インターネットによる学校間・生徒間交流・共同学習の将来性をさぐる
−高速回線(光ファイバー1.5MG)を利用した授業実践−
商業高校・商業
福井県立福井商業高等学校
商業科 田嶋基史
tajima@fukusho-ch.ed.jp
http://www.fukusho-ch.ed.jp
キーワード 商業高校, 商業, インターネット, 電子商取引, 高速回線, 電子メール, 学校間交流
インターネット利用の意図
21世紀予測される経済のグローバル化,高度情報通信ネットワーク社会の進展などによる経済変化の中で本校の商業教育の目指す方向としては「ビジネス教育の視点に立った商業教育の構築」である。その方向の一つの方策としてインターネットを活用した商業教育の展開が考えられる。本校では,平成9年にCAIの予算によりのWINDOWS95のパソコンが40台更新されその後平成10年にDOS/Vパソコンが40台設置された。各職員室にもパソコンがある。授業においても,昨年度から課題研究の授業で,インターネットを利用しての調査・研究や電子メールでの学校間交流・共同研究など進めてきている。
平成10年には,文部省の光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法の研究開発事業の指定を受け1.5Mbps回線が引かれた。インターネットを教育にどう展開していくか,あるいはその効果的な使用方法など,「インターネット企画委員会」を中心に各教科や各校務分署で検討している。今後は,校内LANを引くことで,すべてのパソコンからインターネットが利用できるような環境を整備していきたいと考えている。
1 インターネット活用における目的
(1) 高速回線(光ファイバー)を利用することにより最先端の通信技術を生徒に体験させていく。
(2) 生徒が授業に対して主体的・能動的に参加できる環境を整える。
(3) 地域との連携や他校との交流を生徒の自主性を育てる。
2 本校の機器構成
本校では情報棟(第2電算室PC20台・第5電算室PC20台・第4電算室PC40台)がすべてLANで接続されている。接続形態は100base-Tである。
インターネットには1.5Mbpsの光ファイバー接続をしている。
3 インターネット交流活動の歩み
(1) 1997年度 4月〜6月
CAIの機器の更新に伴い,インターネット回線がひかれる。(64kbps)
福井商業高等学校インターネット元年
生徒会による学校祭でのインターネットを通じての情報発信を企画した。
・福井商業高等学校のホームページ作成(現在の改訂は9回を数える)
(ホームページ)http://www.fukusho-ch.ed.jp/
・テレビ会議システム(Cu-SeeMe)による生徒間での意見交換交流会
名古屋市立西陵商業高等学校国際ビジネス科40名と
福井商業高等学校1年情報処理科40名
(手順)
ア.相手校の教師と電子メールで交流手順の打ち合わせをする
イ.相手高校との自己紹介文をタイピングしてメール送信
ウ.メール送信班とリアルタイムセッション班に分けて授業時間の中で2つ分けての交流
(評価)
初めて相手高校の生徒とリアルタイムセッションを行い生徒は,大変感動していた。本校の情報処理科の生徒は,タイピングの能力や機械操作には慣れているもの,いざ相手を目の前にしてどうすれば少しとまどいがみられた。話す内容や質問する内容など十分吟味したつもりであるが,生徒同士なると初対面ということもあり,実際の会話のようにうまくいかないことが反省点である。
(2) 1998年度 (年間を通して)
(a) 沖縄修学旅行(中部商業高等学校との学校間交流 2年情報処理科)(6月)
(目的)
修学旅行をただの研修ではなく,沖縄の生徒との文化交流に発展させていきたいという生徒の強い希望があった。
(実施に至る間での経緯)
ア.交流相手高校を探す。(メーリングリスト上で交流を呼びかける。)
イ.相手高校の先生と電子メールで交流日についての打ち合わせ。
ウ.校内において学校行事としての扱いを検討していく。
エ.具体的なプログラムを作成しその内容を検討していく。
オ.相手校の生徒との交流内容テーマ設定などについて電子メールで意見交換を実施していく。(4月から週2回程度 合計10回程度)
カ.ロングホーム(6回程度)に交流日のテーマにおける意見交換についての打ち合わせや出し物の練習
キ.福井県および福井商業高校の学校紹介のプレゼンテーション
(評価)
生徒は,福井県のアピールをどのようにしていったらよいか思考錯誤しながら相談していった。メールでの意見交換も,実際に相手と交流し,回数がふえてくるにつれ,活発な意見交換が実施された。当日は,セレモニーの内容を中部商業の先生と打ち合わせをし,女子は演舞,男子は流武と沖縄の伝統芸能を伝授していただき,インターネットを通じてのオンライン交流からオフラインの交流が実際に体感できたひとときであった。
