ミート ザ ワールド(国際交流)

福井県 上中町立三宅小学校 桧鼻幹雄
キーワード 小学校,国際理解教育,国際交流,外国語学習,インターネット,電子メール


企画の目的・意図
a.本校のすすめる特色ある学習活動
・新教育課程の実施を見据え,以下の3つを柱に教育活動に取り組んでいる。
・地域に関する学習(地域ふれあいネットワーク)
・学校間交流学習(鯖街道ふれあいネットワーク)
・国際理解教育(国際ふれあいネットワーク)
b.本校の国際理解教育の目的
・国際化の時代を迎え,国際感覚を養い,広い視野にたって物事を考え,洞察し,判断できる力を育てる。
・外国の文化に興味関心を持たせる。
・日本と外国の文化を比べて,共通点や相違点に気づく。
・自分たちとは異なる文化に触れたり,それらを持つ人々との交流を通して異なるものに対する寛容性,柔軟性を身につける。
・外国の人々との相互理解を深めるために必要な,積極的にコミュニケーションを図る態度,およびコミュニケーションの基礎的な能力を身につける。
c.本校の外国語(英語)学習の基本方針
・あそび感覚を尊重する。
・音声中心の活動をする。
・自然に英語を覚えていくようにする。
・身近な生活を話題にする。
・英語を話すことを楽しむ。
・国際感覚を養う。
d.本企画(ミート ザ ワールド)のねらい
   本校の国際理解教育のねらいは上述の通りである。本企画では,インターネットを効果的に利用することにより,外国の諸学校との交流をはかり,児童が具体的且つ体験的な活動を通して,自国の文化や外国の文化にたいする興味関心を深めることや自分たちとは違った文化を持つ人たちと積極的にコミュニケーションを図っていこうとする態度を育てることを主なねらいとした。


1 実践内容
a.対象(学年,教科等):
・対象学年 全学年
・教科等
 国際ふれあい活動の時間:3〜6年生は年間10時間程度,1・2年生は年間5時間程度を設定
 クラブ活動の時間:国際交流クラブ 週1時間
 全校的な体制での取り組みをめざした。
b.交流相手校: Little Island National School (Ireland)
c.交流内容: 
(a) 学校・地域紹介…学校の様子や学習している内容についての情報交換。学校が所在する地域についての情報交換をはかる。(電子メール,ホームページ,AVI形式のビデオファイルを利用)
(b) 文通…児童相互による文通を進め,親交を図る。(電子メールを利用)
(c) 特派員活動…環境についての学習や,地域の学習を進める中,お互いに調査やアンケートを依頼し合い,情報交換をする。(電子メールを利用)
(d) テーマ学習…「料理」「音楽」「住居」「民話」「スポーツ」等のテーマを設け,お互いに自国の文化についてレポートを作成する。互いのレポートを交換し,相互の授業や学校での活動に利用し,互いの文化の相違点について理解を深める。(電子メール,ホームページ,AVI形式のビデオファイル,WAV形式のサウンドファイルを利用)
(e) 共同作業…協力して何か具体物を作成する。(電子メールを利用)
d.具体的な実践内容の紹介:
(a) 学校・地域紹介
  交流相手校のあるアイルランドは,あまり馴染みのある国とは言えず,児童はもとより教師も,アイルランドについての詳しい知識はないのが正直なところであった。そこで,まず,全校的な体制で交流をすすめるにあたり,国際交流クラブの児童がアイルランドやリトルアイランドナショナルスクールについて調べ,校内の掲示板や本校のホームページを利用して,全校児童に紹介していくという方法をとった。リトルアイランドナショナルスクールからも,アイルランドや学校を紹介する写真や記事がたくさん届けられた。本校ホームページでも紹介している。http://www.hokuriku.ne.jp/miyake-s/kokusai/index.html 
 お互いの学校の職員の自己紹介も電子メールを使っておこなった。お互いに顔を知ったほうが親密感も増し,より人間的な触れ合いが生まれるという考えから,お互いの自己紹介にはそれぞれ写真を添えることにした。お互いの学校の職員同士が,親密になることで,全校的な体制での交流が,よりやりやすくなることをねらった。
 本校は,英語版のホームページで,本校および地域について詳しい情報を提供しているため,交流相手校は本校のホームページから写真や文章を抜粋し,本校及び日本を紹介する掲示板を設置,児童や地域の人々への紹介をおこなった。http://www.hokuriku.ne.jp/miyake-s/english/index.html
 また,本校の紹介をするにあたり,本校の教室や施設などを,国際交流クラブの児童が,簡単な英語で紹介するビデオを作製し,それをAVIファイルに変換,CD-ROMにコピーしたものを航空便で送付した。リアルタイムではないものの,より親近感のある交流方法をめざし,試みたものである。
 また,偶然にも,本校に隣接する高校にアイルランド出身のALTがいることがわかり,何度か訪問をお願いすることができた。アイルランドのダンスを児童が習うなど,たいへんアイルランドが身近なものとなった。
(b) 文通
 現在4〜6年生の児童数名が,電子メールで文通をおこなっている。英語を使用することになるが,翻訳ソフトの利用や翻訳ボランティア(地域の高校生)本校職員が,英訳和訳をし,児童の文通を援助している。
<アイルランドの児童からのメールから>
 We are getting ready for Christmas in Ireland. We are putting up Christmas trees and giving each other Christmas cads. On the 15th of December we had our Christmas Concert. Fifth and Sixth class had one play and all the other classes had their own plays. We also did songs and poems. We all played a Japanese song on our recorders. It was called 'Osho - Gatsu' and I think it means ' Happy New Year '. That's all for now. Please write back soon. Happy Christmas
 (c) 特派員活動
 本校では,総合的な学習への取り組みを昨年度より始めているが,前述の3つのネットワーク(地域ふれあい,鯖街道,国際)をその活動の中に利用していくことを考えている。本年は5年生が環境問題の学習で,日本各地及び海外の諸学校にアンケート調査を行ったが,本企画の交流校からも,多大な協力を得ることができた。また,相手校からは,日本のスポーツについての調査依頼があった。
<5年生児童によるアンケートへの回答例…ペットボトルについての調査>
These are the answers to your questions.  I am very sorry for the delay in replying to you.
Q1 I regret that we do not recycle plastic bottles in Ireland.  I have checked with several government departments and the only thing they could tell me that plastic bottles are sent from England to Japan for recycling but we have no plans to do that at present.
We recycle cans (Coke cans etcl.). In fact children from this school collect cans and save them.  They are then collected by a company called Green Dragon.  They are taken away, washed and new cans are make from them.  Our school won second place in Ireland in 1996 and 1997.
In Ireland, we also recycle paper, glass and textiles (cloth).
Q2 There are many, many kinds of plastic bottles in Ireland.
Best Wishes with your project.  If you need some pictures for other types of recycling (such as paper), please let us know.

