「僕らは町のカメラマン」
-子どもの目でとらえた取材内容をネットワークで広げる-
小学校第5学年・総合学習(環境学習)
山梨大学教育人間科学部附属小学校 石川等
キーワード 小学校,5年,総合学習,インターネット,電子メール,取材活動,学校間交流
インターネット利用の意図
今回の実践は,総合学習におけるネットワーク利用の可能性について研究を行ったものである。
具体的には,子どもたちがテーマ追究型の学習を行っていく際にインターネットのデータベースとしての有用性についての認識を深めさせていくことや,テレビ会議システムを利用した学校間交流を体験させることにより,広範な学習フィールドにおける学習活動を実現させることをねらいとしたものである。
今回の実践の中心となった5年生の実践においては,「環境」をテーマにした個人追究型の学習活動を展開する子どもたちに,ネットワーク上のWebページのデータ利用や他校とのテレビ会議システムを利用した学校間交流を体験させることを行った。これにより,子どもたちが自分の足で集めた学習情報に幅をもたせることや学習成果発表の場を提供するといったことが可能となった。
※本校は,平成9年度より3カ年,文部大臣の研究開発学校の指定を受け,教育課程の新規開発に資するための研究を実施しているため,「総合学習」という領域を現時点において設定している。
1 身近な自然・環境を考えよう
指導者:第5学年担任 徳江恵一・川原陽一・深澤啓太郎
(1) ねらい
本校では,5年生の6月に「自然体験教室」を実施し,体験を重視した活動を中心に学校外のフィールドにおける学習を計画している。これに,今日的な課題の一つである環境学習を絡め合わせることを案出した。これにより「社会的な存在」としての「自分」を意識し始めてきている子どもたちに,私たちの生活と私たちを取り巻いている自然との間には密接な関係があることを感得させることをねらいとした。また,このことから始めて,私たちの生活が自然や環境に大きな影響を及ぼしていることに気づかせていくこともねらいとした。
上記のねらいを達成するために,直接体験(自然体験教室での活動や調べ学習における資料収集など)とともに,ネットワークを利用した資料収集や,他校の同学年児童との間でのテレビ会議を利用した交流などを計画の中に取り入れ,総合学習とパソコンタイム(本校の総合領域における情報教育のための時間)とを関連づけながら活動が展開できるような仕組みを用意することとした。
(2) 指導目標
・自ら自然・環境に関わる課題を見いだし,その研究の過程において,他者と積極的に関わることができる。(テレビ会議システム・電子メールの利用)
・研究の成果をもとに自分の考えを持ち,それを効果的に伝え合うと共に,考えを高めていくことができる。(電子メールの利用・Webデータの作成)
・自分の生活と自然・環境との関わりについて見つめ直し,日常生活の中で実践することができる。
(3) 利用場面
本実践では,次の場面においてコンピュータ及び情報ネットワークの利用を図った。
(a) 電子メールの利用による学習情報の共有化
自分が調べたいことや調べてわかったことなどを電子メールを使って,学年の仲間や教師に送信することを行わせた。その際,メーリングリストを設定して多くの友達と情報を共有させあうことができるようにした。
(b) Webページの検索を取り入れた調べ学習
自分の追究テーマに合致するデータが掲載されているWebページを検索エンジンを使用させて探しださせ,図書室の資料や自分なりの調査だけでは足りない情報を補わせた。
(c) テレビ会議システムの利用による学校間交流
今回の実践においては,宮城教育大学附属小学校の5年生との間で2回にわたるテレビ会議を実施した。これにより,自分たちだけの学習で完結させるだけでなく,校外にいる他者との対話において自分たちの学習を見つめ直す機会を提供できた。
(d) Webデータの作成による学習のまとめの蓄積
3学期には1年間の総合学習のまとめをする活動を計画している。この活動においては,これまでの学習履歴をポスターやWebデータにまとめたいというグループが出てきている。
(4) 利用環境
(a) 使用機種 Macintosh Performa5220 21台 同 Performa575 3台
Compaq Presario2274 21台 同 Presario2294 21台
(b) 周辺機器 デジタルカメラ Casio QV-7000 2台 同 QV-70 10台
フィルムスキャナ(Canon製)
(c) 稼働環境 児童用のコンピュータは情報教室に42台・視聴覚室に21台ある。この他,5年生の各教室に1台ずつあり,さらに,廊下に3台を設置し
ている。すべてのコンピュータが専用線で情報ネットワークに接続されており,校内のどこからでもインターネットの利用が可能となって
いる。
(d) 利用ソフト Microsoft Word・QV-LINK・Eudora-J 1.3.8.5・Netscape Communicator
Winbiff ver2.0
2 指導計画
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図1 石けん洗剤と合成洗剤とを比較した実験の結果を写真で提示 |
図2 学習のまとめをコンピュータでWebのデータになおす子どもたち |
3 利用場面(テレビ会議システムを利用した交流場面)
(1) 目標
他校の友だち(宮城教育大学附属小学校の5年生)との間で,双方が行っている総合学習の成果を交換しあうことと,環境に対する取り組みにおける地域差について知り合うこと,さらには自分の考えを生活の中に取り入れた実践についての情報交換を行うことができる。
(2) 展開(概要を示す)
学習活動と内容 |
指導上の留意点 |
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図4 農薬でイチゴはどれくらい長持ちするかを調べた子が写した写真 |
4 実践を終えて
今回の実践では,1年間という長いスパンの中で,インターネットやテレビ会議システムの利用といったことを,子どもたちの活動にあわせて設定し実施してきた。インターネットの教育利用の草創期とは違い,使おうと思えばネットワークに接続されたコンピュータがすぐそこにあるという状況になってきている今,コンピュータやネットワークの利用についても,学習活動から発生する必要感につきうごかされたものであることが大切であると考えている。
ネットワークに接続されたコンピュータは,データベースであると同時に,やはりコミュニケーションツールなのである。子どもたちが自分の目やカメラを使ってとらえたものや人とぶつかり合って獲得したものを,自分の中にきちんと整理させていく過程においてネットワークに接続されたコンピュータがつなぐ多くの人々との交流は大変意味のあるものとなろう。今後も継続して交流を進めたいものである。
ワンポイントアドバイス |
利用したURLなど
こどもエコクラブ(http://www.wnn.or.jp/wnn-jec/index.HTML)
アルミ缶リサイクルホームページ(http://village.infoWeb.or.jp/~fwba0974/index.htm)
環境問題の部屋(http://www.saga-ed.go.jp/materials/edq01439/kankyou/kankyou.HTML)
地球環境レポート(http://www.wnn.or.jp/wnn-eco/game/index.HTML)
環境庁(http://www.eic.or.jp/eanet/Kmain.HTML)