テレビ会議システム,E・メール,ホームページを

複合的に活用した遠隔学習

小学校第6学年・社会科
大潟町立大潟町小学校 戸田 正明
oogata@educet.plala.or.jp
http://educet1.plala.or.jp/oogata/index.HTML
キーワード 小学校,6年,社会,インターネット,電子メール,テレビ会議


学習の意図
 テレビ会議システムを用い,遠隔学習を行う。遠隔学習がより効果的なものとなるように,事前・事後にWebページや電子メールを活用して,情報交流を行う。
 電子メールでは,校内メールサーバを設置し,児童一人一人が情報のやり取りをできるようにする。そして,6年生全員に同じ情報が届くように,6学年児童のメーリングリストサーバも稼動させる。メーリングリストサーバで,同一内容の電子メールを,複数人に配布する。これにより,必要な情報を児童全員にすばやく伝えることができる。情報を提供するために全員を集める必要はなくなる。
 また,写真などの画像情報を提供するために,校内Webサーバ(校内ホームページ)を設置して,電子メールとともに活用する。児童用コンピュータはLANで接続され,すべて校内Webサーバを閲覧できる。校内Webサーバに,学習の結果をまとめたページを作成する。児童はそれを閲覧し,疑問を電子メールで問い合わせることができる。
 このように,メディアを複合的に活用することで,児童の学習への興味関心をより深めるとともに,情報活用の実践力を育成する。


1 めざせ!縄文人
(1) ねらい
 6年社会科の学習で,縄文時代の学習をする。中でも縄文土器は,形状がユニークで,子供の興味・関心は高い。また,新潟県は縄文土器の中でも独特な形状をした火焔型土器が産出する。地域の歴史的文化財に触れ,土器を制作するなどの活動を通して,体験的に地域を知って欲しいと考える。
 学習に当たって,専門家から直接指導していただくことを考えた。専門知識に裏付けされた説明は,子供にとって印象深いものになる。けれども学校の近くには専門家はいない。そこで,テレビ会議システムを活用した遠隔学習を構想した。学習に当たっては,テレビ会議システムと電子メールやホームページを組み合わせる。それにより,学習の一過性を排し,学習活動の連続性を保持する。
(2) 指導目標
 縄文土器を調べたり,実際に制作する活動を通して,縄文土器の持つ巧みさや縄文人の知恵を感じ取る。
 テレビ会議システムや電子メール,Webページを活用して,専門家から縄文土器について詳しい情報を得るとともに,得た情報をもとに縄文土器をつくる。
(3) 利用場面
 この学習では,次のような学習場面で,情報機器やコンピュータを活用する。
(a) テレビ会議システムの活用
 十日町博物館及び県埋蔵文化財センターの学芸員との交流時にテレビ会議システムを活用する。
 十日町博物館には,国宝に指定された火焔型土器がある。テレビ会議システムを使うと,普段見ることの出来ない土器の内側や底の部分などを見せてもらえる。また,このシステムの持つ双方向性を活用する。子供が見たいという土器の部分を拡大してもらうなど,こちらからリクエストを出し,それに応答してもらい,興味関心を深めていく。
 県埋蔵文化財センターとのテレビ会議システムを使った遠隔学習では,縄文土器の作り方を指導していただく。制作過程で生じる,困ったことや知りたいことを専門家からリアルタイムで教えていただける。
(b) 校内電子メールおよび校内メーリングリストの活用
 テレビ会議システムを使った遠隔学習の前後に,電子メールを活用して質問をやりとりする。子供一人一人がメールアドレスを持ち,各々が質問すると,質問が重複する可能性がある。そこで,校内メーリングリストサーバを設置して,そこに質問メールを出すようにする。質問メールは,6年生全員に配信される。また,相手からの回答メールもメーリングリストサーバ宛てに転送する。これによって質問と回答が全員に分かるようになる。
 いろいろな質問や回答を受け取ることで,質問しやすい雰囲気が生まれる。
(c) 校内ホームページの活用
 電子メールで情報をやりとりした様子を,校内Webサーバ(校内ホームページ)にまとめて,閲覧できるようにする。交流先から送られてきた写真画像や,質問と答えをまとめることで,子供が学習の流れをつかみやすくなる。
 同時に,インターネット上の当校のWebサーバにも,同じ内容の情報を載せておく。交流先の指導者が学習の流れをつかみ,遠隔学習時の指導に役立てることができる。
(4) 利用環境
(a)
使用機種 Apple LC630 20台 NTT Phenix mini 1台(借用)
(b) 稼働環境 校内用メールサーバ,メーリングリストサーバ,Webサーバ 1台
       (Windows NTで稼働)
       クライアント Apple LC630 20台
       (Ethernet接続,64kでインターネット利用可)
(c) 利用ソフト Eudora1.3.8.5J インターネットエクスプローラ4.01