 (d) テーマ学習1 アイルランドと日本のスポーツと民話
・本校の3年生と相手校の4年生の学級で取り組んだ。
・本校の3年生の学級では,日本の伝統的なスポーツ「相撲」を紹介するレポートを作成。また,相撲が登場する日本の昔話「金太郎」の紙芝居も作成した。これを相手校に電子メールを使って送付,相手校では,3年生児童が作成した相撲に関するレポート及び紙芝居を使って,日本の伝統的なスポーツ「相撲」の授業を行った。
・相手校の4年生は,アイルランドの伝統的なスポーツであるハーリングにまつわる民話を紙芝居にして,送付してくれた。本校でも同じような形態でアイルランドのスポーツについて学習した。
・アイルランドの民話については,和訳したものを本校のホームページや校内の掲示板を利用して全校児童に公開した。http://www.hokuriku.ne.jp/miyake-s/kokusai/index.html
(e) テーマ学習2 アイルランドと日本の歌
・本校では,1年生から4年生までの学級が音楽の時間を使い取り組んだ。日本の歌をアイルランドの学校に紹介するという活動である。
・1年生は「お正月」,2年生は「夕焼け小焼け」,3年生は「春の小川」,4年生は「もみじ」を選び,合唱の様子をビデオ取りした。それぞれの曲についての説明やそれぞれの児童からのメッセージ,演奏時の写真,楽譜,サウンドファイル(WAV),ビデオファイル(AVI)を送付した。
・相手校では,これらのものを教材に音楽の授業をおこなった。また,特に「お正月」は,相手校の5・6年生の児童全員がリコーダー演奏の練習を行い,クリスマスコンサートで,全校児童や地域住民の前で披露されたということである。
・また,相手校からは,アイルランドの子守唄"Einini" とたいへん愉快な"Bog Braon don tSeanduine"という歌の楽譜とサウンドファイルが送られてきた。本校では,5年生と6年生が,これらの曲を音楽の授業で取り上げた。
・また,全校児童が演奏を聴けるような企画も現在検討中である。
(f) 共同作業 2000年ミレ二アムカレンダーの作成
・本校と相手校の児童の絵画を各学年よりそれぞれ数点ずつ計12枚の児童の絵をデザインに使用したカレンダーと本校と相手校の児童や学校の様子の写真をデザインに使用したカレンダーを共同で作成することにした。
・絵画カレンダーの作成は相手校が,写真カレンダーの作成は本校が,それぞれ製作責任を負うことにした。
・本校からは,各学年より提出された絵画を,電子メールの添付ファイルとハードコピーの両方で送付した。相手校からも写真が届いており,本校では,国際交流クラブが製作を担当している。お互いに1月末の完成をめざしており,完成後は,それぞれ,ハードコピーの形で交換する。
・カレンダーは,本校のホームページ上でも公開する。
(g) その他の企画 給食週間 アイルランドの食事
 本校では,1月末に給食感謝デーを含む給食週間をもつが,今年度は,アイルランドの伝統的な食事を全校児童で食べてみようということで,給食委員
会を中心に計画が進めている。