また10月に福井商業高校ではエイズの全国発表会があったが,そこで中部商業高校の生徒と福井商業高校の生徒との意識の相違をアンケートで比較しながら交流をつづけ,WEBのページを共同で作成していった。生徒は調べ学習した内容をメールやWEBで意見交換することで文化や環境の違いをいっそう理解していったと思う。
(b) コンピュータ教育開発センター(CEC)インターネット共同利用企画 (7月)
東海スクールネット研究会アジア高校生インターネット交流プロジェクト」に参加
http://www.seiryo.ed.jp/asia/
参加国(台湾・アメリカ合衆国・韓国・日本)
英語でのディスカッションとプレゼンテーション
(福井商業のテーマ 環境問題 ゴミについて)
http://www2.fukusho-ch.ed.jp/project/asia/garbage/
参加国 台湾 韓国(2校) タイ アメリカ(ハワイ) 日本
日本 川崎市立商業高校 南山国際高校 三重県立菰野高校
福井県立福井商業高校 三重県立みえ夢学園高校
四日市市立四日市商業高校 名古屋市立緑高校 名東高校
淑徳高校 手塚山学院泉ヶ丘中高校 名古屋市立西陵商業高校
参加数 メーリングリスト 125名 シンポジュウム・合宿 52名
(内容)
各学校で,テーマごとに英語でプレゼンテーションを作成し,その内容を発表していった。ここで海外の生徒に対してのプレゼンテーションは,生徒にはとても新鮮なものであり,この企画に参加していくにあたり夏休みに入る7月から2週間ぐらいは,データ収集とプレゼンテーション作成に毎日放課後2時間程度かけ作成していった。
教員間でのメーリングリストで生徒のプレゼンテーションの進捗度合いなど連絡を密とりながら進めていった。
上記のたくさんの高校との連携が今回のキーになるわけであるが,サポートしてくださるCECの方々や東海スクールネット研究会の先生方および会場提供の京田辺市職員の協力を得て,意見交換などとてもスムーズに行うことができたと思う。
(3) 1999年度(年間を通して)
光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法研究開拓事業の研究指定を受ける。(1998年10月)(1.5Mbps)高速回線を利用 平成10年〜12年まで
福井商業高等学校内にネットワーク活用委員会が設置される。
(実施内容)
(a) 電子商取引の実践(3年 課題研究 インターネット 2単位)
平成10年度〜12年度まで,光ファイバー網による学校ネットワーク活用方法の研究開発事業の研究指定をうけ,総合実践の内容にインターネット利用を取り入れる。この前段階として,課題研究においてインターネットを利用して電子商取引を実際のインターネット上で行い,日本および海外の学校と特産物などの取引を実施していった。
西陵商業高校の影戸誠先生と川崎商業高校の吉野勉先生と連絡をとりながら授業についての打ちあわせを電子メールや先生のための電子掲示板を利用しながらおこなった。実際に取引していったデータは,その会社独自のものであり,サンプルで作成するのとは異なるので生徒の意欲向上につながったと思われる。そしてそれを通して,各会社に利益追求のシミュレーションや経営分析を表計算ソフトと連動させながら展開していく。なお電子商取引については,テレビ会議システムやネットミーティングを利用して,双方向のリアル画像交換をおこなっていた。テレビ会議システムは,取引相手を認識することで電子商取引にリアリティーを感じさせ,責任意識を持たせることができた。
(評価)
・生徒が電子商取引を通じ財務諸表の分析力や経営分析を行なうための意思決定能力を養うことができた。この学習を通じて簿記の決算にいたるまでの内容について深い考察を得ることができる。
・各商店の販売戦略を盛り込むことで,自主的に売れ筋商品の開発を研究する能力が身についていった。
(反省点)
実際のデータを,会計ソフトにいれて分析するさい,勘定科目を過不足なく設定させていくことや,WEB上での取引を行うため回線スピードの問題など授業時間内に終了でないことがあった。来年は,WEB上での帳票類をすぐに会計ソフトに入力できるようにシステム構築の改良を進めていき,各商店独自のWEBページが立ち上げるような展開にしていきたいと思う。
(b) インターネット教育実践の研修(国際経済科 1年 2年 英語科教員)
インターネット回線を利用しての授業の取り組みを,商業科目のみならず各教科で考察していく。またコンピュータ操作やソフトなどの講習会を実施し,授業のサポート体制を確立する。電子メールの書き方やネットワークエチケットの講習会などを含めて情報倫理の必要性を理解させていく。
