国際リアルタイムセッション

名古屋国際センター 丹下厚史
キーワード リアルタイムセッション Cu-SeeMe NetMeeting 国際交流 ツール


インターネット利用の意図
 1999年夏休みに名古屋国際センター主催,コンピュータ教育開発センター共催で「ワールドユース・ミティング・イン・ナゴヤ‘99」を実施した。インターネットを機軸におき,世界7カ国の若者が交流を行った。学校生活,日本ではなじみのないアフリカ,あるいはパプアニューギニアの文化,世界から見た日本の姿などがテーマとなった会場には260名もの人々が集まり熱心に耳を傾けた。
このイベントを契機として,インターネットを日常的に使うことが企画参加者の中で一般化した。電子メール,Webでの発信については問題なく次回企画に向けほぼ全員が活用できているが,リアルタイム系のソフトについては設定が通信環境により異なり,交流を推進しながらその適切な利用方法の研究が必要となった。


1 プロジェクトのねらい
・国際交流等の場面でリアルタイムセッションを盛込み最適な環境設定のあり方を探る。
・継続的な交流のためのセッションのあり方を探る。
・来年の国際交流企画への下準備とする。

2 実践内容(各国とのセッション)
(1) 韓国とのセッション
(a) KBSとの取り組み
 韓国KBSとは昨年7月,日本の高校生をソウルに連れて行き,コンピュータ教育開発センター後援企画「アジア高校生インターネット交流」を通して日本側の動きを紹介してもらった。
 この企画は日本の高校生30名がソウルを訪問し,現地の高校生と同じ場所を訪れ,その印象をホームページで発信する企画である。事前事後のインターネットを通した交流を行うものであり,またホームステイ交流もふくまれた。
 またこの企画の中でソウル側から日本の高校につなぎ,ソウルでの様子を送るという実験もおこなった。このとき以来リアルタイムセッションの動きに注意を払ってもらっている。
 今回の実験は日本側からCu-SeeMeを活用し韓国側につなぎ,KBSアナウンサーのインタビューに,インターネットを通して答え,実際の活用をテレビを通して放映し,インターネットの教育利用のホットな情報を韓国の家庭に届けようとするものである。
(b) 実験のねらい
・リアルタイムの交信を韓国KBS番組を通して現地教育機関にその機能を伝える。
・実際に韓国KBSアナウンサーが日本側にインタビューし,その結果を韓国側に全国放送を行うため,事前準備においては正確な適正値(受信・送信パケットの値)を得る。
・日本側「リアルタイムセッション」にはそのビデオを送り教育利用に役立てる。
・ビデオの中に韓国側の学校の教育利用について紹介し,日本との交流のための資料とする。
(c) 事前の取り組み
 これまで回線は128k程度の専用線,さらにリフレクターを使う方法,あるいはIPを直接指定する方法などがとられてきた。事前の実験としてソウル九老女子情報高校が選ばれたが,午後の時間であったためか,パケットの通りが悪く,pingを通しての回線状況チェックも300ms以上の遅延がでてしまい,当日のインタビューに使えないことが分かった。 このため,同校の系列である。SHINJUNG High School  を会場校として設定して行った。
 前日のテストではリフレクターを使ったテストがおこなわれたがほぼ問題なく,生徒にもモニターさせたいとの事で,教室には音声装置が設置された。
 いささかハウリングを起こしたため,ハンズフリーから音声を送るときだけにクリックするpush to talkの機能が設定された。
 またやりとりはすべて事前のメールで行われた。

 

(d) 当日の実験と放映されたビデオ
 韓国KBSのインタビューの前に日本側スタッフと韓国側スタッフの自己紹介が英語で行われこれからもこのような企画を続けていくことが確認された。

(e) 韓国側からの質問(質問・回答共に英語にて)
・「日本のインターネット教育利用状況について」
 回答 「2001年にはすべての学校がインターネットにつながれ,2002年からは小中学校で新しい指導要領が始まり,総合学習を初めとしてインターネットの教育利用が考えられている。(右図をカメラから見せながら)接続数は昨年に比べ飛躍的に伸びており,高校レベルでは既に70パーセントを超えている。
 2003年からは教科「情報」が開始され,すべての普通科の学校で実施される。情報の活用,発信,ネットワークへの参画の態度など,コンピュータリテラシーの国民的ボトムアップが企画されている。政府もミレニアムプロジェクトとして2005年までに教室からインターネットに接続する環境を実現することになっている。」

・「アジア交流とインターネット利用について」
 回答「アジアは距離的にも歴史的にも近い国である。しかしながら十分な情報交換が無い現状である。特に民間レベルでは政治・経済の情報ばかりで,交流に役立つような情報は我々自身が開拓しなくてはならない。今年の夏,生徒30名と共にソウルを訪れたが,行く前不安も持っていた生徒は実際のソウルのすばらしさに大いに感激して帰ってきた。またホームステイの体験によって韓国の人の優しさに触れ,またソウルを訪れたいといっている。韓国も日本もインターネットの教育利用を推進しようとしている,このような企画をもっと増やし交流を続けていきたい。」
 生徒もこの場面では参加して,現地へ行く前と後との自分の意識の違いを相手側生徒との交信の中で話していた。

――韓国側との打ち合わせメール――
 Thank you so much for accepting to do the video-conferencing with us.<  It will be at 11:30 on Friday, November 5th.  EBS (Educational Broadcasting Services of Korea) will broadcast it.  I will make sure recording and sending the program to you.  About the contents,  let's talk about the school life, specially about the English classes and Internet education.

