データベースを基礎にした動的ホームページ開設にむけて
〜環境情報の発信〜

報告者:山梨県立韮崎工業高等学校 小沢 久
キーワード 環境,イントラネット


企画の目的・意図
 本校ではくくり募集を行なっており,生徒は学科を区別せずに入学し,1年から2年への進級時に学科を選択する。このために1年生に対して自分が進む学科を選択するためのさまざまなガイダンスを行なっている。そこで環境化学科への理解を深める一助として校内イントラネット上に環境にかかわるホームページを開設し,生徒に環境意識を訴えかけたいと考えている。
 工業高校の学習内容や活動内容は,一般によく理解されているとはいえない。また,本校環境化学科は山梨県の高校改革に伴って甲府地区の工業高校から学区の異なる本校へと移転してきたため地域の理解度も小さく,環境化学科がどんな学科か知ってもらう必要がある。今までも学校訪問や学校要覧の配布,中学生一日体験入学などをとおして中学校へのアピールを行なってきたが,これだけでは不十分でありさらに学校の内容をアピールしていく必要がある。山梨県では各学校ごとにホームページの開設をすすめているが,単なる学校紹介に終わるものでなく近年特に関心が高まっている環境問題について取り上げて,さまざまな内容について生徒とともに考えて作成したものを独自に開設したいと考えた。環境について校外へアピールしていく学科であり学校でありたいとも考えている。校内の他の学科の生徒および校外の小中学生や一般の人たちに透明性のある(外からみえる)学科となるよう,イントラネット・インターネットを有効に利用したいと考えている。


1 実践内容
(1) 校内イントラネット環境の構築およびインターネット環境の整備
 本校の校内ネットワーク化は昨年度の実習設備導入をきっかけに始まった。管理職の理解を得て幹線を延長し,さらに不足分については職員の自前工事で補い,主たる職員室をつないだ校内LANが構築された。
 一学期にはフリーウェアの電子掲示板を設定し,校内研修会を開いてその利用法を啓発し,職員間の情報伝達や意見交換の場として利用している。
整備のながれ
8月23日 有志による,理科準備室・保健室・進路指導室PCの校内LANへの接続作業 (図1)

1 自前工事作業

8月末   本校ネットワークについてサーバ構成などの検討
9月30日 校内委員会へWebサーバ設置の提案
10月6日 教育情報部主任・情報技術科主任と校内LANのインターネットへの接続についての検討
 ・図書室のPCをプロキシサーバを導入し,ファイアーウォールとする
 ・プログラミング実習室の扱い
 ・インターネット接続の制限をどうするか
10月26日 校内イントラネットWebサーバPCの納品と業者による設定
 ・Internet Infomation Server(IIS)のインストールと使用説明
11月4日 電子顕微鏡画像処理装置の納入により,この装置が校内LANに接続。電子顕微鏡画像をネットワーク上で利用できる環境が整った。
12月8日 インターネット環境及び校内メールサーバの業者による設定
 ・図書室PCにProxy Serverをインストール
 ・イントラネットWebサーバPCにExchange Serverをインストール
 ・これにより,校内の各PCでインターネットが利用できる環境が整った。
 ・クライアントPCでインターネットを利用するための設定法をネットワーク上に書き込み公開。
 ・また,校内メールのクライアント設定についても同様にファイルにして公開。

(2) 職員のホームページ作成研修
8月30日 職員対象ホームページ作成研修会の提案
9月16日 第1回ホームページ作成研修会(図2)

 

2 研修会風景

 ワープロによるホームページ作成(a)
 参加者:約15名
10月19日 第2回研修会
 ワープロによるホームページ作成(b)
 (テンプレートの利用)
 参加者:約15名
11月16日 第3回研修会
 ホームページ作成専用ソフトの利用  
 参加者:約15名
12月16日 第4回研修会
 校内イントラネットの現状の紹介
 校内ホームページコンテストの紹介
 作成したホームページのWebサーバへの登録方法
 参加者:約10名
 講師はいずれも本校理数工学科進藤Tにお願いした。
                                                         

(3) 校内ホームページコンテスト
11月15日 職員会に職員対象校内ホームページコンテストへの協力依頼
11月26日 全職員へのホームページコンテストの企画発表
12月9日  コンテストの要項に関する打合せ
12月10日 〜 要項および参加申込書の作成
12月15日 全職員への要項発表
1月11日 サーバ中に応募場所(領域)を準備
1月17日 作品応募締め切り


3 吸光度測定

(4) 課題研究授業における簡易大気汚染測定調査
 
ザルツマン法による二酸化窒素簡易測定についての予備学習
 インターネットによる大分県立鶴崎工業高校の取り組みの参照
 必要器具・薬品の準備
 写真フィルムカプセルの収集
   現像店および写真部より
 薬品調査
予備実験
 写真フィルムカプセルの洗浄
 吸収液の調製
 吸収カプセルの作成と吸収地点の選定・設置
 標準液・発色液の調製
 発色操作
 吸光度計の操作(検量線の作成と試料の吸光度測定)
9月13日 測定実施
 環境化学科3年生全員と教職員に配付し協力依頼
9月22日 吸光度測定(図3)
9月27日 結果のまとめと学園祭展示の準備
9月29日 学園祭にて大気汚染調査結果を展示

