地域ローカルネットワークの活用

小学校6年・総合的な学習
清川村立宮ヶ瀬小学校  森山 勝美
キーワード 学校間交流,電子メール


インターネット利用の意図
 電子メールは,大変便利なツールで,お互いに自分の生活に合った使い方ができる。違う学校に通っていても,情報をリアルタイムで共有できるから学校同士の交流において有効な手段となり得る。ここでは,電子メールを用いての地域ローカルネットワークの活用について述べるともにオンラインとオフラインでの子どもたちの関わりについて述べたい。


1 はじめに
 清川村立宮ヶ瀬小学校(小林英樹校長)は児童数7名という極小規模校である。1年生2名,3年1名,4年生2名,6年生2名という構成で,カヌークラブなど地域の特色を活かした学習活動に取り組んでいる。児童数が少ないため,多くの子どもたちにふれあいを持たせたいというのが教師や保護者の願いでもある。本年度は,コンピューターネットワークを使うことによって多くのふれあいを持たせようと考えた。ここでは,住んでいる環境は違うが,実際にオフラインでも気軽に会うことが可能な近くの学校との交流についてふれたいと思う。


    図1 カヌーですいすい

2 野菜作りを通しての交流
 横浜市にある横浜市立大口台小学校と交流を行っている。メディアキッズプロジェクトという学校間交流プロジェクトの中での交流です。宮ヶ瀬小学校と大口台小学校とは,電車,バスで2時間程度の距離にある。本年度は,お互いに野菜作りを体験することにより,交流を行った。
 1学期は,トウモロコシや枝豆の種をまき,育ち方や世話の仕方をネットワークを通して交流してきた。トウモロコシの葉の下のほうが黄色になってきたら肥料が切れてきたとか肥料の種類の違いをお互いに意見交換した時には,真剣な対応がみられた。
 また,お互いの畑の様子をデジタルカメラで撮って紹介し合った。6月の下旬に,大口台小学校の代表の人が自分たちで作った梅ジュースをおみやげに,宮ヶ瀬小学校を訪ねてくれた。実際に会って交流することもでき,畑の様子を見てもらうことができた。自分たちが育てている野菜について,意見交換をしたり,ドッジボールをして遊んだり,楽しい時間を過ごすことができた。実際に会ってからは,メールを送るときにも,相手の反応を想像しながら書けるようになり,より親しくなれたように思われた。
(メールの内容)宮ヶ瀬小と大口台小のメールのやりとりの一部である

こんにちは宮ヶ瀬小の○○&○○(○○・・・女の子)でーす
大口台小のみなさん
7日に会えるのを楽しみにしています。
おととい,くじゃくが脱走して枝豆の芽を食べてしまいました。
被害は少しだけだったので良かったです。

こんにちは大口台小の○○です,おとといはお世話になりました。とっても楽しかったです,しかし,あの大きなくじゃくが脱走するなんて,,,でも,枝豆の被害が少なかったのでほっとしていると思います,それではまた今度。(^^)!?メールまってまーーーす。
              大口台小○○でしたーーー。

 トウモロコシは夏休み中に大きくなり,もう少しで収穫という時,せっかく育てたのにハクビシンという動物に食べられてしまった。この動物については,大口台小学校の児童が自分の学校の知っている先生に聞いてどんな動物かメールで教えてくれる場面もあった。ハクビシンに食べられないですんだトウモロコシをどうしようか話し合い,半分は来年まくために保存し,もう半分は,大口台小に送って育ててもらうことにした。今年の活動が来年になっても続き,自分たちが卒業した後も後輩たちが引き継いで欲しいという願いからであった。
 2学期からはイチゴ栽培に取り組みんだ。これは,今度は動物に食べられないようにするためと季節も冬に向かうことから室内で育てられるものはないかなと考え,取り組みはじめました。イチゴの苗を大口台小に送り,一緒に育て,情報を共有するとともに育った後の感動も共有したいという気持ちから始めた。

   大口台小のみなさんへ2
          1999年 9月 16日 木曜日 10:06:22 AM
  こんにちは
  2学期もよろしくお願いします
  教室でいちごを育てることにしました
  よかったら一緒に育てませんか
  ペットボトルを容器にして育てます
  10月から始めて2月にとれる予定です
  宮ヶ瀬小 ○○○○

Re: 大口台小学校の皆さんへ 〜苺の苗送ります
          1999年 10月 6日 水曜日 2:13:18 PM
こんにちは○○○○です
来週の火曜日に苺の苗を○○先生に届けてもらいます。
いっぱい苺ができるといいですね。
宮ヶ瀬小学校 六年 ○○○○

  お返事遅れてすいません。
  ○○○○です!!
  苺の苗届きました!ありがとうございます。
  質問です。
  苺ができるのは,5〜6月ですよね!?
  5〜6月は,私達は今6年生なので来年中学校に行きますよね
  ○○くんや○○さんは,苺をどうするのか教えてください。
     横浜市立大口台小学校 6-1   ○○○○

Re(3): 大口台小学校6の1の皆さんへ
         1999年 12月 7日 火曜日 11:47:02 AM
こんにちは,○○○○です。
いまのいちごの様子を送ります。
実ができていないのは,なぜでしょうか??
いっしょに考えてみましょう!!
横浜市立大口台小学校 6-1  ○○○○

