ノートパソコンで,いつでもどこでもインターネット
高等学校 1年・地歴科
生田東高等学校 米安 克己
キーワード 高等学校,ノートパソコン,インターネット検索,ネットワーク
(1) ねらい
(a)コンピュータ教室での普通教科のコンピュータ利用は,本校が「その他科目」で情報科目を設置していることもあり,コンピュータ教室の稼働率は70%を超えており,他教科の授業で利用できる状態にない。この状態は,今後他校でも新カリキュラムにより情報科の必修が始まるとコンピュータ教室の稼働率が上昇し改善される見込みはない。その対策として中古ノートパソコンを普通教室に持ち込んだ時の操作性を検証する。
(b)「総合的な学習」が実施されると,普通教科でのインターネット活用は不可欠となり,その有効性と問題点をを確認する必要がある。
(c) 教育用のインターネット検索には,最新のコンピュータは必要がなく5年前の性能のコンピュータもので十分であることが本校のコンピュータ実践で確認されている。近年のコンピュータの低価格化と中古市場が形成されたことから,ノートパソコンを中古市場で必要台数調達することが可能になったが,その性能と限界を検証する。
(d) 普通教室に設置された10BASETのネットワーク端末にHUBを経由して10台のノートパソコンを接続し,インターネット検索を実施したとき実用的な検索スピードが実現できるかを検証する。
(2) 指導目標
1年次の地理Bの世界の諸地域の学習において,世界各地の共通点と多様性を認識させるために課題研究を課している。本年はインターネット検索で得られたデータを中心にまとめを行い,その補完として従来の紙で記録されたメディアを用いた。これらの作業を通じて生徒の情報リテラシ能力の向上をはかる。
(3) 利用場面
(a)コンピュータ・インターネット入門
(b) インターネット検索入門
(c) 各自のテーマに沿ってインターネット検索
(4) 利用環境
(a)生田東高校情報ハイウエイ計画により設置された,手作りの校内ネットワーク網(10BASE2/T規格の併用)と各教室のネットワーク端末(図1)
(b) ネットワークカードが接続された中古ノートコンピュータ(Windows95)が10台
FMV475 3台(富士通製 性能 486DX4 75MHz メモリ:16MB HD:340MB)
FMV50 1台(富士通製 性能 Pentium100MHz メモリ:16MB HD:1GB)
CF40 6台(図2 松下製 性能 Pentium75MHz メモリ:16MB HD:810MB)
図1 ネットワーク端末 |
図2 中古ノートパソコンとネットワークカード |
(c) ISDN電話を2系統使用
インターネット検索利用には3台のルーターを経由してインターネットプロバイダにダイヤルアップ接続で使用,1台のルータ(64Kbps)にコンピュータ3〜4台を接続する環境にして,タイムアウトが生じないように工夫した。
(d) 16端子のHUB(10BASE2/T規格の併用)(図3)
図3 16ポートのHUB |
(5) ネットワークプリンタ
2 指導計画
中学でのコンピュータ利用は未だ十分な段階に到達しておらず,事前アンケートでもコンピュータの操作能力にかなりの差があることが判明した。
3〜4人での班編成を希望者でおこなった結果,こちらの意図と異なりコンピュータリテラシー能力の高い班と低い班ができた。そのためにコンピュータの基本操作から指導計画を作成した。毎時間,必ずまとめを提出させて到達度を把握した。
指導計画 | 活動内容 |
コンピュータ入門(1時間)とテーマ検討 |
「インターネットを利用した授業のためのコンピュータの使い方」と題したプリントを使用して,電源のON・OFF,マウスの使用法,キーボードの使い方,ウィンドウ操作を実習。 同時に33通りのテーマを提示して各班で1つテーマを選ぶ。 |
インターネット入門とテーマ決定 (1時間) ★インターネット利用 |
図4 校内イントラネットのメニューページ インターネットエククスプローラの使い方を中心に,校内のイントラネットのホームページに入門ページ(図4)に下記の(a)〜(7)を作成し,入門者には(d)まで,上級者は(7)までの学習を課した。 (a)インターネットとは何か (b)インターネットで何ができるか (c) インターネットの光と影 (d) 確認問題 (5)インターネットオリエンテーション?もっと詳しく知りたい人向け (6)VIRTUAL SCHOOL ホームページの作り方---初心者から上級者まで,無料の素材も用意されている (7)情報モラル--著作権について説明 以上の(a)から(7)までを作成し,入門者は(d)まで上級者は(7)までの学習を課した。 各班のテーマ決定。 |
インターネット検索入門 (1時間) ★インターネット利用 (本時) |
YAHOO,INFOSEEKなど検索ページごとに得意分野など特徴があり,その検索結果に違いが出ることを共通テーマを与えて検索を行い理解させる。さらに,絞込み検索・別な視点からのキーワード設定をアドバイスする。 |
各自のテーマに沿ってインターネット検索 (3時間) ★インターネット利用 |
絞込み検索をおこなって,目的とする資料を集める。必要な資料は印刷して保存できるように,ネットワークプリンタを設定して準備した。しかし,印刷は必要最小限によどめ,できるだけ要約してメモをとる指導をした。 この段階でまとめた内容を箇条書きでまとめて,中間提出を実施。 |
まとめ (2時間) |
この段階では,できるだけインターネットに接続することは避け,図書室にて辞典類や参考書籍で調べる。B4用紙1枚におさまるようにまとめる。できるだけ,手書きを避けてワープロで仕上げ,フロッピディスクとともに提出させる。 このレポートをデータベース化することで翌年の課題学習の資料に使用できる。 |
発表 (5時間) |