2 指導計画

指導計画

留意点

国宝を見せてもらおう(火焔型土器)
・十日町博物館に質問しよう(1)
  ★電子メールの利用

・テレビ会議で教えてもらおう(2)
  ★テレビ会議システムの利用






  ★電子メールの利用(1)

・火焔型土器の写真を子供に見せ,聞いてみたいことや不思議に思ったことをFAXや電子メールで問い合わせる。回答は,校内メーリングリストサーバを利用して,全員に配布する。
・事前打ち合わせをし,会議の運営方法や学習内容を明らかにしておく。
・メモをとりながら話を聞き,質問タイムに質問ができるようにする。
・質問タイムでは,相手にわかりやすいように発表に留意させる。具体的には,画用紙を用意しておき,マジックで大きく質問内容を書き記し,提示させる。
・会議終了後,わかったことやお礼の意味をこめて,博物館にメールを送る。

縄文土器の作り方を教えてもらおう
・作り方を質問しよう(2)
  ★電子メールの利用




・テレビ会議で教えてもらおう(2)
  ★テレビ会議システムの利用

・作り方の概略をメールで説明してもらい,それについて,不明な点を問い合わせるようにする。
・質問の答えを,校内メーリングリストで配布し,用具などの準備をする。そのときに,準備した道具や材料を写真に取り,Webページに掲載しながら相手に伝えるようにする。
・テレビ会議を使ってコミュニケーションをするときに,教師がカメラを操作し,こちらの様子を伝えるようにする。特に,相手が指導するにあたって必要な情報を問い合わせ,できるだけ指導に役立つ画像を送るように心がける。
・最後まで制作できなくとも,途中まで指導していただき,あとは,Webページで出来上がりを伝えるようにする。

親子で作ろう
・先生になって縄文土器を作ろう(3)

・前時の学習メモをもとに,親子で縄文土器作りを行う。指導は,子供が当たる。

野焼き(2)


文化祭に展示しよう(1)

・野焼きはグラウンドなど支障のないところで行い,火には十分注意する。また,関係諸機関への連絡を忘れない。
・野焼きが難しい条件がある場合には,乾燥したままでもよい。その場合は,土器を作る段階で,テラコッタ粘土などを使い,出来上がりに考慮する。

 

3 学習の展開
(1) 十日町博物館との遠隔学習
 
火焔型土器の写真を見て,質問を考えた。質問は全部で20項目になった。その質問をもとに,テレビ会議の打ち合わせを行った。質問はテレビ会議のきっかけとし,できるだけシステムの持つ双方向性を生かして授業を行うことを確認した。
 当日は,事前に出した質問に答える形でスタートした。その後,火焔型土器を紹介してもらい質問に答えていただいた(図1)。全体の様子だけでなく,土器の細部とか普段見ることの出来ない内部などをズームアップしてもらった。
 また,テレビカメラに館内を巡っていただき,土器が使われていた時代の様子をあらわす展示を映像で提示していただいた(図2)。学芸員の視点を通しての情報であるが,情報の選択と伝達の順序が一貫していてわかりやすかった。このような具体的な映像は,子供たちの興味関心を引き出し,2時間の授業はあっという間に過ぎていった。

1 博物館への質問

2 館内の映像紹介

 

○子供の感想か

 十日町博物館のみなさん,6月4日のテレビ会議ありがとうございました。音や映
像がぶれたりしたけれど,ていねいな説明や,カメラマンの方が上手に撮ってくれた
ので,とってもくわしく,よく分かりました。
 先生が, 「たいへん貴重な時間です」 といったのは,本当でした。
 ふだん,ガラスケースの中に入っているのを,中や底までみせてくれて,勉強の役
に立ちます。
 機会があったら十日町博物館に行ってみたいと思います。ありがとうございました。