(授業展開)
11月後半から週1回のコンピュータを利用した授業を実施した。(年間10回)
1) ネットワークエチケット(3回)
具体例を挙げながら生徒に人間社会と同様に守るべきエチケットがあることを理解させる
2) 電子メール講習会(4回)
イントラネットの環境でAL-Mailの使用方法を教える。
ネチケットについて再度確認する。
メーリングリストに登録させていく。
簡単な挨拶文や英語での言い回しなどを何度も練習させる。
3) ネットサーフィン(3回)
インターネットエクスプローラの使用方法を教えていく。
情報収集や情報発信など利用の仕方などを理解させていく。
CNNなどの映像や音声などホームページ上にファイルとしてあることを理解させ作成意欲をもたせていく。
(評価)
・AL-Mailを利用して生徒一人一人のフォルダに自分のメールを保存していく。
・生徒は学校で指定されたメールアドレスを使用してメールを送信するため,いい加減なことや,不適切な表現については,具体例を挙げて指導していった。
・英語での具体的な表現など電子メールを通して把握していき,英語を身近に捉えていくようになった。
・はじめは,十分イントラネットの環境でメール交換を実施していかないと生徒の表現や送付内容を把握できなくなった。
・クラス全体で実施する時は,機械操作について一定水準がないと全体指導が徹底していかないと感じた。
(c) FIC(Fukusho
Internet Community Project)による生徒の情報発信を実施
Fukusho Internet Communityの頭文字をとり「FIC project」とネーミングした。インターネットを用いた総合的な交流プロジェクトである。この趣旨は「部活動の生徒に限ることなく,全校生徒に意見交換の場を提供することができないだろうか」といった視点に立ったとき,インターネット上にその空間を作ることで,より多くの生徒の潜在する発想をくみ取ることができると考えた。しかしながら,ただランダムな意見をチャットで流すのではなく,テーマや目的意識を確立していくことで情報交換の内容が意味をもってくるのではないかと考えて進めていった。
Fukusho Internet Community
projectの目的
1) インターネットを利用した新しい学習環境の創造
2) 生徒間・学校間交流の創生
3) 自己表現空間の創造
生徒達の力を核にして,インターネットと周辺技術を駆使して学習していく生徒のための新しいコミュニティの創造を目指している。生徒においては,高度情報化社会を生き抜くための力,すなわち情報を収集し,的確に判断・処理・加工し,活用できる力,さらにはコミュニケーションの道具として利用していく等,情報における総合的な能力を育成する。そのために校内に学習環境として,情報通信設備を体験できる機会や場をできる限り多く構築する。
Fukusho Internet Community
projectの活動内容
1) サーバ構成
210.167.7.4
- UNIX
- インターネット活動者用メールサーバ
210.167.7.5
- Win NT
- FIC PROJECT サーバ
210.167.7.6
- UNIX
- 福井商業情報 HTTP サーバ
2) FICプロジェクトの活動内容
1. 広域仮想学習空間創造計画(Internet campus project)
・webフォーラム(BBS)サービス
各カテゴリーに細分化された,会員制のフォーラム(BBS)を設置
・ウェブチャットサービス
2.学内情報通信網整備計画(Cosmos project)
・全ての教室に情報コンセントの設置(将来)
・NETDAY実施によるネットワーク環境整備
第1回(情報棟〜LL教室〜国際交流室 1999/10/31実施)
第2回(情報棟〜視聴覚室〜管理棟 2000/1/22.23 実施)
http://www2.fukusho-ch.ed.jp/project/netday/
3.メディアコーディネータ育成計画
インターネットとその周辺技術を使って,ウェブサイトなどの情報発信の場を提供していく。ネットニュースサーバや電子会議室などを設
置して,広域での情報交換の促進を図る。
4 まとめ
このようにインターネットの教育利用を様々な角度から現在進めてきた。今後情報ツールを当たり前に使いこなす生徒を前に,コーディネータの役割として個性,創造性を伸ばす学習機会を多く設けていき,コンピュータリテラシーの育成と情報リテラシーの育成の充実を促す必要性があると思った。
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