2 成果と課題
・この企画の評価の観点として[外国の文化に興味関心を持つことができたか。][日本と外国の文化を比べて,共通点や相違点に気づき,それぞれのよさを見つけることができたか。][積極的に自分の考えなどを相手に伝えようと努力することができたか。][異なった文化を持つ人たちの考えや意見を受け入れようとすることができたか。]の4点をかかげ,数ヶ月にわたる交流活動を続けてきたが,ほぼ達成することができた。
・また,全校的な体制で取り組みができたのは,担当として評価している。各学年の担当の先生方からも積極的な協力を得ることができた。
・相手校とは,1週間をベースにとぎれることなく,何らかの形で連絡を取り合いながら交流活動を進めようと確認し,共同作業を続けてきたが,ほぼこの課題もクリアすることができた。
・インターネットは,この交流活動にたいへん役立った。十数年前,アメリカのアイオワ州の学校と交流活動を行ったことがあるが,インターネットのない時代であり,航空便をつかっての交流活動であった。当時,一つの文書の受け渡しに1ヶ月を要したことを考えると電子メールの便利さをあらためて痛感する。
・また,より人同士のふれあいを感じる交流活動をめざし,画像や音声ファイル,ビデオ画像も交流活動に使用したが,期待した以上の効果をあげることができた。
・交流活動を充実したものにするため,今回は,オンラインの活動だけではなく,オフラインの活動も,両校で重視して活動を進めたことは,よかったと感じる。
・当初,複数校での同時交流活動をめざしたが,時間的,人的制約から,リトルアイランドナショナルスクールとの交流活動一本に絞って今回の企画を進めることになったが,結果として充実したものとなった。今後も交流活動を継続していく予定である。
・他の諸外国の学校からも交流活動の申し込みを受けているので,来年度はよりダイナミックな交流活動を計画したいと考えている。

ワンポイントアドバイス
・小学校で国際理解教育,外国語学習を行う場合の参考文献として,多種多様の書籍が出版されているが本校ホームページに,参考図書の情報を種類別に掲載しているので参考にされたい。http://www.hokuriku.ne.jp/miyake-s/kokusai/index.html
・交流活動をすすめる場合,まめに連絡を取り合うということが大切である。また,あいまいな提案はさけ,具体的にはっきりとプランを提示したほうがよい。相手校からの問い合わせ等にたいしては,迅速に対応したほうがよい。
・一つの学級や,クラブといったように限定するのではなく,全校的な取り組みをめざしたほうが,得るものが大きい。また,様々な企画に柔軟に対応できる。
・人間的なふれあいを大切にする交流活動をめざすとよい。
・今回特に,VHSの方式が日本とヨーロッパでは違うので,ビデオ画像の送受信に,AVI形式のファイルを使用したのは効果的であった。また,編集もコンピュータ上でできるので,たいへん便利であった。
・音声の送受信には,WAV形式のファイルを今回使用したが,PureVoice(tm) というソフトウェアを使用すると,より明晰な音で,なお且つ,より小さなファイルサイズで音声ファイルを作ることができることがわかった。これだと,電子メールに添付してもかなりの音声情報を負担無く,送受信できる。以下サイトからダウンロードできる。http://www.eudora.com/purevoice/


企画参加校
 リトルアイランドナショナルスクール (アイルランド)

参考文献
 小学校英語セミナー 影浦功/明治図書出版
 総合的な学習はじめての小学校英語 渡辺寛治 図書文化社
 小学校・国際理解教育の活動プラン 高階玲治 明治図書出版

参考にしたURLなど
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/index.html  外務省
 http://embassy.kcom.ne.jp/ireland/index-j.htm アイルランド大使館
 http://www.aiee.gr.jp/ 国際教育交流促進協会
 http://www.apic.or.jp/indexSJIS.html  アピックネット