1時間につき2班のペースで発表させる予定。レポートは全員分印刷して配布する。 |
3 利用場面(インターネット検索入門)
目標−−検索サイトの違いを認識し,テーマに適したキーワードと検索サイトの使用法に習熟する。
展開
学習活動 | 働きかけ | 備考 |
検索サイトの説明 | ロボット型とディレクトリ型の検索サイト特徴を説明 | 教員 |
キーワードの入力 | ロボット型(INFOSEEK)とディレクトリ型(YAHOO)の検索サイトで,「修学旅行」という同じキーワードを入力し検索結果の件数に大きな差があることを認識させ,特徴を理解させる。
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生徒 |
共通テーマの出題 | 共通テーマとして,「東の漢字が使用されている神奈川県の高校名のリストを作成せよ」を出題する。 | 教員 |
トライアル&エラー | テーマを文章のまま入力する班があり,現在の検索サイトは文章での検索には対応していないことをアドバイスする。 キーワードになる言葉を考えさせる |
生徒 教員は机間巡視 |
絞込み検索 | キーワードとして,大きな集合から小さな集合になるような用語を考えて入力し,検索結果を段々絞り込んでいく方法を教える | 教員 |
視点を変えて検索する | インターネット上のWEBサイトは多種類にわたっており,必要なデータをすでに加工して提供してくれているWEBサイトがあることをアドバイスする。 そこでキーワードとして「高校一覧」と入力させてみる。 |
教員 |
検索結果の加工 | 該当する検索結果をコピー&ペースト機能でワープロに読み込み,ワープロ上で加工して,高校名のリストを作成させる。 | 生徒 |
4 実践を終えて
(1) 移動可能なノートパソコンでネットワークを構成する時の,床をのたくるネットワークケーブルの煩雑さは予想を越えたものがある。急にインターネット接続が切断し,原因を調査してみると足元のネットワークケーブルを生徒が無意識の内に足ではずしていたり,ネットワークカードのコネクタをノートパソコンを自分の方にまわすときに破損させたりの事故が発生した。対策としては,現在実用化されつつある無線LANが導入されれば,上記のような事故はなくなり,さらに学校中を自由に移動しながらのインターネット利用も可能となる。
図6 床をはうネットワークケーブル |
(2) インターネット検索のスピードは,生徒の総合的な知識に大きく左右される。いかに適切なキーワードを見つけるかが鍵となる。検索の鉄人コンクールでコンピュータ初心者の図書館の司書の方がコンピュータのエキスパートを差し置いて優勝することも納得できた。しかし,生徒の順応性は非常に高く今回の試みで3時間を経過するころから生徒の検索スピードは一気に向上した。インターネット検索は一人一台のコンピュータで行うよりも班単位で実施するほうが生徒同士の相互作用で技術が向上して効果的と判断した。
(3) 生徒の興味関心は非常に高く,当初隠れて芸能ページへのアクセスすることを心配したがほとんどない。これは,毎時レポートの提出を課したことも緊張感を生んでいる結果と判断している。
(4) 生徒の作成したレポートの内容は,図書室等の印刷物を用いて作成していた昨年までに比べて新しいデータや内容の多様化が見られ,インターネットの利用は大変効果的と判断した。
(5) 中古ノートパソコンは10台の総額が32万円という価格で,当初その性能に若干の不安があったが実践をおわって解消した。教育用のインターネット検索に使用するには十分な性能と検索速度である。唯一,失敗したのが富士通製のノートパソコンの液晶がDSTNタイプのために班員全部で覗き込むと斜めから見た人は何が写っているか,わからないことが問題となり,急遽ディスプレイを追加した。他のTFTタイプの液晶は問題がなかった。
図7 見えにくい液晶対策にディスプレイ登場 |
(6)その他の実践として,本校は新聞委員会の取材・制作活動にインターネットとノートパソコン(モバイルコンピュータ)を導入し,速報性・制作スピードの向上を図った。本校はNIE実践校として活動しており,年3回の「生田東新聞」(A4版20ページ)を発行。また,校内のニュースを速報の形で「東陵タイムリー」(B4版2ページ,年10〜20回)を作成・発行している。取材から編集までを生徒の手でおこない,パソコンで原稿の入力とデジタルカメラで写真の撮影,PAGEMAKER(DTPソフト)で割り付けを行い,発行している。しかし,コンピュータの台数制限により同時作成が不可能などの問題があった。今回のノートパソコンの導入により,速報性の問題が解決した。11月に本校が出場した駅伝大会の取材記事と写真を丹沢山地の会場よりインターネットの電子メール経由で生田東高校まで送り,翌日の朝には全校生徒に号外の形で新聞を発行することに成功した。さらに10台のノートパソコンをネットワーク網に接続されたことで仕事の能率は飛躍的に高まり,新聞データベースへのインターネットアクセスでの資料検索の結果,40ページの学校新聞を作成することができた。この新聞は,初出場の全国新聞コンクールで4位の好成績をおさめた。
ワンポイントアドバイス ・事前に検索サイト・官庁サイトやテーマに関連したサイト全てを含んだリンク集を作成するとリンク集から一気にインターネット検索ができるようになる。 ・図4のような学校独自なメニューを作成してホームとして登録することで,生徒がインターネット上で迷子になっても元に戻ることができ,余分な不安感を除くことができる。可能なら,独自メニューはサーバー上に登録すると,教員によるリンク集の更新が容易になる。 |
利用したURL
生田東高校&新聞委員会ホームページ (http://www.netlaputa.ne.jp/~higashi)
はすみさんのホームページ(http://www.hasumi.com/)