社会科における一人学習とインターネットの利用

−「ふれる,つかむ,調べる,まとめる」という学習過程を通して−

小学校第4学年・社会科
福岡町立福岡小学校 峠 修一
キーワード 小学校,4年,社会科,インターネット,電子メール,メーリングリスト


インターネット利用の意図
 インターネットを利用し,下記の4つの段階で以下のように学習を進めていく。
 ふれる・・・富山県についての印象を聞く。
 つかむ・・・富山県の情報を仕入れる。
 調べる・・・学習して分かったことを知らせる。
 まとめる・・学校のホームページに載せたり,他校の掲示板に載せたりして反応を知る。
 インターネットは,
(a) キッズリンクに登録してメーリングリストで情報を募る。学習の成果を知らせる。
(b) Eメールを活用し,官公庁や関係機関に質問する。
(c) 他校の掲示板に載せて感想を聞く。
(d) 学校のホームページに学習の成果を載せる。
等を中心に活用する。


1 自まんの富山県 −富山県イメージアップ大作戦−
(1) ねらい
 富山県は,おわら風の盆,立山黒部アルペンルート,氷見の鰤など,全国的に有名な祭りや観光地,特産物を有する,海や山の自然に恵まれた県である。また,経済企画庁の「新国民生活指数」では「住む」の分野で6年連続全国1位にランクされるなど,豊かさや住みやすさにおいて全国トップレベルの評価を受けている県でもある。しかし,日本海側というイメージや保守的な県民性から,地味,暗いという印象ももたれているのも事実である。そこで,今回の学習では,富山県は全国的に印象が薄いと捉えられている事実から,「富山県イメージアップ大作戦をしよう!」と投げかけることで,名前だけは知っていた富山県の名所や特産品,行ったことがある施設についてもっと深く調べたり,名前さえ知らなかった市町村について調べようとしたりするきっかけになるのではないかと考えた。
  富山県のイメージアップを図るためには,まず富山県が県外の人々にどのような印象をもたれているのかを知ることが必要となってくる。また,富山県を紹介するにあたってはホームページや資料で調べた事実だけでなく,その土地で住んだり働いたりしている人々の考えを交えながら紹介していくことで,より説得力のあるものになるだろう。さらに,自分たちの学習の成果を披露したり,意見を募ったりする場として学校のホームページや掲示板等も活用していく。

(2) 指導目標
・富山県の様子に関心をもち,進んで調べ,人々に知らせようとする。
・富山県の地形や土地利用,産業等の特色や県内の人々の生活を関連づけて考えることができる。
・図書やビデオテープ,コンピュータ等から必要な情報を収集し,自分の方法でまとめることができる。
・富山県における福岡町の地理的位置や富山県の地形,産業などの特色が分かる。
(3) 利用場面
 
この単元では以下のような場面でコンピュータを活用する。
(a) 全国の人々に富山県の印象を聞く場面。
(b) 富山県の特産物や名所について調べる場面。
(c) 自分が調べている事柄やその場所に住んでいたり,働いていたりしている人に質問をする場面。
(d) 他校の掲示板に自分たちの調べたことを発表し意見を募る場面。
(e) 自分たちの学習の成果をホームページに載せ発信する場面。
(4) 利用環境
(a) 利用機種 PC-98 V166 4台
(b) 周辺機器  LAN Anywhere(無線LANシステム) 2台
(c) 稼働動作 コンピュータ室
              教室
 上記のコンピュータをLANでつなぎ教室に置くとともに,無線LANシステムを使い,インターネットと常時つながるようにした。
(d) 利用ソフト
 INTERNET NINJYA
 ハイパーキューブ
 Frontpage Express

2 指導計画

 

 

 

 指導計画(全16時間)

 

                留意点

 

一次

 

ふれる

 

(a)

 

 

・ メーリングリストで意見を募った 富山県についての感想をもとに、富山県について話合う。

 ★インターネット利用

  <富山県の印象を聞こう>

 

★ キッズリンクのメーリングリストを通して、 全国の子供たちから募った富山県についての感想と、自分たちの考えと比べながら話合しうことで、客観的な面からも富山県について考えていけるようにする。

 

 二次

 

つかむ

 

(b)

(c)

(d)

(e)

 

・ 富山県をイメージアップするためにはどうすればよいか考える。

・ 富山県について興味をもっていることや調べたいことをもとに、自分の学習問題をもつ。

・ 自分の学習計画を立てる。

  ★インターネット利用

  <富山県について調べよう>

 

・「富山県をイメージアップしよう」と投げかけることで共通の目的をもって学習に取り組めるようにする。

・ 調べ方を考えたり学習計画を立てたりすることで見通しをもって学習に取り組めるようにする。

★ コンピュータを使って調べることを希望した子供が能率良く調べ学習を進めることができるように、事前に富山県庁や市町村のホームページをダウンロードしておく。

 

 三次

調べる

深める

 

(f)

(g)

(h)

(i)

(j)

(k)

(l)

 

・ 自分の予想に基づいて一人調 べをする。

  ★インターネット利用

  <自分が調べたいことをホームページで調べよう>

  <Eメールで質問をしてみよう>

・ 状況に応じてグループで情報交換をしたり一緒に考えたりする。

  ★インターネット利用

  <キッズリンクのメーリングリストにこれまで調べて分かったことを流して感想を募る>  

 

・ 図書資料やビデオ資料、ホームページ資料、Eメールでの質問、電話取材等から自分の課題にあった調べ方を選び、自分の判断で学習を進めていくようにする。

★ Eメールでの質問の際は、質問内容を吟味し、マナーを守ってできるようにする。

 