3 もっちもち集会
 大口台小学校では,育てているの野菜でお雑煮を食べようと計画を立てていた。これは,全国のお雑煮調べをしながら行う活動で,お雑煮を食べる時にデザートとしてイチゴを一緒に食べる計画であった。宮ヶ瀬小学校では大口台小学校の6年生がお雑煮を食べる時に自分たちが育てた米でついた餅を送ってあげようと計画し,もっちもち集会という集会を行った。米づくりは,6年生では,一学期に歴史の学習の一環として,昔の人はどうやって,米を育てていたのか体験したいという発想から行った。足で田を代かきをし,収穫も手作業で行い,米作りの大変さがわかった活動でしたが,この米づくりの活動と大口台小学校との交流の中でこの米で作った餅を大口台小学校の人たちにも食べてもらいたいということになった。これは,大口台小学校のみんなはお雑煮を食べるときに,おもちはどうするんだろうという疑問からの行動であった。集会の当日は,メディアキッズのボランティアの方や地域の方にも餅つきに参加していただき,にぎやかに集会を行うことができた。ついたお餅は,大口台小学校に届け,大口台小学校のお雑煮プロジェクトの時に食べてもらった。
 また,野菜作りだけでなくお互いの学校生活の中にあった合唱コンクールのことや運動会のことなどでも話題が進んでる。「さりげない話題が普通に進む」こんな関係になってきたのではないかと思う。


図2 さあいっぱいつくぞ


図3 はやくイチゴできないかな

Re(2): 大口台小学校 合唱部 in.夏休み
           1999年 9月 23日 木曜日 10:56:57 PM
今年歌った歌は,「野原のこえたち」という無伴奏で四部合唱の曲です。
高音と低音のハーモニーがかさなっていて,とてもきれいです。
一昨年は「銅賞」,去年は「銀賞」,そして今年は念願の「金賞」をとることができました。
  横浜市立大口台小学校6-1  合唱部の一員

金賞おめでとう
こんど,NHKのテープ審査通るといいね
どんな歌か機会があったら聞かせてね
  宮ヶ瀬小 ○○○○

 冬休みに東京で大口台小学校の6年生と会うことができた。大口台小学校が行った日光修学旅行の報告集や餅のお礼のお手紙を実際に手渡しで受け取ることができた。感想はネットを使って大口台小学校に送った。また,その後食べているときの様子をビデオレターでいただいた。

Re: もちつきをしました。
          1999年 12月 21日 火曜日 11:42:38 AM
こんにちは○○○○です。
先週の土曜日にもちつきをしました
その時の写真です 
僕と○○さんが餅をついています。
それと苺の花の写真もとりました。
○○先生にお餅を届けてもらいますぜひ食べてください。
  宮ヶ瀬小学校 六年 ○○○○

こんにちは,○○○○です。
○○くんや○○さんがついてくれたおもちをお雑煮にしてみんなでたべました。
  みんなでおもちを食べた感想は,ビデオレターとして○○先生がおくってくれるそうです。届くのは,2000年(来年)だそうです。たのしみにしていてください。
  横浜市立大口台小学校 6-1   ○○○○

4 CD-ROMづくり
 お互いの交流の様子をCD-ROMに保存し,残そうと計画している。写真の整理をし,編集作業に入ったばかりだが,宮ヶ瀬小学校と大口台小学校と意見を出し合いながら,記念になるCD-ROMが作れたらと思う。お互いに6年生なので,お互いの交流の記録をもう一つの卒業アルバムとして残せたらすてきだと思う。

5 ボランティア,地域の方の協力
 もっちもち集会では,大勢の方に宮ヶ瀬小学校を訪れていただいた。実際に餅をついていただいたり,温かい励ましの言葉をかけていただき,楽しい時間を過ごすことができた。また,ブラジルからのお客さんも見えられ,ブラジルの小学生の様子をお話ししていただくことができた。児童の数が少ないので,大勢の人から声をかけていただくことが,子どもたちにとって何よりの励みになると考える。今回の取り組みでは,もっちもち集会をはじめ,様々な場面でいろいろな人に温かい励ましをうけた。これが,子どもたちの活動にいい思い出になったと思うし,明日への糧になったのではないかと考える。

6 終わりに
 地域ローカルネットワークの活用というと地域の方々とのむすびつきという面がある。今回の取り組みは,そうした意味ももちろん含むが,文字通りのネットワークの活用という面を中心においた活動であった。ネットワークを活用したオンラインの活動と実際に会って活動するオフラインの活動はどちらも重要で,両者の働きで有意義な交流ができたのではないかと考えられる。
 ネットワークでの活動をきっかけに子どもたちの活動の輪が広がり,多くの人とふれあいを持たせたいという私たちの願いが,今回の活動の中で達成されたのではないかと考えられる。
 今回の取り組みをきっかけとして,来年度に向けて,一緒に学年の行事をもとうという新たな交流の計画を立てている。
 これも,近くに有る学校同士の交流だからこそできるものではないかと考える。

ワンポイントアドバイス
 ネットワークを利用しての交流というと離れた地域との交流に目が行くが,会おうと思えば会える距離でのネットワークの活用も日常性という意味からも大切だと思う。オンラインとオフラインを組み合わせた実践を考えている学校の参考になると思う。

放送資料
 NHK教育テレビ「インターネットで自由研究」1999年8月4日放送分
 (両校の交流の様子が放送されている)

参考文献
 「子どもと教育」1999年12月号(全校7人のパソコン学校間交流)あゆみ出版

URLなど
 メディアキッズ(http://www.mediakids.or.jp/)