(5) 課題研究授業によるホームページ作成
 生徒のホームページ作成法の学習には,(2)で述べたホームページ作成研修会の内容を参考にして,次の順にすすめた。
 ・ワープロによるホームページ作成
 ・リンク
 ・テンプレートの利用
 ・イメージスキャナの利用と画像の貼り付け
 小中学生を対象にした「やさしい環境のページ」を目標に,該当生徒に地球温暖化・オゾン層破壊・酸性雨・水質汚濁・大気汚染の各テーマを割り当て,作成に当たらせた。

2 成果と課題
(1) 校内イントラネット環境の構築
 管理職の理解と本校職員の奉仕的活動により,ほぼ実用となるよう校内のPCがネットワークでつながった。ファイルサーバとしての利用はもちろんだが,E-スクエアプロジェクトへの参加を機にイントラネット的利用も始まった。具体的には
 ・フリーウェアによる掲示板利用
 ・外部公開している本校ホームページの校内公開(図4)
 ・本日の予定
 ・月間予定
 ・教育課程改訂についてのホームページをダウンロードして校内公開
等を利用している。メールサーバも設定され,校内のメール利用も始まった。


        図4 本校イントラネットホームページ


(2) 校内のインターネット利用環境の整備
 山梨県では全ての小中高等学校に教育センター経由でインターネットが閲覧できる環境が用意された。しかしこの回線は校内LANには接続されず,図書室と一実習室でのみ利用できる環境であった。この回線を構内LANにつなぎ,どの部屋でもインターネットにアクセスできる環境実現のため,図書室PCにProxyServerをインストールし,構内LANからのインターネット接続のためのFireWallとすることができた。しかし現状のISDN回線では多くのユーザがアクセスすることの困難さや電話料金の問題もあり,インターネットへの接続はすべてのPCに許可せず原則として一室一台の限られたPCのみとする制約を設けている。インターネット環境はこの1・2年で飛躍的に変化することが予想されることから,近い将来専用線接続が実現され,教育的には自由にインターネット利用ができるようになるものと期待している。
(3) 職員のホームページ作成研修およびホームページコンテスト
 本校ではホームページ作成の経験者はほんのひと握りであった。この研修会には延べ20人程が参加し,多くの先生方がホームページを身近なものとしてとらえることができるようになった。ホームページをつくることは情報を発信することであり,発信するだけの内容が必要であるということも参加した多くの先生方の感想であった。ホームページコンテストについてはまだ締切前の段階であるが,でき上がったホームページはイントラネットで公開することで,それぞれの違った一面の紹介にもなり,また今回参加できなかった先生方への広がりも期待できるのではないかと考えている。一度は作ってみるというステップが必要であり,これを経験した人はやがては本校から魅力ある情報を発信するためのメンバーになっていただけるであろう。また,研修会は生徒にホームページ作成を教える上でも大いに役立った。

(4) 簡易大気汚染測定調査
 予備実験の後に先生方を含め約60名ほどにカプセルを配布してサンプル採取をお願いし,回収できた45ポイントについて測定した。学園祭においてその結果を公表したが,身近な環境のことであることから関心も高く好評であった。今回この結果をイントラネットで公開すべくWebページを作成しているが,今後はこの測定を地域の小中学校にも広げて連携をはかり,より広範囲の地域の測定を目指していきたい。外部との連携においてはインターネットが有効なツールとなってくれるものと期待している。

(5) 課題研究授業によるホームページ作成
 生徒の情報発信能力を養うことは大切なことである。しかしホームページ作成法を教えるのは思いの外時間が必要である。限られた時間の中でワープロのホームページ作成機能の利用,テンプレートの利用,ホームページ作成専用ソフトの利用などどの程度まで教えたらよいのかは今後も検討を要する。生徒のWeb作成にあたっては多くの資料も配布したが,生徒が内容を消化していなければホームページ作成に至ることができず,生徒自身発信する内容について主体的に学習することが必要となる。そういった意味でもホームページ作りは自らテーマを決めて学ぶ課題研究にはふさわしい内容と言える。また,生徒が作成したホームページを外部から閲覧できることは生徒の自信にもつながるものと考えており,今後も課題研究の授業においてこのような試みを続けていきたい。

(6) 大気汚染測定装置の利用
 本プロジェクトの主題にもあげた大気汚染データベースをもとにした動的ホームページについては,第一段階としてホームページ閲覧者が希望する日の大気汚染データを検索できるWebに取り組んでいる。ハードルの高い内容であり現在専門家の指導を受けながら取り組んでいるところであるが,報告できるところまでは至っていない。今後も継続して取り組んでいく内容である。

3 おわりに
 環境化学科職員のホームページ作成及び課題研究における生徒のホームページ作成は主に小中学生や本校一般生徒を対象にした「やさしい環境のページ」を開設すべくすすめてきた。ホームページコンテストが終わった段階で,作成したものをまとめて校内イントラネットで公開する予定である。さらに外部に向けての発信も期しているが,そのためにはWeb内容の再吟味や著作権関係の検討も加えていく必要がある。ネットワーク環境を整えながら情報発信もと欲張ってすすめてきたが,クリアすべきハードルも多く短い期間で十分な成果が得られたとは言えないかもしれない。しかしこの企画への参加をきっかけに,本校のネットワーク環境の整備がすすみ,独自の情報発信に向けて踏み出すことができたものと考えている。

ワンポイントアドバイス
 ネットワークの利用環境を教員だけで独自に構築していくのは困難である。今回この事業の補助金により,専門家による環境の構築及び数々の指導助言をいただくことができた。校内に知識豊富な職員がいる恵まれた学校は少数であろう。予算が許すならば環境設定を専門知識をもった業者に委託することをおすすめしたい。