアの使い手として,国際交流への夢を持つ。

(2) 展開

   学習活動

    活動への働きかけ

   備考

1 Yさんを紹介し,本時の学習の進め方を知る

 

インターネット室
デジタルカメラ











コンピュータ

 

アメリカの学校に野庭小学校のことを知ってもらおう。

 

2 インターネットの成り立ちや利用方法を学ぼう
  ・仕組み
  ・電子メール
  ・ホームページ

(c)  ☆ アメリカの学校のホームページを開いてみよう。
 アドレス・・・住所


(d) ホームページで電子メールアドレスを確認し,学校紹介文と写真を送る。
 紹介文の確認
 写真の確認


○ 郵便(はがきや手紙との比較)と似ているところと違うところを説明することでよさが鮮明に理解できるように図った。
○図書や図鑑との比較をしながら説明することで電子メールの利用法とホームページの役割が理解しやすい。

○調べ学習で検索をしているため,アドレスの意味は理解できる。
○知っていることを確認しながら興味を持たせつつ画面を出す。
○英語をすぐに翻訳しながら進める。

○文章を要約し長すぎないようにして全員で確認して送る。



     図1 米国への第1信


     図2 6年2組


     図3 校舎


     図4 ホームページ


4 実践の経過
 ニューヨーク州ウェストチェスター郡スカースデール村の公立小学校とカトリック系の私立小学校の2校を紹介された。私立小学校の方は,通学していた帰国児童から再三連絡を取ってもらったが1月11日現在,未だに返事がない。
 そこで,公立小学校との交流にねらいをしぼり,メールを送ったが返事がなかったため,Yさんの友人で,スカースデール村の小学校に通学している子供のいるSさんを紹介してもらった。現在は,Sさんを通してメール交換をしている。
 Sさんから,現地校でのコンピュータ利用の様子,学校の組織,アメリカの文化等を紹介してもらっている。また,Yahoo!で地名を打てばその地域の様子がわかること等も教えられた。また,スカースデール村の学校長にも働きかけてくださり,11月23日,学校長から「5年生にメールを渡した」とメールを受けた。しかし,アメリカの子どもたちからの返事はない。スカースデールという地域は,日本人が多く居住しており,アメリカの子供たちにとって「日本」という国は興味関心がうすいようである。
 そこで,Sさんが,さらに日本人の少ない地域に住んでいるHさんの紹介があったので,今,交流の準備を進めている。
 海外との電子メールの交換は,国境を越えてそれぞれの学校の事情があり,様子が見えず全く予想ができないことが多い。アメリカは情報活用が先進的に進んでるとはいえコンピュータによる情報教育の扱いは学校ごとに違っていることもわかった。
 その学校の保護者とのメール交換からスタートしたが,教職員とのメール交換にまで発展させるのは難しい。その上,子供たちの交流に至るまでの道程の長さを実感している。
 11年の年末から12年の年始にかけてホームページの立ち上げにかかり,再度,ホームページを立ち上げたので,英語版の方を見てほしい旨連絡して今年度は終わる。一人からでも感想が寄せられると児童にとっては国際交流の一端を実感できるものとなるだろう。一歩でも前に進んでいくことを常にめざしていきたい。その姿勢が,メディアの上手な担い手を育てていくことになると信じているからである。
 今回の実践を通して,インターネットに関連したコンピュータリテラシー(情報検索,情報収集,ワープロ機能の利用)は飛躍的に向上した。また,課題追求学習の結果,自分の身近な疑問を調べる姿勢や,環境について調べ,すみやすい地域環境にするために今,自分たちにできることは何かをとらえることができるようになった。検索ではキーワードの入力ができるようになった。
 必要に応じて道具の一つとしてメディアを利用できるように成長してきたのは大きな進歩と心強く思う。

ワンポイントアドバイス
 ホームページには英語版も設けると,外国からのアクセスが可能になり国際交流が前進する。こねっと・ワールドの利用や,知人から紹介された学校だけでなく他の方法を探るとメール交換の可能性の範囲も広がると思う。

参考文献
 かんたん図解ホームページ(技術評論社)

利用したURLなど
 グリニッジカソリックスクール(http://www.rc.net/bridgeport/gcs)