栄養満点そよかぜランチ・プロジェクト
小学校第5学年・家庭科
上越市立東本町小学校 清水 雅之
キーワード 小学校,5学年,家庭科,CGI,インターネット,イントラネット,食,食教育
インターネット利用の目的
全校児童がコンピュータに触れる機会を増やすことと,児童の生活のアンケートをとる目的で,「生活アンケート」のCGIを作成した。マウスでクリックするだけの簡単な操作でアンケートに答えることができるため,低学年でも利用することができる。また,アンケート集約の手間が省け,結果をすぐ児童に見せることができる。
活動の様子をデジタルカメラで撮り,校内のホームページに載せておくことにより,同時に複数の児童が自らホームページを作成する際に活用することもできる。
こうして作られた児童のホームページを最終的にインターネットに公開することにより,自ら作成した情報を発信する体験を行い,多くの人から意見や感想をいただき,発信する喜びや次への活動意欲につなげていく。
1 単元名
好き嫌い0(ゼロ)大作戦 〜めざせ 栄養満点そよかぜランチ〜
(1) 目 的
給食の様子から,偏食や嫌いなものを残してしまう児童が多いことに気付いた。また,日常の食生活を調査しても,緑黄色野菜・無機質を進んでとる児童は少ない。児童にとって「栄養のある食事」と「好き嫌いをしないで食べること」は,分かっているようでも日常生活の中で実践しにくいものである。そこで,食と健康に関心をもち,食生活を振り返るとともに,バランスのとれた食生活を送ろうとする態度を育てたいと考えた。
そのため,たくさんある食品の一つ一つにどのような栄養があるかを児童に覚えさせるのではなく,食品名をコンピュータに打ち込むことにより,その食品がどのような栄養素をもち,さらに食事全体として栄養のバランスがどうであるかを視覚的に捉えさせるようにする。コンピュータを利用することにより,「栄養のバランスがとれている」という要件を満たした,給食のメニューを試行錯誤しながら作ることができると考えた。
さらに,児童が自らの活動の結果などをホームページにすることにより,情報を進んで発信する態度を育てたいと考え,単元を構想した。
(2) 指導目標
ア 教科のねらい
・学習したことをもとに,栄養のバランスのとれた給食メニューを作ることができる。
・栄養素の種類や量を考え,栄養に偏りがないように日常の食生活を見直していこうとする態度を育てる。
・体に必要な栄養素やその働き,それらの栄養素を含む食品の種類について調べることができる。
・栄養素の種類や量を考えて,いろいろな食品を組み合わせてとる必要があることを理解できる。
イ コンピュータ等の視聴覚機器利用のねらい
・イントラネット及びインターネットの利用に慣れる。
・デジタルカメラやビデオカメラを利用し,調査活動や取材活動ができる。
・自分たちの考えた給食メニューなどをホームページ化し,地域や他の学校に向けて情報発信し,情報交流のきっかけをつくる。
(3) コンピュータの利用場面
この学習では,次の学習場面でコンピュータを活用する。
ア インターネットで公開されている「栄養調べCGI」の利用
給食に入っている食品を調べ,「栄養調べCGI」に入力することにより,一つ一つの食品に含まれる栄養素が表示(図1・2「調べる食品」「食品それぞれの分類」)され,同時に,入力したすべての食品全体として,栄養のバランスがとれているかを視覚的(図2「食品の分類合計」)に捉えることができ,給食が栄養のバランスのとれた優れた食事であることを知る。
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図1 「栄養調べCGI」への入力の様子 |
図2 栄養のバランスを視覚的に表現する |
イ 給食のメニューづくり
実際に児童が給食メニューを作る際に,「栄養調べCGI」を利用することで,自分達の作りたいメニューの食品を容易に入れ替えたり,栄養を考え一部だけを変えたりすることができ,試行錯誤しながら栄養のバランスがとれたメニューを作ることができる。
ウ 校内のアンケート(生活アンケート)を参考にしたメニューづくり エ 活動をホームページにまとめる |
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図3 校内Webサーバを利用したアンケート |
(4) コンピュータ利用環境
ア 使用機種 Apple Computer社 iMac 20台
〃 Macintosh G3 2台
イ 周辺機器 デジタルカメラ SONY MAVICA 10台
ウ 稼動環境 校内すべてのコンピュータをネットワーク化しており,ファイルサーバーにてファイルの管理を行い,Webサーバにてイントラネットを行っている。今回のプロジェクトに関わる環境を次にあげる。
・コンピュータ室 iMac 20台,Macintosh G3 2台
(実践当時は64kでインターネットにダイアルアップ接続をしていたが,現在,1.5Mにてケーブルモデムを利用した専用線接続を行っている。)
・校内Webサーバ Compaq Windows NT Server
・校内ネットワーク 10Base-T及び100Base-Tによるネットワーク
2 指導計画
(全19時間 家庭科10時間,学級活動5時間,学校裁量の時間4時間)
次 |
時 |
期待する子供の様相 |
主たる学習活動 |
学習スタイル |
評価 |
1 |
ぼくのわたしの食事チェック |
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1 |
嫌いなものがいっぱいある。どうしよう。 |
給食や食事の中で嫌いなものをあげてみよう |
個別学習 |
自分の食生活を調べ,嫌いな物の栄養素が分かったか。 |
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2 |
嫌いなものは,赤と緑に多い。 |
嫌いな物の栄養を調べてみよう |
個別学習 |
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3・4 |
栄養素が6つに分かれているよ。 |
栄養の話を聞いてみよう |
個別学習 |
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5 |
給食のメニューはバランスがとれているよ。 |
給食のメニューはバランスがとれているのかな? |
コンピュータを利用した学習(3人組) |
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2 |
いろいろな食事の栄養素を調べよう |
