ふだん着の国際交流・足元からの国際理解


大和市立林間小学校校内研究低学年部会,国際教室
島 崎  勇
キーワード インターネット,国際理解,国際教室


企画の目的・意図

 当初,校内研究低学年部会の中では,「国際理解」をサブテーマとする生活科の授業を豊かに展開するためにインターネットを利用することも考えられるだろうという意図があった。
 普通,一年生の学習は,自分たちの身の回りに始終してしまう。しかし,そのふだんの学習をネットワーク,地域との協力関係を得て拡大してみると,子どもたちの学習にどれだけ変化をもたらすか。どれだけ理解が深まるかを試してみたかった。
 今回,直接的には,インターネットを利用して,本校の一年生が,ペルーの一年生と絵の交換を行った。また,国際教室には,ペルーからきている6年生がいるので,共同で取り組むことになった。国際教室の6年生は,国語の教科書にある「国境をこえる文化」を題材に,メディアを使ってどれだけ世界に対する視野が広がるかという取り組みをしてみた。ここでは,国際教室の6年生の取り組みを中心に報告したい。


1 国境をこえる文化
(1) ねらい
 ・国際教室の普段の学習にコンピュータも利用してきた。また,国語の教科書を利用して,日本や日本語の学習も進めてきた。「国境をこえる文化」の作者の「メディアの使い手になってほしい」という願いをどれだけ実現する事が出来るか。教科書を読み進めながら,実際に世界の子どもたちとの情報交換をし,それをまとめてクラスの友達に紹介しながらメディアについて考えさせたい。
 ・その時,お互いの言葉が違う場合でも理解しあえる方法として絵や写真を利用する事を考えてきた。実際にデジタルカメラで撮影したり,お絵かきソフトを利用して,絵でも表現させたい。
(2) 指導目標
 インターネットを通じた世界の子ども達との情報交換を,国際教室の子どもたちの日本や日本語の学習に活かす。この学習を新聞にまとめて,クラスの友達に紹介していく中でメディアの利用について考えさせたい。
(3) 利用場面
 ・世界の子どもたちとの日記の交換をきっかけに,お互いの普段の様子を伝え合う。そしてこの交流の様子を新聞にしてクラスの友達にも紹介していく。
(4) 利用環境
 ・マッキントッシュLC630,パワーマック6100/60AV,WIn95マシン
 ・スキャナー,デジタルカメラ  サンヨー X110
 ・稼働環境 コンピュータ室 Win95マシン42台(64K専用線でインターネット接続)
       国際教室 マッキントッシュLC630,パワーマック6100/60AV
 ・利用ソフト キッドピックス,キッドピックススタジオ,ネットスケープ

2 指導計画
(1) 教科書の「国境をこえる文化」を読んで,大意をつかむ。
(2) 世界の子ども達と情報交換をするなかで日本と日本語についての学習を進める。
  10月15日の日記を書き,交換する。写真や絵を交換してお互いが理解しあえる方法を探る。
(3) 逐次,交流の様子,学習の様子を新聞にして発行する。
留意点
(1) 日本語の理解として完璧でなくてもよしとする。
(2) 自分たちにとっての身近な話題をテーマとする。
(3) 朝起きてから,夜寝るまで,1時間ごとの記録を書く。
(4) KIDLINKの掲示板,メール網を活用する。
(5) 相手から届いた質問などを紹介して,クラスの希望者にも交流に参加してもらう。
(6) メールで届いた絵,掲示板にて紹介されている写真などをプリントする。