 Following are what I came up with;
1. How many English classes do you have a week?
2. Do you do any project/program with other students overseas using Internet?
3. If so,  what kind of activities have you done? (like e-mail exchange, video conferencing, face-to-face meeting)
4. Have you been to other countries because of that?
5. Have you been to Korea?
6. What was your impression about Korea before and after your visit?
7. Do you feel that you need to study English harder after talking to your friends overseas?
8. Do you think these activities help your English skill and Computer skill?
9. What do you want to do after graduation?
10. Do you think your Internet communication classes will help you when you actually work after school?
・「21世紀に向けて」
 回答「21世紀は国意識がもっと薄れるのではなかろうか,韓国の学校の生徒が私のクラスの生徒に思え,隣の国が隣の学校の様な意識になるのではなかろうか,相手が見えないところで争いが起こってきている。日常的な交流の中でもっと時間の共有,情報の共有をしていきたい。」
(2) 月プロジェクトへの参加
(a) プロジェクトの概要と参加者の感想
 相手校 パース日本人学校――名古屋――柏市立中原小学校
 日本側 専用線 128k オーストラリア側 28800bps
 使用ソフト Cu-SeeMe ver3.0
 柏市立中原小学校が中心となって進める「月プロジェクト」に参加させていただき,オーストラリアパース――名古屋――柏市のリアルタイムセッションに参加させていただいた。
 次の様な感想がパース日本人学校の小学生から送られてきた。生徒さんが一生懸命自分で入力したものである。
 パース日本人学校五年生――――――――――
 「ぼくは,インターネット交流をするのがはじめてなので,中原小学校のみなさん,どうもありがとうございました。自分が説明をしている時にまちがえて全然ちがうことを言って目に水が一番上までたまって泣きそうでした。もう1回話しができたらすらすらと話したいです。ぼくは,とっても楽しかったのでできるだけこういうふうなインターネット交流をもっともっとふやしてみたいです。」

(b) この日の交流に向けての準備
 事前に発表資料(図参照)をwebに載せておく  (プリントアウトして生徒に配布)
(c) 当日の発表
 当日Cu-SeeMeを通して発表する
 音声の通りが悪いときはチャットを活用
 最初中原小学校の方から月の見え方の違いについて発表があり,質疑応答,さらにパース側からの発表と続きました。一生懸命自分の考えを図をつかって説明する小学生のすがたは感動的であった。

 小学生プレゼンテーション資料(中原小ホームページ)
 http://www.ice.or.jp/~nakahara/5nen/path/index.htm
 世界の月の見え方 (中元賞ホームページ) 
 http://www.ice.or.jp/~nakahara/5nen/tuki/tuki.htm

(3) 可能性を求めて ジンバブエとの交流
 夏の国際交流企画でジンバブエとの交流を始めた。ジンバブエは南アフリカの南側に位置する国であり,発展途上国であり,国民所得年間400ドルの国である。しかしながら日本への関心も高く,この国とのリアルタイムセッションを企画している。
 ハラーレ(首都)にあるムファコセ高校に人々の力で3台のパソコンを設置ネットし,ネットワークでつなごうとしている。
 2000年1月26日の同校の卒業生,東京大学生産科学研究所のムテンダさんが現地のネットワーク設定のため現地へ向かう。

3 課題と成果
(1) 回線の問題
 どんなに熱意があっても回線のインフラだけはどうしようもない。
 カイロとの接続を試みたときのことである。調子のいいときには28800bpsのスピードが出るのだが,調子が悪いと14400bpsのスピードとなってしまう。どんなに熱意があってもスピードを変えることはできない。
 しかし,限られた環境の中で取り組むしかない。
 ソフトウエアを選ぶことが重要である。
 カイロの場合,一番軽いネットミーティングで1体1の対応を考え施策した。まずお互いに回線スピードを28800にし,画像を送ることなく,音声だけをまず通した。画像であろうと音声であろうと,信号には変わりない。
 まず音声でセッションを確立し,その後画像を送り静止させる方法をとった。
 このような方法によって,セッションを可能にさせた。

・機器の送付
・サポートのあり方
 日本人学校をサポートさせていただく機会を得た。現地にいる先生は決してネットワークに強いわけではない。サポートしようにも距離は離れ,さらに,国際電話は高額である。このようなときにWebページを利用した。Webを通してファイルのダウンロードや設定のサポートをおこなった。

ワンポイントアドバイス
・なによりも担当者
 韓国,カイロ,香港,台湾いろんな国と交流実験をおこなった。なによりもねばり強くお互いが取り組めることが必要である。そのため,日常的な連携がとれる様,電子メールでお互いの近況を知らせるという何気ないことが,肝心となる。
・ソフトの開発
 2000年に入ってCu-SeeMeProというあたらしソフトが手に入った。これは今までのものよりも遙かに軽く,扱いやすい。このように音声・動画のソフトはどんどん開発されていく,教育現場での利用がさらに進んでいくことと思う。

利用したURLなど
 ワールド・ユース・ミーティング (http://www.japannet.gr.jp/nic/)