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1・2 |
バランスがとれている食事が分かったぞ。 |
いろいろな食品の栄養素を調べてみよう。バランスがとれているのかな。 |
コンピュータを利用した学習(3人組) |
バランスのとれた食事は,無機質・緑黄色野菜をとることがポイントであることを分かったか。 |
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3・4 |
無機質・緑黄色野菜をとることがバランスの良い食事のポイントだ。 |
調べて分かったことを発表しよう。 |
一斉学習 |
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3 |
栄養満点そよかぜランチを考えよう |
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1本時・2・3 |
バランスの良い食事で,嫌いなものも上手にとれるよう考えよう。 |
各グループで給食のメニューを考えよう。 |
コンピュータを利用した学習(4人組) |
全校のみんなに喜ばれて,栄養満点のメニューを考えることができたか。 「そよかぜランチ」のPRを工夫することができたか。 |
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4・5 |
全校のみんなに喜ばれるものを作ろう。 |
各グループのメニューを発表して,みんなで話し合って決めよう。 |
一斉学習 コンピュータを利用した学習(4人組) |
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6・7 |
栄養満点であることを知らせよう。 |
全校のみんなに「そよかぜランチ」をPRしよう。 |
グループ学習 |
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4 |
栄養満点そよかぜランチを発信しよう |
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1・2・3 |
栄養満点であることなど工夫したことを知らせよう。 |
インターネットで「そよかぜランチ」を発信しよう。 |
コンピュータを利用した学習(4人組) |
栄養満点であることなど工夫したことを知らせようとしたか。 |
3 実践の概要(コンピュータ利用場面) 「10/19時間」
(1) ねらい
「メニューづくりのポイント」をもとに,自分のアイディアを生かした「栄養満点そよかぜランチ」のメニューをインターネット(栄養しらべCGI)を活用しながら,試作することができる。
(2) 展 開
時間 |
○学習活動及び予想される子供の姿 |
◇教師の支援 |
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5 |
○栄養満点そよかぜランチメニューを考えよう。 |
◇メニューづくりのための試行錯誤に時間は確保してあるので,「ポイント」に合わない内容で作らせてみたい。その後,どこをどうしたらよいか支援する。 |
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38 |
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◎ティームティーチングで児童の活動を支援する。 ◇T1・T2 どんな献立があるか,材料は何かなどを中心に支援する。 ◇T3・T4 コンピュータの入力の支援を中心に行う。入力後の食事のバランスなどの支援も行う。 |
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2 |
○次の時間もメニューを考えよう。 |
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(3) 効 果
児童は栄養のバランスを考えながら食品を入力するのであるが,第1段階の結果を見ると「無機質」「ビタミンC」「カロチン」といった栄養素が足りないことに気づく。そして,それらの栄養素を含む食品にどのようなものがあるかを進んで教科書や資料で調べていた。調べるうちに,食品によっては,「ビタミンC」「カロチン」の両方を含むものがあることを知り,その食品をメニューの中に入れていこうとする姿も見られた。
また,一日に摂取すると良い食品数が30品目であることを学習した児童の発言から,どの児童もたくさんの食品の入った給食メニューを作ろうと努力していた。このことにより,当初,「栄養調べCGI」の入力項目を15としていたが,児童の意欲的な活動により,30品目の入力項目に変更することとなった。
図4 コンピュータによる調査の様子
4 実践を終えて
子供たちの力で,栄養のバランスがとれた,すばらしい給食メニューを作ることができたことは,新潟インターネット教育利用研究会に作成していただいた「栄養調べCGI」と,学校栄養職員のアドバイスによるところが大きい。児童は,この活動を通して,イントラネットを利用する利点を知り,他の活動でもホームページを作成するときや,自分の撮った画像を発表するときなどに利用するようになった。また,休み時間にインターネットを利用したり,自宅での朝食のメニューを「栄養調べCGI」に入力して,栄養のバランスがとれているかを調べたりするなど,コンピュータを自分の生活に生かす姿や食に対する実践的な態度も育ってきた。
今回,グループでホームページを作ったが,予想以上に時間がかかったうえに,児童の活動の様子を伝えるホームページをあまり作ることができなかった。児童にどのようにしてホームページを作らせていくかが今後の課題である。
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図5 ホームページで給食の様子を紹介 |
図6 児童の作ったホームページの画面 |
ワンポイントアドバイス |
協 力
児童が,新潟インターネット教育利用研究会(NICE)作成のCGIに食品名を打ち込むことにより,それらの栄養のバランスがどのようになっているかを視覚的に見ることができた。新潟インターネット教育利用研究会(NICE)からCGIを作成・公開していただいている。
利用したURLなど
新潟インターネット教育利用研究会 栄養調べCGI (http://www.nice.or.jp/~eiyo/)
上越市立東本町小学校ホームページ (http://www.jorne.or.jp/~e-honcho/)