3  利用場面
(1) 目標
 世界の子どもたちとの情報交換を更に発展させるための計画を作る。
(2) 展開

学習活動 指導上の留意点

フランスから届いた絵や写真を元に,日本について考える。

どんな内容を紹介していったらいいか,考える。

取材,制作の計画を立てる。

フランスから届いた絵は,フランスの子どもたちが知らない日本を想像して書いたものである事を知らせる

メッセージでは,ドラえもんのテレビの話題が多かった事を確認する。

お絵かきソフトでの絵やデジタルカメラを利用してまとめる事を考えさせる。

4 実践を終えて
 インターネットはもはや特別な物ではなく,日常的に利用していかれる環境が整いつつある。だから,インターネットを使った取り組みも,特別なイベントではなく,普段の授業をお互いに知らせあい,そこから生まれた共通の話題について深く追求していけるといいと考えてきた。今回,10月15日の日記を書く前後から,世界の子どもたちとの交流を普段の授業に取り入れようと続けてみた。海外の子どもたちのメッセージの多くにドラえもんの事が出てきた。実際にビデオを見て,報告しようということになり,家からドラえもんのビデオをいっぱい持ってくる子もいた。フランスの学校から,「フランスのどんな所の写真が見たいですか。」と聞かれ,「フランスの食べ物とか,学校の写真」と答えた。その写真が届くと,ほんとうに彼らの大好物の食べ物が写っていた。町の写真は,中世さながらの様子を伝えてくれた。さっそくおかえしにと,自分達のまわりの写真も撮って送ることになった。さて,どんな写真を撮って送ろうか,リスト作りが始まり,デジタルカメラでの撮影の練習が始まった。南アフリカからは,「そちらでは富士山というのは有名ですか」という問いかけに,何日もかけて調べていた子どもたちであった。
 こんなインターネットでの出会いをきっかけに,ふだんの授業の中で,お互いがよりよく理解出来る方法を探す活動をしてきた。親クラスの友達にアンケートをして,それをまとめてグラフにして表わしたり,新聞を作ったりしてきた。インターネットでの出会いを国際教室だけに止めず,少しでも多くの子どもに紹介し,実際に参加してもらう機会を作ろうとしてきた。
 ペルーから届いた一年生の絵には,スペイン語で自己紹介が書いてあった。それを日本語に訳して新聞を作り,一年生のクラスに届けたりもした。また,彼らの運動場に何があるのかを紹介する絵も届いた。日本の一年生は,年賀状を書いて送った。そして,自分たちで作ったカレンダーも送る予定である。
 校内研究の低学年部会での取り組みは,国際理解を子どもたちに日常的な課題として提起した。日本の遊び,外国の遊びを保護者やボランティアの参加を得て実際に紹介する事ができた。デジタルカメラで子どもたちの楽しんでいる様子も記録できた。また,そのカメラでふだんの様子も記録する事が出来るようになっていった。デジタルカメラの使い方やインターネットについても自主的に研修し,興味を持つようになっていったおかげである。
 学年のどのクラスにも外国籍の児童が日本の子どもたちと共に学んでいる関係で,どうしたらお互いがより理解しあえるのか,日常的な課題でもあった。今回,インターネットを十分に利用しての交流は出来なかったかもしれないが,このプロジェクトに参加できて,足元での国際理解は,教師児童共々一歩進んだと思われる。

ワンポイントアドバイス

 なんのために海外の学校と交流するのか。それを考えたら,海外の学校とだけと交流するのは,どうも片手落ちである。海外の学校との交流と同時に国内の学校とも同じようなテーマで交流し,お互いの理解を深めるのがいいのではないだろうか。そして,更に言えば,足元でのふだんの学校生活に国際理解の視点があれば,インターネットを利用した教育も実を結んでいく。インターネット上でもそういう出会いの場がいくつも作られるようになってきた。

参考資料
 JAPETコンピュータを教育に活かす実践事例アイディア集 第8集原稿
 世界共同学習「カブトガニを守る」

利用したURLなど
 KIDLINK http://www.kidlink.org/
 掲示板(英語)  http://www.kidlink.org/KIDPROJ/Bridges/wwwboard/
 掲示板(日本語) http://www.kidlink.org/KIDPROJ/Bridges/japan/wwwboard/

その他の資料
10/15  ぼくの日記   6年男子
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7:30に起きました。
8:00学校へ行きました。
   1時間目  体育,2時間目  国語,3時間目  理科
そしてそうじして給食を食べて家に帰りました。
1:10 ぐらいに家につきました。それでペルーのビデオを見ました。
2:00 頃に雨が降ってきたので家で遊びました。
2:10 つかれたので眠っていました。
2:30 に起きました。それからCDを聞きました。新しいCDを聞きました。
   安室の曲があります。
7:00 ドラえもんスペシャルを見ました。
8:00 12CHでMUSICの番組を見ました。
8:00 ぐらいに夕食を食べました。
11:00 ぐらいに寝ました。
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10/15  フランスの男の子の日記
7:00に起きました。そしてチョコレートドリンクを飲んでトーストを食べました。
それから歯を磨いて顔を洗ったのが7:25でした。それから7:35に学校に行きました。
午前中に,私は英語と歴史と地理と算数を勉強しました。
12:00 に学校の食堂でおひるを食べてクラブに行きました。
午後にフランス語,ぶつり,それからもう一度,歴史と地理がありました。
歴史と地理は二週間に一回,2時間あります。それから私は家に帰りました。
家に帰って,おやつを食べてから宿題をしました。その後,テレビを見ました。
ばんご飯を食べ終わってまたテレビを見ました。そして寝ました。
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 画像資料
1.


図1 フランスの子が想像して書いた日本と日本人の絵

図2


図3 国際教室の子が想像して書いたフランスの子と家


図4 ドラえもんを紹介するためにフランスに送った絵