・ 追究が行き詰まって停滞したり、追究が終わって満足したりしている子供には、新たな視点をもって調べるように助言したり友達と情報交換ができるようグループ学習をするように助言したりする。

 

 四次

まとめる

 

(m)

(n)

(o)

(p)

 

・ 自分の自慢のまとめ方や富山県をイメージアップするための表現の仕方は自由にする。

  ★インターネット利用

  <これまでの学習の成果をキッズリンクで紹介したり、ホームページ形式にまとめたりして学校のホームページに学習の足あとをのせよう>   

 

・ ホームページ形式での表現方法を希望した子供はFrontPageExpressを使って進めるようにする。

 

3 利用場面
(1) 目標
・自分が調べている観光地で働いている人々の願いや努力について目を付けている友達の発表を聞くことで,自分の問題についての考え方やまとめ方を見つめ直し,その土地で働く人々の願いや努力について考えようとする。
・自分の学習にあった方法で,コンピュータを効果的に活用する。
(2) 展開

学 習 活 動

活動への働きかけ

○ 友達の話を聞いて話し合う。

 

 

 

○ 自分の学習計画に沿って学習を進める。

 

<世界遺産グループ>

・ 五箇山の合掌造りに秘密について質問する内容を相談しメールソフトに書き込む。

 

 

<特産物グループ>

・ 富山県庁のホームページにアクセスし、富山県内の市町村の特産物について調べる。

 

<E児とN児>

・ キッズリンクのメーリングリストで知り合った友達にメールで学習の成果を報告したり、メーリングリストに自分の考えを紹介して意見を募ったりする。

<富山の薬グループ>

・ Eメールでもらった返事をもとに、富山県の配置薬業のよさや関わる人々の努力や願いについても考えるようにする。

<観光地グループ>

・ これまで調べてきた富山県の観光地をホームページにまとめる。

○ 今日の学習を振り返る。

・ 働いている人々やその土地に住む人々の願いや努力を中心に考えている児 童を取り上げ、話合いを進めるようにする。

・ 一人一人が見通しをもって活動に取り組めるようにする。

 

・ 役場の人は自分たちの仕事中に聞いてくださること、本やパンフレットに書いてある内容は重複して聞かないこと等に注意し、メールを書くようにする。

・ 子供たちが使いそうなホームページは、ダウンロードしておき、お気に入りに入れたり、ショートカットを作成しておいたりする。

・ 電子メールを使うに当たっての注意 事項の指導をした上でメールを書くようにする。出す前には教師が必ず目を通すようにする。

・ 自分たちが考えていたことと、答えてくださったこととを比べながら話し合う。

 

・ ホームページの書き方を助言する。

 

・ 次時の学習につながるよう、今日の学習を振り返って思ったことや、分からなかったこと、次時にしてみたいこと等も交えながら振り返るようにする。

 

4 実践を終えて
  本校は2年前にコンピュータ室が設置され,ダイヤルアップでインターネットと接続している。これまでは,コンピュータ室という限られた空間でしか使用できないということもあり,教師,子供ともにコンピュータに慣れ親しんでいるとは言えない状態だった。そこで,今回の実践では,社会科の学習で単元を通してインターネットを利用していくことで,コンピュータに親しむことができるのではないかと考えた。
 日常的にコンピュータを使うにあたって,校内LANの設備が整っていないということが最大の問題点となっていた。そこで,無線LANを設置することで,配線工事をしなくても教室でインターネットをつかうことができるようになった。無線と言うことで,伝送速度が遅いという欠点もあったが,教室で3台程度使うのにはほとんど問題もなかった。また,ファイルのサイズが大きなホームページは前もってダウンロードしておくことで,読み込む時間を節約することができた。
  社会科の学習としては,調べ学習のためのホームページ利用の他に,メーリングリストの利用,掲示板の利用,Eメールの利用,ホームページでの学習成果の発信と,多方面での使用を試みた。メーリングリストの利用は,いたずらメールの防止,電話番号や住所等を教えたり聞いたりしない,等のマナーや注意点のしっかりとした指導は必要だったが,全国の友達と情報を交換したり,自分たちの学習の成果を発表したりするという点でとても役に立った。また,掲示板の利用もメーリングリストの利用同様,使用上の指導は必要だが,活用の価値が多いにあると思う。今回の「富山県イメージアップ大作戦」は社会科の学習として行ったが,総合的な学習として進めていってもよかったのではないかと思う。
  今回の実践を通して,子供たちはホームページを使って調べるだけでなく,学習の過程で考えたり悩んだりしたことを気軽にEメールで交換しあったり,学習の成果を発信しようとしたりと,気軽にコンピュータを使うようになった。一人一人が,単元を通して自分の学習の一助としてコンピュータを使うようになる貴重な機会だった。

ワンポイントアドバイス
・校内LANの設備が整っていない(整備の予定がない)場合は,無線LANを使えば教室でもインターネットを使うことができる。コンクリートの校舎では無線が飛びにくく,窓から窓へ直接飛ばしたほうが動作が安定するので自前での配線も多少必要となってくるが,大がかりな配線工事が必要なく,短期での使用という点ではとても役に立つと思う。
・児童の学校でのEメールの使用は,公的に発行されたアカウントを学校で使用するということ,ネチケットを学ぶよい機会であるということ等から,教師側の積極的な指導が必要である。


参考文献
 
インターネットを利用した授業実践事例集
        (情報処理振興事業協会・財団法人 コンピュータ教育開発センター)

利用したURLなど
 
富山県庁のホームページ    http://www.pref.toyama.jp/
 キッズリンク              http://www.kids.kitanet.co.jp/
 守口小学校のホームページ  http://www.mydome.or.jp/morisyo/