(2) 県埋蔵文化財センターとの遠隔学習
・十日町博物館との遠隔学習の反省から


    図3 送付されてきた写真

 十日町博物館との遠隔学習では,事前にメールで質問を送ったりしたが,1回きりの交流であった。
 そこで,県埋蔵文化財センターとの遠隔学習にあたっては,事前に電子メールを使って交流を深めておくことを考えた。
 県埋蔵文化財センターと打ち合わせは,子供たち自身が,電子メールを使ってやり取りを行った。
 電子メールをやり取りする中で,学芸員さんから試作品を作っていただき,写真を送っていただいた(図3)。出来上がりの写真を見て,子供たちは制作への意欲を高めていた。
・『縄文人の想い』を大切に
 テレビ会議を使った遠隔学習の時には,事前に電子メールで交流を行っていたためもあり,スムーズに対話を始めることが出来た。
 縄文土器をつくる前に,「縄文人は,どんな気持ちで土器を作っていたと思うか?」という質問があった。子供たちは,「ただ器を作ればいい」という気持ちであったが,「縄文人の気持ちに思いを巡らせてつくることが大切」との話があった。土器の背景にある縄文人の生活を大切にする指導は,長年発掘に携わった専門家ならではのものであった。遠隔学習はその専門家の話を直接うかがうことができる。その一言一言は重みがあり,子供たちは熱心に話を聞いていた。
 説明のあとで制作にとりかかった。事前に打ち合わせがあったように,植物の葉っぱを土台にして作業を開始した。(図4)


 テレビ会議システムは,画像の鮮明さという点で劣る面があるが,作業の雰囲気が伝わり,子供たちは熱心に作業に取り組んでいた(図5)。制作は時間内では終わらず,昼休みも制作に没頭していた。

4 葉っぱを土台に作業を行う

5 熱心に土器作りに取り組む

 

4 成果と課題
(1) 親子活動での子供たちの動き


  図6 親子で制作

 十日町博物館,県埋蔵文化財センターとの遠隔学習を通して,子供たちは縄文土器について様々な知識を得た。
 その学習経験を生かし,親子で縄文土器作りを行った。指導者は,子供自身である。子供たちは自信を持って土器作りに取り組んでいた(図6)。出来上がった作品は乾燥し,野焼きにした。素朴な土器であるが,どの子供も大切にしていた。

(2) 複合的に用いるよさ
 テレビ会議システムを使った遠隔学習を行う前に,電子メールやWebページを使った交流を行った。これにより,テレビ会議システムを使った遠隔学習当日はスムーズに学習に取り組むことが出来た。相手から,事前に電子メールで返事がくることにより,子供たちが相手意識持ちながら学習に参加することができた。

(3) 課題
 
現在,テレビ会議システムとしては,NTTのPhoenixが使われている。欠点としては,画像が粗い,通信料がかかる(遠隔地だとさらに負担が大きい)ということがある。他の交流の方法としては,NetMeetingやCU-SeeMeなどがあるが,あまり実用的ではない。
 けれども,今後5年間のうちに,ネットワークが高速化される。そうすると,さらにきれいな画像で,安いコストで画像を使った情報交流,遠隔学習が可能になる。

ワンポイントアドバイス
 遠隔学習を進めるにあたって,事前に学習を行ってくれる相手を探す必要がある。今回の場合,新潟県立生涯学習推進センターの方で,学習先と連絡調整を取っていただいた。実践したいが,相手に困っている場合は,県の教育センターなどに問い合わせるとよい。


協力団体
 ◎新潟県立生涯学習推進センター(http://www.lalanet.gr.jp/)
 ○十日町博物館(http://www.city.tokamachi.niigata.jp/museum/menu.HTML)
 ○県立埋蔵文化財センター(http://www.lalanet.gr.jp/maibun/index.HTML)

参考にしたURLなど
 
火焔型土器の紹介 http://www.city.tokamachi.niigata.jp/kokuhou/kokuhou.HTML